修行編、後編
「はぁ~笑ったわい。まぁ最初はそんなもんじゃ」
笑い疲れたアランは入れ歯を入れなおし話す。
「よいか。重力魔法だけでは人を浮かせるようになるにはスキルLV100は上げなければならん」
「「「「「100!!??」」」」」
嘘だろ。
ということはこの爺さん一体スキルレベルいくつなんだ。
「ふむ。今皆が考えてる事に答えよう。儂の重力魔法のスキルLVは125じゃ。」
「「「「「125!?」」」」」
規格外すぎるだろ。やはりこの爺さんは変態だ。
「そしてこの杖。この杖はエリザベス達が持っているものよりも10倍は効果が高い。これを使わねばお主らを浮かせることはできんかったろう。じゃが人は上げられんでも物を持ち上げる方がはるかに簡単じゃから、そのうちできるようになるじゃろう」
「人より物の方が簡単な理由は?」
「それは魔力抵抗があるかないか、じゃな。人は無意識のうちに自分にかけられた魔法をレジストしてしておる。じゃから魔法が物より効きにくいわけじゃ」
なるほど。しかしまじめな話になると入れ歯落ちないんだな。ふざけると入れ歯は落ちると。
まぁだから何だって話なんだけど。
「まぁ気長にやりなさい。今ここで頑張ったとしてもたかがしれとる。冒険しながらでも修行はできるじゃろう。日々修行じゃ」
日々修行。
人生は冒険であり修行だな。
まぁだから楽しいんだけどな。
「じゃああとは「念話」と、お兄ちゃんは雷魔法だね!!」
あ、忘れてた。念話があったのか。
「うむ。念話は全員一緒にはできん。まずは・・・ウィルが皆にやってもらおうかの」
トップバッターは僕のようだ。
「よいか?「空間把握」で相手の頭を範囲に入れる。そして相手の魔力の色に同調するようにして話しかけるのじゃ。これは聞いていても分かりずらいじゃろう。やってみなさい」
確かに同調するという部分がわからなかった。
「感覚的には先ほど重力魔法の魔法陣に触れた時の感覚じゃ。自分の中に何か入ってきて同調する。そんな感じじゃ。相手の頭の中に語り掛けることじゃな」
まずは魔力を広げ、一番近くにいるアイリスにやってみる。
「へぇ。他の人の「空間把握」の範囲に入ったら何となくわかるんだね!」
と、いうことらしい。アイリスは僕の範囲に入ったことが分かったようだ。
「アイリスもウィルの魔力を受け入れるよう意識するんじゃ。嫌がると無意識にレジストしてしまうからの」
「それなら大丈夫!!お兄ちゃんを受け入れる準備はいつでもできてるよ!!」
下ネタだね?今君下ネタ意識したね?
なんで爺さんが顔赤くなるんだよ。あんたは受け入れさせないぞ?
少しづつアイリスに語りかける。
同調の部分の感覚がわからずなかなかうまくいかない。
10分はこうしていただろうか。
だんだん頭に語り掛ける感覚がわかってきた。
(アイリス。聞こえるか?もっと家事を手伝うんだ。家事がしたくなーる。家事がしたくなーる。家事が……。)
「う、うん。なんか入ってくる。うはっ。あ、だめ」
アイリスが艶かしい声を出す。
これ大丈夫か?アイリス爆発しないよね?突然ボンってならないよね?
(家事がしたくなーる。洗濯がしたくなーる。食器を洗いたくなーる。)
「あん。なんか聞こえてきたかも。あっ、なんか変になりそう。あ、は。」
なんでそんなに色っぽいの?何で爺さん顔赤くなってるの?うちの妹に手を出したらはっ倒しますよ?
(……ちゃん。聞こえる?お兄ちゃん!!)
(あ、ああ!聞こえる聞こえる!!なんか変な感じだな!!)
(えへへ~~お兄ちゃんの声が響いてる!ねぇお兄ちゃん?)
