バトルロワイヤルその7
エリザベス達side。
彼女達は二人を探して城内を探し回っていた。
場内は複雑で、ただ下の階に行くだけでも皆は苦戦している。
「お兄ちゃん~~。どこ~~?貴方のアイリスですよ~?」
「私達の、でしょう?なんでこの城ってこんなに複雑なのかしら」
「ん。すんすん。こっちからウィルの匂いがする」
「エリーぜが言うなら間違いないわね」
「スンスン。俺にはわからんぞ?そんなに臭いのかアイツは?」
「カンパニー」が先頭となり二人を探す。
「あ、兄貴を匂いで探すって」
「兄貴慕われてるなぁ。いいなぁ」
「アイツはいいマッスルしてるからなぁ。慕われるのも分かる気がするな。」
「なんだかんだ俺達全員アイツに惹かれて「カンパニー」に入ってるからな。というか、いいマッスルってなんだ?」
「わ、私はウィルに惹かれてるわけじゃなくて。オリバーーに」
「あはは!!ウィルは面白いもんねー!!」
一方「カンパニー」メンバーに二人を探すのを任せている他のメンバーはのんびりと談笑しながら5人に付いていっていた。
「しっかしあの二人は化け物だよなぁ。あんな戦い方は真似できないわ。」
「リーダーでも無理なら俺も無理だな。大体なんで城壁を走れるんだか」
「ガッハッハッハ!!アイツは心もマッスルなのさ。背負ってるものがお前たちとは違うからじゃないか?」
「背負ってるものって何だよ?というか心がマッスルってなんだ」
「あいつはいつだって家族を大事にしている。身近な人を大事にしている。今回もアイツはキルを野放しにしたら家族をやられるから自分を奮い立たせて戦っているのさ。」
「あー、あいつならそう考えそうだな。ゲームなんだからもっと気楽に戦えばいいのに」
「確かに兄貴は周りの人たちを大切にしてるよな。こんな俺たちにだって真っ直ぐぶつかってきてくれるし」
「まぁだから兄貴の周りにはいつの間にか人が集まるだと思うな俺は!!」
皆の会話に「カンパニー」の皆は思わず笑みがこぼれる。
やはり家族が、自分の好きな人が褒められるのは嬉しいのだろう。
「それだけじゃない。アイツは器もマッスルなんだ。ウィルはキルの気持ちも汲んでいるんだろう」
「キルの気持ち?というか器がマッスルってなんだ。」
「キルは恐らく何かを求めてAOLをやり、戦い続けている。だがそれは一人では見つけられないものなのだろう。だからウィルが手助けをしてやってるんじゃないかと俺は思う」
「何かを?何かをって何なんだよ?」
「さぁな?マッスルな何かだろうさ」
「余計にわからん。マッスルって言っておけば皆が納得すると思うなよ?」
「でも俺はわかる気がするなぁ。俺もたまに何のためにこのゲームをしてるのか考えるときあるもんなぁ」
「リーダーも?俺もある。まぁ大抵の答えは楽しいからと彼女を作りにって答えになるけど。」
彼女は無理だろう。
女性陣のここをはシンクロした。
「俺はマッスルに考えた。マッスルってところがポイントな?山下哲二さんが残したこのゲームを誰よりも考えて、感じているのはウィルな気がする。そしてアイツはそれを一人でも多くの人に伝えようとしているんだ。全くガキのくせに生意気な奴だぜ」
「マッスルに考えた奴は人類でアンタが初めてだろうな。まぁアイツはいつでも考えすぎるところあるからな。それも一人で。もっと頼ってくれてもいいのによ」
「あーなんかわかる気がする。兄貴はいつも一人で戦っている気がする」
「皆を守ろうとして、でしょ?まぁそんなかっこいい兄貴だからこそ俺らは付いていってるんだけどね」
皆は階段を見つけ降りていく。
匂いの元を辿って階段を進むと激しくぶつかり合う金属音が聞こえてくる。
「誰かが戦ってるね。でも二人じゃないみたいだよ?」
「ほんとね。エリーゼどう?」
「ん。あの金属音の先からウィルの匂いがする」
「なら進むしかないわね。皆。、戦闘準備して!!」
