19 ラズ・ゴーディ
ロザモンドに実家からついて来た二人の侍女のうち、リリー・バーデンは城を出された。もう一人ラズ・ゴーディはお茶を入れるのがたいへん上手だった。
エリザベートはどうにか脚本を書き上げた。主役の王妃を引き立てる脚本でエリザベートは脚本を知り合いの有名な脚本家に頼んだと王妃に説明した。
「その方はなんておっしゃるの?こんな素晴らしい脚本を書いて貰ったから褒美をあげなくては」と王妃が言うと
「書くのが名誉だからいらないそうです。あの有名な方です」とエリザベートが答えた為、脚本家はいつのまにか「あの有名な」と呼ばれるようになった。
セリフは全部が古代ギリー語と言うわけには行かず、古代ギリー語は決まり文句の一行、二行だが、主役と相手役はそれなりに分量があった。エリザベートは王妃とフリージア、ついでにアネモネにきちんとした発音を教え込んだ。
キャリーは侍女役のロザモンドにセリフを覚えさせようと頑張った。棒立ちではあったが、動作をつけながらだと、なんとか覚えられるようでキャリーはほっと胸をなで下ろした。
衣装は噂を聞いたディング夫人が協力してくれた。舞台で動きやすいようにコルセットを締め付けないデザインを王妃がたいそう気に行った。
王妃は若いお嬢さんの役柄上、髪型に新しいものを取り入れたいと思い、髪型を募集した。
王妃が気に入ったのはツインテールと名付けられた髪型で、考えたのはラズ・ゴーディだった。
「ラズ、あなた才能を隠していたの?」とロザモンドがラズに話しかけると、ラズは顔を赤くして下を向いてしまった。
「まぁいいわ。あなたはわたしの侍女だから髪をお願い。舞台で映える髪にしてちょうだい」
「かしこまりました」とラズが丁寧に髪をとかし始めると
「気持ちいいわ。上手ね」とロザモンドが褒めて、ガーベラとジャスミンとロザモンは技術を覚えようと真剣に器用に動くラズの手を見ていた。
なごやかな空気が流れていたが、そこにケイトがやって来た。
「ラズ、なにしているの、そんなやり方」と言いながら、ブラシを奪おうとしてラズを軽く押した。するとロザモンドが
「ケイトいいのよ、ラズにまかせなさい」と言った。そう言われたケイトは
「はい」と返事すると壁際に下がった。
翌日、エリザベートはケイトに王太子への手紙を持たせて使いに出した。そしてすぐにロザモンドの部屋へやって来た。
ロザモンドを見てエリザベートは
「いつもより綺麗ねと言った」そしてロザモンドをいろんな方向から見て
「髪型が違うせい?」と言ったが、不思議そうに
「そうね、いつもより、垢抜けしてるようだけど・・・・ケイトがやってるんでしょ。そんなに違いが?」とエリザベートが髪に注目しながら言うと
「ラズですよ」と後ろに引っ込んでるラズを前に押しながら、ガーベラが言った。
「ラズなの。そうよね、王妃殿下のおメガネにかなったんですものね」とエリザベートはラズに微笑みかけた。
「それはそうと、ケイトはなにしてるの?姿が見えないけど」とエリザベートが尋ねると
「ケイトさんは来てません」とラズが答えた。
「いないの?どこに行ったんでしょう」とエリザベートが答えると
「おかしいわね」とロザモンドが話題にしたが、エリザベートの
「ヒロインの侍女としてはどう思いますか?」の質問に真剣に
「お嬢様は(自由な風に乗った綿毛のようで美しさはばらのよう)」と答えた。
エリザベートは
「侍女のあなたは(水に映るすいれんのように凛と美しい)」と受けて続けて
「ちゃんと勉強してますね」と褒めた。
この出来事で、ロザモンドはケイトが不在であることを忘れたが、侍女の三人は覚えていた。
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