08 ロザモンドの最初の外交 1
無事、ロザモンドの結婚式が終わった。
パレードも大成功だった。その夜、王太子はロザモンドとダンスをして、エリザベートともダンスをした。
「おまえは俺を嫌っていたよな」と聞かれて、エリザベートは
「ほとんど話したこともありませんのに」と答えると
「いつもロザモンドが先に部屋に」
「わたくしは侍女に呼ばれてすぐに向かっております。殿下こそ、わたくしが部屋にいくとロザモンドと親しげにお話なさっておりましたが」
「それは・・・・」
「婚約もしていない相手に、愛称で呼ばれて喜んでいたのは殿下でらっしゃいます」とエリザベートに言われてフレデリックは、なにも言えなかった。
フレデリックとロザモンドは夜会を早めに抜けた。
エリザベートは残り、隣国からやって来たギルバードとダンスを踊り、バルコニーで少し話をした。
「君が王太子妃になると思っていたのに」
「なりました、第二妃ですが」
「そうだな・・・・・明日、一日置いて王太子妃主催のお茶会か。この夜会より大変そうだな女性陣は」
「多分ね、まぁ外交儀礼のかたまりの会だから、決まり通りにやればいいのよ。王太子妃つきの文官がいるからなんとかなるでしょう」
「明日、庭を案内してくれ」
「いいわ。午後二時に使いを出すわ」
その夜、ドレスを脱がせて貰いながら、
「結婚式って大変ね」とエリザベートはエミリーに言った。
翌日、使いに案内されてギルバードがやって来た。庭を歩きながら
「君の母君は相変わらずなんだね」とギルバードが言うと
「問題は母ではなく祖母にもありますわ」とエリザベートは肩をすくめながら答えた。幼馴染ならでは遠慮のないしぐさだった。
「侍女も平民出身でしたし」と言い訳めいたことを言うと
「君の優秀さを狙って君の家の問題に目をつぶったんだね・・・でも、第二妃として取り込むとはずるいね」とギルバードが言うが
「いいのよ、できる範囲の事しかしないから」とエリザベートはあっさり答えた。
「そのうち、手伝いたいな」と言ったギルバードはさりげなくエリザベートの手を取った。
エリザベートはなにも言わずにギルバードを見て微笑んだ。
その夜、もう休む頃にエリザベートの部屋をノックするものがあった。
乱暴なノックで
「起きてますよね。開けて下さい」
エミリーがドアを開けるとロザモンドの侍女のリリーだった。
「早くして下さい。明日のお茶会のスピーチの原稿を書いてください」
「明日のお茶会のスピーチですって、王太子妃殿下がご自分で書くべきものですよ」
「ロザモンド様が書いて欲しいと言ってます」
「なるほど、確かにロザモンドは古代ギリー語は苦手だわね。書くのは駄目でも読むのは大丈夫よね」
「もちろんです。あなたが出来ることくらい出来ます」とリリーは答えた。
「そうね、それくらい出来て当たり前ね」とエリザベートは皮肉のつもりで言ったが、残念ながら通じる相手ではなかった。
「わかりました。書きましょう。明日取りに来てね。届けてもいいけど目立つでしょ。取りに来てね」
エリザベートは全文、古代ギリー語で書いた。
翌日取りに来たリリーに受け取りの署名をするように言った。
「確認して、スピーチの原稿よ。下に受け取りの署名を」と言うと侍女は署名した。
そしてエリザベートの手元に残して置くべき物も持って帰った。
エリザベートは自分で仕掛けたことながら、彼女の間抜けさに驚いた。
まぁ最悪、第二妃の自分が読めばいいと、思いながら会場に足を運んだ。
一番末席に用意された席に座り、ロザモンドではなく、自分の元へ次々にやって来る客に丁寧に挨拶をした。
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