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黒く世界  作者: Hirororo
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終わり齎す者の始まり

ため息混じりに話始めるイロナシ


「天使、大天使、大天使長、あとは優劣はないけど神の中にも和神、外神、そして最高位の冠神がいるね」 


「ああ、分かってるさ、俺達の最終的な目的は冠神に当たるだろうな」


「参考までに言うけど、僕が勝てるのは大天使までだよ」 


以外そうにゼリエルがイロナシに尋ねる


「大天使、、、すまん、記憶にないのだがお前は誰に負けたのだ?」


ニコニコとしたゼリエルにイロナシも笑顔で言葉を返す。


「ん~、天使くらいなら5,6体相手にしても勝てるんだけどね、僕はメタトロンって子に負けちゃった♪」


納得したようにうなずくゼリエル、


「それは仕方あるまい、メタトロン、やつは天使の中でも特別と考えていいだろう、実際あれの強さは一部の神と同レベルと言われておるのだ」


メタトロン、神の代行者、階級は大天使長、最も高位の天使と言われる存在


「強かったよ~、だからさ、僕らみたいな強いやつを最低あと2人は集めようって意見なんだけど」


エンダーとゼリエルに笑いかけながら首をかしげる。悩む素振りも見せずゼリエルは口を開く


「賛成だな、メタトロンならエンダーが負けることはないだろうが、一対一で相手は戦ってはくれない、それなりの強さを持つ者なら多い越したことはない」


「わかったよ、二人の意見に合わせる、なんにせよ町を探そう」


(メタトロンに負けることはない、か、そこまでなのかい?それにこの子{ゼリエル}何処まで深く知ってる?)



二人係の説得に折れたエンダーは目を瞑り体から黒い霧を出し、広範囲に広げていく。


「またその能力でなんかするのかい、ホントに便利にだねぇ」


(不思議だ、あの能力何回見ても僕の物にならない、よほど特殊な力なのか、、)

目を見開くエンダー


「見つけた、南に8キロ、かなり大きいな」


「じゃあ遠いし少し急いで行こうか」


なんとイロナシの背中に大きく白い羽が生え、ふわりと宙に浮く、それを見てゼリエルは羽を生やすでもなく、そのまま体を宙に浮かす。


「・・・・飛べない人間も世の中にはいる」


「君の不思議な能力でも出来ない事があるんだねぇ~」



エンダーが飛べないのを知ってから明らかに上機嫌になっているイロナシ、楽しげに急上昇と急降下を繰り返しているゼリエル



「少しまて」



何か思い付いたのか霧を地面に覆わせるエンダー、興味津々に目を向けるイロナシ。


地面の一部か分裂し黒い霧にまみれ空中に浮いたと思えば、まとまりを作りなんと土が金属に変わっていく



「土を鉄に、、さらにそれで工作まで出来るのか、なんか何でもありだね」



「お前も何でもありだろ、、出来た」



「なにそれ」


「俺が乗る籠だな」


そこには鉄作りのゴンドラのようなものができていた。


「これを二人が持って飛べば俺も一緒に行けるって話」


「ヤダよ」


「私も持たんぞ」


即答


「だろうな、じゃあ違う方法で行くさ」



それを聞いた途端に二人は先に行ってると言い残し飛び立った。


二人に切り捨てられたエンダーは一人寂しく籠を分解し再び何かを作り始めたのだった。



「置いてきてよかったの?」


にやけながらゼリエルに問いかける。



「あれは何が在っても大丈夫だろう、それに飛べる私たちが先に町を見ておこうではないか」


(まあ、私ならエンダーを飛ばしてやるのも出来たがな、、)



笑いながら飛ぶ二人の眼前には既に町を捉えていた。


一方エンダーは新たな手段で二人を追いかけていた  


それは大きな音を立てながらガシャンガシャンと歩みを進めていたのだった。

何もないのどかな平野、風に吹かれ花や草が揺れ動く、そんな中にも喧騒が存在する。ガシャンガシャンと音を立てながら大きな人形の何かがさらに人を乗せ走る。


「五月蝿いし体が痛む」


ブツブツと一人文句をぼやきながら人形、ゴーレムにの肩に乗るエンダー、前方には影が2つとその後ろに建物が複数見える


「待たせたな」


置いてかれた皮肉を込めて到着を伝えるが二人はなんら気にしていない、それよりイロナシが驚きと興味を込めた視線を向ける


「なんだいそれ!君の能力は命まで産み出せるのかい!?」


三メートルを越す土の体を指差して騒ぐ


「能力の応用だ、土を俺の能力で動かしてるだけだ、これに命も意思もありはしない」


「にしてもすごいね、後で鉄で作ってよ」


騒ぐイロナシを流しながらゼリエルと話しを進める、三人で町の入り口へと歩みを進めると思いの外大きな町だと気づく、そして以外なことに罰与者の存在も確認できない。

エンダーの考えを察し説明をするゼリエル


「最下層以外は神造機械が治安維持を勤めている、はずだが、、」


「神造機械?」


二人は聞きなれない言葉に同時に反応する


「まあ平たく言えばロボットだな、意思はなく一定のルールに添って動く、勿論機械だけあって人である罰与者なんかとは比べ物にならんほど強いぞ」


などと話しながら門をくぐり抜けそれなりに栄えアウトサイドエデンに比べもはや文明の発達すら感じる町並みに心奪われる三人、

ふと自分の下に大きな影ができていることに気づくエンダー、反射的に上を見上げると、17~20程の長い黒髪の女性が落ちて来ている

[自身よりもはるかに大きな大剣を振りかぶりながら]


咄嗟に左右の二人を弾き飛ばし間一髪の所で一振りをかわすエンダー、

女の体格には明らかに異質な大剣は硬い石の地面を貫いている。

体制を崩し片ひざを着くエンダーに女は着地と同時に距離を詰め追撃を加える

女はエンダーに腕を振り下ろす、不意を疲れたとはいえすぐさま戦闘態勢に切り替えるエンダー


(雑な追撃だな、あの細腕、それも女が力任せの一撃を放った所で、、)


