天龍山脈目指して・・・。
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(チャット・ログ)
・ジンーー何をとち狂ったらそんなとこに行く気になるんだか・・・。まぁ流れ人の考えることなんかわかんねぇか・・・。
・ウィルーーどこかいい道知らない?こっちも色々調べてみたんだけど全然見つからなくてさ。
・ジンーーだろうな、あんなとこに用のあるやつはよっぽどの頭のおかしい奴か、自殺願望者だけだ。
・ウィルーー…ということは頭のおかしい奴が通る道はあるってことだね?
・ジンーー・・・まぁな。ったく仕方ねぇ。報酬はお前らの土産話な?お前らの場合その方がよさそうだ。
・ウィルーーわかった。助かるよ。
・ジンーーじゃぶじゃぶの里から山脈沿いに北東の道に進むと、遠目では崖にしか見えないが、一カ所だけ細い道がある。馬じゃと通れない。デブも通れない。ほんとに細い道だ。そこを進むと山の中腹まで登る道がありそこを越えると「天龍山脈」に行けるって話だ。だか途中に魔物がいて生半可な奴じゃ通れない。
・ウィルーーそこを行けばいいんだね?因みにどんな魔物がいるかわかる?
・ジンーーさぁ、そこまでは。なんせそこに行ってみようと思うのは、お前たちくらいなもんんだ。例え金銀財宝があったとしても、王国軍だって動かないぜ?
・ウィルーー僕らは流れ人だからね。大丈夫。情報ありがとう。
・ジンーーまぁ、そう信じてるぜ?情報を渡した相手が死んじまうってのが情報屋にとってはかなりの損害になるしメンタル的にもきついからな。じゃあ、いい土産話待ってるぜ。
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「……だってさ」
「なんだ~!そんなとこにあったんだ~」
「ほんと。一日かけて探したのにね」
「ん。知らなきゃ見つからない」
「情報屋様様ね。早速行きましょうか」
火曜日。
今日もタクは学校に来なかった。仲間集めにあっちこっち行ってるらしい。加奈とユリはかなりご立腹な様子だった。
「ダブルナイツ」「悪魔結社」「鋼鉄の騎士団」は現在新人勧誘に勤しんでいる。「悪魔結社」は20名に「鋼鉄の騎士団」はすでに50名を超え、巨大クランになりつつある。
情報によると「カンパニー」の姉妹クランっていうのが大きいらしい。こっちに迷惑かける奴がいなきゃいいけど。
「ダブルナイツ」も8人そろいそうみたいだ。タク以外は皆女だとユリが学校で愚痴っていた。
僕らはアイーダは戦闘職ではないので未だに5人。それそれ誰か入れたいもんだ。男だといいな。BLではないけど。
いや、ほんとに。
しかし皆が、僕らが山下グループ社長の関係者だと知り、以前よりより厳重に僕らを警護してくれるようになった。もちろんあの場にいた連中のみしか知らないが。皆、「カンパニー」は勧誘はしない。と情報を流し、現在加入希望者は0になった。
それに皆事実を知ってなお、今まで通りに接してくれていることがありがたい。
変に気を使われなくて助かった。
まぁエリーゼと、エリザベスに対しては皆「女王様」「聖女様」と二つ名で呼ぶようになったが。「悪魔結社」に関しては二人を崇拝しだしているし。「こんな素晴らしいゲームを作ってくださったご家族の方に失礼なことはできない」だそうだ。
「今まで通りに接しなさい。」というエリザベスの言葉に涙していたくらいだ。「なんてお心の広い方々だろう」と……。
まぁ廃ゲーマーからしたら山下グループ社長は神のような存在みたいだ。
「あった。ここだな」
「これは道っていうよりも隙間ね」
「そだねー。ムギたちはここまでかな」
「ん。よしよし。ご苦労様」
「この二日間走りっぱなしだったからね」
僕らは昨日山壁沿いに西に走りっぱなしだった。それでも道がなく今日仕方なく情報屋を頼ったのだった。
「まずは食事をしてバフをつけてから行きましょう?ここはなんだか魔物が来ない気がするし」
