実践訓練その3
今現在LVが、僕は50で皆は50未満だ。
先日の温泉好きのサルのことを考えるとこのあたりのモンスターは皆僕らより格上だと思っていたほうがいいだろう。
チームワークが勝負のカギとなりそうだ。
出発前にエリーゼはマナミドルポーションを10個もらった。まだプレイヤーの中では出回っていない代物だ。
大事に使おう。
しばらく歩くと森に入る
・天龍山脈麓の森
という名前らしい。まんまだな。
森は木が高く、まるでジャングルのようだ。草は多くて長い。ここは完全に人が見放した土地なのだろう。
そんな中一本の道を進む。ここはアランが一人で作った道だ。
道と行って草や土を重力魔法を使い力づくで潰して作った道だが。それでも彼の力の強さがわかる。
僕らはまだまだ小石を動かすので精いっぱいだ。今も手のひらに小石をのせ軽くしたり重くしたり繰り返している。
だがなかなかスキルLVが上がらない。理由の一つは実践ではないからだ。やはりモンスター相手に使った方がスキルLVの上がり方はいい。そして古代魔法だからだろう。
扱いが難しく中々上がっていかない。
「危ない!!」
僕の頬に何かが掠る。
気づけばクリスの矢が僕の頬を掠り近くの木に刺さっていた。そして矢の先にはカメレオンの舌が刺さっていて、カメレオンは必死に舌に刺さった矢を抜こうとしている。どんな神業?それ。
・変色のカメレオン LV55
カメレオンとは色の変わる生き物だ。わざわざ名前にするほどではない。
「悪い。助かった」
「もう。しっかりして?「空間把握」してなかったでしょ?」
今は僕とクリスが前と後ろでやる番だった。
「さっさと倒してしまいましょ?」
エリザベスはアイスウォールを飛ばしながら話す。カメレオンの下半身は木にくっついたまま凍る。
そこからは僕とアイリスが近づき切りつけ倒す。
しかしいきなりLV55か、僕らより強いじゃないか。
「ッッ伏せろ!!」
僕はアイリスに向かって叫び、二人はしゃがむ。
僕らの頭があった部分に大きめの岩が飛んでいく。
・温泉好きのサルLV52×2
「また出たな!?しかも強い!!」
「この森はモンスターが多いのかもしれないな」
僕らに向かって木の上を使い飛んでくる猿。
僕は一気にジャンプして木の幹を蹴り、木の上に上る。
「ウキキッ!?」
僕が気の上に来るとは思わなかったのだろう。猿たちは空中で驚く。
僕はすかさず一匹のサルに重力魔法を使い、サルはわずかに手が木の枝に届かず落ちていく。
「は~い。いらっしゃい」
落ちていく猿に魔法と矢が飛び、地面に着地する前にアイリスが一刀両断する。僕はもう一匹のサルに集中する。
猿は興奮した様子で木の枝を使い、僕の周りを飛び交う。着地先を予想し、かまいたちで木の枝を切り落とす。
「キキーー!!??」
猿はあーーれーーと落ちていく。後は先ほどのサルと同じ結末になる。
ストッ、と僕は木から降りる。
「お兄ちゃんお疲れー!!忍者みたいでかっこよかったよ!!」
「ほんと。ジョブ手に入れたんじゃない?」
「手に入れてないよ?そもそも忍者なんてジョブあるのかな?」
「ん。ありそう。でも独立魔法の使いてな気がする」
「忍法ってことかしら?ありそうね。火遁とかね」
ロマンがあるな、忍者は。でもそうすると剣術が使えなくなるのか。それは勘弁だな。せっかく面白くなってきたっていうのに。
「っっ三時の方向2匹!!」
僕の声にみんな反応し「空間把握」を使う。姿が見えないことからカメレオンだろう。
クリスとエリザベスの攻撃で牽制する。
「「カメレ~~・」」
カメレオンたちは木から落ちていく。え?そんな声だったの?
