長坂坡の戦
自分の好きな三國志。挑んでみましょう小説化。温かい目で見守っていただければ幸いです。
「はっはっ・・・奥方様!奥方様ッ!」
「いたぞっ!追えっ追ええぇっ!」
「邪魔を・・・するなああぁぁ!」
「うわあぁ!なんだなんなんだこいつ!強すぎるッ」
「私の邪魔をするなああぁ!」
「くっ・・・無駄に兵を消耗するわけには・・・。一端あの者の周りから兵を退かせよ」
「はっ!」
「───むっ!押し通るッ!」
「・・・彼奴、奥方様っていってたよな?」
「あぁ。単騎で突撃してきてその言葉・・・もしかしたら」
「だよな。しかし、相手は馬だ」
「隊長を通して、将軍に知らせようぜ!」
「そうしよう」
「奥方様っ!」
「将軍!」
「さっ!ここから早く逃げましょう!」
「しかし・・・ッ」
「!足を・・・。奥方様は私の馬にお乗りください。私は徒でお護りいたします」
「そんな・・・将具の足手まといになるわけには参りませぬ」
「いえっ。我れらが殿に無事奥方様お連れするのが「いたぞっ!」くっ・・・」
「将軍。この子をどうか・・・どうか殿のもとに」
「奥方様っ?奥方様あぁ!・・・何と言うことだ。私がついていながら・・・何と不甲斐ない・・・」
「相手は一人だっ!行けっ」
「くっ・・・。奥方様。私の身命を賭して、御子のお命をお護りいたします・・・。───命が惜しくばそこを退け!」
「何を言うか!お前は一人。こちらは多勢!囲んで打ち倒せッ!」
「「おおぉぉッ!」」
「命知らずがッ!」
「彼奴・・・鬼神の如き強さッ!敵いません!」
「くッ・・・弓隊っ射れ!」
「駄目です隊長!こう乱戦状態では、味方に当たってしまいます!」
「くぅ・・・退けっ!退けええっ!」
「お前が隊長か!覚悟ッ」
「うぐッ・・・」
「たっ隊長!───隊長がやられたッ」
「ひいぃぃ!」
「にっ逃げろおぉ」
「はぁはぁ・・・御子様。必ず殿のもとへ御身をお届けいたします。まだまだ駆ける。頼むぞっ!ハァッ!」
「・・・ここは?」
「汝は一度命を失った」
「我らは汝の命に時間があることを知った」
「しかし、元いた場所に汝を戻すことは叶わぬ」
「そこで我らは汝の命を飛ばすこととした」
「汝の二度目の命。大切にするよう」
「まっ!まって!貴方たちは!?何者・・・!」
「吾は北斗」
「吾は南斗」
「「生と死を司る者」」
「生きよ。生き抜けこの戦乱の世を」
「自由に生きて、楽しく過ごせ」
「「吾らが救ったその命。自由に使え」」
「えっえっ!?なにどういうこと!?どうすれば良いの!?」
「「健闘を祈る!」」
「おぉ!戻ってきたかっ!首尾はどうだったんだ!?兄ぃの奥方は?」
「御子こちらに・・・奥方様は・・・くッ・・・私が不甲斐ないばかりに」
「そうか・・・っといけねぇヤツらが来やがった!兄ぃのもとに早く行けっ!」
「申し訳ないっ!ハッ!」
「へっ。奴さんたちきやがったぜっ・・・死んでもここは通さねぇ・・・」
「橋の対岸数騎の兵と橋付近に単騎で何者かがおります!」
「むっ・・・」
「おうおうおうおう!ここまで来やがって!俺たちが何したってんだぁ!」
「お主ら一行が徒に民を引き連れ!我らが将軍が保護しに来たのだ!」
「なぁにが保護しに来だ!お前らが何をするかわからないから、兄ぃに民たちが着いてきたんだ!その民を襲ったのはおめぇらだろうが!えぇ!?」
「うぐっ・・・」
「ここを渡りたかったら俺を斃していけ!俺の名は──────」
「あの橋では大勢があの者を取り囲むことが困難です。これ以上は無駄な損失を生むことになるかと」
「むぅ・・・。一度兵を退かせよ。弓で射かけるのだ」
「はっ!」
「へっ・・・。今度は弓か・・・。軍師が言っていた通りだぜ・・・。おいっお前ら!橋に火を付けろ!兄ぃのもとに行くぜぇ」
「あっ!彼奴ら橋に火をかけたっ!」
「火を消すのだっ!橋が燃え落ちる前にっ!」
「むっ!無理です!火勢が強く消すのは困難です!」
「将軍!馬たちが怖がって言うことを聞きません!」
「火が消え次第橋を架け替えるのだ」
「・・・早さ重視の軽騎兵でここまで参りましたので・・・工兵隊が・・・」
「くッ・・・」
「それに、兵も疲弊しております」
「───一度退くぞ。ヤツらの目指す城の手筈は」
「既にこちらの手に落ちております」
「そうか。ならば良し一先ずは逃走経路を塞げたな。しかし、あの猪にあそこまでの知恵があったのであろうか・・・」
「新しく身を寄せた軍師によるものかと・・・」
「───手強い相手になってしまったか・・・。一先ずは退却だ」