余裕を持ち軽く片腕で受け止めるエンダー、次の瞬間、女の振り下ろした腕はエンダーの防御を崩しそのままエンダーの体を地面に叩きつける。


「な、にっ!」


あまりに予想外の重い攻撃に崩れるエンダー、すると起き上がったイロナシが瞬時に回し蹴りを胴体に打ち込む、


「そいっ!、、、、えっ!!」


信じられないことにイロナシの蹴りを胴体に受けたが少し仰け反る程度の女、そのままイロナシの足首を掴み上に振る、驚くべきことにイロナシの体が片手で持ち上げられる、一瞬の浮遊感、次の瞬間ガクン、と脳が揺さぶられる、イロナシは地面が叩き割れる程の勢いで降りおろされる、


「ぐはっ!、、、、ヤバい、かも、」


地面に倒れる二人を見下ろす女、更なる追い討ちをかけようとエンダーのもとに瞬時に移動すると再び腕を振り上げる、


息絶え絶えに話すエンダー


「誰だか、、知らないが、随分力が強いな」


軽口をたたいてるが息遣いに余裕は見当たらない


「本気で行くぞ」


エンダーの目付きが変わったかと思うと体は倒れたまま体を半回転させ蹴るように足払いをする、


しかしそれを女が半歩下がりかわすと、足を大きく上げ踵落としを狙う、


エンダーはすかさず起き上がり、足を下ろす前、つまり上げてる状態で足首を掴む、そして立っている方のもう一方の足を払う


地面に着く足を失い、片足を掴まれたまま体勢を崩す女、が、それを利用し浮いた足で横から蹴りを入れる、

エンダーはそれを右腕全体で衝撃を殺し受け止めると女の首に手を伸ばす、

首を掴むとそのまま驚異的速度で当身を決め、首に腕をかけ、背後で腕を固めそのまま地面に倒れこみ組伏す。



「ぐっ!、ウアァァ!!離せ!」


見た目からは想像できないような力でもがく女、本来ならエンダーの組伏せを受けた時点で終わりだが、その状態であってもエンダーは常に全力で抑え込まなければならないほどの力を持っている

ここに来て初めて女は口を開く、それに周りの市民達に聞こえぬよう声を潜めるエンダー


「なぜ襲ってきたのか聞きたいが、逃げるのなら俺達は追わない」


「、、、、離せ」


今度は力なく懇願するように呟く。そして力を抜いたのを確認するとゆっくりと手を離すエンダー。


女は直ぐに立ち上がり、建物の屋根まで跳躍し姿を消した。


「男二人が情けない」


呆れた表情のゼリエル、


「いやいや、あの子強かったよ」


キツそうに体を起こすイロナシ、叩きつけられる瞬間に体を金属に作り替えたようだが、威力負けし衝撃を殺しきれなかったようだ。


突然横から声をかけられる、


「あんた達すごいな、あいつに勝っちまうなんて」


いつの間にか周りは人々に囲まれ称賛を浴びている、


「どうなってんだ?」


一人が説明を初めだした


「いやね、あんた達を襲ったあいつ、いつもあんな感じさ、町に入ろうとする神造機械をぶっ壊すんだよ」


「俺らは神造機械に見えるとは思わないが、、」


彼女について知りたいと話すと連れていかれるまま、宿に案内されたエンダー達


とある宿ににて話しを聞いているエンダー達、

町の人々によれば彼女は10年程前から町のどこかに住んでいて、エンダー達のように神造機械に入り口で襲いかかっているとのこと、


「そのせいでこの町には神造機械が一体もいないんだよ」


やや苛立たしげに話すと男、しかしエンダーは疑問を持つ


「神造機械ってのは壊される度にまた新しいのが町に来るものなのか?」


「そうだな、前には三機同時に来たこともあったな、さらに機械との戦闘で町は壊れるし、あの女はいったい何が目的のかね?」


「そういえば、10年前彼女はどうやって来たんだ?」


「ああ、確か変わり者で機械いじりが好きなじいさんが外から拾って来たんだったかな、そういえばじいさんは死んじまったけどあいつは昔から変わってないような?」


すると突然、話を遮るように街中に鐘の音が響き渡る。


「なんの騒ぎだ?」


「ああ、これはトケイだよ、何でもその爺さんが昼飯の時間を忘れないようにとかなんとか言って街中に設置したんだよ」


「なるほどね」


男の言葉のある部分に反応し、ゼリエルとエンダーは何かを理解した雰囲気で目を合わせる。

気にも留めず男は笑顔でその場から立ち去って行った。


「どう思う?」


なにやら考え込んでいたゼリエルが口を開く


「そうだな、まずこの階層には複雑な機械機構はない、どころか時間という概念もない」


イロナシが驚く


「時間がない?」


「ああ、空の偽物の太陽は狂いなく動くからな、日が上り、落ちれば夜だ

恐らくあの女が教えたのだろうな」


ゼリエルは話を続ける。


「それよりも私が気になってるのはあの女が恐らく初期の神造機械だと言うことだ、神が自分を模して作った最初の神造機械と言われている、そして今運用されている神造機械にかなり前に処分されたはずだか」


「自分の作ったものを自分の作ったもので壊すか、、それであいつは生き残りってことか?」


「そう考えればここに来た時とも都合がよくなるな」


「あいつ、自分が狙われてるの分かってないんじゃないか?」


「どうゆうことだい?」


町をまわってたイロナシがもどってくる


「あいつは町を守ってるつもりなんじゃないか?神造機械も元々人を警護する目的だろ、だから、町に入ってくる危険分子を撃退してるんじゃないか?」


「神造機械が町を狙いに来てると勘違い、それは理解出来るけど何で僕らを?」


「神と元世界の支配者と神造機械のような物に乗ってるやつ、まともな奴が見ればどう見ても危険だろ」


二人は納得の表情をする


「そこでここからが本題と提案なんだが、あいつ仲間に引き入れないか?」


驚きを隠せないイロナシ、察したよう笑うゼリエル


「あの子を仲間に?難しいんじゃないかい」


「そうか?俺は意外と事情を説明したらあっさりいくと思うけどな」


「ん~、まあ君たち二人が言うなら従うけどさ、そもそもあの子にどうやって会うの?」


当然の意見を言うイロナシ、そう、彼女は襲いかかってきただけでエンダー達どころか町の人々も彼女がどこにすんでいるのかを知らないのだ、


「それについてはある程度目星はついてるから安心しろ」


その一言を信じ、渋々ついていくイロナシ、

やがて言われるがまま付いていくとある一件の民家の前に立ち止まる、明らかに古く人が住んでいる気配はない、それどころか見ただけで何年も使われてなかったと想像できる程古めかしい


