益州からの使者
まぁあれだな。二人が俺にやれってことだからな。やるしかねぇんだよな。うん。
「殿。あまり気張らず」
「そうですよ。私らが後ろに控えてますから。何かあったら出ますんで、気軽に臨んでくださいな」
「おっ…おう…」
っかぁ…やるしかないか!
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「しっかしあれだねぇ孔明」
「ん?なんです士元」
「もちっと早く来るもんだと思っていたんだがな」
「そう…ですね。確かに遅い…そんな気はしますが…。何れにせよ向こうから来たので、計画に支障はないかと」
「だな。あとは、殿の人たらしにかかってるな」
「人たらし…。仁徳と言いましょう。たらしはなんというか…」
「あはは。真面目だねぇ孔明は。っと。さぁて我々も位置につこうか」
「…ええ」
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益州からの使者…か。確かあそこは、同族の劉季玉殿が治めている地だったかな。またそこを獲れとか言わねぇよな…。いや…孔明も荊州の時散々言ってきたし、士元もあれはあれで冷徹だからな…。ありえなくもない…か。
っと…俺らしくもねぇ…。難しいことを考えたせいで、少しばかり頭がいてぇや。そんなことよりもまずはご使者との面会。面会!
「おう。ご苦労さん」
「殿!お二人は中でお待ちです!」
「わかった。あっ!だいそれた事は言わなくていいぜ。俺が中に入って話をするからな」
「はっ!」
さぁて…鬼が出るか蛇が出るか…。
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「いやぁ…遠路遥々よくお越しくださった!お疲れのところお待たせして申し訳ない!ささっ顔を上げてくだされ!」
ふむ…一人は文官。もう一人は武官といったところかな。何とも言えない二人組だが…。
「お初にお目にかかります。劉皇叔。益州から参りました法孝直と申します。隣におりますのは…」
「お初にお目にかかります。劉皇叔。孟子敬と申します」
「おぉ!孝直殿に子敬殿か。こちらこそお初にお目にかかる!漢左将軍。劉玄徳と申す。以後よしなに」
「「はっ!」」
法孝直は少しばかり厳しい性格というか…裏がありそうな性格っぽいな。孟子敬は、偉丈夫だが…なんとなく…なんとなぁく嫌な感じがするんだよなぁ…。まっいいか。
「して、此度は如何様な要件がお有りかな」
「はっ!我らが主、劉牧は漢中の張魯に常々頭を痛めております」
「そこで、同族であり戦経験も豊富な劉皇叔に援軍をお頼みいたしたく、馳せ参じた次第であります」
「ほぉ…。話によれば、季玉殿は曹操に扶けを求めに行ったそうだが?」
「ええ。初めはそうでした。然しながら、劉琮への扱いを我らが主に説いたところ、同族であり、荊州が戦火に巻き込まれた際には、蔡瑁らに謀られたにも関わらず、襄陽を攻め落とすこともなく。またご自身を顧みず、劉琦殿を保護された。同族を慈しむご仁徳をお持ちであり、戦への経験も豊富であると説いたところ、皇叔のお力を賜ることを決断されました故、御前に参りました次第です」
「なるほど…」
ほうほう…。孝直はよく口が回る。俺が情報を得ていないとでも思ったのかねぇ…。いや…そんなことはないか。子敬も微動だにしていなかったからな。問われることは承知の上ってことか…。だが…こいつ等の目的は何だ…?
「して…劉皇叔…」
「子敬殿。二つ返事で返したいのは山々なのだが、何分私の一存では兵を動かさずことはできん。皆に諮らなければならないからな」
「それは…そうです…ね」
「兵を動かすにも、糧秣の手配が必要となりますしね」
「うむ。さすが孝直どの。すまぬな子敬どの。相応の準備が必要であるからして…返事は…そうよなぁ…三日後にでもお伝えできれば良いかな?」
「はっ!では三日後にまた…」
「うむ。ただ、今日のところはこちらに逗留されよ。船旅とはいえ、お疲れであろう。誰か!」
「はっ!」
「益州からのお客人。法孝直殿と孟子敬殿だ。長旅でお疲れ故、湯浴みと床の準備を」
「はっ!畏まりました。では、お二人様、ご案内いたします」
「これは…何から何まで…過分なご配慮、痛み入ります」
「なんのなんの!お二人共、ゆっくりと疲れを癒やしてくだされ」
「「ありがたく」」
ふぅ…こんなんで良かったか?二人共安堵した様子…ではないが、来たときよりかは表情に硬さがなくなっていたからな。
「殿…お疲れ様でございました」
「いやぁ…あちらさん、相当殿に入れ込んでるね」
「ったく…孔明、士元。そろそろ教えてくれや。あの二人の目的を」
「それは…勿論…」
「殿が嫌っていることを求めに来てるんじゃぁないですかね」
「ってこたぁ…つまり」
「「益州の主に」」
「っかぁ…俺は同族の治める処を攻めたりしたくはないんだがな…」
「ですが、この荊州は…」
「足場としては、ちと不安定だからね。そろそろ地固めしないとねぇ…殿?」
「はぁ…。一先ずは、援軍として軍を出す!それを明日、皆に諮る。それでいいだろ?二人共」
「畏まりました」
「殿が決めることに、異論はないですよぉ」
はぁ…また心労が…。国は欲しいが、同族の治める地は何もしたくねぇんだよなぁ…。
次回は主人公視点に戻ります!