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黒く世界  作者: Hirororo
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誰かの話

          彼女は眠っている

静かに眠る彼女、貴女は私の全てだった。それは全ての生物の種においても皆等しく必要な存在


彼女がいるから、見てくれているから私は笑い、呼吸をして日々を送れている。


先に目が覚めた私は彼女の肩を揺すり、起きるよう呟く、しかし彼女はまるで反応しない。私はベッドから降りると光の漏れる窓へと近づきカーテンに手をかけるとおもいっきり開き、柔らかな太陽の光をぶつけてやる。

彼女は目を伏せながら起き上がると私を乱暴に抱き寄せると私もろとも布団に引き込み、私の髪をくしゃくしゃにしながら笑っている。

ともすれば急に飛び上がり寝室のドアを開き私を抱き抱え隣の部屋に向かう。


真っ白なシャツの後ろ姿、清潔感のある部屋の片隅で黙々と食事の準備をする男がいた。


憶えている限り、あまり笑う人ではなかったが常に爽やかな好印象を与える表情だった。


「今日は---と一緒に起きてきたのか、珍しいな」

名前を聞き取れない、しかし彼女のことを言っている。


私は直ぐに否定し先に起きたことを伝えようとするが彼女に口を塞がれ、食単の席に強引に着かされる。


「今日は私が先に起きてエンダーを起こしたんだよ~」


「本当かい?  さぁご飯は出来てるよ」

わざとらしく疑って見せると音は腕に皿を乗せ四人分の食事をテーブルに並べる。


ドンっ!と表のドアが勢いよく開かれるとそこからいっぱいの朝陽と共に幼げな少女が笑顔で入ってくる。


よく知ってる


「おはよう!おっ、もう食事が並んでおるな♪」


「ええ、ゼリエルさんの分もできてますよ」


少女は笑顔で席に着くとそれを合図にみんなが食べ始める。


そんな日々を送っていた。遠い昔のことだが彼女の言葉は一言一句憶えている。


辛いことがありうつむきながら帰ってくれば、


「下ばかり向いてちゃダメだよエンダー、自分の影ばかり見てしまう」


何故か彼女は太陽をにらみ苦々しく呟く


「ダメだね、眩しすぎるものはより影を濃くしてしまう」


毎日が楽しくいつまでもこのままがいいと口癖のように言っていたときもある。そしていつもの笑顔は少し抑え、話し出す。


「そうだね、絶対続くよ、約束する。---がエンダーと---を残して居なくなることなんてないよ、エンダー達が歳をとって人生の感想を言うまで私はいるよ」



少女と話していることもあった。


「ゼリエル、私は幸せだね、きっとこの幸せは永遠の命をもつ神には味わえるもんじゃないだろうね」


「それは自分に言い聞かせてるのか?まばたきをする間の幸せだからこそ抱きしめていたいのだろうな」


「そうだね、きっと私は別れの時がきたら涙を流す、でもあといくら生きてもまた新しい人と共に幸せを見ることはないだろうね」



しかし、私の最後の記憶は決して輝いた幸せではなかった。


圧倒的な力と敵意を持った集団たちが彼女と男と私の取り囲んでいた。

そして彼女は集団から必死で私を守っていた。

      そして最後の言葉を憶えている


「ごめんねエンダー、約束、守れなかった、、でも絶対に守ってみせるから、酷く勝手だけど、、好きなことをして好きに生きて、、そのための全てをあげるから」


目元を歪ませ必死に涙を堪えた彼女は隣に真っ黒な闇を写す。そして男と彼女は私をその闇に放り込む。


それが俺の最後の幸せの記憶


「やっぱり好きにはさせてくれないよね。巻き込んで本当にごめんね、旦那さん、」


「後悔なんてないさ、君と出会えて本当によかった。  エンダーには謝りたかったな」


「そうだね、、、ゼリエル、あの子をお願い」


「ああ、任せてくれ、この命と名にかけて誓ってみせる」


「重いな~、、既に私に巻き込まれて全て捨ててくれたでしょ、本当にありがとう」








眩しい、それに体中が痛い、


目を開くとそこには顔馴染み達が自分を覗いている。安堵している顔や、明らかに何か言いたそうな不満を抱えた表情も見える。


「迷惑も、心配もかけたみたいだな」


町の宿にてエンダーは目を覚ます。


「もう大丈夫そうだな、、私は少し休む」


重たそうに体を引き摺り別室に向かうアイマー、


「アシュベルト、バイセル、無事に合流できてよかった、そっちはどうだった?その様子だと誰も増えてはいないな」


「はぁ、目を覚まして直ぐにそれか、、仲間の件だが目星はこの町にいる、まだ声もかけていないがな」


「わかった、、アシュベルト、ゼノン、少し体を動かしたい、付き合ってくれ」


頼んではいるが返事を聞くつもりはなく、振り返らずに部屋を出る。

あとを追い二人も外に向かった。


「大丈夫なのか?」


当然だが先程まで死の淵にいたエンダーに不安を感じるアラ


「平気だ、アイマーが直したのだからな」




強い日差しの下、辺りには人は見当たらない草原まで歩くと二人に向かう。



「よし、十分だ」


情けなく仰向けに倒れたアシュベルトと未だふらつくゼノンをみやり満足気に呟く。


「問題なし」


二人を引き起こし来た道を戻る三人


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