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Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~  作者: 神城弥生
イベント「サバイバル島」
217/218

大魔道時代

「いやぁ無事倒せてよかったニン!そして某ナイスサポートだニン!」


 ボスを倒し、皆で集まり喜びを分かち合っていると、自分も混ぜろと言わんばかりに服部半蔵之介が輪の中に入ってくる。


「確かによくやったでござる。一体何をしたんでござろうか?」

「よくぞ聞いてくれたニン!某は忍!皆が城の前で戦っている時に、さりげなく城に潜入。そしてこの部屋の奥にある部屋に辿り着いたでござるよ!」


 聞けば彼は戦っている僕等が劣勢なのを見て、どうにかできないかと色々操作し運よ駆動力を落とす事に成功したそうだ。


「ん~?アイリス達が戦っているのを見たって、どこで見てたの?全然気が付かなかった!」

「フハハハ!某は忍びだって言ったでニン。忍ぶのが仕事。実は門に突入した時も、ウィル殿と十左エ門が悪魔と仲良くしようとしている時も、 ずっと見てたでニン!で、この部屋で皆が苦戦しているのを見て、何とかしなくてはと探したところ、奥の部屋に辿り着いたでニン!」


 どうだ、と言わんばかりに胸を張る服部半蔵之介の言葉に、一同は言葉を失う。


 つまり、彼はずっと傍にいたという事だ。助けることもなく、隠れながら、ずっと傍にいたという事だ。


「いやぁ!皆全然気が付かないから、某なんだか楽しくなっちゃって!これが本当の「隠れ身の術」!なんつってニン!……あれ?何でニン?何で皆某を睨むでニン?何故武器を向けるでニン?え?ちょっと?ちょっとま……」


 部屋に一人の忍者の悲鳴が響き渡った事は言うまでもなかった。


「とりあえず奥の部屋があるって言ってたわね」

「そうだったな。とりあえずその部屋に行ってみるべきでござろう」

「ん。マザーの話していた事、何かわかるかも」


 部屋の中心に、瀕死の状態の忍者の氷漬けを置いとき、僕らは部屋の奥にあった扉から奥の部屋へと進む。


 部屋の中はまるで研究所のようだ。配線があちこちにあり、沢山のPCや3Dモニターまで置いてあった。そのいくつかの配線が外されてある。恐らく服部半蔵之介がやったのだろう。


 僕らが部屋の中心へと行くと、3Dモニターが映り、マザーAIピステが再び姿を現した。


「……よくガーディアンを倒しましたね。人間はいつだって私の計算を越えていく。そして再び過ちを犯すのでしょう」


 ピステの表情は変わらず、彼女が何を考えているのかは分からない。だがその声はどこか寂し気な気がした。


「ピステ。教えて?大魔道時代に何があったの?貴方はそれを知っていいるのでしょう?」


 僕らを代表してエリザベスが問いかける。ピステは相変わらず無表情だ。


「……いいでしょう。ここまで来たのですから、全てをお話いたします」


 ピステはそう言うと、ゆっくりと口を開き、語りだした。


「大魔道時代。その頃は魔物などいない平和な世界でした。人々は魔法を生活の為に使い、世界は平和だった」


 人々はより豊かな生活をする為、魔法について日々研究を怠らなかった。ピステもその過程で生まれ、そして悪魔も生まれた。悪魔は介護や警備、物流に災害、様々な状況で人を助けるために作られたそうだ。


「そして魔力を使い、人は空を飛ぶ魔道具や道を速く走る魔道具なども開発。世界は繋がり、世界の人々はより身近なものとなった」


 そこで人間は革命的ともいえる物を作りだすことに成功した。


「それが『魔石』だ。魔石とは魔力の集合体。魔力を凝縮させた結晶の事だ」


 様々な魔道具の原動力は魔石によって補われることとなる。だがその製作費は莫大な物だった。研究結果、地表でも魔石が発見されることもあったが、それでも自然の物は小さく、結局魔石が世界を変えるまでの力にはなりえなかった。


「だがそれでも研究者は考えた。どうしたらもっと効率的に魔石を作れるのか。人は一度便利なものを手に入れたら、もうそこから元には戻れない。手放せなくなってしまっていたわけだ」