「ここは?」


「町の人達の話しに出てきた、彼女を外から連れてきた爺さんの家だ」


「亡くなってから使う人もいないし、町の外れ、まあ一番可能性は在るけど、、」


半信半疑のイロナシ、あの神造機械を破壊するという彼女がこんな普通に住んでいるのだろうか、疑うイロナシに再度説明をするエンダー、


「よく考えろよ、彼女は食事も睡眠も必要ない、そんでもってここが彼女が過ごしたことのある唯一の家だろ」


話しながら古いドアに手をかけゆっくりとあけるエンダー、中は薄暗く埃っぽい、そして部屋の奥、フレームのみのマットレスのないベットに彼女は腰掛けこちらを睨む、


「今度は話しを出来そうだな、ここ座ってもいいか?」


彼女は固い表情のまま口を開かない、答えを聞くのを諦め、埃を被った椅子に腰掛けるエンダー、その膝の上に飛び乗り座るゼリエル、

それを見た彼女はようやく口を開く、怒鳴るように問いかける。


「何のようだ!?」


「そう敵意を剥き出しにするなよ、話をしに来ただけだ」


なだめるように声を落とし話し返すエンダー、依然として強い口調の彼女


「破壊が無理なら説得して連れて行く気か?」


「まず俺達はお前に用があってこの街に来たわけじゃない、それに神の手の者なんかでもない」


その言葉を聞き更に口調が強くなる


「ふざけたことを!、その膝の女はいったいなんだ!?紛れもなく神そのものだろう!」


大きく怒鳴る同時に立ち上がる彼女

エンダーは動じず話を続ける


「たしかにこいつは紛れもなく神だ、だがゼリエルは俺が神を殺すための大切な仲間だ」


その言葉に動揺する彼女、それもそのはず、神が絶対的崇拝対象のこの世界で神を殺すなどとは間違っても言うはずがないのだから


「か、神を殺す?、本気で言ってるのか?」


「本気だ、神は崇められる対象なんかじゃない、自分のルールを世界に強要するただの支配者にすぎない」


「エンダー、今話すことは神への悪辣じゃないだろ」


知らず知らずに口調のが荒くなっているエンダーの頬をムニムニと両手で触りながら鎮めるゼリエル


「悪い、話を戻す、あの神造機械は町を狙いに来てるんじゃない」


「お前達が私の敵ではないとひとまず信じよう、だがそれはどうゆうことだ?」


「あの機械に襲われたことがあるんだろう」


「、、そうだ、、数年前に私達初期型戦闘人形[オン・バトルマータ]は突然あの心無き新型戦闘兵に襲われた、そして撃退を繰り返す私は限界がきて倒れた、それをこの街の一人に救われた」


「この家の持ち主だった男だな」


「そうだ、今まで人を罰するために生きていた私達オン・バトルマータをあろうことか助けたのだ、体中が悲鳴をあげ動けない私のことを救おうとひたすら過ごしていた、神のルールで人を殺す機械の私を治ってからも家にいることに何ら文句を言わず世話を妬いていた、そして誰に看取られるでもなく、私の前で最後を迎えた」


「人の一生などそんなものだ、我々神にも不滅の永久機関のお前にも一瞬にしか感じられん」



「人とロクに関わらず、機械の虜だった彼が完全な機械であるお前と出会ったんだ、見るもの聞くもの全てが楽しかったんだろ、

人と近い容姿の君に心奪われたのかは俺には分からないけどな」


「私がここを出るのが街のためになるのか?」


「そうだな、ついでにお前を造った神への復讐を手伝ってくれればいいんだけどな」


それは100年前のこと、今ほど世界に安定はなくいまだ人は世界の支配者の移ろいに慣れていないとき、神は10体の人形を作った、そして罪を犯した者を罰するための機械を送った。

