#1 格闘技の試合
「実況はわたくしアナウンサーの穴井壮、解説は元世界チャンピオンの佐藤宏でお送りします。佐藤宏さん今日はよろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「佐藤さんはどちらが勝つと思いますか?」
「坂菊雄選手よりも長田大選手の方が強いと思いますね」
「それはどうしてですか?」
「見た目と名前が強そうなので」
「そうですか。それでは間もなく試合開始です」
「いよいよですね」
「試合は3分3ラウンド制となっております」
「すごく楽しみです」
「今、試合が始まりました」
「始まりましたね」
“おっ坂選手すごいキックだ!”
「二人の選手はあまり情報が無くて謎ですが佐藤さんは二人のことは御存じですか?」
「坂選手と長田選手は見たことも聞いたこともないです」
“長田選手は強そうだったが空振りばかりだ!”
「長田選手のパンチが全く当たりませんけど佐藤さんはどう思いますか?」
「相手を油断させる作戦でしょうね」
「わざと弱くしているわけですね。元世界チャンピオンの佐藤さんが言っているので間違いないですね」
「そのうち強くなりますから待っていてください」
“おっ、坂選手の強烈なキックがお腹に当たり長田選手が悶えている!”
「坂選手はキックばかりでパンチを全く出しませんが佐藤さんはどう思いますか?」
「これは手を怪我しているかもしれませんね」
「怪我を隠して試合に出場しているということですね」
“長田選手はまだ一発も当てていない!”
「このレフェリーは先程からあまり選手を見ていない気がしますね」
「レフェリーなのに、パンチが怖いんですかね?もっと集中して真剣に見てもらいたいですね」
“おっ、長田選手の強烈な左ストレートで坂選手がダウン!”
「これは弱く見せて油断させる作戦が成功しましたね佐藤さん?」
「そうですね、かなり強烈でしたね。でもまだ分かりませんよ」
「あっ、ここで1ラウンドの3分間が終了しました。佐藤さんは1ラウンドをどう見ましたか?」
「1ラウンドの長田選手は様子を見ていましたね。次のラウンドが始まってすぐに強烈なパンチを浴びせて長田選手が勝つのが想像できますね」
「勉強不足で申し訳ないのですが、佐藤さんは現役時代は何勝くらいされたんですか?」
「41勝です。ちなみに試合の前は験担ぎで毎回カツ丼を食べたりしましたね」
「ちなみに佐藤さんの好きな食べ物は何でしょうか?」
「親子丼です」
「カツ丼ではないということですね。あっ今、2ラウンド開始の鐘が鳴りました」
「坂選手の体力は確実に消耗していて疲れが目に見えて分かります」
「負けるのも時間の問題かもしれませんね」
「あっ佐藤さん。長田選手は目を開けてませんよ」
「余裕ということでしょう」
“長田選手の強烈なキックが顔にヒットした!”
「レフェリーが手で目を覆うほどで、かなりの衝撃でした」
「凄かったです。あのキックは僕も打てません」
“立ち上がれない。ここで試合終了!”
「勝った長田選手ですが、喜んだりガッツポーズもせずに非常にクールな顔をしています」
「勝つのは同然ということでしょうね」
「佐藤さん、試合全体通しての感想を一言」
「怪物が現れましたね。これからがとても楽しみです」