カメレオンたちは防御力はないようだ。一撃でHPが半分近く減っている。普段隠れているから身を守る事をしないのだろう。
僕らが切り伏せ光となって消えていく。
「お兄ちゃん!上!!」
アイリスの視線の先には3匹の猿がいた。またかっ。先ほどと同じで僕は木の上に上る。
猿たちは木の枝を折り投げつけてくる。僕は木の枝から木の枝に飛び移る。しかし猿はそれを予想しこちらに飛び掛かる。
僕のは剣を振るうが、猿はなんと魔力拳を使い殴ってくる。僕の剣と拳が交わる。
LVと攻撃力は向こうの方が上だが、武器の性能と、雷をエンチャントし、一刀両断した僕の攻撃は五分五分となった。
お互いの剣と拳がはじける。が、僕はすでに着地していて、猿は空中だ。猿はそのまま落ちていく。彼の最後は言うまでもない。
残り2匹。一匹は先ほどと同じかまいたちで木の枝を切り、落とす。
残り一匹。
僕が飛ぶのを見計らい魔力脚を使ってくる。完全にこいつらのジョブは武道家だな。
僕は何とか空中で猿の足を剣で払い木の枝に着地する。 が、多少ダメージをおってしまった。
やはり全力でスキルを使い戦わなければ攻撃を防ぎきれない。LV差のせいだろう。
猿も木の上に着地する。
「キキッ!?」
猿の着地した木の枝を突き破って、クリスの貫通矢が猿の足に刺さる。死角を突いたうまい攻撃だ。
猿は体制を崩しそこにエリザベスのアイスロックが当たる。猿は混乱し、僕はその隙をついて、木を移動し猿と同じ枝に着地する。
「キキーー!!」
猿は体制を立て直し僕と向かう。
そこからは僕の剣と猿の拳がぶつかり合う。
剣で拳を斬れないのは変な感じがするが、この世界は魔力が物を言う。
猿の右ストレートを剣を斜めにし受け流し顔を狙うが猿はそのまま半回転し、左ひじで裏拳のような攻撃をしてくる。僕はガードしそのまま剣を振るうが、猿は手をクロスさせ受け止める。
そんな攻防を何度か繰り返していると、(お兄ちゃん後ろに飛んで!)とアイリスから念話がくる。
スパッ。
そんな音がし僕から木の枝の先にいる猿が落ちていく。アイリスは木の枝ごと切ったと悟る。
落ちていく猿はゆっくり手足をばたつかせ、飛んできた魔法と矢によって消えていく。
「ふっ。またつまらぬ物を切ってしまった」
アイリスが剣をしまいながら呟く。
お前はいつ泥棒の仲間になった。
だが助かった。
「しかし一匹一匹が強いな。全然先に進めてないな」
僕は地面に着地しながら言う。
「ほんとね。このままじゃいつまでたってもたどり着けないわ」
「でもいい修行になるね」
「ポジティブね。まぁそうね。ここを出るときにはみんなLV60くらいにはなってるかもね」
「ん。確実にトッププレイヤーだね」
確かに。
LV50でも他のプレイヤーとの差があった。
日曜日に掲示板で見たのは、LV40になったという廃プレイヤーの書き込みだ。
恐らくそれが僕らの姉妹クラン以外での最高LVだろう。
僕らのようにこんなところや、シークレットゾーンに入ってない正規ルートではそんな感じなのだろう。
ーーカメレオン×2が現れた。
ーーカメレオン×2匹を倒した。
ーー猿4匹が現れた。
ーー僕は猿の攻撃を受けた。
ーーエリーによって回復した。
ーー猿2匹を倒した。
ーー猿の攻撃。
ーーアイリスはひらりと身をかわした。
ーーアイリスの攻撃。
ーー猿はひらりと身をかわした。
ーーアイリスは怒った。
ーー猿は笑っている。
ーー僕が一匹を蹴り飛ばした。
ーー猿はもう一匹の上に落ちた。
ーーアイリスたちはニヤリと笑った。
ーー猿たちは怯えている。
ーー猿の悲鳴が響き渡る。
ーー猿に匹を倒した。
ーーカメレオンが現れた。
ーーエリザベスの重力魔法でカメレオンが落ちた。
ーーエリザベスはカメレオンを踏みつける。
ーーカメレオンは怯えている。
ーーエリザベスは優しく微笑む。
ーーカメレオンは嬉しそうに微笑む。
ーーエリザベスはカメレオンを蹂躙した。
ーーカメレオンを倒した。
ーー僕らは怯えている。
ーークリスが遠くにいた猿に矢を射った。
ーー猿のお尻に刺さった。
ーー僕らは怯えている。
ーー猿は泣いている。
ーーアイリスは笑いながら猿を切り伏せた。
ーー僕らは引いている。
ーーエリーゼは飛び回っている猿に木の枝を投げてみた。
ーー猿のお尻に刺さった。
ーー僕と猿は怯えている。
「はぁはぁはぁ。あれが泉かな?」
「ふぅそうみたい」
「やっと着いたぁ」
「ん。少し休みたい」
「ほんと。連戦しすぎたわ。MPももうすっからかんだわ。」
マナポーションは半分近く使っていしまった。だがLVは面白いように上がっていく。これなら何とかなるかな。
そこにはきれいな泉が広がっていた。
少し休んだら調査開始だ。