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黒く世界  作者: Hirororo
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富の街

宿にて朝を迎える。各自街を出る支度を着々と始めている。と言ってもエンダーの闇に次々と買ったものを投げ入れているだけだった。アラはゼリエルに買わされたのか、衣服を数着増やしたようで、それも闇に放り込んでいる。そんな作業の中には何故かエンダーの姿はなかった。

朝の街、以前に比べて明らかな賑わいを見せている。人々は牢獄から解放された喜びと、再開の喜びに未だ浸っている。その街の通りを特に目的もなく歩くエンダー、前に母親を連れてくると約束した少年がいた、彼の母親もゼリエルに確認してもらった所無事彼の待つ家に帰り、再開を果たしたらしい。

心なしか嬉しそうに街を見てまわるエンダー、ふと後ろから声を掛けられ足を止める。


「エンダー、街に用事か?」

いつも通りの今すぐにでも戦える服装に剣を差しているゼノンだった。


「お前に用事だよ、これからどうすんだ?」


勿論この質問には今日の予定を訪ねる様な意味はなく、今後の生活を訪ねているという意味だ。


「、、お前達はどうするんだ?」


「質問に質問で返すなよ、、、俺達はまた神を探しに街を出る、その繰り返しだ」


「そうか、なら俺も連れていってくれないか?」


「最初からそのつもりだ、とっとと帰って支度してこい、もうじき街を出るぞ」


その答えを待っていたかの様に満面の笑みで話すエンダー


「俺もそう言うと思ってた、だから支度はできてる」


「へぇ、話が早くていいな、なら荷物取り行くぞ、家どこだ?」


少し意外に思ったが、直ぐに切り替え家へと向かおうとする。


「いや、家には行かなくていい、荷物は持っている」


「?」


確かに普段と違い背中には大きめのリュックが担がれている。しかし街を出るに辺りそれはあまりにも少なすぎる。


「おい、街を出るってのはもう戻らないんだぞ。荷物はそれだけでいいのか?」


「ああ、元々物欲もないし、荷物は金と服だけだ」


「お前がいいならいいけどよ、、、」


疑問を遺しながらも二人は宿に向かった。そして荷造りを終えた三人にゼノンが共に行動することを伝えると、皆予想はついていたのか、差ほど驚かずに了承する。そして五人は街を出発した。



「ゼノンは他の街の場所とかは分からないのか?」


街を出て直ぐにアラが訪ねる。確かにこの階層で生活していたゼノンなら他の街を知っていてもおかしくはないと、少しの期待を寄せる。


「一つなら場所は分かる、かなり遠いがな」


「遠くてもいい、そこに向かうぞ」

期待通り、街の場所を知っていたことに一同は喜びを感じる。


「具体的にはどれくらいだ?」


「40キロくらいだな」

一瞬で場が静まる。街の場所が分かり、喜んでいた手前、想像以上の距離に大きなショックを受ける。衝撃を受けていないのは機械であり体力という概念のないアラだけだった。


「、、、取り敢えず目指すか、」


暗い気持ちのままゼノンの案内に従い一行は歩き始める。

そしてエンダー達は街をその目に写した。朝に街を出たがすっかり夜になっていた。

街の正面に着き立ち止まるエンダー達、一目で分かるほどその街は異様な様子だった。

富の街、と書かれた大きな看板が正面に吊るされていた。おそらく街の名前だと言うことは理解できたがその看板には後から誰かが書いたのだろうか、大きくバツで文字を消されている。そして街の様子は富の街などという名前とは、かけ離れている。街全体が暗い印象を受ける。更に目の前で起きている出来事に治安の悪さとこの街を荒らしている張本人と思われる集団とそれを仕切る男を確認できた。


目の前で起きている出来事、それは強盗と言うには余りにも過激な行為、飲食店だろうか?、店には全体に火の手が回り所々焼け落ちており店の原型は無くなっている。更には中に倒れる人々、数々の焼死体とまだ息があり助けを求める人々、そしてそれを見て笑う集団とリーダーらしき男の姿。


「どうする?エンダー」


答えが分かっている上でニヤニヤしながらゼリエルは問いを投げる。


「どうするって、街の正面でこれを見せられてそのまま街に入る奴いるか?」


ゼリエルに言いながら歩き、集団の方に歩みを進める。彼らは皆手に何かを持っている。おそらく戦闘に使う武器だろうが、初めて見る武器に警戒しながらエンダーはリーダーらしき男に声を掛ける。


「おい、なにしてんだ?」


声をかけると急に周りがざわつき初め、集団が燃える店からエンダーに視線を移し、リーダーの男とエンダーの間に割って入る。


「誰だテメェ!なに話かけてんだ?」


第一声から敵意を剥き出しに怒鳴る集団の一人


「別に話すくらいいいだろ、あとお前に話してる訳じゃない」


その言葉を聞いた瞬間に男は襲いかってきた、ナイフを構え突進してくる。

エンダーは向かってくる男のナイフを握る手を掴むと、もう片方の腕を相手の首にぶつけ、そのまま後ろに勢いよく押し倒す。強烈な勢いで地面に後頭部をぶつけられた男はそのまま気を失った。

それを見た集団が一瞬静まるが、雄叫びの様に叫びながら一斉に向かってくる、がリーダーらしき男が無言のまま片手を上げて制すると、戸惑いながらも全員が止まる。やはりあの男がリーダーなのだろう。


「待てよ、襲いかかって来たのはそいつだぞ」


エンダーはダメ元で言い訳を始める。

しかし意外にもリーダーらしき男はそれを擁護する。


「そうだなぁ、確かにそいつが悪ぃな」


と言うと胸元から片手に収まるほどの道具を取り出す、そしてバンッという音が響くと何かが発射され先程の倒れている男の頭部から血が流れ出す。


「おい!なにしてんだお前!」


自分の部下らしき男を殺した男にエンダーは怒鳴る。


(なんだコイツ、イカれてんのか?にしてもあれがゼリエルに聞いた銃ってやつか、想像以上に速いが何を打ち出した?)


「なにしてんだって、悪い奴をお仕置きしたんだろ」


今初めて姿を確認したが男は余りにも異常な姿をしていた。恐らく中身は人間だが、赤いシャツに真っ黒のスーツ、ロングコート、何より奇妙なのは表情のない白い仮面を着けている。

(言動、容姿といいコイツ危険だな)

エンダーは男に対して警戒していると男はゼリエルを視界に入れると急に上機嫌に話し出す。


「おっと~可愛い嬢ちゃんが居るじゃねぇかぁ、ほら、お花をあげよう」


フワフワとした足取りでゼリエルに近づくとどうやったのか握った手から一本の花を出現させる。


「ほう、紳士なのだな、もらってやろう」


ゼリエルは花に手を伸ばす。

すると花を受け渡そうとしゃがみ伸ばした男の手をがっしりとイロナシが掴み止める。


「惜しかったね♪」


と言うと男の手には先程の花はなく、代わりにゼリエルの首に向けられたナイフが手に握られていた。


「よく見抜いたねぇアンタ、才能あるよ」


と男がふざけたことを言った瞬間にイロナシは顔面に全力で蹴りを入れる。


男は勢いよく吹き飛び、集団の中に突っ込んでいく。


「助かったぞイロナシ」


自分にナイフが向けられていたというのに何の同様も見せずにイロナシに礼をいうゼリエル、アラに片手で持ち上げられ、抱き抱えられる。


「気をつけてね」


流石に顔面に蹴りが効いたのか、回りに起こされゆっくりと立ち上がる男、


「いや、惜しかったな~、あと少しでその子の首に届いたのになぁ」


くるくるとナイフを手元で遊ばせる男。

ふとエンダーに視線を戻すと威圧感を放ち、全身に力を込めて立っている。


「やっぱりコイツ危険だな、ここで始末しとくか」


ゼリエルへの攻撃がそう判断させたのか、男の言動からこの街での障害になると判断したのか、エンダーらしからぬ発言にゼノンとアラが驚きを見せる。


「本気かエンダー?なら手伝うぞ」


腰の剣に手を乗せ声をかけるゼノン


「どうみてもコイツは危険だろ、俺が相手する」


腕を軽く開きゆっくりと男との距離を詰めるエンダー


「へぇ~、相手してくれるのかい」


表情は見えないが勝つ自信があるのか声色は楽し気だ。


今正に命のやり取りだというのにお互い目を合わせ一切の怯え、恐怖を見せない。

エンダーは堂々と男に向かって距離を詰めていく。

対して男はこの瞬間を楽しんでいる様子で言葉に通り手招きをしている。

エンダーがどんどん距離を詰めあとおよそ4メートル程になったとき、タイミングを見計らっていたのか男が先に行動した。

突如後ろを向き、羽織っているロングコートで全身を隠す、するとコートが一点を尖らせエンダーに向かって飛んでいく。

エンダーは何が起きても対処する絶対の自信からか、表情一つ動かさず、片手を少し上げる。そしてコートの一点に鈍い光を見つける

(コートで姿を隠し、その瞬間にナイフを投擲、コイツただのバカじゃないな)


コート越しでもエンダーにとって飛んでくるナイフを取ることなど雑作もなく、ナイフの到達地点を予測し指に力を込める。

しかし次の瞬間、コートの後ろの死角から男当人が姿を見せる。


「なにっ!」

予想外のことに驚きを見せるエンダー、反射的に半歩後ろに下がる。


「驚いたのかぁ!」

それを面白がる様に男は叫ぶ


(何が起きた!?ナイフを手で持って突進したのか?)

