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幼馴染のクラスメイトと美少女風紀委員長が俺を巡って争っているんだが。  作者: 田崎彊兵


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13/30

心境

 俺と水原姉妹は、メイドさん達に囲まれながら晩御飯を黙々と食べた。

 俺が何か水原姉妹に話しかけたりしても、どこか落ち着かない様子で中々会話にならなかった。


 晩御飯も食べ終わり、メイドさん達が後片付けをしている中、落ち着かない様子だった水原先輩がやっとこさ口を開いた。

「やっぱり瀧川君のお家って、とんでもなくお金持ちだったんですね……。 それなのに先日は不躾にも強引に上がり込んだり、今日だって送ってもらった上に泊めてもらえるなんて……。 本当に何から何までお世話になってしまって申し訳ありませんでした……。」

「もしかしてそれを気にしていたから、さっきから会話が上の空だったんですか?」

 やはり送ってもらったり、外車を汚してしまったりとか……もし自分だったらと思うと確かに気が気じゃないというか、ヒヤヒヤして生きた心地しないもんな……。


「あ、いえ……それもあるんですが、こんなに立派なダイニングルームにメイドさんが壁沿いに立っているんですよ? その中で私達は食事をしたんです。 落ち着いて食事なんて楽しめる訳ないじゃないですか! しかも何かクラシックミュージックなんか流れてるし、料理はフレンチで豪華ですし……会話も右から左に流れて行ってしまいましたよ!」

 俺は物心ついた時にはもう既にこんな感じの環境で過ごしてきたから気付かなかったけど、確かにメイドさんがびっちり張り付いて食事の様子を見ているのは一般的にはおかしい事なのかもしれない。


「水原先輩、風香ちゃん。気が付けなくてごめん……どうもそういうのに疎くて……。 もっと人に気を配れるような人間になれって父さんから言われてるのに……。」

「先輩、顔を上げてください!私達は普段味わう事が出来ない豪華な料理も堪能できましたし、先程のお風呂なんて凄かったです! ジャグジー付きの大浴場に露天風呂、サウナまで付いてるなんて……。本当に夢の様な体験が出来ました!!」

 風香ちゃんが目をキラキラさせながら先程のお風呂体験を語る。

 幸せそうで何よりだが、本当に他人に気遣ったりする事が出来ないのは事実だから、もっと気を付けなければならないな。

 風香ちゃんや水原先輩を泊めるという事は、現主である俺に責任があるという事だ。


—————♪


 この家の主として何ができるのか悩んでいると、玄関の呼び出しチャイムが鳴り響く。

 時間は夜の8時を回ったところだ。

 幸いこの家の周辺には街路灯や住宅、デパート、コンビニなどが密集しておりそれほど治安は悪くはない。

 だが、この時間に来訪客なんて余りに珍しすぎる。


「私が出ます。」

 ダイニングルームの食事の後片付けをしていた雪さんが、手に持っていた食器をテーブルに戻すと颯爽と玄関に向かう。

「いや、ここは俺が出るよ。雪さんは下がってて。」

「いえ、結構です。」

 そうだ、この家の主は俺。

 そして、この家で今この場にいる男性は俺だけ。

 俺が出なくてどうする、ここが男の見せ所だ……!

 と息巻いてみんなの一歩前に歩み出てみたのだが……。


「いえ、本当に構いませんので。第一坊ちゃまは護身術すらも出来ませんでしたよね……?」

 雪さんは俺の胸に言葉の刃を突き立ててから、冷静沈着な様子で玄関に向かう。


「はい、どちら様でしょうか。」

 我が家はこんなにも豪華な屋敷の割には、モニター付きインターホンなどではなく、受話器型なのだ。

 立派なガレージが付いている割には、セキュリティー面は紙並みに脆弱だったりする。

 

「こんばんは……夜分遅くすみません、同じクラスの『一ノ瀬桜』です。 少しだけ祐一君と話したい事がありまして……。」

 声の主はどうやら一ノ瀬だった様だ。

 しかし、一ノ瀬がこんな時間に家にやって来るなんて、今まで一度も無かったのに……。


——————って、ちょっと待て!!


 俺はバッと振り向くと、すぐ後ろには風呂上がりのパジャマ姿の美少女が二人……。

 髪の毛はもうしっかり乾いているから風呂上がりだとは分かりにくいが、近づけばボディーソープやシャンプーのいい香りが漂ってくる。


「雪さん、ちょっと待っ……!!」

「どうぞ、お上がり下さい。」

 俺が言うが早いか遅いか、雪さんは躊躇することなく一ノ瀬を家に上げていた。

 なるほど、間近で見てやっと分かった気がする……訪問客をホイホイ上げているのは雪さんだ。

 雪さんの中では『俺の名前を出す訪問者イコールお客様』だから、面識のない水原先輩もすんなりと入れたんだ。

 この辺りのセキュリティー体制を変えていかなければならんな……。

 などと下らない推理を展開している内に、一ノ瀬は俺と水原姉妹のいるロビーへと入って来てしまっていた。


「水原先輩が何で祐一君の家に……ってか、何でパジャマ姿なの!? ってか、誰、水原先輩の横にいる美少女は!?」

 水原姉妹を見つけるや否や、俺の襟首を掴み上げ、ガクガクと前後に揺らしてきた。

 その形相たるや、もし俺の横に鬼がいたら一目散に逃げ出していただろう。


—————10分後。


「成程ね……。妹さんも大変だったわね……。確かに祐一君の屋敷なら安全だとは思うけど……。 祐一君が何かしてくるといけないから、私も泊まるわ。」

「どの目線でモノ言ってんだよ……。 ってか、何で一ノ瀬まで泊まる必要があるんだよ! 何もしねぇし、部屋には雪さんも一緒に寝てくれる予定だから、お前がいなくても大丈夫だよ!」

 水原姉妹を泊めるだけでも俺の精神擦り切れそうなのに、その上悟と付き合ってる一ノ瀬を家に泊めれるわけねぇだろ……!

 ここはハッキリ、ガツンと言って追い返してやる……!!

「一ノ瀬、お前は……。」

 俺が言いかけて。

「は?まさか駄目だって言うの?」

 ギンッと鋭い眼光で睨みつけてくる一ノ瀬の形相は、正しくさっきの形相のままな訳で……。

「わかりました……。」

 俺の意思は子供が作った『砂の城』並みに脆かった。

 

「ダサいです、坊ちゃま。」

 雪さんの言葉だけが寂しくロビーに響き渡った。

 

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