僕もクリスの意見に賛成だ。道からは冷たく嫌な空気が漂っていて近くに魔物が近づいてくる気配がない。恐らくこの先は魔力が濃いのだろう。息が詰まりそうな空気を感じる。
とりあえずここで食事にする。うまみたっぷりの恐竜の肉を使ったシチューにする。この世界にはルーがないので一から作るった。
小麦粉にバターを加え、一塊になるようにかき混ぜながら弱火で熱していく。シチューに天敵は焦げるということだ。白くなくてはシチューとは呼べない。慎重にかき混ぜる。その後熱しておいたミルクを少しづつ、何度もわけながら加える。
初めは少量ずつ。
玉にならないようゆっくり伸ばしペースト状にする。ある程度伸びたらあとは一気に注ぐ。
ここまでできれば塩コショウするだけでも、もうおいしい。なのでフライパンで炒めた肉や野菜をたくさん入れるだけでいい。
肉と野菜のうまみがたっぷり詰まったシチューの完成だ。後はパンをつけながら頂く。
皆にはとても好評で、リアルでも作ってくれと言われるほどだった。
だが粉からはめんどくさい。たまに作ると約束し、忘れてくれるのを願おう……。
「さてさて、おなか一杯になったし!!フォーメイションSTで行くよ!!」
ストレートのことか?一本道だからか。こいつだんだんテキトーになってきたな。
馬をインペントリに仕舞い、僕、エリザベス、エリーゼ、クリス、アイリスの順番で進む。
「しかし狭いな。盾職がいたらしまわないと通れなかったろうに」
「そうね。そしたら盾職の力半減ね」
道は狭く長く、先ほど横向きにエリザベスが入ったら胸がつっかえたほどだ。
その時から他の三人は落ち込んでいる。アイリスなんかアイリスが二人は重なって入れるんじゃないかというほどだった。
……頑張れ。
お兄ちゃんはアイリスの味方だぞ。そのままでも十分可愛いからな。
しばらく進むとだんだんと道が開けてきて、横幅5mほどの道になった。
「こっから登山か~」
「高山病とかにならないかしら」
「ん。低い山だし、中腹までしか行かないのであれば大丈夫」
「そうね、でも気をつけないとここよりも酸素が薄いから」
ただでさえ普通の場所より呼吸がしにくいのだ。ここよりは勘弁だな。
ジンによると魔力だまりに行くと低レベルの人間は倒れてしまうらしい。高レベルになると体内の魔力が増えるのと、魔力抵抗がつくので、体がそう言った場所に慣れるらしい。
僕らはレベルがまだまだ低いらしい。いったいこの世界はなんレベルまであるのだろう。
エリザベスの予想では100は軽く超すだろうとのこと。もしかしたら四番隊隊長やフェラールのギルマスはそのくらいあるのかもしれないということだ。
……全く長い道のりだ。
吹き抜ける風の音しかしない坂道を上る。一応魔物が近くにいることを想定し静かにフォーメイションを崩さずに進む。30分はたっただろうか……。
特に何もない。
そんな中僕らは‥‥飽きていた…‥。
「じゃあアイリスね!!古代エジプトの頃の墓からも発見されています!!」
「ん~……。もう少し」
「じゃあ次ね?素材は色々なものがあります!!」
「わかったわ!「枕」ね!」
「ピンポンピンポン!!じゃあ次はエリザベスね!」
僕らは連想ゲームをしていた……。だって暇なんだもん…‥。土の壁がずっとあるだけで特に何も変化はなかった。
「パソコンのエッチな動画はゴミ箱フォルダに隠してあります」
「ん~わかんないなぁ」
「次々!!」
おい……まさか……。
「お風呂に入ると胸ばかり見てきます!!」
「え~っわかんないなぁ!」
「ん。次々!!」
やっぱり……。
「夜皆が寝静まった頃に「わかったよ!僕だよ!胸ばっかり見てごめんなさい!」あら、もう少し出したかったのに……」
「お兄ちゃん早いよ~」
「そうよ。もっと聞きたかったわ」
「ん。もっと見てほしい」
皆ニヤニヤしながら答える。やめてくれ。絶対一問目でわかってただろ、この反応は。何で知ってんだよ。
僕が嘆いていた時山の開けた場所に出た。山の中腹あたりだろう。