(ん?なんだ?)
(えへへ~~。大好きだよ!お兄ちゃん!!)
突然の告白に驚き念話を切ってしまう。
・スキル「念話」を手に入れた。
何とか覚えられたようだ。
「ふむ。無事に覚えられたようじゃの。いいものも見させてもらったし。ほれ、さっさと他の者ともしてしまいなさい」
この爺い確信犯なんじゃないだろうか。
「ん。ウィルが入ってくる。ああん、あ、だめ」
「ウィル激しい。もっと優しく」
「確かに、ん。この感じは。あや、ん」
何故か3人とも色っぽかった。そして3人ともアイリスみたいな事を言ってきた。
僕の顔は今真っ赤だろう。
「と、とりあえず無事できて良かったよ」
「お兄ちゃん顔真っ赤ー!!」
「ふふ。ウィル可愛いわ」
「ん。抱きしめたくなる」
「ほんと。初めて奪われちゃった」
変な言い方するんじゃない。僕に警告を出させたいのか?今の僕なら、その気になれば一瞬で出せるぞ?
「なぁアランさん。初めはみんなこんな感じなの?」
「うむ。相手に同調する感覚や強弱がわからないうちはそんな感じじゃな。だが一度「念話」をつないだ者同士は次からとても簡単にできるぞ?一度近くにおるエリーゼにやってみい」
(聞こえるか(大好き。結婚して。)なるほど。聞こえてるね。)
「確かに簡単だった」
「それはスキルを習得したのと体が相手の色を覚えたからじゃな。スキルが育つと、特定の相手同士じゃったらスキルが記憶し、「空間把握」を使わんでも話せるようになるぞ」
それはいいことを聞いた。戦闘時、声を出さなくてよくなるのは、かなりのアドバンテージになるだろう。
「ではウィル以外は同じ方法で「念話」を習得せい。そしてウィルはこっちじゃな」
アランは手のひらサイズの石を取り出す。
「それは?」
「これは珍しい「雷の魔石」じゃ。儂もこの一つしか見たことがない。これを使い「雷魔法」を習得するんじゃ」
「えっと。それは危険なんじゃ?」
「大丈夫じゃ。他の属性もやったのであろう?なら簡単じゃ」
僕は恐る恐る石に触り魔力を込め。
「「うぎゃゃゃゃあぁぁぁ!!」」
僕と石をまだ手放していなかった爺さんは感電した。
「こ、これ!!儂が手を放してからやらんか!!」
「ふざけんな!!何が「簡単じゃ」だ!すっごい痛いぞこれ!!」
「当たりまえじゃ!これは覚えるようの石ではないからな!!じゃがこれしかないんじゃ!!我慢せ。フガフガフガ」
「今入れ歯を落とすなよ!話がごちゃごちゃになるだろ!!」
「入れ歯は仕方ない!石も仕方ない!儂悪くない」
「韻をふむな!!何ラップみたいに言ってんだ!!腹立つな」
「ならやめる?諦める?キャラメル?やるかどうかはお前次第。大事なのは気持ち次第」
「へたくそか!?何気に入ってんだ!!なんだよキャラメルって!!関係ないだろ!!」
「フガフガフガ」
「入れ歯を落とすな!!」
話が進まない。
何ここぞとばかりにボケだしてんだこの爺さん……。
「と、とにかくじゃ。これしか方法はないんじゃ」
「そうかよ。貸せよ。もうなんかあんたと話すの疲れたしいいや。とりあえずやってみるわ」
僕はアランから石を奪い取り魔力を流す。
「うぎゃゃゃゃあぁぁぁ!!」
プスプスプス、僕の髪の毛は漫画みたいにチリチリになった。
「ふひゃひゃひゃ!!」
こいつ殴りてぇ。
こうして僕は何度もしびれながら無事「雷魔法」を習得した。
因みに最後に一発殴りました。