温泉の都までの道中、前編
「温泉にいこ~!!」
「……は?」
ここは「カンパニー」ホーム。装備が完成するまでの3日間は、僕は調理とリアルで家事に勉強、皆は勉強する必要がない為アイーダのライブ活動のサポートをしていた。
そして土曜日。
装備が完成しホームで装備の確認をしていた……んだが、いきなりアイリスが叫びだした。
……というか顔が近い。
「な、何が温泉なんだ?箱根かどっかか?ならまず予約を」
「ちっがーうよ!!お兄ちゃん!!AOLで温泉に行くんだよ!!」
「と、言うことは北東に進むことにしたのか?」
「ん。温泉の後、獣国に行きたいニァ~」
「そうね。獣国に行きたいクマ」
そっちが目的だな……。
「ふふっ。獣国もいいけどまずは温泉よ。混浴に入りたくない?ウィル」
「そうだよお兄ちゃんみんなで一緒に入ろうよー!!」
なるほど。確かに温泉は魅力的だ。
「だけど混浴に入る気にはなんないな。リアルで一緒に入ってるじゃん」
幼稚園の頃から一緒に入ってんじゃん。
「そこは「こ、混浴……」って顔を赤くするとこなんじゃないの?」
「ん。男として変」
「色々な魅力的な女の子の裸が見れるわよ?」
「確かにそうかもだけど、皆より魅力的な女がいるとは思えないけど‥…」
「「「「ぇえっ」」」」
何でお前らが顔を赤くすんだよ。アイリスはしっぽが千切れんばかりに振られ、他は長い耳がピコピコ振られていた。
「お、お兄ちゃん。いきなりなんて」
「ん。不意打ちはずるい」
「まだ胸がどきどきしてる」
「はぁ。食べちゃいたくなってきた」
チョロインかお前らは。らしくない。それとエリザベス何を食べる気だ?貞操の危機を感じる。
「お兄ちゃん!!私のしっぽがどこから生えてるか気にならない!?」
それは気になる。
「ウィ~ル。こっちの世界のこの体がどうなっているか気にならない?
え?なんか違うのかな?
「ん。エルフの体だよ?エロエロだよ?」
そうなの?そう言われるとなんか気になってきた。
「このアバター結構細部までいじれるのよ?細部まで」
二度言わないでくれ。警告が出そうだ。
「ま、まぁ、混浴には入らないけど温泉は魅力的だな」
「え~入ろうよ~!まぁ行ってから誘惑するからいいか!!」
「そうね。誘惑すればいいわね」
「ん。逃がさない」
「そうね。ここでらで心をおとしてあげようかしら」
エリザベスなら本気でされそうで怖い。というか奴隷にされそうだ。
「じゃあ、とりあえず温泉の都「じゃぶじゃぶの里」を目指すってことでいいんだな?」
「「「「っっうん!!」」」」
こうして僕らは北東にある街、「じゃぶじゃぶの里」に行くことになった。
「しかし北東に獣国なんてあったのか?」
「あるらしいわよ。ジンの情報によるとね」
「ジンってあの情報屋の?フェラールに行ったのか?」
「行ったわよ。アイーダのライブ活動にね」
「でも今ほとんどのプレイヤーは王都におるんじゃなかったっけ?」
それか残りはボーズ街か……。
「あら?気づいてないの?もう三陣のプレイヤーが来ているのよ?」
「ん。いいカモだった」
言葉に気をつけなさい。
「すごい人気だったのよ。アイーダ」
「そうだよ!!すごい人だかりで「鋼鉄の騎士団」総出になったんだから!!」
それはすごい。
アイーダ着々と夢に向かって頑張っているんだな。
今度「鋼鉄の騎士団」にはお礼を言っておかなきゃな。
「しかし何でジンが出てくんだ?」
「この前の「古代の島」の情報はどこから出たんだ?って聞かれたからジンを紹介したのよ」
「まぁ私たちが情報をかなり独占しているけど、まだほとんど行けてない所ばかりだからね」
「そだよー!!だから姉妹クランに限定してジンを紹介したの!!」
「ん。「悪魔結社」は南西に、「ダブルナイツ」は北西に。「鋼鉄の騎士団」は色々に分かれて攻略に向かってる」
なるほど。そして「カンパニー」は北東ってことか……。
まぁ西の「帝国」や南西にある「聖国」には行く気になれないからなぁ。いい噂聞かないし。
それに比べ、北西の山脈を越えれば獣国。その下にエルフの里。獣国の北東にドワーフの国がある。
昔、異種族とののしられ迫害されていた。
それを勇者が、3種族を束ね、王国の奥に土地を与えた。
今だに「エルフ」「獣人」「ドワーフ」の3種族を迫害対象ににしている、人族主義の聖国。奴隷制度を作り、力で3種族を奴隷にしようとしている、実力主義の帝国。
おそらくどちらも、たくさんのイベントが待っているだろうが、何となく行きたいとは思わない。
それよりも魅力的なのはフェラールから海を渡って東にある「火の国」。
「和服」や「刀」がある火の国だが現在行くことができない。
原因は五年前ほどから、海に漂う「幽霊船」らしい。
海に大きな霧が漂い、進むと「幽霊船」がいて、いまだに誰も通れないという話だ。
オリバー曰くレイドボスだろうという話だ。だが近海にいた「クラーケン」相手に苦戦した僕らにはまだ早いだろう……。
「「情報屋」での打ち上げ楽しかったねー!!」
「そうね。まぁ普通のお店は追っかけが多くては入れなかったからね」
「ん。撒くの大変だった」
「でもおかげで「情報屋」の場所は全くばれなかったわね!」
「まぁ撒いたっていうより二人のおかげだったけどね」
「まさか街中で男どもをひれ伏せるとは思わなかったわ」
「ん。お姉ちゃんの一言のおかげ」
「ちーちゃんもよ!!あの睨みはからリ効いてたわ」
「ん。お姉ちゃん歩きにくい」
「いーじゃない。うりうり~」
一体何って言ったんだエリザベスは。
伝家の宝刀「ひれ伏せなさい」とでも言ったのだろうか?あれを言われるとなぜか大人子供関係なくなぜかみんなひれ伏せてしまうからな。
あれは不思議だ。
「そういえばアイーダは今日は?」
「アイーダはリアルの用事よ」
「お母さんのライブなんだって!」
「ん。一週間くらいダイブインしないかもって」
「でもちょうど良かったわよね。追っかけが今血眼になって探してるだろうし」
おそらくそれは4人の事もだろう。最近必ずホームの前にはだれか張り付いており、僕らは転移ポータルで広場に移動している。5人のファンと「カンパニー」への加入希望者だろう。
いつも彼女たちを守ってくれてる「鋼鉄の騎士団」には今度何かお礼をしよう。この世界ってプロテインってあるのかな?
