バトルロワイヤル前
月曜日。
週末は生産組の為に素材集めと、新しく「カンパニー」の仲間になったレイとの連携の練習をしていた。
レイはリアルでもゲーム内でも誰かと組むのは初めてらしく連携は中々難航した。敵を見れば突撃し、連携の内容を忘れてしまう。盾の技術はすごいのだが。
まぁ僕らは焦らずに慣れていくしかないという結論に達した。
現在はの屋上で皆でお昼を食べている。
この時間にAOLの次のイベントの詳細が発表されるためだ。香織さんと姉さん、千沙にユイ。
それにうちのクラスの「カンパニー」のメンバーが揃っている。
「だぁーー。まだかなまだかなー」
「遅いなー遅いなー」
「ユイとタクうるさいぞ。それそれ来るはずだ」
「そうよ。じっとしてなさいよ、はしたない」
「「だってー」」
「あら、きたみたいよ」
「「見せてーー!!」」
「うっさい!!」
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皆さんこんにちは
次のイベント、クラン対抗戦「疑似王都でバトルロワイヤル」の詳細を発表します。
このイベントに参加するためにはどこかのクランに所属していることが条件になります。
尚現在のクランは421クラン存在します。
ルールは一クランから12名を選出し、魔法で作った疑似王都に転送されます。
転移場所はランダムです。
疑似王都では10秒ごとに10mずつ、外側から崩壊していきます。
プレイヤーは崩壊に巻き込まれるか、誰かに倒されるか、自主的に降参した場合失格となります。
又、チームには一名のリーダーを決めていただき、リーダーが倒された場合も失格となります。
チームリーダーには目印のようなものは身に着けないため、チームメンバー以外には誰がチームリーダーかはわかりません。
尚、イベント中の迷惑行為、セクハラ行為などが認められた場合もその時点でチームは失格となります。
皆様マナーのあるプレイをお願いいたします。
イベント参加者はアイテムは10個まで所持が可能ですが回復アイテム以外の所持は不可となります。
初日の一日(土曜日)は予選として二日(日曜日)が本選となります。
予選は参加クランが25チームになるまで行われ、その後本選で最後の1チームまで戦っていただきます。
イベント参加しないプレイヤーは、王都闘技場、又は課金アイテムのTVでイベントを見ることができます。
イベントの説明は以上となります。
皆様にお知らせがあります。
イベント実況プレイヤーを募集します。
実況プレイヤーは応募してくださったプレイヤーの中から抽選で選ばれます。
沢山のご応募お待ちしています。
お知らせは以上になります。
それでは皆様。
良い人生を。
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「今回は実況付きかぁー!!楽しそう!!」
ユイは読み終わった後、お箸に卵焼きを突き刺し腕を上に突き上げる。
「こらユイ。はしたないわよ。ご飯で遊ぶんじゃない」
「こらタク!!貴方もよ」
見るとタクは興奮して、唐揚げをお箸に刺し腕をぶんぶん振り回していた。アホな二人である。
「ねえ。その唐揚げ弥生にあーんしてみて?じゃないとご飯が進まないわ」
「おいナギ。僕らで興奮しようとするんじゃない」
「いいじゃない。なら二人で抱き合ってみて?そしたらおとなしくご飯を食べてあげる」
「何が「なら」だよ。もうお前は餓死してしまえ」
ナギは一度病院に行った方がいいと思う。
「でも確かに実況付きは盛り上がるだろうね」
「ほんとね。それに実況を運営じゃなくプレイヤーがやるってところがAOLらしいわね」
「「何者にもなれる」だもんねー!!実況も楽しそう!!」
「でも崩壊に巻き込まれるって結構怖そうね」
「生き残ればいいんだよ!!我等「カンパニー」連合に敗北のに文字はない!!あ、唐揚げ美味いな」
「ちょっと!!その唐揚げ私のよ!!」
「じゃあユリが作ったのか。お前は言い嫁さんになりそうだな!!」
「よ、嫁だなんて。食べたかったらいつでも作ってあげるわよこれくらい」
「あはは!!ユリのツンデレが発動したね!」
「うっさい!!」
タクがユリの唐揚げを奪いユリを褒める。それに対してユリがデレる。
何故この二人はまだくっついてないのだろうか。
そろそろ後押ししてあげなきゃいけないだろうか。
「ところで12名って誰が出ることになるのかしら」
「そうね。「カンパニー」連合はすでに合計100名は軽く超えているわよね」
「「鋼鉄騎士団」が大きくなりすぎなんだよ!!あそこだけでもう80名くらいいるんでしょう?」
「あんな筋肉集団に入る人がそんなにいるなんて」
「何も皆筋肉好きとは限らないらしいぜ?あそこは攻略、新人教育、アイーダの護衛とか、色々な役割に分かれているからな。実際に戦闘で役に立つのは一握りさ」
相変わらずドンは手広くやってんな。
しかしそれを全て一纏めにしてるのは紛れもなくドンの手腕ありきだろう。
彼の器の大きさがわかるな。
そんな時僕の携帯が鳴る。
「あ、ドンから連絡だ。「鋼鉄騎士団」からはドンだけが出るって。それと「悪魔結社」からはプライドとグリードが出たいってさ」