何が起きたのか理解しようとするエンダー、危険を感じ男から距離を取ろうと更に下がろうとすると、


「ビビって後ろに下がったのかぁぁ!」


それが狙いだったのか男が未だ半身を隠しているコートをヒラリとめくり上げる。

するとさっきエンダーが投げたと予測したナイフが何故か男より後ろから飛んでくる。

まるで何が起きているのか理解できず、咄嗟にエンダーはナイフを手の甲で弾き飛ばす、ナイフはエンダーの手に切り傷を作り遠くに落ちる。

手から少量の流血、エンダー自身も男を相手に傷を受けると思っていなかったせいか、血に濡れた手を握り男を睨む。

しかしその姿に一番驚いているのはエンダーではなく、アラ、ゼノン、イロナシだった。武神や悪魔を相手に正面からの戦いで傷一つ作らなかったエンダーが初めて負傷した事実に驚いているのだ。


エンダーは傷を受けてから男を侮った間違いに気付かされると、血が流れる手を前に、もう片方を腰本に引き、構えを取ると男を再度睨み、地面に砕く勢いで踏み出し瞬時に距離を詰める。そして無傷の手で力一杯男の胸目掛けて拳を打ち込む。が、その一撃は何故か男に届かずにコートだけを腕に絡め空を切る。

気づけば男は焼け焦げた店の屋根に腰掛けエンダーに手を振っている。


「屋敷だ、この街で一番デカイ屋敷に俺は寝てるぜ。また今度な♪」


煽る様に言葉を放ちその場から集団と共に街の奥に姿を消した。

店の炎も燃やし尽くし消えかけ、すっかり静かになり一人立ち尽くすエンダーの背中に誰も声を掛けることが出来ずにいた。客観的にエンダーを見るなら[負け]と見ることもできるだろう。傷こそ片手を少し負傷しただけだが心には敗北感を感じる。普段の強さに絶対の自信を持つエンダーの言動のせいか、精神面に不安を感じ見ている事しか出来ずにいた。またエンダーも仲間達の思いを薄々気づいているのか振り返らない。


「侮ったことが間違いだったな、いや、最後は全力だったのか?まあ、どちらにせよ負けたな」


そこにゼリエルの言葉が響く、場の雰囲気を読んだ上での発言か、単に言いたいことを言ったのか、幼い少女の嫌味顔からはどちらが本意なのか、もしくは全く違う真意が隠っているのかは読み取れない。ただ無邪気な笑顔でエンダーの顔を除き混んでいる。

その行動にイロナシ達は一瞬戸惑うが直ぐにその心配は無用だと、僅かに口角の上がったエンダーの横顔を見て感じた。


「そうだな、勝ち逃げされたみたいだ」


自分に呆れた、そう感じさせる言動で皆の方を振り返る。


頭を下げることはなく、それでも自分の失態を謝る。


「屋敷に行かないとなんでしょ、呼ばれたんだから」


いつも通り笑いながら答えるイロナシ、あの男が去り際に言い放った言葉を思いだし、まるで当然再戦するかの様に語り掛ける。


「今度は私たちも戦うぞ、文句はないだろ」


一度負けことを責めるでもなく、あえてゼリエルの様に嫌味っぽく伝えるアラ。


「そうだな、ちゃんと仲間に頼ることにするか」


「行くなら明日だな、まずは宿に行こう」


暗くなった街並みを見て空気を切り替える様に話を入れ換えるゼノン、気を改めて街を歩きだしたエンダー達



あれから何事もなく宿を見つけたエンダー達は街を見てまわっていた。街は想像以上に荒れていた。そこら中に武装した暴徒の姿が目に入り、住人は何をするにも一目を気にしているようで、暴徒達の目に留まらぬ様に生きている様に感じる。

すると、ふと疑問を思い言葉にする。


「ゼリエル、この街に神はいるのか?」


明らかに神が人間に許容する行いではない、最下層を見ていたエンダーからすればなにもがそう見えるだろうが


「居ないな、もう言ってしまうがこの街にいた神はガネーシャだ、なぜ姿が無いのかまではわからん」


ガネーシャ、その名前を聞くと街の看板に書いてあった富の街、という名前にしっくりくる。そしてエンダーはある考えに至る、まだ不確定ながらも一つの確信を得る。恐らく神を消したのはあの狂人だろう。何かしらの理由で神が居なくなり、あの男が街を支配したと考えるより何故か納得しやすい。


「神が居ないのか、、」


本来の目的がなくなったことに消失感を覚えるが、それと同時に新たに思いを固める。


「なら、この街でやることは一つになったな」


全員があの男のことを想像する。そして男が去り際に言いった、屋敷で待っている。その言葉を頭の中でも繰り返す。

そしてエンダー達はどこかを目指しながら歩いていたのか、目的の場所に着くと歩みを止める。

目の前にはやや不気味な雰囲気を感じさせる大きな屋敷が視界を埋めていた。


「なんなら今乗り込むか?」


武器を片手に出現させアラが問いかける。


「いや、明日にしよう、アイツから仕掛けてくることは多分ない、それに情けない話、アイツの能力が全く分からない」


一度敗北感を与えられたからか、いつになく慎重なエンダーにアラも武器を納める。そして宿に足を運ぶエンダー達


「一度負けといてあれなんだが、アイツの相手は俺がやる」


申し訳なさではなく決意に近い何かを感じさせるエンダー、皆は反対するはずもなく、無言で頷く。


「さて、問題はアイツの能力だ、何か分かるか?」


「瞬間移動とか高速移動かなぁ?」


エンダーの戦いを見ていたイロナシが呟く


「いや、多分それは違う、アイツがコートに隠れてから足音がしてなかった」


そしてゼノンがエンダーの否定に付け足す様に話す。


「そうだな、奴自身が瞬間移動できてもあのナイフがどうして後ろに有ったのかが説明出来ない」


「戦いながら考えるしかないか」


少しの不安を残しながらエンダー達は眠りに着いた。


朝を迎えてエンダー達は昨日と同じように屋敷の前に立っていた。朝でもやはりどこか不気味さを感じさせる。屋敷の周りや入り口付近には見張りは一人も確認できず、まるで迎え入れられているかのような気分で重く大きな玄関を開ける。

すると中は想像以上に広く玄関から上に続く階段と長い廊下に別れている。余りにも人気を感じさせない様子だが、ほぼ全ての部屋に武装した敵が居るのは簡単には予想できた。


「別れるか」


四人で固まってこの屋敷を移動するのはやめ、別れる提案をする


「さんせ~」


楽し気に声を弾ませるイロナシ


「二人ずつだな」


ゼノンの提案に添ってエンダー達はそれぞれペアで移動を始めた。


二階に行かずまず一階から捜索を始めた、アラとエンダー、そしてゼリエルはいつも通りエンダーの肩に乗っている。

二階別れた二人の足音が聞こえなくなると長い廊下にズラリと並ぶドアの一つがひとりでに開く、

直ぐに身構える二人、アラはゼリエルを抱えるエンダーをカバーするように前に出て二本の剣を構える。

ゆっくりとドアから姿を見せる相手、それは細身の女だった。女は細い一本の剣を胸の前に構えると進行方向に立ち行く手を阻む。


「レイピアか」


「エンダー、相手を頼めるか?」


「え?、俺がするのか?」


てっきり彼女の相手をアラがしている間に男の元へと進む気だったエンダーは困惑する。


「心配するな、お前が相手をしてる間に道は開けといてやる」


「成る程、そういうことなら」


この広い屋敷にはまだまだ敵が居ると考えていたアラは先に行って道を開けてくれる考えるだったと知り納得する。


そのやり取りを見ていた女は以外にもアラに興味が無いようでエンダーに剣を向ける。


「好きにするがいい、だがお前はあの方の所には行かせない」


アラが横を通るのに目もくれずにエンダーを睨む


「悪いけど直ぐに終わらせるぞ」


ゼリエルを下ろし後ろに下がらせると素手のまま構えるエンダー、真っ直ぐ相手の女を見て出方を伺う。

(レイピアか、通常の剣とは異なる刺突剣術、マンゴーシュではなし)


睨み合う最中、女が前に踏み出すと一瞬で体重移動し見事な早さと正確さの突きをくり出す。

しかしエンダーはそれ以上の速さでレイピアの刀身を避けると、女にあわせて自分も前に出て裏拳でレイピアの持ち手を狙う。

が、拳が当たる寸前で女の手を見て急停止する。


拳が当たる寸前、エンダーは急停止させた拳を引き、素早く後ろに下がり女と距離を取る。

改めて女の手元を見ると手の甲が針に覆われている、もし止めずに殴っていたならエンダーの手は今頃使い物にならなくなっていただろう。


「成る程、マンゴーシュも持ってないのが気になったが、そういうことか、確かにそれなら必要ないな」


無表情のまま女は剣を胸の前に戻す。すると自信に満ちた笑みを見せる。


「お望みならマンゴーシュも使って相手をしてやろうか?」


そう言うと女は片手をエンダーに向ける、すると手から無数の小さな針と一本の長く太い針が伸びる。


(針を自在に生み出す、詳しい能力がまだ分からないな、せめて伸びる速度、長さ、本数、それくらいは知ってないと流石に危険だな)


「前言撤回だ、少し長引くな」

それでも余裕を感じさせる笑みで再度構え直す。



エンダーと別れたアラ、ひたすら続く長い廊下を全速力で走り続けていた。横に並ぶドアには構わずに走り続けているとやがて突き当たりにドアを見つける。アラは走る勢いを止めずにドアを突き破り中に飛び込む。すると一際広い部屋にたどり着いた、そして次の瞬間、横から間隔の短い大きな音が無数に鳴り響く、焦りそちらに視線をやると数十人が手に持った機械をアラに向け何かを発射していた。


「ヤバいっ!」


咄嗟に大剣を地面に突き刺し滑り込む様に剣に身を隠して飛来物を防ぐ、飛来物は大剣に当たると大きな金属音を立ててバラバラと地面に落ちる。その一つをアラは手元に取り確認する。


(鉄の粒?これがゼリエルが昨日言ってた銃か?)