しかしその機械達はあまりに人間に似せて創りすぎた、限り無く人間に近い感情を持っていた機械達は人間に罰を与えることが出来ていなかった。


町を出てしばらく歩くエンダー達、やってやったと言わんばかりの顔で二人に言い放つエンダー、


「早速一人仲間に迎えたぞ、あと二人だな」


「いや~すごいね、まさかこんなに早く仲間が増えるとわね、それに君なら十分な強さも持ってるしね」


話の内容がつかめず戸惑う彼女


「こいつらが神に挑む前に仲間を増やせって、そしたらあの町に偶然にもお前に出合ったわけだ」


「なるほど」


淡泊な返事、皆が自分をじっと見つめているのに気づく


「なっ、なんだ、何か変か?」


戸惑い慌てる彼女


「いや、今さらだがお前の名前聞いてなくて」


「名前、オン・バトルマータだが?」


また他の皆が今度は顔を見合せ困惑の表情をする


「なら、呼ぶときの名前つけたいんだけどいいか?」


「名前?固有名詞のことか、構わない、ならばそれを名乗ろう」


イロナシとエンダーを押しどけ、ゼリエルが飛び出してくる」


「アラでどうだ?」


突如叫ぶゼリエルに皆が固まる


横目で彼女を見るイロナシ、その視線に何を感じたのか声を低くし威圧感を出す彼女


「不満か?私は構わないが」


「いやいや!、不満なんてないよ」


焦った口調で否定するイロナシ


「アラ、君服ないの?」 


よく見れば所々ツギハギの汚れた服を着ている


「そうだな、この服以外は持ってないな、別に困らないだろう」


するとゼリエルがパンっと手を叩くとアラの周りが光はじめた、

光が収まりようやく目に見えるようになると、アラとイロナシは驚きの声をあげた、

さっきとは見違える程に美しくなっていた、元々整った顔立ちだったが、体の傷はきれいに消え、汚れ痛んでいた髪は艶やかに整い、服は新品のような状態になっている、


「これは、いったい何を」


「少しサービスしただけだ♪」


自慢気に胸を張るゼリエル、素直に感謝を言葉にのせるアラと、ゼリエルを凝視するイロナシ


「ありがとう、ゼリエル」


「今なにしたの!?」


「だから少しサービスしただけだといったろう」


変化した自身の体を驚きながら見回すとアラは信じられない、といった表情でゼリエルに問いかける。


「時間を戻せるのか?」


「いや、私は元に戻しただけだ」


「ありがとう、とっくに失くした機能が戻った」


ニヤニヤと笑いイロナシを流しアラの肩によじ登り肩車するゼリエル、

また一行は歩きだした。


歩みを続ける一行、アラの姿を見てあることに気づくエンダー


「アラ、お前デカイ剣持ってたよな?あれ置いてきたのか?」


そう、はじめて出合ったとき、確かにアラは身の丈以上の大剣を振るっていた。


「ああ、それはだな」


説明するより見せた方が早いと言い、手を開きなにやら意識を手のひらに送ったかと思えば、手の周りに光が集まり剣の形に形成されていき、瞬く間に見覚えのある大剣になった。


「武器を原子や分子レベルに分解して体の中にしまっているんだ、他にも槍と長刀、短刀なら二本を出せるぞ」


次々に武器をだし地面に放り投げていくアラ、感心するように武器を手に取るエンダーとイロナシ


「すごいね、一つ一つがかなり作り込まれた良品だ」


「ああ、かなり丈夫だな、だけど随分重いな」


ズッシリとした槍を手に取るエンダー、普通の人間なら持つことも出来ないだろう重さである、アラに返すと、その場で光の粒になり跡形も無く消えた


「出し入れも自由は便利だな、槍なんかは投げても大丈夫なのか?」


「どんなに離れていても問題ない、それに壊れても破片ごと光になって戻るから出すたびに新品に戻る」


次の階を目指し彼らは歩いていく。






目的の天廻階を探し歩き続けるエンダー達、


「なあ、もう二人の仲間は他の階層でいいだろ」


「まあ、それでもいいかもね、正直中途半端なのを連れても意味はないし、そんな強いのもそうそうしないしね」


最低5人は仲間が必要だとゼリエルとイロナシに散々言われ、アラを仲間に加え旅を続けてきたが、道中ずっとこれ以上仲間集めをしたくないとエンダーの文句を聞き続け、とうとうイロナシが折れた、

話を聞いていたアラが横から問いかける。


「なら、次の階層への天廻階の場所を探すのか?」


「そうなるね、エンダーさぁ、町を見つけた時みたいに探せないの?」


「あれは半径15キロまでだな、あの大きさの搭なら目視で見えるし、町を回って聞いてくしかないだろ」


わざとらしく大きなため息をつくとイロナシはふわりと空に飛んだ、すると上空であっ!と声が聞こえる、


「どうした?」


「うっすらだけどデカイ搭が見える、、」


今まさに探していたものがアッサリと見つかり喜ぶエンダー達、急ぎ向かうと言うと、エンダーは地面に闇を覆わせいつぞやのゴーレムを作り出す、そして今回は合わせて荷車のようなものを作り出した、


「よし!乗れ」


と元気よく叫ぶと一斉に乗り込む四人、イロナシがまたもや文句ありげに呟く


「最初からこれで移動出来なかったの?」


「前に言ったろ、ゴーレムは俺の能力で動かしてる、だから俺は普通に歩くより疲れんだよ」


へ~と素っ気ない返事を返すと座り込むイロナシ、こうして四人は歩くより数倍速く移動していく。

搭に近付くに連れて驚きの事実が判明した、なんと搭を囲う様に大きな町が成り立っているのだ、特に何もなく町に入ると、予想に反してごく普通、少し賑やかな程度の町だった。

ゴーレムと乗り物を地面に戻すと買い物がてら散策を始める。

町を歩き直ぐに異変に気づいたが、町の内側、搭に寄せ付けないように丸く高い壁がある、そのせいか町には中心部というものが存在しない奇妙な作りになっていた。壁を壊して入れば簡単だか町の中で騒ぎを起こしたくなく、別の方法を模索し続けるエンダー達、やがて痺れを切らしダメ元で住人に問う。

まだ開いていない酒場の前、準備に勤しむ男に訪れる。


「突然悪い、あの搭の下に行く方法はあるか?」


その質問を聞くと明らかに不審な目を向けられるエンダー、当然だ、寄せ付けないように壁が作られているのに近くへ行きたいなどと言うのだから、それにあの搭は神の移動に使われるとされていて、間違っても人間が近寄っていいものではないのだから


「おい、笑えない冗談は止してくれ、俺は忙しいんだ、何処かに行ってくれ」


かなりきつい口調で言われて引き下がるエンダー達、人に聞くのを諦めたエンダー達


「まあそうだよな、あの天廻階、神以外なら近寄るだけで死罪だしな」


「だが何処かに入り口があるのは確実なんだろう?ならそこにいるはずの守護者?を片付ければいいんじゃないのか」


「そうなんだけどさ、、いや、悩む必要はないか、正直入り口の場所も予想はついてるからな、行くか」


穏便に行くことを諦めたエンダーは決心したように目的の三人を連れて場所へ歩きだす。そしてついたのは小さな門の前、なぜか一帯に建物は無く、人すらいない、太い壁に手を着くエンダー、そして力を込め壁を押すと折り畳まれるように壁に通り穴が開く


「神ってのは自分の通り道が好きなんだよ、、」


皮肉めいて呟くと前へと進む一行、壁を越え町の内側に入るエンダー達、予想以上に中は広く搭の高さが際立ち圧倒感すら覚える、

内側に入り何もないのを不思議に見渡すイロナシとアラ、ゼリエルはアラからエンダーに飛び写る。


「ところで守護者ってのは何処にい─」


問いかけた瞬間、ただ風を切る轟音のみが聞こえたかと思うと、光る何かが飛来する、が、あまりに速く、目に写った瞬間に反射で後ろに飛び退くアラ、


イロナシはそれを瞬時に手を前に構え相殺した、かに思えたが光は着弾と同時に弾ける様に光を放つ、そして吸い込まれる様に圧縮されイロナシの手の重力場に飲み込まれていった、