 そして研究者は考えて、考えて、ある結論に至る。それは悪魔のような考えで、そして世界を終わらせる研究となる。


「先も述べたが、魔石とは魔力の集合体。それまでは空気中の魔力を石やガラスの中に閉じ込め運用していた。だがそれには莫大な時間と費用が掛かる。だから研究者はこう考えた。「なら、もっと魔力を持つものから魔力を集めればいい。身近にあるじゃないか。沢山あって、勝手に増えていくもの。そう、人間から採取すればいい」と」


 ピステの言葉に、一同は背筋が凍りつく。その結論に至れば、その研究者が何をしたのか、想像するのは容易い。


「実験は成功した。成功してしまった。人間は、この世界に存在するもの全ては魔力の集合体だ。その中でも人間の魔力総量は他の比ではなかった。人間数人から魔石は出来て、そしてその魔力濃度もこれまでの比ではなかった」


 研究者は国王にその事を話し、そして国王はその魔石を『賢者の石』と名付けた。通常の魔石は青く澄んでいるが、賢者の石は血のように真っ赤な色をしていた。


「世界は変わった。より便利になったからだ。だがすぐにそれも限界が来る。国の人から作る為、連日行方不明者が出たからだ。このままでは国民がいなくなってしまう。それでは本末転倒だ。だから国王はこう結論を出した。「だったら他国の人間を使えばいい。戦争だ」と」


 それから世界は混沌のものとなる。王国は次々に近隣諸国を襲い、そしてとらえた人々を賢者の石へと変えていった。王国は強かった。高濃度の賢者の石を使えば、いくらでも悪魔を使い、兵を生み出せるのだから。


「人間の欲望はそれで止まらなかった。国王はこうも思った。ここまで被害もなく、何でもできてしまった国王は考えてしまった。「世界を征服しよう。世界を我が手に。その為には最強の兵器がいる」と」


 その為にはこれまでとは比にならないほどの強い賢者の石が必要になる。そこでまた他国を襲い、今度はその全ての人間を使って、賢者の石を作ろうとした。


「そしてこれまでとは比にならない程大きな賢者の石を作り出そうとし、そして失敗に終わった。原因は私でも分からない。データは完璧だった。もしかしたら世界が、神が怒って止めたのかもしれない」


 兎に角、魔力爆発は起こった。その結果、人間はほぼ絶滅。高濃度の魔力は世界に広がり、その生態系さえも変えた。


 人に似た獣人やエルフ、ドワーフなどが生まれ、そして魔物が生まれた。


 あまりにも衝撃的な内容に、一同は唖然とし誰も言葉が出なかった。ピステは一呼吸置いた後、話をつづけた。


「それからの先はあまりよく知らない。人間がいなくなり、原動力を失った私や悪魔はスリープモードになってしまったからな。そして長い年月をかけ、空気中の魔力を集めて再起動した訳だ。気が付けば悪魔は暴走し、私からシステムの主導権を奪っていた」


 僕の頭の中には、初めにピステが言った言葉がよぎる。「人間は再び過ちを犯す」と。


 そんなことはない。そう言いたいが、実際は分からない。人間は過去から学ぶこともできるが、歴史は繰り返す事が多いい。人が皆賢いとは限らない。断言はできない。ピステはそれを危惧しているのだろう。


「ねぇピステ。現在システムはピステが掌握しているの?」


 クリスの問いに、ピステは顔を縦に振り答える。


「現在この国にあるシステムは全て私が掌握している。今後悪魔がシステムをハッキングできないよう全てのデータを書き換えた。これで心配はないだろう」


 だが、他の場所のシステムは別だ。とピステは言う。


「特に魔力爆発の震源地、「大魔道時代スクルス王国首都『ガリムル』のシステムは現在何者かが掌握している。恐らく悪魔だろう」


 情報が多すぎて、唐突な話で混乱する頭を何とか整理してピステに問う。


「そのガリムルのシステムを正常に戻すことはできないの?もし放っておいたらどうなる?」

「正常に戻すことは出来る。だがここからでは無理だ。もしそうしたいなら、私のデータを持っていき、直接システムのコアのある場所で起動してくれさえすれば、システムを正常に戻すと約束できる」


 そしてもしそれを放っておいたら、いずれ悪魔は数を増やし暴走し、世界は再び滅びるだろう。


 その後、もう少し彼女と話をした後、十左エ門達と一度街に帰り、そしてダイブアウトした。


 だが僕らの頭にはピステの話が離れなかった。こうして僕らは悪魔の城を完全攻略するのだった。

長かった……。


物語の核となる話、当初から考えていた設定。

217話にしてようやく書けました。


いや、本当、長かった……。

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