鳴りやまない攻撃の音にアラは頭を悩ませる。


(ほとんど見えない速度だな、流石にあの速度で鉄をぶつけられたら不味いな)


凄まじい数の弾丸が撃ち続けられる中、大剣を盾に腕を組みのんびりと解決策を考えるアラ、そして何か思い付いたのか、アトリーズの時より更に大きなハンマーを出現させると持ち手の部分に付いた紐を持ち、勢いよく振り回す。


「そら、砕けろっ!」


体より遥かに大きなハンマーをブンブンと振り回し思い切り地面に叩き付ける。すると部屋の床全体が大きくひび割れ、所々隆起、陥没し銃を構えていた暴徒達はバランスを崩し銃声が止む、その隙にすかさず身を隠していた大剣から飛び出し距離を詰める。一度高くジャンプすると上空から集団の中心に降りると同時にハンマーを再度叩き付ける。今度はより近くで床が変形し集団のほとんどが衝撃で倒れる、続けて双剣に切り替え、踊るように次々と切り伏せていくアラ、

やっと起き上がった暴徒は背後からアラに向けて銃を放つ、しかし音の方に反射的に振り返ったアラは剣を横にし、面積の広い側面で体を隠すように構えると、弾丸は剣に防がれる。それを確認するとアラは距離のある男に向かって剣を二本投げつける。そして槍を手に出すと体を這わせる様に振り回しアラを取り囲んでいた残りの数人を片付ける。


「ふうっ、結構多かったな」


自分の倒した暴徒達の倒れる姿を見回し息を着く、使い捨ての様にそこら中に投げっぱなしの武器が光の粒になりアラの体に戻っていく。残った大剣に近付き手を触れる。


「だいぶ傷付いたな、どれくらいで直るかな?」


銃弾を受け続けた結果、大剣には無数の弾痕がついていた。最後に大剣を元に戻すと部屋の周りに目を通すが出口がないことに気づくき、ため息をつきながらもと来たドアに戻ろうとする。

すると何処からか機械音が聞こえ、こちらに近づいて来ている、不思議に思い辺りを見回すがどうやら壁の向こうから来ているようだ、そして最初は小さな音だったが、近づくに連れて思いの外大きな何かだと分かる。


「こっちに向かってきてるってことは敵だな、しかしいったいどーーー」


一人考えていると途轍もない轟音と共に壁を突き破り大きな機械が部屋に乗り込んできた。そして部屋に入ると同時にアラを見つけると大きな砲塔の様な物を向ける。


(あれも銃か!?だとしたらでかすぎるぞ!)


危険を感じた矢先、耳を突く轟音を立て砲塔から鉄の塊が発射された。

事前に警戒してたお陰で自分への着弾は避けたが近くの地面に突き刺さると弾丸は赤く赤熱しだし大爆発を起こした。その爆風に部屋は崩れ、アラは吹き飛ばされると、壁を突き破り中庭の様な場所に飛ばされ倒れる。


アラの元で起きた爆発は屋敷全体を大きく揺らしていた。


突如の轟音に驚いたのもつかの間、屋敷全体が揺れたのを感じ、揺れに耐えられず体を地面に落とす。四肢の至るところに刺された様な細く深い傷が見える、そしてそれを見下ろす様に無傷で立っているのはエンダーだった。


「くっっ、まだだ、まだ私は戦えるぞ!」


あちこちから血を流し、息も切れ、立ち上がることすら苦し気に女は叫ぶ。

その視線の先にはつまらなそうにレイピアを振り回しているエンダー、大きくため息をつくと女に向かって呆れながら話す。


「もう無理だろ、それにお前、レイピアの扱いが対して上手くないのは鍛えてないからだよな?」


諭す様に話しかけていたが徐々に口調が苛立たしげになっていく


「その能力に満身してレイピアを大して使ってないだろ、戦い方を見れば直ぐに分かる、背筋を伸ばし胸の前に構えるまではいいが切先が上を向いてる、だから突きのタイミングが俺よりワンテンポ遅れる、それにお前は突き以外してこないし、やたら俺の攻撃を剣で絡めようとするが、お前のそれはフルーレじゃない、切りつけることも出来るし、一発で命を奪うことも簡単だ」


捲し立てる様に言い切るとエンダーは短くため息をついて手に持ったレイピアを女に向ける。


「レイピアって難しいんだよ、俺は武器の中でも一番だと思ってる、でもこの世界で誰よりも上手く使えるけどな

[戦った]のは初めてだろ、その綺麗な手は抵抗出来ない相手じゃないと話にならないな、覚えて置けよ

傷のない戦士は三流だ、傷が治ったら一流だ」


自信に溢れ、傲慢とも取れる態度でいい放つと女はいきり立ち全身に針を生やすと血まみれの体で突っ込んでくる。それをエンダーは正面から腹部に軽く突きを入れると、そのまま怯んだ女に背を向け腕をつかみ見事に一本背負いを決める。


「その能力も使い方が悪い、それ体の背面しか針が出せないだろ、ハリネズミか何かの変化能力か?」


エンダーの言う通り投げられた女は体の背中や手の甲などの背面しか針が生えていない。にもかかわらず焦りに駆られたせいか正面からエンダーに向かってしまっていた。


「俺はあの男に用事があるからな、先を通る」


倒れる女に言葉を残し先に進もうとすると、満身創痍の体を引きづる様に体を起こした女がエンダーに叫ぶ。


「あの方はこの街を救って下さった!何も知らないお前など合わせる訳に行かない、この命有る限り止めさせてもらう!」


今にも気を失いそうな傷で何故そうまでするのかエンダーは疑問だった、少なくともあの男にこの女が言うような印象は持てない、故にガネーシャとあの男、以前の街について聞く必要があるのはわかっていた、だがエンダーは聞こうとはせずに女を止める。


「悪いけどそうは思えない、[黒・身縛]命を張るなら相手を選び直せ」


エンダーの闇が地面に触れ、女の足下の地面が変形し、叫ぶ女を正方形の箱に閉じ込める。そしてアラを追うように長い廊下をまた歩いていく。


「行くぞゼリエル、アラが道を開けてくれてるらしいからな」


歩くエンダーの肩にゼリエルが飛び乗る。


「あの女はどうするのだ?あいつの記憶を覗いたが暴徒と共に大勢の命を奪っていたぞ」


「だとしても俺が罰を与えるのは違うだろ、しばらくあのままにする」


「あの箱に閉じ込めておくのか、、、そうだ!アイアンメイデンって知ってるか!?」


女の閉じ込められた箱を見てなにやら閃いたのかはしゃぐゼリエル


「ああ、昔お前におしえられてトラウマになったな」


ゼリエルの頭をクシャクシャに撫でると、落ちない様に押さえ、廊下を走ってアラを追いかけるエンダーとゼリエル



「さて、ゼノン!僕はイロナシ、ヨロシクね」


同じ時間、入り口で別れたゼノンとイロナシは階段を上り二階の廊下を歩いていた。二階の廊下を歩いていくと直ぐに大きな扉があり立ち止まる。


「一本道だったな、さて、中にどれくらい待ち構えているかだな」


警戒し腰の剣に手をかけ、イロナシに視線を合わせようと目をやると、チカチカとイロナシの手元が光り見ていられない程の眩しさを放つ


「どれだけいても関係ない♪[熱量操作、光学集焦]」


ゼノンの警戒を気にも止めずにドアを吹き飛ばし、部屋の中にレーザーを打ち込み瓦礫と砂埃を巻き上げ爆発を起こす。


「行くよ!」


「強引なんだな!」


ゼノンは強引なイロナシの方法に笑みを浮かべながら剣を抜き、二人は同時に部屋に突入した。





砂埃が舞い上がり視界を塞がれ慌てふためく暴徒達、その中に飛び込んだゼノンとイロナシ

ゼノンは飛び込むと抜刀と同時に左右の二人を切り払うと剣を逆手に持ったまま人と人の間を切りつけながら駆け抜ける。ゼノン自身も砂埃で視界を塞がれているが視認できる程の近距離まで接近し、相手の反応よりも早く切りつけている。

何の抵抗も出来ずに次々と暴徒達は切られていくが、彼らにはどうすることも出来ないはずだった。と言うのも、ゼノンの今までは戦う事と生きることがほぼ同意義だったのだから大抵の相手では歯が立たないのは当然だった。相手がエンダーか、余程の剣の達人でなければ鍛え上げられたゼノンの腕力で振られる剣に対抗することなど不可能と言える。

立ち止まることなく走り、剣を振り続けるゼノン、するとようやくゼノンの剣が止められる。感覚からして何かに受け止められたのが剣を握る手に伝わる。しかしゼノンは何ら動揺することなくすかさず二太刀目を切り込むが、それも止められてしまう。


(何だ?剣を掴んでいるのか?)

