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Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~  作者: 神城弥生
イベント「サバイバル島」
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バトルロワイヤルその9

「がっっ!?」

「オラオラどうだぁ!?」


 僕は炎の中で何とか「魔力剣」と「乱れ切り」で炎を切り裂き脱出する。が、かなりのMPとHPを消耗してしまった。


 現在HP残量はキルが6割、僕が4割といったところか。


 この二割の差はかなり大きいな。


 僕らは王の玉座がある謁見の部屋の中央で、壊れた地面を間に睨みあっている。


 静かな部屋の空いた地面の穴からは他の皆が何かを叫び走る音が聞こえた。が、僕らにそれを聞いている余裕などなかった。


 一瞬の油断が命取りになる事をお互いが理解しているからだ。先に動いたのはキルだった。


 「龍脚」で近くに落ちていた瓦礫をけ飛ばしこちらに飛ばしてくる。あれは龍化した足でなければ痛いだろうなぁ、と考えながら瓦礫を避けるとすぐ後にキルも飛んでこちらに来ていた。


「オラオラオラ「龍剣」「かまいたち」!!」

「それはもう見切りましたよ?」


 流石に何度も受けていれば目が慣れる。


 かまいたちを全て受け流しお返しに「ライトニングアロー」を放つ。キルは空中で回避が遅れまともに「ライトニングアロー」が入り痺れて落ちてくる。


「「剛剣」「切断剣」」


 落ちてきたキルに向かって全力で斬りつける。


 キルは何とか体を捻り躱すが左腕が斬れ吹き飛んでいく。


 が、キルは腕が切り落とされたことに顔色一つ変えず振り向き様に片方の剣を投げつけてくる。


 全神経を斬ることだけに使った僕は反応が遅れ左足に剣が刺さってしまう。


 僕は痛みに歯を食いしばりながら剣を抜き取り壊れた床の穴の下に投げ捨てる。


「あ~いってぇなぁ。つか、わざわざそこに捨てる必要ねぇだろ」

「何言ってるんですか。こういうのは捨てた武器を拾って最後のとどめを刺されるのが定番なんですよ」

「ギャハハハハ!!よくわかってんじゃねぇか。しかし楽しい時間ってのは過ぎ去るのが早威よな」

「ですね。そろそろ決めないと」

「だな」


 キルは片腕で、僕は足を引きずりながら剣を構える。


 すでにお互いのHPは2割をきっていた。


 二人とも負傷している為何もしなくてもHPは少しずつ減っていく、特に重傷なキルのHPの減りは早い。このまま待ってるだけで僕は彼に勝てるだろう。


 だが、それはお互いにとって望んでいない結末だ。そんなくだらないオチはいらない。僕ら最後の一瞬まで全力で戦い全力で生きる。ここはゲームの世界で、それができるのがAOLの世界だ。


 僕らは視線を交わらせ、その瞬間駆け出す。たった一人の勝者を決めるために。


「らぁあああ「竜神衣威」「龍剣」「捨て身」「剛剣」「怪力」!!」


 キルはスキルをかなり無理して使っているようだ。


 その証拠にHPの減りが更に早くなり、あと1分も持たないだろう。


 だが、それに答えるのが男だっ!


「すぅーはぁーー。「雷神衣威」「剛健」「グラビティソード」「捨て身」「怪力」!!」


 雷魔法に重力魔法の重ね掛けは初めてやったがかなりきつく、体が引き裂かれるような痛みが全身に走る。だがこれくらいしないと今のキルには勝てないだろう。


 二人の剣が交わる。その衝撃で二人の足元の地面が割れる。


 キルは片腕がなく僕は足に怪我をしている為お互いバランスを崩す。二人とも前のめりになるが相手から決して目を離さず歯を食いしばりそのまま二人とも頭突きをする。二人とも崩れ落ちそうになるのを必死に耐え僕は片手でキルを殴りつける、が、キルはそれを躱し剣を振るう。


 僕は片手で剣を持ちそれを防ぐが力の差がありまたバランスを崩す、そのまま二人とも「龍脚」と「魔力脚」で蹴りあう。自分の足の骨がギシギシと悲鳴を上げているのがわかる。