「うむ!いつでもいいぞ!!」
皆が戦闘準備とフォーメーションを組みなおし先に進むと・・・そこには「鏡花水月」ともう一チームが戦っていた。
「鏡花水月」は明らかに押されて負けていた。
すでにメンバーは3人になっており2人はやられたのだろう。
残る三人もすでにHPは半分以下になっており敵に囲まれていた。
相手は全員が違う色の鎧を身に纏い一糸乱れぬ連携を見せていた。
相当に訓練を積んだことが見て取れる。
「あれは「青龍騎士団」だな」
「だな。ゲームを楽しまずただ軍隊のように攻略を進めていく奴らだ。ああいうマッスルはあまり好きにはなれないがな・・・。」
オリバーとドンの言葉から皆相手の名前がわかる。
「どうするよリーダー。このまま「鏡花水月」がやられてから突っ込むか?」
「いいえ。今突撃して「鏡花水月」と連携して「青龍騎士団」を倒しましょう。今はウィルが居なくて戦力不足だしあの敵は相当に訓練を積んでる。だったら今は「鏡花水月」と組んで戦力を増やして戦った方が得策だわ。「鏡花水月」の3人は虫の息だし後からでも対処できるわよ」
「おうおう。うちのリーダーはおっかねぇな。だが賛成だ。「青龍騎士団」騎士団のマッスルを舐めない方がいい。アイツらは強い。それだけは言える」
エリザベスが皆を見渡した後、フォーメーションBで突撃体制をとり走り出す。
「くっ・・・きゃああ!!?」
「お姉様!?クッソよくもお姉様を!!」
「あかん副長!!今突っ込んだら、え?」
フクチョーが卍を庇って「青龍騎士団」に攻撃を受けそうになった時、突然フクチョーの前に氷の壁ができる。
「3人とも!!共闘するわよ!!」
エリザベスの声に「鏡花水月」の3人の顔に生気が戻る。
「カンパニー」と「マイノリティ」との共闘なら勝機があると考えているのだろう。
「青龍騎士団」は皆余裕があるようでこちらを振り返る。
「おいおい。誰かと思ったら筋肉しか取り柄のないおっさんじゃねぇか」
「あ?テメェらこそゲーム一つ楽しめない真面目ちゃん共だろ。帰ってママのおっぱいでもしゃぶってな」
「あ?言い回しが古いんだよ。筋肉の鍛えすぎで脳まで栄養が行ってないんじゃねぇか??」
「あ?テメェこそ本の読みすぎで目がおかしくなってんじゃねえか?」
「何だとコラ?」
「やんのかコラ?」
「青龍騎士団」」の赤い兜を被った男とドンは睨みあう。
「「青龍騎士団」のリーダー赤兜とドンさんは昔から仲が悪いんだ。なんかリアルの知り合いらしいが」
オリバーが皆にささやき教えてくれる。
「リアルの知り合いというかジムの敵会社のオーナーだ。まぁ相手は機械だらけのメカニックなクソつまんないトレーニングしかしないがな」
「あ?科学的根拠のあるトレーニング方法だと言ってほしいな。そっちこそ根拠のない精神論ばかり語る詐欺トレーニングばかりやってるジムだろ?トレーニングの後は不思議な壺でも売ってるんじゃねぇか?」
「あ?そんなもん売ってるわけねぇだろ?そっちこそわけわかんねぇ理論で客騙して不思議な水でも売ってるんじゃねぇか?」
「あんだとコラ?」
「やんのかコラ?」
つまりライバル店のオーナー同士らしい。
「青龍騎士団」の他のメンバーは「またか」とため息をついてることからいつもこの二人がいがみ合っていることがわかる。
「さてさて。ではどちらが素晴らしい店舗を経営してるかこの場の勝負で決めようじゃないか?」
「いいぜ?泣きべそ書いても知らねぇぜ?」
この戦いでどちらが優良店かなど決まらないのに。
皆は同時にそう思った。
「行くぞテメェら!!おおおーー!マッスルーー!!」
「やるぞテメェら!!はぁああ!「シールドバッシュ」!!」
ドンと赤兜の盾と盾がぶつかり合う瞬間に皆が同時に動き出す。
「青龍騎士団」は盾職が多いようだ。
オリバーを筆頭に皆が飛び出し攻撃するが全て盾によって防がれてしまう。