砂埃が舞うなかゼノンがやや驚きを感じる。それは剣を止められたことに関してではなく、何故か止まった剣が動かないことだった。

やがて砂埃が地面に落ち、視界がハッキリとしだすと、目の前に男が立っている、そして信じがたいが予想通り、男の両手にはゼノンの持つ剣がしっかりと握り占められている。

その光景に戸惑いつつもゆっくりと男の顔に視線を当てる。


「驚いたな、この一瞬でこれだけの数を切ったのか」


男もゼノンに目をやると口を開き、低く威圧的な声で率直な感想を漏らす。一応は自分達の仲間のはずだった暴徒達の倒れる姿を見た感想としてはあまりに薄情な言葉


「うわっ、デカイな」


部屋に入ると同時に上部から暴徒をレーザーで攻撃していたイロナシが向かい合う二人に気付く、ゼノンはかなり体格がよく、加えて190センチ程の身長があるが、そのゼノンと並んでいる男はさらに頭一つ分背が高く、肩幅や腕回りも明らかにゼノンより大きい。


「素手で俺と戦う気か?」


自分よりもかなり大きな体をしているが、単純に考えて剣を持っている自分に目の前の男が、素手で戦う気なのか問いかける。


「そうだ、、お互い素手で殴り合おうぜ!」


そんな誘いに乗る意味も理解出来ず、呆れたゼノンは刀身を握っている男の手を切り落とそうと剣を引こうとした瞬間、

男の余りにも太い腕に力が込められ、過剰な筋肉、太い血管が浮き上がり、驚くべきことに刀身を握力でへし折った。


「、、、いいだろう、殴り合ってやる」


驚きの余り言葉が出てこなかったが覚悟を決めたように笑い、折れた剣を放り投げ、シャツの袖を丁寧に捲ると両手を胸の前に構える。


「いいねぇ、出来るだけ粘ってくれよ」


自信に満ち溢れ、気味の悪い笑みを浮かべる男


いざ殴り合おうとした二人だったが、そこに残っていた暴徒達が一斉に銃を発射する。

不意を突かれ僅かに反応が遅れ、焦り背中の剣に手を伸ばすゼノン、

(こいつらっ!、、全て防ぐのは無理だな、頭だけは防ぐか)

多少の被弾を覚悟し剣を手に取るゼノン、ところが突如氷の壁が何枚も出現しゼノンと男を取り囲む様に建ち並ぶと全ての銃弾を受け止める。


「こいつらは任せて♪好きなだけ殴り合いな」


「助かる、凄い能力だな、氷と光を操れるのか」


「まあね、他にも色々出来るけどね」


ゼノンは抜きかけた剣を元に戻し、背中から下ろし地面に投げると男に向き直る。


「殴り合いで勝てる自信がなかったから見方に撃たせたのか?」


「銃弾で死ねなくて残念だったな」


ヘラヘラと笑う男を睨み、腕を胸の前に構えるゼノン、男はそれを見てようやく笑みを消すと大きく腕を振りかぶり上からゼノン目掛けて振り下ろす。


(早いな、だが大振りし過ぎだ)


見た目以上の腕力を見せつける様に大きな拳が高速で振り下ろされるが、振りかぶった時点で粗方何処を狙っているのか予想でき、決して慌てず、最小限の動きでゼノンは避ける。

そして空振りしたところを限界まで距離を詰め、小さく腕を引くと体を捻り体重を乗せた一撃を男の腹部に叩き込む。


力強く男の腹部に拳を打ち込むゼノン、ところが男の腹部に当てた拳は頑強な腹筋に止められる。


「冗談だろ、、、」


「どうした?追撃はなしか?」


唖然としているゼノンに馬鹿にする様に煽る男、そしてもう片方の腕を大きく後ろに引くと全力で横からゼノンを狙う。


ゼノンは直ぐに腕を曲げると肩から腕の全体を盾にするように体の横に付け、もう一方の腕で支える。相手の体格だけで十分脅威を理解し、なるべく広い面積で受け止める完璧な構えをとる。

全力を込めた拳はガードするゼノンに直撃する。

拳がゼノンの腕に当たった瞬間、メキメキと鈍い音が聞こえ、腕力だけでゼノンの体を吹き飛ばす。

なんとか転倒を防ぎ踏みとどまるゼノン、しかし男の拳を防いだ腕はだらりと脱力し口から血を流す。


「ゲホッゴホッ、、」


(視界がぼやける、腕は折れてないな、肋骨は、、何本か折れたな)


「おいおい、どうしたんだよ?そんなんで俺と殴り合えるのか?」


立っているだけで既に息を切らしているゼノンに男はニヤニヤしながら話しかける。


「ハァ、ハァ、問題ない、続きといこうか」


あからさまな強がりを見せ、腕を構え直す。しかし構えた腕は紫色に変色し小刻みに震えている。今の一撃で大きく損傷した腕は構えるだけで激痛を伴っている。


(全部避ける、防ぐのはアウト)

今の一撃で男の強さを見に染みて理解し、頭の中で反芻し言い聞かせる。


不意にゼノンが前に踏み出す、そのまま男が腕を構えるより早く距離を詰めると男の脇腹に一発、そして力強く足を踏み込み胴体に全力を込めた一撃を入れる。自分の全力の攻撃に男の反応を伺う。


「うっ!」


すると先程とは違い小さく呻きを上げるが、ダメージにはとてもなっていない様に感じる。

男は気分が良さそうに笑うと振り払う様に巨腕を振る。


(頭に食らえば確実に落ちるな)

瞬時に思考を巡らせ体を低く下げる、風圧が頭を撫でる。そして空いた脇腹に素早く二発攻撃を入れる。


「いいねぇ、殴り合い出来るじゃなぇか」


腹部に数発の攻撃を受けるが余裕の様子で再び腕を引くと全力で腕を振り下ろす。

腕を引く素振りを見た瞬時にゼノンは後ろに下がり、男の一撃をかわすと、空振りし腕は地面を砕き沈み混む。


「おい、大振りし過ぎなんだよ」


地面に突き刺さる腕を引き抜こうとする男に言うと、しゃがみこむ男の頭を上から押さえつけ、下から顎目掛けて腕を打ち上げる。

流石の男も大きな呻きを上げると、ゼノンの攻撃の勢いで体を僅かに跳ねあがらせ、膝を突き倒れる。


「悪いが加減はしないぞ」


全力の一撃を顎に受けたにも関わらず気を失うこともなく、倒れた男が立ち上がろうと膝立ちになるが、ゼノンは立ち上がるのを阻止しようと顔面に攻撃を浴びせ続ける。


「ぐっ!やるじゃねぇか」


(コイツこの状態で余裕があるのか!?)


顔を腕で庇う男のに顔面に攻撃を続けているが、驚くことに依然として話す余裕すら見せる。

すると殴られている状況から、男は防ぐことを止めゼノンの首に掴み掛かる。


「!、おまえ!」


一方的に攻撃をしていた筈が腕と首を捕まれるゼノン


「ハッハァ、掴んだぜぇ」


「くそッ、離せ!」


捕まれた瞬間から全身が危険を訴え、恐怖を感じる。残った腕で必死に男の顔面や、掴む腕を攻撃し抵抗するが男はそれを楽しむ様にゆっくりと立ち上がり完全にゼノンを地面から離し持ち上げる。

そしてゼノンの体を軽々振り回し、体を後ろに反らし、抵抗するゼノンを後ろに


(流石に不味いぞ!)


男は足を大きく踏み出し反らした体を今度は前に屈め、ゼノンを地面に全力投球で叩きつける。

途轍もない音を立て、ゼノンの体で地面は叩き割られ、声にならない声を上げたかと思うとゼノンは目を閉じる。


「やり過ぎたか?へへっ」


動かなくなったゼノンから視線を外し、殴られ続け血に濡れた顔を今度は氷の壁が越しにイロナシに笑顔を向ける。


「今度はお前の番だぜ、今この氷をぶち破ってやるからよ」


「君じゃ僕の相手は荷が重いんじゃない?」


同じく笑顔を返すイロナシ


(まあ、そんなこと言ったってゼノンに素手で勝った相手に僕が素手で勝てるわけないけどね)


「言うじゃねぇか、楽しみだなぁ」


イロナシに興味を惹かれた男は氷を壊そうと拳を固く握り振りかぶる。そして全力で腕を振る。が、振りかぶった腕を後ろから掴まれ、動きを止める。何が起きたか理解出来ず、後ろを確認すると、そこには全身を痛めたゼノンが男の手首を握り締めていた。


「まだ俺は戦えるぞ」


ゼノンは男の手首を力強く引き寄せ、男の腕を伸ばす、そして伸びきった腕の肘を拳で突き上げる。

ボキッと鈍い音が響くと男の腕は逆方向に曲がり、関節が壊れ、だらりと腕を下ろす。


「ぐあっ!てめぇ!」


反射的にゼノンを遠ざけようと腕を横に振り回す、しかしゼノンは難なく後ろに下がりかわすとおぼつかない足で立ち、腕を構え直す。


「来い、それとも限界か?」


かなりのダメージを受けたのが目に見えてわかるゼノン、体の痛みからか殴った側のゼノンの方が遥かに息を切らしている。


「ハハッ!ふらつきながら何言ってやがる?」


挑発的なゼノンに男は深く踏み込むと再び全力で腕を横に振り回しゼノンの胴体を狙う。

それをゼノンは体勢を下げかわすと即座に男の腹部に左右から二発拳を打ち込む。

それでも男は怯まず、低い体勢のゼノンに蹴りを入れる。ゼノンに合わせて体勢を下げ、そこから真っ直ぐ足を伸ばす。男の乱雑で力任せな戦い方からは想像出来ないような美しさすら感じる綺麗な型通りの一撃に意表を突かれ、回避が間に合わず、ゼノンは前で腕を交差させ力を込め蹴りを堅め受ける。

