チュートリアル
帰宅後家事を終わらし、三人で夕食(勿論僕が作る)。
その後風呂に入り(結局三人で入った。週に二、三回は一緒に入っているので特に何とも思わない。兄弟なんてそんなものだ。……って自分に言い聞かせる)その後ユイと姉さんは自室でゲーム、僕は日課の勉強。来週になったら勉強時間が減るので念入りにやっておく。
終わった後携帯にタクからのメールで掲示板があるとの情報を入手。
早速掲示板を開き流し見る。
たいした内容はないみたいだが自分は女神様に優しくしてあげようと心に誓う。
時刻は23時30分。
後は寝るだけという状態でVR機器をセット。カメラを机に置き全身を撮影、ベルトを体に付け作動。そして最後にベットに横になりヘッドギアを被る。
このヘッドギア、通常はひとつあれば様々なソフトをインストールし使用出来るがAOLはそれだけの為の専用ヘッドギアがある。山下グループの本気が伺える。
さて……。
「ダイブイン」
目瞑っているのに白い空間にいる不思議な感覚に体が浮いたようなフワァと心地よい様な感覚になる。
幽体離脱ってこんな感じなのかなぁなんて考えていると……。
データ確認
確認完了
脳波確認
確認完了
ID00112
神城弥生様の登録が完了しました
データアップロード
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14%
45%
64%
85%
92%
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アップロード完了
神城弥生様、お待ちしてありました。
それでは行ってらっしゃいませ。
機械音だが優しい女性の声がした後地に足がつく感覚がして僕は目を開けた。
見渡す限りの白い空間。
ぽりぽりとポテチを食べこぼしながらゲームをする幼女。情報通りだなと思いつつ、幼女の口を拭いてあげようと思い歩こうとするが思いとどまる。僕までロリコン認定されたら皆になんて言われるか。
考えただけでゾッとする。
「ん?おお!おそかったのぉ!!見ての通りワシがanother of life onlineの世界のめぎゃみさまちゃ!!あっ」
噛んだ。
確実に噛んだ。
見ての通りというところも何処を見て、目の前の幼女が女神様と判断すればいいのかわからない。しかし僕は彼女に優しくすると心に決めている。
「こんばんは、女神様。神城弥生と申します」
出来るだけ優しい笑顔を作り挨拶する。
「ふぇ??お、おう!礼儀正しいの!なら親しみを込め弥生と呼ばしてもらおうかの。わしは創造と空間を司る女神フィリアじゃ!!」
噛んだことに気付かなかったと思い嬉しそうに挨拶するフィリアは両手を腰に置きドヤ顔で挨拶した。
良かった。
次噛んでたら笑うのを我慢できなかっただろう。よく頑張ったフィリアよ。
「フィリア様ですね?よろしくお願いします。ところで質問があるのですが宜しいですか?」
「なんじゃ?わしわ寛大じゃ!何でもきくがよい!まぁ今は答えられないことも多いがの。あとわしとお主の仲じゃ!敬語はいりゃん!!あっ」
貴方は僕を笑い殺す気ですか?
「で、ではお言葉に甘えて。創造と空間を司るというところ。あまり聞き慣れない言葉だったから気になって」
「ふぇ?あ、ああ。そうじゃろう。唯一神のワシだけに許された力じゃからな。創造の力はAOLの世界を作った力のことじゃ。この空間もワシが作った!空間の力はお主らの世界、地球といったかの、とAOLを繋ぎお主らを安全にこちらの世界におきゅるちからのきょとじゃ!あっ」
成る程。そういう設定か。
あと一々、あっっ!て言わないで。
笑いを我慢できなくなるから。
「AOLの世界は魔物が繁殖して困っていると聞いたんだけど、その創造の力でなんとかできないの?」
「えっ?う、うんそうじゃな。出来んこともないがリスクが大きすぎる。世界には光があれば、その分闇がある。神の力というのは光の力じゃ。もしワシが力を使えば一時的には良くなるが、その分よくないことが起こる。なので地上の人間である住民、そしてお主らに何とかしでもらうのが一番リスクが少ないのじゃ。その為にお主らには申し訳ないが地球からきてもらったというわけじゃ。まぁその分特別な力を与えるがの」
よしっ。噛まなかった。
よく長ゼリフをいいきったな。偉いぞ。
「特別な力?」
「うむ。成長率補正じゃよ。地球には魔力がないみたいじゃがAOLにはある。それを利用しお主ら流れ人には、AOLの人々が一生かけても届かない力を短期間で習得できる様になる。勿論本人の努力次第じゃがな。そして当然魔法も使える様になる。つまり本人次第でどんな職業にでもつき、慣れるということじゃ」
成る程なぁ。それは凄いことだ。
「まぁとりあえずそのままの格好じゃなんじゃからAOLでのお主の容姿から決めていこう」
フィリアはそう言い指を鳴らす。
まぁ音は鳴らず「カス」っと悲しい音がしただけだが。
あっ悔しそうな顔してる。
すると目の前に光の粒が集まり目の前に僕が現れる。裸の状態で。
「えっ何で裸?」
「そりゃお主が今裸じゃからの。自分と同じ姿だ目の前にあれば弄りやすかろう」
自分の体を見たら確かに裸だった。今まで裸で喋ってたのかと思うとショックで、そのせいか恥ずかしさはあまり感じなかった。
ん?待てよ?
「ねぇ。これって女性の場合不味くない?運営が見てるんでしょ?」
僕は怒りながらフィリアに尋ねる。当然だ。ユイや姉さん達家族の裸が誰とも知らない奴らに見られるのは我慢できない。
「ん?何じゃお主知らんのか?AOLに限らず全てのソフトで裸の場合は大事な部分はモザイクで隠れて、運営からは見えない様にプログラムされておる。これを解除するには山下グループ幹部十人と社長、そして本人の許可がいる。だから安心せい」
そうなんだ。
体から力が抜けると同時に千紗の父親の顔が浮かぶ。あのおじさんが娘の裸が他の人に見れる様な仕様にするわけないな。少し罪悪感を感じ心の中で謝る。
「ほれ、さっさと容姿を決めて服を着ろ。口でワシに言ってもいいし直接目の前のお主に触っていじってもよいぞ」
うーん、どうしようか。改めて自分を見ると女顔だなぁと思ってしまう。少し天然パーマの入った白髪にハーフだからか目鼻立ちはハッキリしてる。
肌は白いし自分の容姿は整っているのであまり嫌いではない。
僕は悩みながらも容姿を決めていった……。