 二人とももう余力がないため蹴りに耐え切れず転がってしまう。


「はぁはぁ「ライトアロー」!!」

「がはっ!?」


 僕は倒れながらも「ライトアロー」を放ちうまくキルにヒットし、キルが痺れて立ち上がれないでいる。

 もうチャンスはここしかない。


「はぁあああああ!!」

「ぐっ。がぁあああああ!!」


 僕は必死に駆け出し剣を振るう・・・が、キルは転がったまま羽を羽ばたかせ回避する。


「なっ!?」

「ぎ、ギャハハハハ!!俺様の勝ちだーー!!」



 その時謁見の部屋の部屋の扉が勢いよく開かれる。戦いを見ようとエリザベス達が駆けつけてきたようだ。


「ウィル!!」

「お兄ちゃん嘘」

「兄貴!?」


 皆は今見た光景を信じられなかった。


 空中で羽ばたいている片腕のないキルの剣が確かにウィルの腹を貫いていたからだ。


「がはっ。流石です。やられました」

「まぁ引き分けだがな。ぎ、ギャハハハハ!!」


 皆がその言葉でハッとし急いでキルを見ると、確かにキルの胸にも青く光るウィルの剣が刺さっていた。


「ギャハハハハ!!やられちまったか。だがまぁ。楽しかったぜ」

「僕もですよ。楽しい時間でした。まぁ疲れるのでもうしばらくやりあいたくありませんが」

「ぎ、ギャハハハハ!!そうつれないこと言うなよ。俺様の勘が言ってるぜ?またすぐやれるってな」

「ははは。嫌な、勘ですね」


 キルがゆっくりと着地をした瞬間僕らの体に浮遊感が襲う。体の力が抜け、体の感覚もなく、頭が眠る時のように真っ白になっていく。


 死ぬときってこんなかんじなのかなぁ、と考えてるうちに辺りが真っ白になる。


こうして僕は初めての死に戻りを経験することになった。



 気が付いたら「カンパニー」ホームの部屋にポツンと一人で立っていた。

 近くのTVからはまだ戦っているプレイヤー達や会場で見ている沢山のプレイヤーの声、そして声を張り上げ盛り上げている実況の人たちが映っていた。


 近くのソファーにゆっくり腰を下ろし、ボーっとTVを見ながら一息つく。


 TVでは相変わらず盛り上がりを見せるが僕の耳には入ってこなかった。


 ただ先ほどまでのキルとの対戦が僕の脳内にフラッシュバックして頭から離れないからだ。お互いの剣と剣がぶつかり合う音が頭から離れない。


 勝ちたかった、でも楽しかった。


 あの瞬間は本当に一瞬一瞬を生きていたといえるだろう。


 今でも一挙一動を思い出せる。


「はぁ~~楽しかったなぁ」


 不意に口から言葉が漏れる。


 そのまま目を瞑ると気づけば僕は夢の中へと誘われていた。



「ちゃん!!お兄ちゃん!!」

「ほらウィル!!こんなところで寝ると風邪ひくわよ?」

「ん。こっち寝顔も可愛い」

「ふふ。本当にかわいい」


 聞きなれた声がして、ゆっくりと目を開けるとそこには家族たちがいた。


「あれ?ああ、寝ちゃってたのか。他の皆は?」

「疲れたからって先にダイブアウトしたわよ」

「そうだよ!!お兄ちゃん私達優勝したんだよ!!」

「ん。優勝トロフィーもある」

「ウィルがキルを抑えてくれたおかげね。ありがとう」


 ボーとしている僕にみんなが頬にキスをしてくれる。


 少し照れくさくはあるが、なんだか今は心地よく素直に嬉しかった。


「あら?今日は素直なのね?」

「ほんとだねー。拒否されると思った!!」

「ん。熱でもある?」

「ふふ。よっぽど疲れているのかしら?」


 確かに疲れているのかもしれない。


 だが一度死んでみて、まだアドレナリンが出ているのかもしれない。


「そう言えば優勝したんだね。おめでとう」

「何他人事みたいに言ってんのよ。ウィルもしたのよ」

「そうだよ!!お兄ちゃんありきの優勝なんだよ!!」

「ん。キルがいたら危なかった」

「そうね。あそこまで強くなっているとは思わなかったわ。ウィルが引き分ける姿なんて想像したことなかったわ」

「僕だってやられることはあるよ。そう言えばレイは?」

「レイは先に戻ったわ。「家族の時間」を邪魔したくない、だそうよ」



 そのあと僕は試合のその後の話を聞いた。


 僕たちが死に戻りした後「マイノリティ」の人たちはリーダーが死んだため光となって消えていったそうだ。


 その際お礼を言われたらしい。


 「兄貴との戦いを最後まで見守ってくれてありがとう。ウィルさんにもキルの兄貴の戦いに最後まで付き合ってくれてありがとうと伝えてほしい」との事らしい。


 その後「鏡花水月」の3三人は「カンパニー」と最後まで戦ったそうだ。


 が、元々の残りHPが少なかった「鏡花水月」はすぐに死に戻り、残っていた6チームは僕らの試合を見てアドレナリンが出た「カンパニー」は次々に撃破し優勝したそうだ。


「でも最後の2チームは中々強かったわ」

「そうだねー!!「Aチーム」だっけ?」

「ん。後は「わんにゃん倶楽部」」

「確かにその2チームは強かったわね。割とギリギリの優勝だった気がするわ」


 因みにこの試合はAOLのHPにUPされるらしい。


「げ、じゃあ僕とキルの戦いも?」

「ああそれね。すでに今回の一番の目玉の戦いという事で二人だけを映した映像が配信されてるわよ?」

「そうだよ!!アイリス達もさっき見ちゃった!!」

「ん。大会終了後1時間で再生回数10万回を軽く超えている」

「私も二人の戦いを見て興奮しちゃった。今夜責任取ってね?」


 なんの責任だ。


 勝手に変な責任を押し付けないでくれ。


「さ、とにかく今日は帰りましょう?」

「そうだねー!!アイリス疲れちゃった」

「ん。私もクタクタ。あとウィルとエッチしかできない」

「私も。ウィルを抱くことしかできないわ」

「うん。そんなことしないからね?まぁそれだけの元気があるなら十分でしょ。帰ろっか?」

「「「「うん」」」」


 こうして僕らはダイブアウトした。


 家に帰った僕らは簡単な食事を済ませてすぐに眠ってしまった。

 もちろんエッチなことはしないで。

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