男の体重を乗せた蹴りを受け止めるとゼノンはそのまま勢いで後ろに地面を滑りながらも堪える。


「ハァッ、重過ぎるな、、」


ゲホゲホと血を吐きながら咳き込むゼノン、覚悟はしていたがそれでも予想を越える威力の蹴りに両腕を振るわせ、歯を噛み締める。


「腕を一本持ってかれたんじゃぁ俺も本気で相手するぜ」


男はそう言うと片足を大きく前に出し、体勢を低くし腕を顔の前に構える。


「武術経験があるとは思わなかったな」


今までの男の戦い方が力任せだったが、目の前にいる男は片腕が折れてはいるがしっかりと構えをとり、ゼノンに笑い顔を向けている。


「お前の名前は聞いたら答えるか?」


「あぁ?今さらなんだよ、ドグだ、テラー・ドグ」


言い終わると同時に男は勢い良く前に飛び出す。

ゼノンは腕を引き迫る男の顔に狙いを付ける。そして間合いに入った瞬間に即座に拳を打ち込む。


「言ったろ、本気で行くって」


前傾姿勢で突っ込んで来ていたが急ブレーキをかけ、腕を曲げるとゼノンの攻撃を腕で受けると体の外側に弾く、更にそのまま腕をゼノンの首に回し力強く自分に引き寄せ、ゼノンの顔に強烈な頭突きを決める。

堪らずゼノンは呻きを上げ、額から血を流す。痛みに耐えながらも目を開くと間髪入れず男の追撃が迫る。まだ痺れの残る腕を再び交差させ頭上に迫る拳を受け止める。押し退けられる様に拳の勢いに上半身を反らす。しかし更なる追撃を許さないため、自分から前に出ると超近距離から男の顎を蹴り上げる。

片腕の状態の男は蹴りを防げず、顎に蹴りを受けると後ろに後退り攻撃が止まる。

すかさずゼノンは腕の痛みを堪え、両手を地面に突きそれを軸に体を横に振り回し体重を預けた足払いを男の膝目掛けて当てる。膝関節に横から力を加えるが、男の筋肉がミチミチと音を立てその痛みに顔を歪ませながらも骨折、転倒を防ぐ。

男は下を見下ろし、真っ直ぐに拳を打ち込む。

体重を預けた足払いを堪えられゼノンは地面に横たわる形になっていたため立ち上がるのが間に合わず、体を上に向けると両手を前に出し男の拳を受け止める。しかしあまりの威力に手を伝い加えられた力で背中の接している地面には大きなヒビが入りゼノンの体が沈む。


「グハッ!」


(ヤバい、意識が飛びそうだ、やっぱりコイツの攻撃は受けたら駄目だな)


男は片腕の骨が砕けているため追撃がワンテンポ遅れる、無理に追撃を加えようとせず一度下がり距離を取ろうと半歩後ろに下がると、

その隙を見逃さず、全身の痛みを必死に堪え、ゼノンは直ぐに立ち上がり深く腰を落とし地面に着くほど腕を下げると一気に全身を伸ばす様に拳を打ち上げる。

予想外の反撃に反応できず男の胴体にゼノンの拳がめり込む、全身全霊の一撃は男の分厚い筋肉を貫き、内蔵を押し潰す。しかしそれでも男は倒れずに腹部にめり込むゼノンの腕を掴む。


「ゴハッ、はぁはぁ、いい一撃だ、効いたぜ」


荒い息づかいに血を吐きながらゼノンの手首を握ると、強烈な握力で手首を締める。男の中指と親指がゼノンの手首を締める、あまりの握力にミキミキと骨が音を立て始めるとゼノンは男の手を離させようと握り返すがまるでびくともしない。

そして手首が折れる、そう頭が認識した瞬間、男の膝を力一杯蹴るゼノン。

男の膝は逆方向に曲がりバランスを崩す、同時にゼノンの手首は青紫色になり動かなくなる。

手首を押さえるゼノンと足が折れ、たち膝になる男、二人はお互い呻き声を上げ離れる。が、たち膝の男の視線には痛みを感じないのか、すでにゼノンが仁王立ちをしていた。


「いい加減倒れてくれよ、、」


ゼノンは自分の腰ほどの高さにある男の顔を睨むと足を開き、体を斜めにし腕を引く。

地面にヒビが入る程強く踏み込み、体のひねりに合わせて渾身の一撃をを男の顔に叩き込む。

真っ正直から顔面に攻撃を受けた男はそのままゆっくりと後ろに倒れ混んだ。その数秒後に全身を脱力しゼノンが座り込む。そしてイロナシに向け真っ直ぐ腕を突き上げ勝利を合図する。




大きな広間、そして広間の中心には分厚い氷の壁で作られた部屋、中には血を流し倒れる大男と一回り小さくこれまた筋肉質な男が座っている。


「敗けだよ、お前の方が強ぇ、、」


倒れた男が小さく呟く、満身創痍で勝利を納めたゼノンは驚きのあまり痛む体で必死に下がる。それを見て男は乾いた笑い声を上げる。


「落ち着けよ、俺の敗けだって言ってんだろ、もう戦えそうにねぇよ」


「、、、そうか、でも俺はまだ戦わなきゃ駄目そうだからな」


と言ってゼノンは氷の壁越しでイロナシに襲われている暴徒達を見ると剣を手元に寄せ体を起こそうとするが、全身が震えとても立てそうではない。


「なんでお前はそこまでする?戦う理由があんのか?」


満身創痍で立ち上がろうとするゼノンが信じられず、つい問いかける。


「別に俺には理由はない、正直お前達の事を何も知らないからな、でも最初に店を襲ってるのを見てエンダーが悪と判断し、町のために排除すると決めたんだ。だから俺は手伝う」


「なんだそれ、俺ら、っていうか、あの方が悪か、、まあガネーシャを知らなきゃそうなるか」


「理由がありそうだな、でもそれはエンダーに言い聞かせてくれ、俺はエンダーのやることに全力で手伝うだけだ」


「、、、、信頼してんだな、そのエンダーを、、」


「、、世界で最も信頼に当たる人物だ」



同じ場所にてゼノンの決着を待っていたイロナシ、球体状の氷の中に自分を包み身を守りながら退屈そうにしている。

周囲の大勢の暴徒は氷の中にいるイロナシに攻撃が届かずにいた、その暴徒達を中に浮く複数の氷の槍が追い回し次々と切りつけていく。その槍はどうやら退屈そうに指を振るイロナシの指の動きに連動している。


「よしっ、ゼノンの方が終わったね、こっちも終わらせようか」


まるでいつでも全滅させることができた様な口調で言い切るイロナシに攻撃が届かず戦意喪失した暴徒達は恐怖し一斉に出口へ逃げだす。


氷刃降雨アイスシューヴァ


大きく手を広げてイロナシが叫ぶと、今暴徒達を追い回している氷の槍が数十本背後に並ぶ、そして片手をゆっくり下ろすと全ての槍が逃げる暴徒達の胴体のど真中に一本も外れることなく突き刺さり、怯えた叫びや、合図をする怒鳴り声、逃げ惑う悲鳴は一瞬にして途絶え広間が静まり返った。


氷の壁の中でその様子を見ていたゼノンはあまりの光景に言葉を失い息を飲む。


「ハハッ、こりゃすげぇ、、全滅か、、」


横たわる大男は乾いた声で言葉を発する。仲間達が一瞬で全滅した事実に何を思っているのかゼノンにも簡単に想像出来る。今までの堂々とした大男の振る舞いではなく声にはどこか悔しさを感じられる気がする。


「大丈夫かいゼノン?随分辛そうだけど」


「、、あぁ、、問題ない」


今の圧倒的な蹂躙を見せられ仲間と言えど多少の恐怖を感じてしまう、一瞬で簡単に数十人を葬る、イロナシはその行為になんら罪悪感を抱かないのだろうか。と、一瞬考えるが自分もその力があればその行動にでるだろうと感じ、直ぐにイロナシへの思いは消えた。


「そのでっかいやつはどうするの」


暴徒を全滅させ上から降りてきたイロナシは倒れている男に視線をやり、ゼノンに問いかける。どうするの、その言葉の意味は生死についてだろう。


「殺す必要はないと思う、先に進もう」


「君がいいなら構わないよ」


と言い、まわりの氷の槍や壁を全て消すとゼノンに肩を貸そうと近付いた、その時、

真下から何かが崩れる様な大きな音が聞こえ、同時に激しい揺れが起こる。そしてビキビキと音を立て床がひび割れていく、どうやらこの部屋の下の支えが壊れたらしく、立っていられない程の揺れが続いている。そしてそして聞き慣れない大きな音が響くと下の部屋で大きな爆発が起こり、それを切っ掛けに部屋の床が次々と裂け下に崩れ落ちていく。


「ちょっと!何が起きてんのさ!?」


「これ、下に落ちるぞ!」


慌てる二人は必死にバランスをとる、イロナシは咄嗟に能力を使い羽を生やし崩れる地面から離れるとゼノンの腕を掴み更に上に上昇する。そして倒れていた大男を分厚い氷で包み崩落から保護する。

そしてほぼ全ての床が下の階に落ち瓦礫の山を作る、ようやく何が起きたのかが確認できた。下の階には既に制圧された様子で多くの暴徒が倒れる姿があった、そしてその後、おそらく揺れの原因であろう、大きく重量感のある機械仕掛けの何かが隣の部屋から壁を突き破り侵入してきたようだ。部屋の壁は機械の侵入してきた一面と更に反対側の一面が消滅しており、そこからは中庭のような広い外の空間に繋がっている。床の跡からも砲塔の様な部位から何かしらの爆発物を打ち出したのが理解できる。

これからあの機械を壊さなければならないことは分かるが、一つの問題が残る、倒れる敵の姿があるということは仲間の誰かが戦ったということだ、その誰かが今下に確認出来ない。つまりあの機械の途轍もない攻撃をくらい何処かに倒れているのではないか?