避けると同時に飛来物が飛んできた方向を睨み、二本の剣を構えるアラ。

顔を歪め自分の両手に目をやるイロナシ、その両手からは先の一撃を防ぎきれなかったのか、おびただしい流血が確認できるが、直ぐにアラと同じ方向を睨む。


「今のを防いだのか、二人ともさすがだな」


余裕を感じさせる声色に無事を思い安心し、二人はエンダーを確認した、、、動揺が二人を支配する

彼はゼリエルを抱えていたことを思い出す、


そのゼリエルに被害がないよう守るために体から遠ざけ、片腕で服の襟を掴んでいる、


そしてエンダー本人の体には光を物質化したかのような1メートル程の大きさの何かが突き刺ささっている


「エンダー?」


ゼリエルは呼び掛ける。その声には驚くほど動揺は感じられない。


エンダーは掴んでいたゼリエルの服を放し、ゼリエルを地面に下ろす。エンダーに触れるゼリエル


「エンダー、覚悟はできてるな」


今までに見せてこなかった酷く真剣な問、イロナシ達は事態の深刻さにやっと頭が追い付き、エンダーの元に駆け寄る。しかし、イロナシ達を見ることもなく、上を向いたまま指示を出すエンダー、


「三人とも下がってろ」


三人にエンダーの闇が覆う、すると三人はエンダーから数百メートル離れたところに投げ出された、何が起きたか理解出来ない三人にエンダーの元に繋がっているのか、宙に浮く闇を通し声が聞こえる、


「安心しろ、俺の能力で少し距離をとった」


視線を遠くに見えるエンダーに移すと、今までにない暗く重い闇がエンダーの周りに大きな半球体状に形成し、中のエンダーは姿を確認出来なくなった。

次の瞬間、中で大きな力を加えたのか、エンダーを包む闇が不安定に歪み、形が歪み始めている。それをただ見つめる三人にその球体から衝撃が走る、生まれて初めて爆風を全身に浴びる三人、距離が離れているにも関わらず、途轍もない勢いの爆風にその場に留まる事すら困難な中、アラは二本の剣をしまい、身の丈程の大剣に持ち替え、イロナシとゼリエルの前に出ると剣を地面深くに穿ち、盾にするように三人は体を下げる。

爆風が収まったのを確認し、エンダーのいた場所を再度見ると、

先程球体があった場所が大きくえぐれ、その中心にエンダーが立っている、なんと先の一撃の傷はきれいに無くなって衣服にの跡が残る、

一連の出来事を理解したイロナシ、


「あの光の槍は対象に当たると爆発するみたいだね、それを押さえる為にあの球体で自分を覆ったのか、あえて爆発させて押さえるか、ボクの時の威力を見て相殺は無理だと判断したのか」


すると上空から声が聞こえる、攻撃をしてきた相手だと全員が感じ、空を見る。


「ほう、我の雷を見て死者は無しか、見事なり」


言葉が途切れると同時にエンダーの前に雷が落ち、今まで何もなかったそこに大柄な男が立っている。男を見据えエンダーは声をかける。


「守護者に会いに来たつもりが、まさか神本人が降りてくるか」


「いかにも、雷鳴神、建御雷之男神」


堂々と名乗りを上げる一柱の神、そして一人の人間は自信に満ち、笑顔で名乗る。


「アルマ・エンダー、最強の人間だ」


「あれが神か、、」


ゼリエルに離れてるよう言われた二人は向き合い対峙する、エンダーと相手を見る、呟いたアラにイロナシが補足を加える、


「タケミカヅチ、神名、建御雷之男神、神の中でも紛れもなく武神と呼ばれる類いだ、エンダーはあれと戦うのだ」


「エンダーの強さはどれほどなんだ?あれを相手に余裕があるのか?」


本当に神にその他の生き物が届くのかをアラは疑問視する。


「最強の人間か、、だが人間である以上神には遠く及ばんぞ、しかし神に挑むその蛮勇を讃え相手してやろう」


建御雷之男神の周りにバチバチと音を立て電気が起こる、やがて大きくまとまりになり、無数の雷の塊が周りに浮いている、


(最初に撃ってきた物と同じか、いや、大きさはかなり小さくなってるな)


思考を巡らすエンダー、すると建御雷之男神はニヤリと笑い腕をエンダーへと向ける、



建御雷之男神の周りを漂っていた雷は一斉にエンダーに向かい飛んでいく、


次々に飛んで来る雷を避け続けるエンダー、


(速い、だが十分避けられる速度だな、攻めるか)


雷を飛ばすのとほぼ同じ速度で新しい雷を形成する建御雷之男神、それを確認するとエンダーは雷を避けながら前に駆け出した


「ほう、この中を走り向かってくるか、つくづく蛮勇なり!」


難なく雷を避けながら距離を詰めていくエンダー、建御雷之男神に向かい走っていると、目の前に細い一筋の光が走る、その瞬間後ろに飛び退くエンダー、同時に闇を地面に展開し目の前に壁を作る、そして先の一筋の光は大きな落雷へと変わる、轟音と共に大地を焦がす雷、


「危ねぇ、空の無い此処で落雷か、流石に焦った」


「今ので終いにするはずだったんだかな、少しお主を見くびっていたようだ」


そういい放つと建御雷之男神は手をかざす、その手に先程より大きな雷が形成されるとそれを握り締め、投げ槍の様に構える。


(デカイ!あれは爆発するな、そんな事よりあれをこの至近距離で投げる気か?流石にキツイな、)


構える建御雷之男神を見て焦りを感じ、瞬時にかわせる様に体制を低くするエンダー、


大きく腕を反らし、足を踏み出す建御雷之男神、腕が風を切る様に音を立て投げ込む、


それを見るや否や、横に飛び出しかわすエンダー、それを見て小さく建御雷之男神は呟いた、



「避けて良いのか?」



武神は戦闘の中に甘さを見せなかった。流儀もプライドも勝利を遠ざける物だと認識するだけの強さがある


その言葉の意味を理解し、自分の判断ミスに焦りを感じ、後ろを視界の隅に捉えると、直線上に傷を負うイロナシ、アラ、ゼリエルが見えた



自分達に向かってくる雷に気づき、傷を負うイロナシを庇う様に前に出ようとするアラ、イロナシは短くため息を一つき、痛みで震える両手を見つめる。


(あれは爆発する、アラは大剣で防ぐ気かな、もう一発くらいならいけるかな?)


