第二話 始まり
二〇××年、四月一日。
全国にある特定のゲーム売り場では長蛇の列が出来ていた。
端末一つで予約ができ、信号機がホログラムであり、自動運転システムが一般化されたこの時代に外でのこれだけの行列は見るもの全てを驚かす出来事だっただろう。
バラエティ番組からニュースまで全ての報道陣が慌しく動いている中、行列に並ぶ老若男女は今か今かと待ちわびている。
まだ冬の季節が長引き、少しばかり肌寒い日だというのに、並ぶ者達の熱気でまるで夏のような暑さである。
今日発売されるそれほどの人気のあるゲームの名は【ReSW】。
約七年ぶりのVRMMORPGである。
有名ゲーム会社三社合同で開発し発売されるこのゲームは、全国で同時に五万人のユーザーが参加できると公言している。
殆どのユーザーはβテスターや予約が確立された消費者だが、動画投稿主、公式プロゲーマーといった者達には三社から公式にプレゼントをされており、五万人という人数は世界からすれば狭き門となっていた。
その中でも懸賞で当てた者やβテスター特典の複数人プレイにおける確定贈呈をもぎ取った者達はごく僅かだろう。
このゲーム売り場に並ぶ長蛇の列は何なのか。
それは運営の出した動画の中にあった。
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『こんばんは、MicL株式会社社長の緒方です。』
『同じく、MicL所属の【ReSW】開発チームリーダーを務めさせて頂いてます、榛葉です。』
『早速ですが、来年の春の我ら三社合同で発売するVRゲームがSNSでも話題になっているようですね。
この動画は開発チームリーダーの榛葉さんと【ReSW】に関する情報を少しだけ見せようかと思います。
このゲームの【ReSW】はリスタートワールドと読み、長らく製造中止になっていたVRMMORPGの再出発になってほしいと願い付けた名前です。
榛葉さんこのゲームの世界環境はどうなっていますか?』
『はい。
【ReSW】は七年前のVRMMORPGと同じく、剣と魔法のファンタジーを主とした世界になっています。
画面の皆さんのコメントが凄いことになっていて、通信状況が危ぶまれるので先にPVを見て頂きましょう。』
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『この世界には六柱の神がいた。
戦の神、豊穣の神、自然の神、種族の神、真実の神、法典の神。
それぞれの神はそれぞれの分野を手掛けていた。
しかし、創世暦869年、ある一柱の神によってその六柱の均衡は崩れ去ることとなる。
その影響は凄まじく、世界には後に魔物と言われる存在が生まれ、それを討伐するために魔法が生まれた。
その魔法は六柱からすれば未知なるものだった。
そこで法典の神は魔法の神として崇め奉ることで世界は新たな道を見出すことに成功した。
崩壊に繋がる原因である一柱は他の五柱に罰せられ、新たに万象の神、精霊の神を加え七柱となった。
しかし、罰せられ幽閉されたその神は、今もなお他の五柱を恨んでいるという。
もう一度世界を崩壊の危機にさらすわけにはいかない七柱の神たちは、異界から望む戦士をかき集め、その災厄に備えていると告げられた。
その戦士に呪いを授け………』
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『はい。
どうでしたでしょうか。
動画内のことはここでは公言できない……というより、ボロが出そうなので控えさせていただきますが、前情報でもあった通り、世界に召喚された戦士たちは何をするのも自由です。』
『世界を救う必要はありません。
崩壊を起こして頂いても構いません。
はたまたどこかの国で豪遊するもハーレムを作るも畑を耕すも可能です。
自分に合った自分だけの第二の人生を歩んで頂けたらな、と開発一同願っております。』
『あの、そろそろ次に……』
『ああはい。
えー、開発チームリーダーからは三点、ご紹介させていただきます。
まず一つ目は、従来のVR筐体からはログインできないということです。
つまり新たに本体を手に入れて頂く必要があります。
しかし、私たちはプレイヤーの皆様に最大限遊んでいただきたい。
そこで、ソフトを購入して頂けた第一陣の特定の方にのみ本体もプレゼントしようと思います。
これが二つ目。
第一陣の方は全国で一万人。
その内のプロゲーマーや動画配信者を除いた約九千人で、ある共通の条件下で筐体をプレゼントします。
プレゼントされる人数は二十人。
狭き門となるでしょう。
その狭き門の中に入るにはどうすればいいのか、ですが、ネット上で受けることが出来るアンケートにご協力ください。
最後の三つめはアンケートについてです。
アンケートは記述式のものが多数ですが、今後の開発や改善点として利用させていただきます。
アンケートの回答によっては、運よく筐体が当たるかもしれませんよ。』
『次に私、緒方からのメッセージは二点。』
『二点?』
『このゲームには課金要素は皆無です。
加えて、申し訳ありませんが、違法に入手もしくは転売で筐体ソフトを得た方、売った方両方が罰せられます。
ご了承ください。
あと、さっき聞いた話ですが、世界に召喚される前には、何種類かの隠し要素があるそうですよ。
見つけてみるのも面白いですよ。』
『ボロが出ましたね。』
『出たというか出しましたね。』
『ではスタッフ一同、良き人生となるよう願っています。』
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MicL株式会社の社長と【ReSW】開発チームリーダーからのこの動画は世界を動かし、【ReSW】にも使用される三社の世界最大のサーバーemu2tが一瞬ダウンした程だ。
本社にも様々な電話が殺到したが、引き出せた情報は『動画を見てくれ』だけであった。
実質ないようなものだ。
これを見て、世界中のゲーマーたちはアンケートに答え、当選の返事を待つ者、複垢で送り続ける者など様々な方法をとった。
ソフトはアンケートにて筐体と共に貰うか、ウェブ上で購入して手に入れるか、公式販売店で手に入れるかしかないのである。
初めのゲーム売り場に並ぶ長蛇の列はそういうことになる。
アンケートは望み薄だが一応やっておき、ウェブ上で予約する。
これが最も確実に手に入れる方法である。
しかし、考えることは皆同じ。
予約販売は約十五分で売り切れ、あとは店頭のみとなった。
「兄さん、アンケートやりましょう」
「アンケートぉ?何の?」
「いいからいいから」
「まあいいけど。これか?」
「はい、僕はもう終わったので、兄さんのを見ていることにします」
「なんかやだなぁ」
「ほら、その左手のアイスを置いてやってください」
冬の暖房で食うアイスが一番うめぇ