「プライドとグリードって誰だ?」
「おいタク。お前「悪魔結社」と仲いいんじゃないのか?」
「まぁ仲はいいが正直誰がなんて名前かはわからん」
「なんでドヤ顔なんだよ腹立つな。プライドはリーダーで「悪魔の槍」だ。グリードは副リーダーで「悪魔の盾」だろ」
まぁ確かに普段一纏めで呼んでるから、名前を覚えている人は多くはないだろうが・・・。
モテない上に名前まで覚えてもらえないて、なんて可愛そうなやつらなんだ。
いい奴らなんだけどな。
「あら?絵里奈からもメールだわ。「俺は絶対に出るからな」だって」
「絵里奈って誰ー??」
「新しく入った盾職の人だよ。今うちにいるんだ」
「かー!!またお前は嫁を増やす気か!?流石俺の親友だぜ!!」
「何が「流石」だ。違うからな。それに絵里奈はどちらかと言うと女子の方が好きらしいぞ?」
「百合展開ね。まぁそっちでも悪くないわね」
「ナギはどっちでもいけるのね」
「あら。私はBLでもユリでも、何でもエロスを見出せるのよ?」
「おい。この委員長は何言ってるんだ?誰か病院に連れて行ってやれ」
「あら、私は病院の様々な所からだってエロスを見つけ出せるわ。ヘルスメーターだって私にはエロスメーターにしか聞こえないもの。それで私の何を測るんだって話よね」
「体重だ。体脂肪だ。何がエロスメーターだ。ヘルスメーターだ。小学生かお前は」
「まぁエロスメーターでも私のエロスは測りきれないかもね。それに何よりエロく聞こえるのは受付よね」
「受付?」
「そう!!「受け」に「突け」よ!?受けて突くの!!まさに私を興奮させる為にある言葉にしか聞こえないわ!!ああご飯がすすむ!!」
「もう黙って食べててくれ」
受付がエロく聞こえだしたらもう終わりだろう。
大抵の場所には受付はあるだろうからこいつはもうどこにも行かない方がいい。
「まぁナギはほっといて「ダブルナイツ」からは誰が出るんだ?」
「俺たちはこの三人だな。他のやつらはまだLVが足りないだろう」
「となると「カンパニー」以外からはドン、プライド、グリード、オリバー、リタ、ライリーの6人か」
「ならちょうどいいね!!それに「カンパニー」の私達5人にレイを入れて合計12人!!」
「ほんとね。良かったわ。揉めないで決まって」
「「鋼鉄騎士団」も「悪魔結社」も私たちに気を使ったんじゃない?親クランの「カンパニー」戦闘員が全員出れるようにって」
「そうかもね。全く気が利くよな皆。「悪魔結社」なんて皆出たがりな感じがするのに」
「その代わり実況とかで「出るかもよ?あの人達が実況したら面白そうじゃない?」
「あはは!!確かにね!!でもコントみたいになって実況にならない気もする!!」
こうして僕らのメンバーは決まった。
後は作戦なんかを決めれば終わりだろう。
帰宅後。
「俺は作戦なんか覚えられないぞ!?」
レイにメンバーに選ばれた事と、これからみんなで作戦を考える旨を伝えたところ大反対を食らった。まぁ確かに彼女は何かを覚えることは苦手だった。
「まぁそう言うと思ったよ。でもそれでよくバイトなんて出来てたよね」
「うむ。バイトはいつも店長に「お前は一つだけやれ、それ以外何もしなくていい」と言われていたからな。特に何も考えずに一つの事をやっていればよかったから楽だったぞ!!」
「なんのお店でバイトしてたんだっけ?」
「ガソリンスタンドだ!!俺は来た車のガソリンを入れるだけでよかったからな!車の誘導も車を噴くのも洗車も掃除も全て店長がやってくれた!俺はただガソリンを入れるだけの係だった!!」
「「「「「……」」」」」」
店長いい人だ。
よくこんなポンコツを雇って働かせていたものだ。
しかしこんなんじゃ作戦なんか不安でたてられないな。
「だが「ハイオク」か「レギュラー」か「ディーゼル」かの三種類は覚えられたぞ!!」
「少ないよ。たった3種類か。そう言えば通信学校はどう?ついていけそう?」
「うむ!!先生が「高校の問題はまだ早い」と言われて中学1年生の問題からやり直すことになったから問題ない!!」
「問題だらけだね。20歳で中一からって。まぁゆっくり学んでいけばいいか」
「そうだな!!まだしばらくはここに厄介になりそうだ!だがここはいいな。いつでもおいしいご飯が出てくるし住みやすい!!」
「それは良かった。絵里奈ってご飯作れないの?」
「うむ!!俺はお茶漬けを作るのが精いっぱいだ!!」
「それは料理とは言わない。お湯を注ぐだけだ」
「だがうまい!!」
「まぁおいしいけどね。なんか論点がずれてきたな」
とにかく作戦については考え直さなくては。
覚えられないのであればどうするか。
「でも覚えられないのは困ったわね。体に叩き込んであげようかしら」
「エロい事か!?」
「何で嬉しそうなんだよ。なんで僕の周りには変態ばっかなんだ」
結局絵里奈については戦闘を繰り返していくしかないという結論に戻った。
こんなので不安だが仕方ない。
この後僕らは平日学校終わりにAOL内で訓練に採取を続け、僕は期末試験勉強に土日にご飯を作らなくていいように造り溜めを大量にし(これが一番大変だった。)ついにイベントを迎えるのだった。