覚悟を決めるように、アラとゼリエルの腕を掴み後ろに放り投げる、

庇う為に前に出ようとしたが、不意に後ろに投げられたアラは動揺し、イロナシに目を写す、

両手を前に出すイロナシ。


[流体操作]


イロナシの両手から滴る血がフワフワと宙に浮き塊になり停止する、イロナシが指を弾き音を出すと、雷向かって高速で打ち出された、雷に衝突すると包むように変形し雷を包み、その場で止まった、と思いきや、破裂し何事もなかった様に雷は此方に接近してきた、


「やっぱりあんなんじゃダメか~」


[重力地点]


雷が眼前まで迫ると、再びイロナシは手を構え、雷を止める、手の中に超重力を創り出し近づく全てを超高圧縮し消滅させる。

だがそれも威力負けし止めきることは出来ずにイロナシの手元で爆発を起こした。

今度は先程より大きな爆発がイロナシの全身を焦がす。

細々とした声が焼けた喉を通る


「ちょっとだけ、、休むね」


笑いながら言うとそのまま意識を失った。


「よくやったイロナシ!」


投げた直後の隙をついて、一気に前に出るエンダー、とうとう拳の届く距離まで近付き、下から拳を突き上げる、

距離を詰められ一瞬油断したが、建御雷之男神はエンダーの顔目掛けて迫る拳を手で止め掴む、

自分の右手を掴む大きな腕の肘へ、左手で横から軽く速い一発を打ち込む、

殴られた腕が痺れ、掴んだエンダーを離す建御雷之男神


自由になった右手で、建御雷之男神の腹部に裏拳を放つ


それを建御雷之男神はもう一方の腕で受け、完璧に防ぐ


「凄まじいな人間!、だがお前の軽い体では我に膝を着かせる事すら叶わんと思え」


途切れることなく無駄の無い動きで、攻めの主導権を渡さず、建御雷之男神を防戦一方に追い込むエンダー


(確かに、こいつの防御は完璧だ、俺に防御の上から決定打を狙うのは無理だ、まず崩さないとだな)


続け様に打ち込むエンダー、ふと攻撃のタイミングをワンテンポ遅らせる、

それを建御雷之男神は見逃さず、攻撃に転じる、大きく強靭な肉体からエンダーを狙い拳を突きだす。


(体力負けだな、とうとう隙ができた、まずは攻撃の主導権を奪う、いかに鍛えていようと体幹から最も離れた上半身、肩に受ければバランスを崩す)


しかし、エンダーは力を抜き、建御雷之男神の拳に合わせる様に体を動かす、更に大きく突きだされた腕を掴み、全身を浮かせ飛び蹴りをがら空きの胴体に決める、

攻撃を空振り、更に腕を下に押され、思わず前に体重を持ってかれる建御雷之男神、そして腹部に重い一撃を受けて怯む。


重い一撃を受け、腹部を押さえ下を向く建御雷之男神、そして視線の先、地面に写る影が自分の物でないと気づき、焦りと共に上に視線を戻す、が、既に手遅れだった、


エンダーは建御雷之男神が怯んだ瞬間に上に飛び上がり、体を縦に回転させるように上から回し蹴りを打ち込む、


建御雷之男神はエンダーの蹴りを受ける、エンダーの全体重を遠心力に乗せた蹴りを食らい両手両膝を地面に着く


エンダーは回し蹴りを当て、地面に着地すると、倒れ混む建御雷之男神に更に追撃を与えようと、拳を握り締め振りかぶる。


しかし、それを見ると建御雷之男神は地面に手足をついたまま呟く。


[守護雷開]すると小さな電気がパチパチと音を立て周り現れる、やがて建御雷之男神を包む様に天まで届く電気の壁が出来上がる。


危険を感じ下がるエンダー、姿は雷の壁で確認出来ないがはっきりと壁を挟んで向こう側から声が聞こえる。


「我が素手の打ち合いで劣るとは、、認めよう、お前の技術が我を大きく上回り、体格差をも無にした」



思いの外素直な称賛の声に意外に思うエンダー


「故に、お主を全力で相手せねばならん相手と解釈した」


雷が収まると建御雷之男神の手には一本の長刀が握られている。


「霊剣十束の剣、まさか此処で抜くとはな、、」


「全力と言った筈だ、人間に打ち負かされたのだ、持てる全てで相手してやろう」


今度は体がバチバチと音を立て薄く光りだす、低く刀を構える。


(居合い抜きか、とうとう本気で殺しにきたか)


刀に手を掛け、片手を間合いを測る様に此方に向ける、刹那、手から一筋の光が放たれる、そしてその場から姿を消す建御雷之男神、


建御雷之男神の移動を捉えることが出来なかったエンダー、一瞬、恐怖が背筋をなぞる、背後に気配を感じ瞬時に振り替えると、此方に背を向ける建御雷之男神がいた、


建御雷之男神はエンダーの背に立ち、振り向く様に抜刀し斜めに斬りかかる、立ち姿から斬りかかるまでの動作はまさに武神の如く、言葉通り一瞬だった。


背後に建御雷之男神の斬りかかる姿を見るエンダー


(速い!振り向き様からの一振り、袈裟斬りか!?)


