10 リリー・バーデン目線
わたしは、リリー・バーデン。貧乏子爵家、バーデン子爵家の次男の庶子です。スペアの次男が酔って下働きの娘に手を出してわたしが生まれました。
そんなわたしですが、侯爵家のお嬢さんにお仕えすることになりました。
と言うのも、ある子爵家の令嬢が、セントクレア侯爵家のお茶会に誘われて、招待状にお友達もどうぞとあるからと、バーデン子爵の娘、長男と本妻の間の娘ってことね。名前はなんだっけ偉そうな名前よ。マリアデレードとか、アリーナレードとかそんなのよ。それを誘うついでに、いつもそいつが悪口言ってるわたしも誘ってくれたのよ。
それはあとで考えたら意地悪だったみたい。だって、古臭いドレスを着てあの場にいるってみじめ以外のなにものでもないわ。だけど、侯爵夫人を見た時は女神様かと思ったの。
わたしのことは、マリネードの従姉妹と紹介だけして、あとは知らんぷりされたけどね。
マナーもなにも知らないので、なにもしないほうがいいなと思い下を向いてじっとしていたの。
そしたら侯爵夫人はそれが気にいったそうで、わたしはお嬢さんに仕えることになったの。
公爵家は上のお嬢さんと下のお嬢さんがいて、わたしは下のお嬢さんの係になったのよ。じゃなく、なりましたの。
奥様の侯爵夫人は下のお嬢さんをとても可愛がっていました。上のお嬢さんはわからない人で、教師や奥様がとても厳しく教えていました。下のお嬢さん、いえお嬢さんではなくお嬢様ですね。お嬢様は教える必要のない賢い方です。
やがて上のお嬢様が王太子殿下の婚約者となりましたが、全然わかってないようで、教師が増えて皆からムチで打たれていました。奥様もよくぶってらっしゃいます。
それでわたしは上ではなく下のお嬢様。ロザモンド様のほうが王太子のお嫁さんに相応しいのではないかと思うようになりました。
それで上のお嬢様と王太子殿下のいる部屋にロザモンド様を連れて行きました。そのことを注意した上のお嬢様、エリザベート様を奥様はとてもきびしく叱りつけました。やはり、わたしのやったことは正しかったようです。
そのあとは、王太子殿下がいらしてもエリザベート様には知らせないようにして、贈り物もすべてロザモンド様に渡しました。
そうして、わたしたち侍女と奥様の作戦がうまく行って、無事ロザモンド様が婚約者となり王太子妃となりました。
そして、結婚の行事の締めくくりのお茶会。これは外国からの賓客と親しく話をするのでとても重要なんだそうです。
ロザモンド様はその挨拶をどうするか悩んでましたが、エリザベート様に手伝わせてあげようと思いつきました。
わたしがそのお使いをしましたが、ごちゃごちゃうるさいエリザベート様を黙らせました。翌日わたしのほうから原稿を取りに行ってあげて、仕上げの署名をしてあげました。
その事でとても叱られました。あの侍女ども、新参者のくせに! なんだっけ、デージーとかガーベラだっけ?とにかくその辺の草の名前!
「だから、どうしてあなたがこれに自分の名前を書いたの?これって挨拶文の下書きのような物じゃない。エリザベート様はこの順番で原稿を書いてらっしゃるわよ。あなたこれみてそれくらいわからなかったの?読めないとか言わないよね」
「まさかね」ともう一人と二人揃って、意地悪な顔でわたしを責めます。
でもわたしはちゃんと聞こえていますよ。あの二人の侍女は、
「でもあの妃殿下も馬鹿じゃない?」
「それは言いすぎ・・・・でもほんとね」とか言ってましたね。
ロザモンド様はわたしのことを許してくれなくて、わたしは侯爵家に返されましたが、奥様も怒っていてわたしは追い出されました。
実家にも・・・・そもそも実家ですらない場所です。途方にくれて歩いていると、いかにも庶民の男が話しかけて来ました。
みかけに寄らず親切な男で、屋台でなにか買ってくれてどう食べようかと思っていると、こうやるんだよと串から直接お肉を口にいれました。真似して食べると美味しかったです。
わたしはいままでのことを話しながら、二本もお肉を食べました。
男は最後までわたしの話を聞いてくれて、大変だったなと同情してくれました。
「そんなら、仕事を紹介するよ。あんたみたいな育ちの人にぴったりだ」
よかった、わたしの育ちの良さに気づいてくれた人がいた。と嬉しくなりました。
それからわたしは男に連れられてある大きな建物に入りました。実家よりも大きい建物です。
そこでちゃんとお茶を出されて、仕事の話を聞きました。お客様にお仕えする仕事です。
それから紙を出してよく読んで名前を書くように言われました。正直なんて書いてあるのかわかりません。
困って紙を見ていると、
「あれ?あんた王宮で働いていたっていうのは嘘だったのかい」とあの親切な男がこわい顔で言いました。
「ほんとよ。働いていたわよ。読むのに時間がかかっただけ」と言うと名前を書きました。
「じゃ、リリーはさっそく働いてもらおう。あのドアの向こうに人がいるから教えて貰いな」とドアを指しました。
その時、なぜか背中がぞくっとしましたが、わたしは男にお礼を言うとドアを開けました。
振り返ると親切な男はなにやら袋を受け取りながら笑っていました。
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