平和な日常
さてさて始まりましたがゲーム開始まで暫くかかります。気長にお待ちください。
ハァハァハァ……。
あれから約半年か。爺さんいい顔してたよな。
タッタッタッ。
リズム良く階段を上っていく。
後一週間か。楽しみだな。
タッタッタン!
ハァハァハァ。
「ん?お早う弥生。学校はもう慣れたか?」
「ハァハァ、お早うジィジ。もうだいぶ慣れたよ。といっても隣の校舎に移っただけだし、知った顔も多いからね」
「それもそうじゃな。なら女の子に間違えられ不要な問題はおきなんだか?」
「……まぁ、ね」
そう、僕、神城弥生は良く女の子に間違われる。
最近になり友人らが少しづつ成長するに従って男らしい顔つきになる中、僕はどんどん女性らしい顔つきになっていっている。最近になり悔しいがその事を認め諦め始めている。
「……まぁなんじゃ。儂等が鍛えておるから体つきはしっかりしておる。そのうち男らしくなるじゃろう。今だけじゃ」
「うん。そう願いたいね」
「ほれ、今日も学校じゃろ?早いとこお参りして帰りなさい」
ジィジは今時珍しい竹の箒で掃除をしながら言った。
ジィジは母方の祖父で元軍人であり、この小さな山の地主、今はこの神社を夫婦で管理している。歳に似合わずしっかりとした体にごつい手をしていて、白髪をオールバックの様にし男らしい顔つきをしていた。
ガラガラガラッ。
パンッパンッ。
手を合わせ日課の参拝をする。
「あらっ弥生ちゃん。お早う。今日もいい天気ね」
「ばあちゃんお早う。そうだね。でももう直ぐ梅雨に入るって今朝ニュースでやってたよ」
「そう。なら参拝客が減って楽になるわね」
ばあちゃんは笑いながら言った。
巫女装束で優しそうな顔しているこのばあちゃん、75という年齢なのに見た目はまだ50代前半の様である。
そして合気道の達人だ。
未だにたまに軍の特殊部隊から指導を頼まれ、20代の若者たちをバッタバッタとなぎ倒す、ハイスペックジィジを片手で投げ飛ばす超ハイスペックばあちゃんである。
「ばあちゃんを怒らせたら直ぐに謝れ。地球の裏側へ逃げたって無駄だ」、と小さい頃ジィジが震えながら教えてくれた。しかしその後ジィジの後ろから笑顔で現れたばあちゃんの顔は未だに忘れない。僕は優しく部屋から追い出され、ジィジの叫び声を聞きながら耳を塞ぐことしかできなかった。
「?何ボーとしてるんだい?今日は学校だろ?早くお行き」
「はっはっは。何時迄も若い時の巫女装束なぞ着ておるから、弥生は、ばあさんかとおもって話しかけたら、巫女装束を着た妖怪に見えてしまって驚いとるんじゃろ!!」
ジィジは豪快に笑いながらそう言った。
ぞくっ……。
辺りの気温が一気に下がった様に感じ、背筋に冷たい汗が流れると同時に、ばあちゃんは笑い顔のまま鋭い目つきでジィジを見る。
不味いっ。
「じゃ、じゃあ僕はそろそろ行くねっ」
そう言い僕は全力で駆け出した。
「気をつけてな」
そう言いながらゆっくりとジィジの方へ歩み寄るばあちゃんを横目に見て、「うん」と言った。
「まっ、またんか!今行くことないじゃろ!!待つんじゃ儂を助けて……ギャァァァアア‼︎‼︎」
背後からジィジの叫び声を聞きながら振り返ることなく勢いよく階段を駆け下りる。
こうして今日も僕の平和な1日が始まった。