剣の長さを見て下がることは無駄だと思い、ほぼゼロ距離にまで近付き、刀ではなく、刀を持つ建御雷之男神の腕に自身の腕を当てる。


腕を止められた建御雷之男神、だが刀を止められたことに一切の動揺を見せない、自分の方を向き直っているエンダーの背後に無数の雷が空中停止し狙っている。


(まさかお主を一太刀で獲れるとは思っていないわ、背後を取り、それすら陽動に背後を取る)


全力で振り下ろされた腕を止め、腕に痺れを残すエンダー、体制を低くしたまま手を開き建御雷之男神に掌底をいれる。


呻きをあげ後ずさる建御雷之男神。


エンダーは地面に闇を当て、かつて壁やゴーレムを作った様に地面から一本の剣を作り出した。


剣を片手で構えるエンダー、それを見て建御雷之男神が問いかける。


「なんと!お主も剣を使うのか」


「何だって使えるぜ、ただ今はお前が剣で戦うのなら俺も剣で相手したくなっただけだ」


「我に戦い方を合わせるか、満身は身を切るぞ人間」


「やってみろ」


手元で剣を器用に回しながら手で挑発をする。


僅かに口角が上がる建御雷之男神を見て、後ろを向き自分を狙う無数の雷を手から放出した闇で振り払うと、闇に触れた雷が次々に消滅していく。


その未だ理解出来ない能力に不安を覚える建御雷之男神。


それを見て考えを読む様にエンダーは話す


「武神相手には武術で挑むさ」


「思い上がりだな人間」


その言葉を合図に再び刀を構え駆ける建御雷之男神、力強く踏み込み真上から刀を降りおろす。


正面から受けずに剣を斜めに構え、受け流すエンダー


受け流され、刀を降りきると、地面に着く前に手首を回し真横に振る。


真横に迫る刀に対し、剣を縦に構え、片手は持ち手をもう一方は刀身に添えて受け止めるエンダー、お互いの刀で押し合いになるとエンダーは剣を這わす様に刀身を滑らせ建御雷之男神の刀の柄に当てる。


間合いを詰められ焦り下がる建御雷之男神、刀を正面に構え直すと[雷断]と声に出す、すると十束の剣が鈍く青色に光りだす。今度は浅い踏み込みからの軽い斜め斬りを仕掛ける。


青く光る刀に警戒するエンダー


(何をした?やつらしくない軽い振り、危険だな、今しばらく守りに徹するか)


同じようにまた受け流す構えを取り、刀が触れると、まるで通り抜けるかのようにエンダーの剣を何の抵抗もなく切る。


「なっ!冗談だろ!」


焦りと驚愕で剣を即座に放し、後ろに飛び退くエンダー


(剣を切るか、、防げないうえに簡単に体を両断されるな)


距離を取り新たに剣を作るエンダー、息を整える間もなく前方から二本の雷が飛来する、一つをかわしもう一つを剣で打ち消す。


建御雷之男神は初手をかわされ距離を取られると二本の雷を即座に打ち出す。それを防がれると更に多くの雷を全方位に作り出す。


次々と迫る雷をかわしては剣で打ち消し、処理の間に合わないものは闇で消し去り防いでいるエンダー。


建御雷之男神はいくつか他より大きな雷を従える様に体の周囲に漂わせ此方に走ってくる。


[雷連隷属]


走りながらエンダーに手を向け、他より大きな二本の雷を飛ばす。


四方八方から迫る雷を防ぐエンダー、建御雷之男神が大きな雷を従え、此方に向かってくるのを確認する。他より大きな雷が二本飛ばされ、それを剣で打ち消そうと弾くと、バチッと音を立て消えることなくそのまま飛んでいく


(今度は完全に実体のある雷、いや剣だな)


もう一つの雷を避けると雷の向きが変わり、再び此方を目指し向かってくる、


(面倒だな、消しておくか)


左手に闇を盾のように形成するエンダー、しかし正面から一度に四本の雷と共に建御雷之男神が迫る。


四本の雷を撃ち遅れて建御雷之男神が斬りかかる。


エンダーは一本を剣で弾くと剣を持ち替え、棍のように扱い二本を続け様に弾くと前後の残り二本を闇で消し去る。


「何でも切れるからって防げない訳じゃないぜ」


振り下ろされた刀を正面から受けず横から叩くように軌道をずらす。すると地面を切り裂いた刀はバチバチと派手に光りだす。


「防いでみろ、人間」


下から斜めに切り上げると刀の振りに合わせて眩しい程の雷の斬撃破が飛ぶ


あまりの出来事に反応が遅れるエンダー、大きく上体を反らし仰向けに倒れ寸でのところでかわすと、先程の弾いた雷が向かって来る、それを全て闇で消し去るエンダー、直ぐに体を起こし構え直すと中距離から斬撃破は飛ばす建御雷之男神、防げないと考え地面に闇を当て自分の前に体一つ隠れるほどの壁を作る。


壁で斬撃破を防がれると建御雷之男神は手から雷を撃ち壁に当てる、すると雷の当たった壁まで瞬時に建御雷之男神が移動する。


全てを切り裂く刀で真っ直ぐに降りおろす。


(壁を作ったことが間違いだったな、自ら敵の姿を隠すとは愚かなり)


真っ直ぐに壁を一刀両断するがそこにエンダーの姿はなかった。


壁を作るとエンダーは直ぐに後ろに倒れ混む、あらかじめ背面に展開させておいた闇に体が飲み込まれていく。すると壁を両断した建御雷之男神の背後に闇が現れその中からエンダーの姿が出てくる。


「なるほどな、自分の撃ち出した雷を使って瞬間移動する訳か」


「その通りだっ!」


不意打ちをしたつもりが自分が不意を突かれ、刀を振り向きながら振る建御雷之男神。


刀を振りきる前に腕を当て止めるエンダー、返すように片手で剣を振る。


建御雷之男神は刀から片手を放しバチバチと音を立て光る手でエンダーの剣の刃を鷲掴みにし、僅かに血を流しながら止める。


お互いの剣を止め会う二人、しかしエンダーは呟く


「楽しかったよ、建御雷之男神」



お互いがお互いの剣を止め会う中、エンダーの剣に闇が触れ黒く染まる。すると剣が変形し建御雷之男神の掴んでいる所から丁度途切れ、一本の短刀に変わる。建御雷之男神の手を離れた短刀は建御雷之男神の腹部に突き刺さる。


「うっ!なんだと!」


低く唸りをあげると、握っていた剣の破片をエンダーに突き立てる

建御雷之男神の腕に足をぶつけて止めるエンダー


「悪いな、あんまし能力は使わない様にしたんだけど、お前の能力が少し厄介だった」


闇が建御雷之男神の十束の剣に覆う、建御雷之男神の腹部から短刀を抜き取り構え直すエンダー。

短刀のおかげで出血の少ない建御雷之男神は叫びながら斬りかかる


「我の剣に何をしている!?」


それを受ける様に構えるエンダー、一刀両断されるかと思いきや、建御雷之男神の黒く染まった剣をしっかりと止める。

短刀を両手で支え、建御雷之男神の剛腕から振るう長刀を受けるエンダー、片側に剣を傾けまた刀を受け流す。そのまま建御雷之男神が構え直すより速く切りつけ、お互い同時に先と同じ構えを取る。