筋トレグッズは課金であったな。
というか何故誰も料理は手伝ってくれないのだろう。皆の僕への愛はそんなものだったのか。なんか悲しくなってきたのでやめよう。悲しすぎて前回の倍の量を作った僕であった。
今日は念には念を入れ「試練の塔」の近くにある「駐屯地」までポータルで飛ぶ。
遠周りになるが僕らにはすばらしい相棒がいる。
「さてさて、じゃあご対面と行きますか」
「待ってましたー!!」
「ふふっ。楽しみね」
「名前は任せて」
「え?エリーゼがつけるの?」
メニュー画面を操作しイベント報酬の「黒馬」3頭を出す。
目の前でボンッと大きな音と白い煙が出て、その中から次第に3頭が姿を現す。
でかい……、というか怖い……。
馬は普通、体高160~180cm、重さは30~1000kgとあるがこいつらはそんなもんじゃない。
確実に体高250cm重さは1500kgはあるだろう……。なんだか黒色も相まってボスキャラみたいだ・・・。
「ん。あなたたちは「ムギ」「ホップ」「バクガ」で決まり」
「あっっ!!まって「「「ヒヒーーン!!」」」あ~~もう手遅れか」
馬はつけられた名前に喜びを見せる。
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・黒馬ーームギ、ホップ、バクガ HP1000
スキル、石化ーー石になり無敵になる。ただ動けなくなる
10大位階中10
食事は大抵のものなら何でも食べる。
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あ~~。忘れてた。
エリーゼはその時気に入った物や、好きな物の名前を付ける。今回は前者だろう。何故ビール。
小学生の頃、野良猫にイチゴ、メロン、バナナとつけていたことがある。その時好きだった果物の名前だ
エリザベスは頭を抱える。妹の唯一の欠点はネーミングセンスのなさだという。
「ねぇエリーゼ。なんでその名前にしたのかしら?」
「ムフ。昨日TVでやってて響きが気に入った」
だろうね。そんな感じの名前だよ。
まぁ僕の考えていた「クロ」「ブラック」「タマ」よりましか……。
「まぁーいいんじゃない??アイリスの考えた「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」よりいいし!!」
「そうね。私の考えた「トン」「チン」「カン」よりましね」
「私の「ナイト」「メア」「ノワール」の方が良かったのに」
エリザベスの方が良かった。全部かっこいい。僕のは言わない方がいいだろう。
というか絶対二人はリズムいいので考えたな。トンってブタだし、チンは、言いたくないな。
まぁそう考えたら「ムギ」「ホップ」「バクガ」は悪くないかもしれない。
次何か動物が仲間になったらエリザベスに任せよう。エリーゼを止められたらだが。
とりあえず僕とアイリスは駐屯地の周りで馬に乗る練習をする。
馬具はこのことを考え事前にテイラーに頼んでおいた。サイズも変更のきく魔法が施されている。
便利な世界だ。
・スキル「馬術」を手に入れました。
しばらく経つとやっとスキルを覚えられた。
最初は高くて早くて怖かったが慣れると大きいので安心感がある。とても安定していてむしろ初心者向けに感じる。
馬には二人のっても大丈夫そう。
なので、僕、エリーゼ。アイリス、クリス。エリザベス。に分かれ馬に乗る。
エリザベスは一人で乗るとほんとにどこかの女王様か、覇者みたいだ。似合いすぎている。
そして今回の装備変更でミニスカートが増えた。
みなの生足がやけにエロい。まぁスカートの中は謎の光によって見えないが。
というかエリザベスはあの中、何もはいてないんだよな。
馬の毛でチクチクしないのだろうか……。
「っっいて!!」
「ん。今変な事考えてた」
なぜわかる。
後ろにいるはずなのに。
「ふふっ。もっと見ていいのよ?何ならスカートの中見えるようにする?」
「お兄ちゃん!!アイリスのパンツも見て!」
「やーちゃん!!私のもいいわよ!!」
何だこの変態どもは。見ないわ。
というかこの子たちの将来が心配になる。
まぁこんな感じでとりあえず出発するのであった。