「やっと着いたな……あっ」
「そうね……あっ」
「……」
「まんまの名前ね」
・温泉好きなサルLV35 ×40
・のぼせやすい大猿 LV55
僕らは山の中腹にあった温泉に入った、猿野軍団に遭遇した。
僕らは突然の遭遇に固まる。サルたちは頭の上にタオルをのせたまま、こちらを見て固まる。大猿はのぼせている。
「「「「「「「キキーー!!」」」」」」」
「セ、戦闘準備!!」
「っというか逃げた方がいいんじゃない?」
「っ確かに!LVが高い」
「ん。しかも多い」
「っ撤収ーー!!」
僕らは急いで来た道の横にあった坂道を下りていく。
天龍山脈が見えたので進行方向はあっているはずだ。
「のぼせた大猿が来たら間違いなく勝ち目はないわ」
「ん。ブーストかけ終わった」
「ナイス!でも向こうも早いわ!!」
「お兄ちゃんだけだよ逃げ切れそうなのは!」
「っくそ!僕がしんがりを務める!!早く走れ!!」
アイリスが言った通りサルたちはどんどん距離を詰めてきていて、速さで勝てるのは僕のみだった。
「アイスウォール!!」
振り向きざまに氷の壁を作るエリザベス。
「ッッナイス……え?」
エリザベス機転で道を塞いだが、サルたちは横の壁を使い、次々に氷の壁を乗り越えていく。
「……くそ!!先に行って!!」
僕は立ち止まり、火のエンチャントをしながら、乱れ切りにかまいたちを使い、炎の斬撃が飛び交う。
「「「「キキーー!!??」」」」」
何匹かのサルに当たりサルは激しく燃えだした。
が、ほとんどは飛び上がり、斬撃をかわす。
なんて身のこなしだ……が空中にいればよけられないだろ!!
僕は早斬りを使い着地をする前のサルたちを切りつけていく。サルたちをくぐるように斬り、左右に通り過ぎようとするのを切り伏せ、正面から来るサルを串刺しにした。
が、大群相手に串刺しはよくなかった。剣を抜くのに時間がかかり、次のサルに飛び蹴りを食らう。
「……グッッ」
僕は3mほど飛ばされ、蹴ったサルはドヤ顔で喜んでいる。
僕は素早く立ち上がり、何度もサルを斬るが終わりが見えず、だんだん数が増えてきてしまった……。
「ウィル!!」
声と共に僕はみんなの方に俊足を使い走り出す。と、同時に僕の横を皆の矢や魔法が飛んでいく。
「ウォーターウォール・アイスウォール!!ファイアウォール!」
水の壁を凍らし、僕の後ろには先ほどより大きな壁ができた。その後に火の壁ができ、勢いよく氷の壁を飛び越えて来た猿は炎の壁に突っ込んでいく。
「「キキーー!!」」
サルたちは燃え、大分距離がとれた。
「みんな、助かった!!」
「そういうのは後よ!!」
「そうよ!!見て!正面に木で出来た一本橋があるわ!あそこを渡ってサルを待ち構えるの!」
正面には細い一本橋があった。
確かにそこを越えればサルたちは一列になってくるしかない。好機だ。
僕らと猿たちとの距離は30m。
橋までは50m。
40m。
30m。
20m。
猿たちの声がだんだん近づいている。
10m……。
振り返ると猿との距離は10mもない。
「走れーー!!」
アイリスの叫びに皆全力で走る。
何とか猿より早く橋を渡る。振り返らずに全力で。
……ふと、橋の真ん中あたりで違和感を感じ振り返る。
「……え?」
僕の声に皆振り返り立ち止まる。猿たちは走の前で立ち止まっていた。
「……高所恐怖症なのかしら?」
「……猿が?それはないんじゃない?」
「ん。なんか変。猿の顔が変」
「それは元から……確かに変ね。ニヤニヤしているわ」
確かにサルたちは「してやったぜ」みたいな顔をしている。実に腹が立つ顔だ。
「何であいつら……。おいおいおい!!嘘だろ!!みんな走れ!!」
僕の声に皆僕の視線の先を見る。
そこには大きな岩を持った大猿が高い場所から見下ろしていた。大猿はニヤっと笑うと橋目掛けて岩を落とす。
「「「「「っあんのサルめーーーー!!」」」」」
僕らの声は山の間にある谷に響き、僕らは端と一緒に谷底に落ちて行ってしまった……。