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りまいんだー

作者: 芝田 弦也

手帳に貼り付けていた付箋が剥がれ落ちて、ひらひらと床に落ちていく。

隣の席に座る椋二君の視界に入ったのか、わざわざ屈んでまで落ちたそれを拾って私に渡してくれた。

たった一言を添えて、付箋が見えるように私の視界に入るように突き出してきたのだ。

それは何気ない所作だったけど、私は正直動揺していた。

何故かというと、その付箋に書いていた言葉は私の自殺予定を示唆するものだったから。


なんてことだ。見られてしまった。寄りにも依って、だ。

私は自分の詰めの甘さに辟易し、心の内を覗き見られた気持ち悪さの相乗効果で徐々に気分が悪くなっていった。またしてもそんな状態を目敏く見つけた椋二君は、授業中であるにも関わらず私に声をかけてくる。

体調を気遣うような台詞や、保健室に促すような言葉を、いろんな語彙を巧みに混ぜて問いてくる。

私は内心、彼の存在がそうさせているのだから、いい加減黙って欲しいと願っていたのだけど、板書をしていた教師までもが、私を見咎めてしまい保健室に行くように促してきた。

なんてことだ。私は決して体調は悪くないのに、教師の鶴の声で周囲には私は具合の悪い子と周知されてしまった。


それに更に乗っかるようにして、椋二君は私を保健室に連れて行こうと教師に声をかけているじゃないか。

私の意思、主張を完全に無いものと決めつけて、二人の間、いや、クラス中にそんな雰囲気を漂わせて、話はどんどん変な方向に進んでいく。この教室内に存在している筈の保険委員は何を黙っているのだ。私の一大事だと言うのに、むっつり黙り込んでいるとは。

仮病を使った訳じゃないのに、使ったみたいに感じて決まりの悪さを感じながら椋二君と二人とぼとぼと保健室に向かう。わざわざ連れ立って来たのなら何か喋ればいいのに、無言のまま歩を重ねていく。


保健室に着いたのに、保険の先生は席を外しているようで中には誰もいなかった。

私はもう、一人になりたかったから椋二君を追い払うように促したけど動じなかった。

なんなんだ一体と思ったら、遂に口を開いた。

私の心の病気の事もろくに知らない癖に、受け止められる様な事を言っているじゃないか。

私が椋二君の事を想っていて、叶わない事を知りもしない癖に。

ぁぁ、なんて憎い男なんだこいつは。

今この場でこの想いをぶちまけてやろうか? 

本当に受け止められるのか試してみたい気持ちが湧いてきた。

そしたらどんな顔をするのか想像したら笑えてきた。

私が含み笑いをしたら、それにつられて笑い出して小突いてくる。


ああ。もうなんて楽しいんだろう。

もうくだらないことを考えるのはやめにしよう。

こんなに楽しいのだから。まだもう少し、この時間を楽しんでも悪くはないだろう。

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