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【ファスト小説風短編詐欺】異文化育ちの上流階級に身請けされたけど接し方がわからなくて時間ばかりが過ぎていきます。どう愛せばいいですか?【飛び領地邸の仮面夫婦・高速版・プランA】

2021/10/08 エフィム様の名前をエフィム・クラミン→エフィム・ストルイミンに変更。

 それは、この物語の、最後の一幕。


 ゆったりとした曲が流れる中、エフィム様と私は、向かい合って手をとりあい、肩を寄せる。周りには、私たちが踊り始めるのを待つように視線を送る、色とりどりの仮面を付けたパーティーの参加者たち。


 帝国民も辺境街(グロウ・ゴラッド)の民も等しく集う、そのために参加者全員が仮面を付けることになった今宵の舞踏会。誰も、こんな仮面を付けただけで身元が隠せるなんて本気で思っていない。でも、その建前と仮面舞踏会という「遊び心」は、とても合っていたのだろう。誰もが相手の身分や出自を気にせずに、交流を楽しみながら、それぞれに思惑を抱いて、この場にしかない出会いを求めて声をかけあう。


 そんな様々な人たちの視線をこの身に浴びながら。エフィム様と私は、広いホールの中央に立って、互いに見つめあう。


 仮面ごしに、仮面の奥のエフィム様を見つめる。出会ったあの時と同じ、春精(はる)をまとったエフィム様を。いつものように、私に優しく微笑みかけるエフィム様を。


……ああ、でも今は、あの時とは、今までとは違う。


 互いに手を取りあって。

 互いに肩を寄せあって。

 互いにそっと抱き寄せあって。


 エフィム様に身請けされてから二年間。

 どうしていいか、どうすればいいか、今までずっとわからなかった。――ああ、でも、今ならわかる。次に何をすれば良いか。


 仮面越しに、エフィム様の瞳を、心を、そっと見つめて。両の手を持ち上げて。抱きしめるように、エフィム様の頭の後ろに腕をまわす。


  ◇


 辺境の街グロウ・ゴラッド。組織の暴力によって治められたこの街の片隅にある娼館[デュチリ・ダチャ]に、一人のミラナという、一人の専属娼婦がいる。

 物心がつく前に家族を組織に粛清されて、その組織の下にある娼館に、命と引き換えに引き取られることになった女性。だが、そんな生い立ちに負けず、したたかに生き、やがて娼館を代表する娼婦へと成り上がった彼女はある日、一人の客を部屋に招く。


 帝国軍帝領政務部所属物資統制官エフィム・ストルイミン。帝国の名家に生まれ帝都で育った、人の上に立つことが約束された人。彼は、それまでミラナが会ったことのない、違う世界に生きる人だった。


  ◇


「いってらっしゃいませ、エフィム様」


 いつものように挨拶をした私に、エフィム様は少し苦笑いを浮かべながら、私を軽く抱き寄せる。


「ああ、行ってくるよ、ミラナ」


 いつもの優しい声。いつものように「はい」と答える私の声。そうして今日も、エフィム様と、エフィム様が契約した春精(はる)の暖かさに、ほんのひとときだけ包まれる。


 いつものように繰り返されるいつもの朝。


 帝都の中で生まれ育ったエフィムと、娼館の中で育ったミラナ。二人は、辺境の街グロウ・ゴラッドに建つエフィムの別邸で、互いに想いあいながら、変わらぬ日々を過ごす。


 私を抱きしめる前、挨拶のときにうかべた苦笑はどんな苦笑だろう。私がこれまで、一度もエフィム様と情を交わさないままでいることに対する苦笑だろうか。

 それとも、そんな私たちが、こんなことを毎朝のように繰り返していることに対する苦笑だろうか。


 娼婦と客として出会い。身請けされ。夫婦になって。それでも、私はエフィム様と、どう距離を縮めればいいか、わからないままだった。


 そんなある日、その舞踏会は催される。


 帝国軍官僚が組織に持ちかけて実現した、帝国民と辺境の民との交流会。互いに人脈と商機を求めて、交わるはずのない人たちが仮面をつけて、異世界が混じり合う。


 出会ってから二年、距離を縮めることのできなかった夫婦が、仮面をつけて舞台に上がる。


  ◇


 組織の使い走りから帝都民夫人(ミラナ)の使用人へと肩書きを変えたドミートリと、同じく彼女の使用人となるために娼館から居を移したプリラヴォーニャ。帝国軍官僚付専属秘書官として肌身離さずに仕えてきたのが一転して、辺境の街に住む上官を遠い帝都から支えることになったスヴェトラーナ。エフィムとミラナに巻き込まれて在り方を変えた人たちも巻き込んで、仮面を付けた舞踏会は開かれる。


 その一番の見せ場、エフィムがミラナと踊る場面で、ついにミラナはエフィムを捕まえる。


  ◇


 皆の視線を感じながら、エフィム様の顔を、私の顔にまで引き寄せる。周りがどう思おうが知らない。他の女性(ひと)のやり方なんて興味がない。瞳で心を捕らえて、唇で心をものにすれば、それで終わり。それが私のやり方で、今がその時。きっとこれで、エフィム様も私の物になる。二年越しの想いに胸が高まる。


 触れ合って、寄せあって。瞳の奥をのぞきこんで。瞳の奥をのぞきこまれて。あとはいつも通りに、目の前の唇を私の唇にまで引き寄せれば、目の前の男性(ひと)は私の物。そんな懐かしい心に酔いながら、彼の唇をその仮面ごと、私の唇にまで引き寄せる。


 ああ、あとほんのひと時、あとほんの少しで、私の想いは成就する。その瞬間に、ぐっと抱き寄せられて、引き寄せられて。力強く、唇ごと引き寄せられて。


――気が付けば、私も彼も、互いに抱きしめあいながら、互いに唇を求めあっていた。


  ◇


 これは、一人の元娼婦が抱いた、彼女がまだ娼婦だったころから始まる、譲らぬ想いの物語。

この作品は宣伝用のファスト小説です。ちゃんとした小説は、「飛び領地邸の仮面夫人」というタイトルで2021年9月3日(金)18:00から投稿予定です。第一話はすでに公開していますので、この「ファスト小説版」を見て興味を覚えた方は、ページ下部のリンクから「飛び領地邸の仮面夫人」に飛んでブックマークをして更新通知にチェックを入れていだだけると、そのブックマーク数を気にしている作者の私はとても幸せになれます、はい。


なお、連載中にストーリーや結末が変わってしまう(プランBに移行する)可能性も十分にありますが、それは作者にもどうすることもできない事象ですので、その点はご了承願います。


あと、この「飛び領地邸の仮面夫人・高速版」も評価を受け付けています。

・こんな「セルフ・ファスト小説」があってもいい。

・宣伝の仕方として面白い。

・いや、これはこれで読み物としてあり。

・よくわからないけど本編ともども宣伝したい。

そう思われた方は、1つでもいいので★を入れて頂けると嬉しいです。

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本作品を応援いただきありがとうございます。

よろしければ、長編小説版の「飛び領地邸の仮面夫人」もどうぞ。
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