「アラかエンダーは確認できる?」


ゼノンを掴み宙に浮くイロナシはいつになく真剣な表情で問いかける。


「この部屋にはいない、いるなら中庭の方に飛ばされたんじゃないか?」


(さてと、急いで助けないとだね、ゼノンは戦えそうにないし、あの機械に気づかれる前に一発で壊すか)


ゆっくりとした動きで砲塔の付いた上部を庭へと向け、ガタガタと音を立てながら瓦礫の上を進んでいく機械。


「[熱量操作、光学集焦]テラ・レーザー」


突如真上から圧縮された光が機械目掛けて照射されると見ていられない程の光量を放ち火花を散らして乱反射する。


「ん~、どれくらいで穴開けられるかな?」


光を受け続いている機械はいまだに音を立て動いているが、光を浴びているため何をしているのかはイロナシからは視認出来ない。と、その時、ドンっという大きな音が響き、光を弾きながら何かがイロナシに向かって高速で打ち出される。

謎の飛来物はイロナシに直撃し爆煙を上げイロナシの姿を隠す。


すると少し離れた所で物音が聞こえ、山になった瓦礫を弾き飛ばし砂埃を被ったイロナシが立ち上がる。


「いってぇ、なんだあれ?何を飛ばしたんだ?」


辛そうに起き上がるイロナシ、周囲からは砕けた無数の桑折の破片が散らばり溶け始めている。寸前で防御し防いだものの爆風で吹き飛ばされたようだ。


(あっぶな、氷を張るの遅れてたらヤバかったな、にしても凄い威力だな)



巨大な機械と正面から戦い始めたイロナシ、その間ゼノンはあの機械に攻撃された仲間を探し密かに散策していた。中庭をこそこそと隠れながら歩き回っていると微かに聞き覚えのある声が耳に届く、直ぐに聞こえた方に目を向けるとそこには一つ一つがかなり大きな瓦礫が山になっており、微妙に上下に揺れている様に見える。


「アラさんか?」


聞こえた声から女性なのはわかったが彼女がこの瓦礫の下にいるとしたら非常に危険だと直ぐに思い、満身創痍の体を鞭打って瓦礫に掴みかかる、体中が痛みに悲鳴を上げるなか必死に力を入れやっと一片の瓦礫をどかし終える。


(クソ!これをどかすのは無理だぞ、戦闘中のイロナシに頼むわけにもいかないがこのまま瓦礫の下に埋まっていたらアラさん、が危険だ)


一刻を争う状況だがどうすることも出来ず焦るゼノン、それでも瓦礫一つ一つを動かそうと手を掛けると、


「グァァァ!重い!」


驚くことにゼノンが一つ動かすだけで精一杯だった瓦礫の山の中からアラは自力で全てを持ち上げ、砂埃にまみれ出てきた。

信じられない出来事を目の当たりにし、言葉を失うゼノン


「ゼノンか、助かった」


「いや、俺はまだ何も、、、」


驚きに固まっているゼノンに軽く礼を言うとあれほどの重さの瓦礫の下敷きになっていたにも関わらず、直ぐに身の丈程の剣を持って機械の方へ走っていく。


一方イロナシはゼノンが仲間を探しにいくのを確認すると気を引く意味も含み、大きく派手な攻撃を仕掛ける。


氷墜星アイスメテオラ


機械の上に直径4メートル程の透き通る氷の塊が形成されると、糸が切れた様に落下し機械の上部に直撃する。衝突した瞬間、氷は細かくバラバラに砕け、キラキラと光を反射する。

しかし機械に与えたのは多少の凹みと傷のみだった。


「あ~もう、腹が立つくらい頑丈だな」


あまりの強度に苛立ちながら頭をかくイロナシ、そしてイロナシに向け再び砲塔が向けられ、弾丸が発射される。


「おっと、もうそれの威力は分かってるよ」


直ぐに五枚層の氷を前面に並べ替え弾丸を防ぐ。万全の対策を取るがそれでも三枚まで破れ、肝を冷やす。


(本当に凄い威力、、さて、アラが助けられたしアラにコイツを壊してもらおうかな)


弾丸を放った機械は此方にゆっくりと向かってくる。どうやら再度撃つのに多少時間がかかるようだ、すると此方に進んでくる機械の動きが急に止まる。いや、正確には止まっていない、ガタガタと動くキャタピラが地面を掻いているが後ろに強く引っ張られてるようで滑っている。


「イロナシ!コイツを押さえるから今のうちに壊せ!」


なんとアラが機械の後ろにがっしりと掴まり機械と引き合っている。しかし若干アラの方が引かれているようでズルズルと足を滑らせている。


(マジか、、あれと力勝負できんのアラ? って言うか正直僕じゃあの機械を壊せないんだけどどうしよう)

 

しばらく考えた後、イロナシは考えをまとめ行動に移す。

突如氷で作られた大きな鎖が作り出される。そして機械の至るところに引っ掛かり全方向に鎖が張られるとそれぞれの鎖の先に氷の杭が突き刺さり地面に固定される。全方位から力を加えられ動きを止める機械、しかしそれでもガタガタと音を立て鎖に負荷をかけている。


「おい!イロナシ!何してるんだ?!早く壊してくれ!」


壊せと指示したはずが一緒になって機械を押さえるイロナシに問いかけるアラ、


「僕じゃあれは壊せないからエンダーとゼリエルを待とう、アラも離れてていいよ」


とうとうイロナシはその場に寝転がり初めて機械を監視している。そんなイロナシをアラは理解出来ず一人破壊を試みる。


「そんなことっ、できるかっ!」


大きく振りかぶり全力で槍を投げつける。ほとんど目で捉えることの出来ない速度で音を立て飛んでいく。しかしアラの力をもって投げつけられた槍は機械の硬度に負け、先端が砕け、続けて持ち手まで折れてしまう。すると地面に落ちたボロボロの槍は光の粒になりアラの体に吸い込まれていく。

その様子をイロナシは呆れた様に見ている。


「あと何本武器残ってるの?」


アラの武器は流出状になって普段は体の一部になっているため、どれだけ傷や破損しても度合いによって掛かる時間は違うが仕舞っていれば完全に新品状態になる。しかし今のアラは大剣は盾として仕様していたため酷く損傷し、鎚は地面を力一杯叩いた時に壊れてしまった。残りは太刀と二刀流の短剣しか残っておらず、とてもそれでは目の前の機械を破壊することは出来ないだろう。

イロナシにそこを指摘され、悔しそうに歯を噛み締めると、やがて諦めた様に息を大きく吐くとそこに座り込む。



その頃皆に待たれているとは知らないエンダーとゼリエルはアラの後を追いかけ廊下を走っていた。



「お前らっ!こんな狭いとこで待ち伏せか!」


苛立たしげな大声、それは長い廊下から響いていた。一般的な廊下より広いとはいえ横幅は約3メートル程、そんな場所に前が見えない程の武装した人間で埋め尽くされていた。

そして次々とその集団の中を進んでいく一人の青年、その後ろには幼い少女がついていた。


エンダーはアラの向かって行った方向から大きな音がと振動が届き、急ぎ後を追いかけていた。が、そもそもあの仮面の男の作戦なのか、廊下に隣接する全ての部屋から暴徒が大勢出てきて道を塞ぎた出したのだ。

そして今、素早く手の届く範囲に近付いた者から瞬時に倒してどんどん前に進んでいる。

後ろにはゼリエルが付いてきており、エンダーの動きを真似する様に手足を動かし楽し気に戦う真似をしている。


「よしっ、ちょっと急ぐか」


気合いを入れ直す様に息を吐くエンダー、そして大勢の暴徒がところ狭しと並ぶ廊下に駆け出す。

早速狭い廊下の横幅で暴徒二人が迎え撃つ様に前に出る。それをエンダーは不自然なタイミングで急加速し距離を一瞬で詰める。

思わず一瞬たじろぐ暴徒、そこにエンダーは片手でほぼ同時に感じる程の速さで二人の顔面に拳を当てると、二人はその場に崩れ落ちる。エンダーはその二人を飛び越え、一方奥にいた一人の頭に手を掛けそのまま押し倒し、着地と同時に地面に叩きつける。そして即座にその場で足先で円を描くように足払いをし周りの数人を転ばせるとその内の一人、倒れてくる頭目掛けて拳を当て、失神させる。

そしてその場に立ち上がると数歩離れた相手の顎に足を高く上げ蹴りを当てる。

次々に相手を片付け前に進んでいくエンダー、通りすがり様に相手の顎にしたから拳を突き上げ、上体を少しひねり、後ろに回り込んでいた敵に裏拳を当て頭を弾く。更に前から迫る拳を受け止め、相手の脇腹に一発打ち込みダウンさせる。


