16 王妃の願い
侍女長がいなくなったが、別に困ることはなかった。
エリザベートは最近、王妃の執務を手伝い始めた。部屋に助けを求めて日参する侍女に同情したのだ。
陛下の状態を知った以上、知らんふりも出来なかったのだ。
陛下は体に異常はないが、記憶が抜けるのだ。いつもやっていることが出来なくなって来ている。
そのことは秘密で王太子も知らない。前回もそういえば国王の影が薄かったが自分のことに精一杯で気がつかなかった。
今回はどうするのがいいのだろうか?とりあえず王妃の負担が減るように手伝っている。
かなり、深い内容の書類も見るので、エリザベートが王妃の執務室へ出向いている。
手伝いに行く日は王妃の護衛が迎えに来て、また送って貰う。
王妃がある日、相談して来た事をエリザベートは、考えてみましょうと答えはしたが、断るつもりだ。
なんと王妃が劇をしたいと言って来たのだ。最初、エリザベートは聞き違えたと思った、が間違っていなかった。
王妃は演劇の舞台に立ちたいとそれも主役で立ちたいと、言ったのだ。
少女の頃からの夢だったと。そして王と約束していたと。いつか舞台を見せると・・・はぁとため息がでた。
王妃が変に目をキラキラさせて言うには、エリザベートが来てくれて内緒で執務の手伝いをしてくれている。
ちゃんとやってくれるから安心したし、時間も出来た。そうしたら昔の夢を思い出した。王もなんとなく楽しみにしているようで、口にした。小さな規模でいいから舞台で演じたい・・・・・
はーーーーとため息が出てしまう。王妃の気持ちはよくわかる。今まで大変だっただろう。だからと言って・・・王だってすぐに忘れるではないか・・・
せめて楽器。広間で演奏するだったら、お城の者は都合をつけて聞きに来るだろう・・・・しかし、演劇・・・
そこにキャリーが帰って来た。
「エリザベート様、どうして、あの方は全然覚えないのでしょう。わざとわたしを困らせているとしか思えません」
「キャリー、悪いわね、今どのあたり?」
「え?まだここ?」とエリザベートが驚くと
「えぇ、皆さんふざけてるんですよ」とキャリーが暗い顔で言った。
「あんなの何回か言ってると覚えると思うんだけど・・・・」とエリザベートが言うと
「そうですよね。みなさん異常ですよ」とキャリーがため息をついた。
エリザベートもその隣で、ため息をついた。
・・・・とエリザベートは閃いた。
演劇を古代ギリー語でやればいい。この演劇なら手伝うと言おう。
「古代ギリー語で!?」と王妃は、おもわず大声を出してしまった。
「王妃殿下、やはりただ演劇を上演って言うのは無理かと・・・・ただ、セリフが古代ギリー語の演劇となれば侍女の教育となりますので、その・・・・外聞がいいかと・・・・国王陛下の見る舞台ですので」
「外聞は大事よね。わかった。それで行くわ。主役はわたくしです」
誤字、脱字を教えていただきありがとうございます。
とても助かっております。
いつも読んでいただきありがとうございます!
楽しんでいただけましたら、ブックマーク・★★★★★をよろしくお願いします。
それからもう一つ、ページの下部にあります、「ポイントを入れて作者を応援しよう」より、ポイントを入れていただけると嬉しいです。
どうぞよろしくお願いいたします。