建御雷之男神が力強く切りつけ、それをエンダーが受け流し、切りつける。あらゆる方向からの一振りを受け流すエンダー、建御雷之男神の体には浅い切り傷がいくつも出来ている。

建御雷之男神は斜めに上から刀を降りきる、それをエンダーが受け流すと、今度は続け様に刀の切っ先で突き刺す。

しかしそれでもエンダーは刀に刀身をぶつけ軌道をずらす、そのまま刀を這わせる様に擦りながら距離を詰め全力で建御雷之男神を切り裂く。

深く切られ傷口を押さえながら後ずさる建御雷之男神、だが傷を負っても攻撃の手を緩めることはない、

刀をぶつけ合う音を響かせながらエンダーは問う。


「そういえば、俺の能力は分かったか?」


「我は触れたものを消し去る、と解釈している」


未だエンダーに刀を当てることが出来ずにいる建御雷之男神


また建御雷之男神はエンダーに斬りかかるが同じく受け流される。しかし今度は建御雷之男神は刀を振り下ろした状態から肩を内側に入れるとエンダーに体当たりを仕掛ける。


予想外の動きにエンダーは腕を交差させて衝撃を殺すも、抑えきれずに後退る。


「受けたな」


そこを狙い建御雷之男神は下から長刀で地面ごと斬り上げる。


建御雷之男神は短剣での攻撃に対して受ける覚悟を決めていた。短剣での攻撃であれば建御雷之男神ほどの技術を持つ者なら体捌きで致命傷を防ぐことができると判断し、体当たりを仕掛けた。

そしてエンダーの実力を加味すれば体当たりのタイミングで攻撃することはないと読んでいた。

もし仮にエンダーが迫る建御雷之男神に剣で怯ませようと攻撃していれば建御雷之男神は僅かな刀傷を代わりにエンダーを一刀両断していただろう。


「しくじった、、」


とエンダーは呟くと苦々しい表情で下から斬り上げられた刀を受けるように短剣を下向きに交差させる。

すると建御雷之男神の剛腕から放たれた一刀の威力にエンダーは体ごと跳ね上げられる。

エンダー自身予想はついていた、刀の長さ的に避けることは不可能だったため防ぐことしか出来なかった、だがエンダーはそれを理解していたため、その後を考える時間があった。

体が僅かに宙に浮いた瞬間に建御雷之男神は刀を構え直し、顔の横に刀身を並べると突きを狙う。


しかしエンダーは今度は二本の短剣を建御雷之男神の目元と足元に投げつける。

すると建御雷之男神は目を見開き、即座に踏み込む事を止めて短剣を弾き返す。

エンダーが狙った場所は人間の体の構造上同時に避けることの出来ない場所だった。頭と足を同時に体の軸からずらせば必ずバランスを崩してしまう。しかし目元と足、どちらを捨てても敗北は免れないことを瞬時に理解して建御雷之男神は攻勢を止めた。


「今のでも取れないとはな、、」


「今度は俺が終わらせる」


即座に剣を作り出したエンダーに建御雷之男神が斬りかかる


エンダーはまた刀を受け流し、建御雷之男神の刀は空振りし足元に刺さる、直ぐに体制を整えようとする建御雷之男神、だがエンダーは振り下ろされた刀を足で踏みつけ抜けないように抑える。

流石に建御雷之男神も驚き一瞬反応が遅れるが直ぐに刀を放す建御雷之男神、その瞬間、エンダーは短刀を逆手に持ち替え拳を作ると、息つく間もなく連続で殴る、怯む建御雷之男神に回し蹴りをいれ、最後に逆手のまま切りつける。


武神と呼ばれる建御雷之男神が戦いの最中に刀を手放す事をほんの一瞬躊躇った。


「迷ったな」


そこを畳み掛けるような攻撃に遂に倒れる建御雷之男神、そこに跨ぐように上に場所取るエンダー、手を開き建御雷之男神の胸に当てる


「俺の能力はな、触れるものをか消し去る訳じゃない、収納するんだ、この闇の向こうには何もなく暗い空間がある、どのくらい広いのかは俺にも分からないが俺は自由に中身を出し入れできる」


手のひらからに闇を展開し笑うエンダー、そこからは吸い込まれそうな底のない暗闇が覗かせる、そしてチカチカと光りを放っている。


「お前の雷、、返すぞ」


耳をつんざく様な轟音が響く、建御雷之男神は声を上げる事もなく全身が炭の様に黒く焦げ行き絶え絶えに話す。


「、、やはり、勝てぬか、、最初から最後までお主には余裕があった、、消して自分から仕掛けず、我の攻撃全てを受けていた、、、何よりもお主の体には傷一つ与えることすら叶わなかった、、」


「建御雷之男神、お前は強かった

その力はどうやって得たのかは知らないがな」


建御雷之男神から言葉は帰って来なかった、エンダーは遠く離れ見守っているアラ達に終わった事を合図し、自分の闇に入り其方へ繋ぎ瞬時に移動する。


「本当に神を倒したのか、、エンダーがここまで強いなんて、、」


神を倒した事実に未だ理解が追いつかず驚きの表情のアラ


「傷一つないんだね」


意識を取り戻したイロナシ、エンダーがゼリエルが治療してやるとイロナシを引っ張る。


「ゼリエル治療なんてできるのかい?」


「当然!万能の神だぞ」


イロナシにゼリエルが手をかざす。


するとみるみるイロナシの血が止まり傷が塞がっていく。イロナシが疑問を口にする前に説明するゼリエル


「人の持つ自己回復力を全快にしている、まあ、細胞を超活性化させて治癒してるからな、寿命は縮むぞ」


「へ~凄いね他にも色々出来るの?」


「当然だ、万能だからな」


話し込む二人にエンダーが速く行くぞと促す、


こうしてまた上の世界に向け彼らは天階廻の中へ進んでいった

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