「数が多い、、早くアラに追い付かないとだな」


先の音にアラの事を危惧し焦りを見せるエンダー、

再び前から二人を同時に迫ってくる暴徒、今度は内側から外側に大きく腕を開き、暴徒二人を同時に左右の壁に叩きつける。そして空いた正面からは更に一人が殴りかかってくる。前傾で前に体重を変えている相手の胸ぐらを掴み、その勢いを利用し前に引っ張り勢いよく地面にうつ伏せに倒す。すると後ろに並んでいた暴徒達が何故か真ん中に綺麗に道を開けている。疑問に思い正面を見るとそこには銃を構える暴徒が一人奥に立っていた。

他の暴徒は車線を開けるために退いていたのだろう。


(こんな真っ直ぐな道であれを撃たれたらどうしようもねぇぞ)


真っ直ぐな直線で遮蔽物もなく、弾丸を避ける術がなく思えたが、先程壁に叩きつけたもたれ掛かっている暴徒二人を掴み、気絶した体を前に引き寄せ盾にする。するとエンダーの予想外に銃を持った暴徒は戸惑い発泡を止める。


(へぇ、意外だな。こいつらなら迷いなく撃つと思ったが案外あの仮面以外はまともかもな)


と感想を思いながら盾にした二人を放し一気に前に詰める。迫るエンダーに慌てた暴徒はすぐさまトリガーに手を掛け発射するがそれよりも早くエンダーが銃口に触れ、銃を上に弾いて向きを変える。

片手で銃を押さえながら軽く腰を落とし、今度は拳ではなく掌で相手の胴体を打つ、そして暴徒の服を掴み、乱暴に振り回し勢いをつけるように回すと、未だ大勢の暴徒が待ち構えている前方に放り投げる。勢いよく投げられぶつかるとさながらボウリングの様に数人が倒れる。

そして直ぐ様距離を詰めると走る勢いを利用して相手の首を掴み後ろに倒し地面に叩きつける。続け様に足を高く上げ顎を蹴り飛ばし気絶させ、後ろに立つ一人を視線をやることなく肘打ちで倒す。


「キリが無いって訳じゃないが時間がかかるな」


(能力で一掃するのは俺の主義に反するがあいつらに何かあったらまずいしな、やるか)


ゆっくりと息を吐き、体を落ち着かせると右手を開き暴徒達に向ける。


「黒・闇喰」


エンダーの右手から闇が吹き出すと瞬く間に廊下を埋め尽くす。それは余りに暗く、底の見えない谷底を見ているような錯覚すら感じる。

長い真っ直ぐな廊下を闇が埋め尽くすとやがて少しずつ闇が薄まると完全に消え元の廊下が現れる。しかしその廊下には驚くべきことに大勢いたはずの暴徒達の姿は一人もいなかった。


「能力を使ったのか?珍しいな」


後ろから追い付いてきたゼリエルは意外そうな顔で問いかける。


「流石にあいつらが危険な時に主義とか言ってられねぇだろ、ほら、急いで追い付くぞ」


綺麗さっぱり誰もいなくなった廊下をエンダーはゼリエルを肩に乗せまた走り出した。




ガンッ、ガンッ、

長い廊下を走るエンダーとゼリエル、アラの向かった先から大きな音と崩落のような振動を感じ、急ぎ追いかけていたが少し前から音と振動は収まっていたのだが、また何かを衝突させているような大きな音が響き、一層足を速めていたエンダー

長い廊下もついに終わりが見える。強い衝撃の影響か、突き破られたドアと今にも崩れそうな壁が目に入る。


「あの部屋だな!飛ぶぞゼリエル!」


エンダーが走るより遥かに早く、闇が前方に進みドアの前で展開する。そして走るエンダーの前に突然闇が壁のように現れるとエンダーはその中に飛び込んでいった。

すると次の瞬間、まだ100メートル以上の距離があった筈のドアを抜け、部屋の中に展開された闇からエンダーが飛び足す。


「無事かアラ、、え!?」


アラの危険を思い、全力で走ってきたエンダーは目の前の光景に釘付けになり、言葉を失い立ち尽くす。


なんと目の前には恐らく鉄かそれ以上の硬度の物質で作られた機械が氷の鎖で地面に貼り付けられている。

そしてそれを鬼気迫る顔でアラが素手で殴り続けている。人目で途轍もない重量だと分かる機械がアラに殴られる度にグラグラと上下に揺れている。


「アラ?、、何してんだ?」

話し掛ける事が億劫になる程凄まじい光景だった。

呼び掛けられたアラはこちらに気付き殴るのを止めこちらを見る。


「エンダー!やっと追い付いたか、悪いがこの機械を壊してくれ」


「?、ああ、そいつがさっきからの振動の原因か、分かった」


そのやり取りを寝転がりながらイロナシは傍観する。

(さてと、エンダーがあれをどうやって壊すのか見れるな、まだあの闇に別の能力があるのかな?)


状況を理解しきれず勢いで返事をしてしまったエンダーは少々悩んでいた。

(壊す、ね、アラが無理ってことは衝撃で物理的に壊すのはきつそうだな、イロナシは、、無理そうだな)


寝転がるイロナシを見ると視線に気付いたイロナシは首を横に振る。


「ゼリエル、あれ頼んでいいか?俺は先にあの仮面と決着つけてくる」


(ゼリエルに!?あの機械をゼリエルちゃんが壊すのか、自称神のゼリエルがどんな力を持ってるのか見れるのか、、)


「ん?私がやるのか、よし分かった、行ってこいエンダー」


エンダーの頼みに迷うことなく返事を返すゼリエル、自信に満ちたその表情には楽しみに思っているとすら感じられる。


「ってことで、俺はあの仮面に合いに行ってくるからお前らちょっと休んでてもいいぜ」


一方、頼んだエンダーはまるでゼリエルを心配する素振りもなく中庭を抜け他の部屋に向かって行く。



「さて、じゃあ私があれを壊してやるとするか、アラ、少し離れていろ」


鈍った体を伸ばす様に伸びをするとニヤッと笑い、壊そうとしている機械からアラを離す。


「万能の神の力とくと見よ、[超引力場生成]」


ゼリエルは機械に向けて指を鳴らす、すると機械がガタガタと不自然に揺れ出した。そして次の瞬間、ベコベコと音をたて機械が何の前触れもなく内側に凹み出すと次々と変形していき折り畳まれていく。


(何だ?ゼリエルは今何をしているんだ?)

折り畳まれていく機械を見ながら疑問を抱くイロナシ、しかしその疑問はアラがゼリエルに問いかけていた。


「ゼリエル、あれは何をしたんだ?」


「ん?あれか、あれは機械の内側に引力を発生させたのだ、だからあの機械は内側にへこんでいくだろう、あと少ししたら綺麗な球体になるぞ」


楽しげに種明かしをするゼリエル、その様子にイロナシは驚きを感じていた。


(引力を発生させたって、あんな機械を球体にするほどの引力を発生させられるのか)


「さて、機械もあんなになったし、少し私たちはここで休むか」


球体になった機械を横目にゼリエルが話す。


「エンダーを追いかけないのか?」


既に満身創痍のゼノンが問いかける


「決着をつけてくると言ってただろう、今度はあいつの働く番だ」


ゼリエルの言葉に三人は賛成しその場に座り込んだ。敵陣のど真ん中、恐らくまだ敵はこの屋敷の中に大勢控えているだろうがエンダーを追いかけ加勢する必要がないと三人は同じく思っていた。それはゼリエルのエンダーを信頼する言葉と三人がそれぞれ抱くエンダーへの信頼からくる行動だった。



その頃エンダーは既に目的の場所にたどり着いていた。仮面の男の指示かは不明だが数ある扉は全て開かず、更にここまでの道ではあれだけいた暴徒達は姿を見ていない、

そして今目の前のドアには恐らくあの仮面の男がいることが予測できる。執務室だろうか、他とは明らかに作りの違う一角、そのドアにエンダーは臆することなくゆっくりとドアを開く


「ずいぶん待たせるじゃないか、待ちくたびれて死んでしまいそうだったよ」


ドアを半分程開けたところで聞き覚えのある声に反応するエンダー、一気にドアを押し開けると正面にある大きく豪華な机の上に足を組み座る一人の男がいた。


「これでも急いできたんだ」


「なら許そう」


二人は中身のない言葉を投げ合うと、エンダーは静かに拳を握り締める。その様子に気付いた男はわざとらしく慌てて見せて制止する。


「おいおいおい、落ち着けよ、少し話をしたいんだ、ホントさ、まずは自己紹介からなんてどうだい?」


「そうだな、俺も聞きたいことはいくつもある、自己紹介から初めてくれ」


エンダーは男の話題に乗り近くにあった椅子に腰かける。


仮面の男は値段の高そうな机に足を組み座り、エンダーに椅子に座るように差し向ける。するとエンダーも大きく深い椅子に腰かける。


「自己紹介からか、俺の名前はベオラ・アルカース、憶えやすいだろ、でお前は?」


「アルマ・エンダー」


「そうか、じゃあエンダー、俺はお前に聞きたいことがある。お前は何者だ?」


仮面の男から出た質問は思いの外単純だった。しかしその質問にエンダーは表情を曇らせ言葉を返せない。何者、その言葉の意味を答えるなら人間で終わってしまうがアルカースの質問にはその先の更に深いところを見透かされている気がする。