エリザベスの達の魔法も飛び交うが相手の魔法職たちによって全て相殺させられる。
相手のチームワークは完璧でこちらの動きに合わせ上手く隊形を動かし対応している。
「と、ところでウィルさんはどうしたんですか??ウィルさんがいれば この状況を打破してくれる気がするのですが」
「あれですか!?ウィルさんは一人で死に戻りしましたか!?やられちゃいましたか!?残念です!!非常に残念です!!あのハーレム変態キングを倒せというおばあちゃんの遺言を実行できないじゃないですか!?」
「いや、ウィルは死んでないんだが」
副団長の言葉にオリバーが答える。
卍はほっとした顔をし、副団長はあからさまに残念そうな顔をする。
「青龍騎士団」は初めは奮闘していたが、次第にこの数的不利な状況に対応しきれなくなってきている。
特に敵リーダーの赤兜をドンが押さえているのが大きいだろう。
二人の実力は互角だがそれにより赤兜はドンに付きっきりになり、他のメンバーたちとの連携が取れずいら立ちを見せている。
ドンと赤兜は盾をぶつけ合い、剣をぶつけ合い、その衝撃と音は他の誰よりも大きく激しかった。
「くそっ!邪魔すんじゃねぇ!なんで「鏡花水月」の肩を持つんだ!?女だからか?この変態マッスルが!!」
「あぁ?んな小さい事気にしてるからお前の店舗は売り上げがあがんねぇんだよ!男ならもっとドンと構えやがれ!」
「今年度は前年度より売り上げは135%アップだ!テメェこそそろそろ閉めた方がいいんじゃねぇか?」
「ガッハッハッハ!!閉めるどころか今年は4店舗増やす予定だ!!ライバル店がいなくて楽な業界だ!」
「テメェ!!」
「ああ??」
どちらもすごいな、と皆は感心しながら戦っていた。
このままなら「カンパニー」チームが圧勝しそうだが「鏡花水月」の3人のHPはすでに2割を切っていた。
エリーゼの回復魔法が上手く通らず相手に阻害されている。
一方ドンと赤兜も残りHPは2割をきっていた。
激しい乱戦は続いていたが、それも突然終わりを告げる。
赤兜はドンの隙をつき蹴りを入れドンを吹き飛ばす。
「先お前からだ!!」
赤兜は振り返り、その剣先にいる卍さんに向かって剣を振り下ろす。
「ぁぁぁぁあああああ!!??」
卍さんは目をつむり剣を受け入れようとした瞬間近くのドアが吹き飛び、赤兜は飛んできた何かと共に壁際まで吹き飛んだ。
「いてててて。あのヤロォ思いっきり蹴りやがって。ん?」
ドアから吹き飛んできたのはウィルの蹴りによって吹き飛ばされたキルだった。
一同は突然事に驚き固まり、キルは頭をガシガシ掻きながら起き上がり自分の下にいる赤兜の事に気が付いた。
「くっそ。誰だ俺の上に乗ってるアホは」
赤兜も起き上がろうとするが上に誰かが乗っているのでで起き上がれずに、乗っている人物を睨みつけて、キルと目が合う。
「ああ?なんだテメェ。俺様の下で何やってんだ?」
「あんたが乗ってきたんだろ!!降りろ!!」
「うるせぇ奴だな。言われなくとも今どいて「はぁあああ「剛剣」」うぉ!!」
「な、なんだ!?がっは」
赤兜は突然キルがどいうたかと思うといきなり剣で斬りつけられ、HPが0になってしまう・・・。
「あれ?誰だこの人」
斬ったのはウィルだった。
ウィルはキルを斬るつもりがよけられて下にいた赤兜を誤って斬ってしまったという事だ。
赤兜が斬られたことで「青龍騎士団」は皆唖然としたまま光となって消えていく。
「まぁ誰でもいいんじゃねぇか?どうせ敵なんだろ?」
「そうですね。一石二鳥という事で」
「「「「「「ええーー」」」」」」」」
二人の言葉に一同は唖然とする。
あんなに頑張って戦っていた相手があっさりと、しかも間違えて倒されてしまったのだから。
「ったく不意打ちはずるい、ぜ!?」
「うぉ!?あなたもでしょ!?」
ウィルとキルはそのまま激しく戦いだす。
他のメンバーたちは突然の展開についていけずにいた。