一呼吸置いて答える、


「何者って、俺は最強の人間だ」


「へぇ、最強ねぇ」


「今度は俺の質問だ、お前はガネーシャを殺したか?」


町に着いてよりずっと気になっていた疑問をぶつける。

そして男は声を大にして自慢気に答える。


「答えはイエスだ、あいつは俺が殺した!」


「理由は?、この世界で神殺しがどういう意味を持ってるのか理解出来ない程イカれてるのか?」


神殺し、その行動はこの世界に生きる全ての生物がなし得ない行為、エンダーが世界にとって極めて異端なだけであり神とは圧倒的な力と能力で他を支配する存在、恐怖と崇拝の対象であってけして殺意を抱く者などいない。


「理由か、、あいつの創る世界に不満があったからだ、それともお前も不満を持つことを許さないとか言うのか?」


「いや、俺自身の目的も神殺しだからな、そもそもこの街にもガネーシャを倒すために来たからな」


今さらだが町に立ち寄った理由を話す、すると掴み所のない話し方だったアルカースの声に僅かに怒気を感じる。


「神を殺すことが目的だと?適当なこと言ってんなよ、、」


「適当?自分がやっといて何故信じられない?」


「ふざけてんのか、お前の横にいたガキは何だ!?まさか人間だとか言わねぇだろうな!」


エンダーは今アルカースの怒鳴りを聞き、やっと彼が自分達を問答無用で襲ってきたのか、何故最初にゼリエルにナイフを向けたのかを理解した。


(なるほど、少し考えればそうだよな、俺だって手当たり次第神を倒そうとしてる。アルカースに何があったのか知らねぇが俺同様に強い恨みがあれば神を連れて歩く人間なんて許せねぇな

それにガネーシャ程神気の強い相手と接してればゼリエルにも気づくわけだ)


「お前の思ってる通りだ、あいつは神だよ、だが俺の神殺しを手助けしてるし、あいつは訳あって神界とは関係ない」


「それを信じろって?じゃああの男は何だ!?隣街の神の側近のゼノンだろ!」


(マジか、あいつ知名度あんのか、これは仕方ねえな、神と神の側近と、気づいてねぇみたいだけど神の造った人間を裁く兵器と街に入って来たんだもんな、、)


「お前の言う通りだ、だからゼノンは俺が隣街のマアトを殺して解放して仲間に加えたんだ」


「お前もホントに神を殺してたのか」


半信半疑だが多少信じてはもらえた様子だ。


「話を変える、アルカース、お前は何故ガネーシャを殺した?」


「言っただろ、あいつの創る世界が気にくわない、そしてそれに誰も異を唱えようとしない、誰も彼もが虐げられることに慣れて大人しく頭を下げる!俺はそれが嫌だった。だが神を逆らえば理不尽な罰が下る、ガキだった俺が神に文句を言ったら俺の両親が罰を受ける、そして両親は俺を黙らせようと必死になったさ」


アルカースは話ながらコートの袖を捲ると色白の腕が見える。しかしその腕には無数の痛々しい火傷や切り傷が見える。恐らくそれは、体中にあるのだろうそして仮面の理由もそれだとエンダーは察する。


「当たり前の様に人間は虐げられる、誰も疑問すら思わない、なあ、俺が間違ってるのか?幸福を求めることが間違いなのか?、神どものせいで人間の常識が変わった、だが俺は違う、夏に凍えることを良しとしない。お前もそうか?」


「お前の行動を俺は正しいと思わない、だがその考えに文句も言える立場じゃない、でも、世界は変わったか?」


「あぁ?」


「ガネーシャの代わりにお前がいるだけで何も変わってないだろ、お前は一番になったから変わったんだろうな、それで終わりか?」


「街の奴らなんか知ったことか、現状を変えようとすら思わない連中に救われる価値はない、俺を痛め付けた親もこの世にいない」


「確かにな、世界の人々は変えようと考える者はいない、でもお前は変えようと思ったんだろ、そして変える力があったんだろ、、じゃあ変えてやれよ、力があるなら全て救って見せろよ!」


「救ったさ、俺の元に集まったあいつらは世界に不満を持っていた奴らだ、お前の言う街全てを救うのは理想論だ、現にほとんどの奴らは不満を訴えることもない」


「確かに理想論だ、お前の力じゃ無理だろうな」


言いながら体に力を込めて椅子からゆっくりと立ち上がるエンダー、そしてアルカースは机から飛び降り、馬鹿にするように微笑しながら言い返す。


「なんだ?お前はできるみたいな言い方だな」


アルカースは広がったコートの袖からナイフを出し両手に数本指に握らせる。

エンダーは拳を握り、真っ直ぐアルカースを見て力強く答える。



「当然だ!俺は最強だぞ」


お互い話し合うことを止め構えて向き合う。暫くの沈黙の続くなか先に仕掛けたのはアルカースだった。


「見せてくれよ最強!」


叫ぶと同時に腕を少し後ろに引く、そして振り子の様に勢いを付けて前に振り上げると指に挟んでいたナイフの内一本をアンダースローで投げつける。更に続け様に上げた腕を斜めに振り下ろしながらナイフを投げる。片手にはまだ一本のナイフを残したまま今度は左手のナイフを持っていた三本同時に全て投げつける。


(なるほど、相手への到達をずらして更に片方は場所をずらした三本同時、意外と手堅い戦い方をするな)


エンダーは飛んでくるナイフに対し片手を広げて前に出すとナイフの刃の部分を指の間に通し、三本とも正面から持ち手を指で挟み受け止める。そして次の同時の三本を直ぐに視界に捉える。すると視界の端でアルカースが残していた一本のナイフを握り締めこちらに詰めてきている。


(遅い、、やるなら走りながら投げるべきだったな)


向かって来るアルカースを問題ないと判断し迫るナイフに意識を向けた。が、一つ重大なことをエンダー考慮し忘れていた。次瞬間その事を思い出させられ戦慄する。

三本のナイフが飛んできている。そしてその少し後方にアルカースがナイフを持ち向かってきている。

しかしエンダーが迫る三本のナイフを視界に戻した時、驚くことにアルカースがそこにいた。

そして一瞬で距離を詰めたアルカースは自身の横にあった二本のナイフを瞬時に受け取りそのまま1メートルの距離もないエンダーにナイフを投げ直す。


「ハッハァ!俺にも能力があるんだぜ!」


「あぶねぇ!」


エンダーはナイフの刃に垂直に触れぬ様に横からナイフを弾き飛ばす。片手に持つ先程受け止めた三本のナイフでアルカースの持つナイフを止める。


「そういえば瞬間移動できるんだったなっ!」


「いや、出来ねぇよ」


怪しげな声色で否定するアルカース、すると瞬間移動する前にアルカースがいた場所から一本のナイフが飛んできた。


(なっ、どっから飛んできた!?)


焦り上体をひねりナイフを避けるエンダー、するとアルカースは後ろに飛び退き再度ナイフを構え直す。

そしてギリギリでナイフを避けきれなかったエンダーの腕に浅い切り傷が出来る。


「痛そうだねぇ、俺には勝てそうかい最強さん?」


「負ける要素がまだ見つけられないな」


腕に滲む血を指で拭き取るとアルカースに向けて笑いかける。


(さてと、傷は受けたがアルカースの能力はこれで分かった。物と自分の位置を入れ換えることだな、、問題は[物]の縛りだな)


粗方アルカースの能力について考えをまとめると今度はエンダーが前に走り出した。

ガクリと膝を脱力し体重を前に傾けると体が倒れ出すと同時に高速で次の一歩を踏み出す。数メートルの距離をエンダーはアルカースの想像を遥かに越える速度で詰める。

それに驚き反応が僅かに遅れたアルカース、しかし余裕の笑みでエンダーを見下ろすと左右両方向同時にナイフを投げる。


(まぁ、そうするよな)


エンダーの全速力の掴みかかりを瞬間移動でかわすアルカース、するとエンダーはそのままの勢いで壁に向かう。そして激突する寸前で足を壁に着き力を込めて移動したアルカースに迫る。


「鬼ごっこが好きかぁ?」


煽るアルカースに対し一心不乱に突っ込むエンダー、そこでエンダーはアルカースに気付かれない程度に力を抜き速度を落とす。そして先程の様に距離が詰まるとアルカースはまた左右にナイフを投げた。

すると力を抜いていたエンダーはその一瞬に全力を出し急に速度を詰める。そしてアルカースの投げたナイフが遠くに飛ぶ前に両腕を目一杯広げて掴み取った。

そして今度はエンダーがアルカースに向かって笑みをうかべる。


「煽り過ぎだバカ」


手先に掴んでいるナイフを器用に持ち替えアルカースを挟む様に突き立てる。確実に当たると確信し力強く突き立てたナイフ、しかしそれはアルカースを捉えることなく空振りで終わる。エンダー自身も状況が理解出来ないがまたナイフを持ち替え直ぐに後ろに振り向き防御の構えをとる。すると目線の先には最初のように机に座り足を組むアルカースがいた。


「さてと、また自己紹介から初めてやろうかエンダー?」


と言うアルカースは見せつけるようにナイフを机に突き刺したり、抜いたりを繰り返している。


(使用回数はなしか?だったら部屋中にばらまかれたら流石に追いきれねぇぞ)


ため息混じりに手に持つナイフを投げつけるエンダー、それにアルカースは瞬間移動しナイフはアルカースを通り抜けたようにアルカースの背後を飛び壁に突き刺さる。

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