サバイバル島、その11
「ひっぐ。私、感動しました!ひっぐ。すごい戦いでした。もう剣筋とかぶれてしか見えなくて。ふっぐ。もうかっこよすぎました」
「男同士の友情。ライバルから生まれる恋。BL展開。腐腐腐腐腐腐」
卍は僕らの戦いに感動し泣き、変態は変態的思考により別の世界に行ってしまったようだ。
「お兄ちゃんお疲れーー!!かっこよかったよーー!!」
「ウィルお疲れ。ほんとすごかったわね」
「ん。よくぞ撃退した。褒めて遣わす」
「ほんと。二人ともすごすぎてもう言葉もないわ」
僕はタックルしてきたアイリスを何とか受け止めて頭を撫でてやる。尻尾は大きく振られ、耳は垂れ下がり、アイリスは嬉しそうな顔をする。
というか妹よ。さっきキルにポーション渡したついでに僕も回復してなかったら、今の一撃で僕死に戻りしてたからね?気をつけようね?
「おい!!終わったならさっさとこの縄ほどけよ!!」
ケンちゃんが怒鳴りつけてくる。あ、忘れてた。というか取り巻きもいつの間にか縄で縛られてるし。
その後生き残り「デスペラーズ」9人に対し、エリザベスのありがたいお話によりコインは全て回収。
「デスペラーズ」は無事全員死に戻りしていった。
話し合いの内容はR18になってしまうので伏せておこう。
とにかく「鏡花水月」の皆はとにかく怯え、皆エリザベスには逆らわないと誓いあっていた。
「あいつら結構溜め込んでいたねー!」
「そうね。生産組に全部返しても一人10枚はあるものね」
「ん。あ奴ら、意外とやりよる」
「ふふっ。良かったね」
「あの、本当に私たちも、もらっていいのでしょうか?」
「ほんとですよ。私達結局何もできなかったし」
「ほんまやなぁ。なんか悪い気がするわぁ」
コインは「鏡花水月」の皆にも配っていた。
「いいのよ。これは皆の勝利なんだから」
「そだよ!!遠慮しなくてよろしい!」
「ん。気にしないで。私たちはあなた達がいなかったら突撃できなかった」
「そうよ。「鏡花水月」がいて、キルがいて初めてて皆を助けられたのよ?」
4人に言葉に皆しぶしぶだが納得してくれた。
これでようやく一件落着だ。
「「「「「「本当にありがとうございました」」」」」」
生産組が皆にお礼を言う。
聞けば初めは生産組6人の護衛が10人いたそうだ。
だが、初めに「鏡花水月」の生産組が「デスペラーズ」に捕まり、暴行を受け、そのまま囮に使われ一気に護衛はやられ、生産組だけが縛られたそうだ。
そして「服を脱げ」だの「仲間に連絡して囮になれ」だの強要されたそうだ。もちろんハラスメント警告があるため体は触られていない。だがMr.が皆の代わりに袋叩きになったそうだ。
そこで何とかコインを全て渡し、暴行をやめてもらったそうだ。
本当に吐き気がする話だ。
因みにアイーダは早めにダイブアウトできて逃げられたそうだ。
Mr.が囮になって。
Mr.かっこいいっす。
僕たちは気分転換の為、少し予定よりは早いがみんなでBBQをすることにした。道具はMr.に持ってきてもらっていて、調味料も先ほど手に入れている。
食材は僕らは猿の肉しか持っていないので、「鏡花水月」に出してもらった。今回の助けてもらったお礼とのことだ。
「「カンパニー」がいなければあの「さすらい」は撃退できませんでしたからね。今回はウィルさんの事を少しだけ褒めてあげます。少しだけですよ?微量だけですよ?粉末くらいですよ?」
「どんどん細かくなってんじゃねぇか。まぁ感謝は素直に受け取っておくけど」
「ほんまにすごい戦いやったわぁ。うち感動してしまいましたわ」
フクチョーと座長さんは僕にお礼を言ってくれる。うちも座長さんの着物の隙間から見える豊満な胸元に感動しています。フクチョーは、特に感想はなし。
「あ!!今私たちの胸を見比べてがっかりしましたね!!ほんと失礼な人ですね!無礼な人ですね!変態ですね!!」
「あらあら。うちはいくら見てもらっても構わへんで?」
「駄目ですよ!!座長さんのその体は反則級なんですから!男たちが皆虜になってしまいます!!見とれてしまいます!!血眼になってしまいます!」
「フクチョーも血眼になって見てるじゃないか」
「な!?私はそんな下品なことしていません!!横目でチラ見しているだけです!いつもチラ見だけです!盗み見てるだけです!!覗き見てるだけです!」
「それ余計変態的じゃないか?」
「なんですと!?変態に変態と言われたくありません!!」
「僕がいつ変態になった」
「最初からです!ハーレムリーダーになった時からです!その顔で男はあり得ません!!私の感動を返してください!!私と変わってください!!私をハーレムリーダーにしてください!!」
「結局お前が変態じゃねぇか。女性に囲まれたいんだろ?というか今だって座長さんと卍さんの美人二人に囲まれているじゃないか?」
「そうなのです!!毎日はぁはぁしているのです!!あ!!お姉様引かないで下さい!!貴方のせいですよ!!どうしてくれるんですか!?責任取ってください!」
「知らんがな」
今のは完全に自爆だろう。
というかフクチョーはよくしゃべるなぁ。
BBQはとても楽しかった。ここが墓地の中心じゃなかったら。
生産組は先ほどの嫌な事を忘れようと皆酒を飲んですでに酔っぱらっている。(フランジェシカ以外。)僕らは「鏡花水月」の3人とゆっくり座りながら食事をしていた。
「座長さんは人妻なんでしょ?子供とかいないの~??」
「まだおらんなぁ。旦那が長期海外出張に行ってもうて」
「そうなのね。不安にならないのかしら?」
「不安やけど大丈夫やで?毎日寝る前に連絡取り合ってるし、それにお互い浮気しないようにAOLをやってるからなぁ」
「AOLって海外サーバー?」
「そやで。それで空いてる時間はお互いダイブインしてフレンド登録もしてるから今ダイブインしてるかどうかもわかるからなぁ。これで浮気なんてしている時間なんかあらへんで。」
「いいなぁ。つながってるんだね!!」
「そうやで。私たちはいつでもつながっているんや」
幸せそうに話す座長さんは本当に幸せそうだった。離れていてもお互い信じあえてつながってる事は素晴らしいことだと思う。
「ウィルはキルと繋がらないの?」
「フランジェシカ。今の幸せな空気が台無しだぞ。それにお前の「繋がる」は意味が違うだろ」
「ウィルはそっちなのですね!?わかります。同性愛の素晴らしさ。そしてその大変さ。ですがそれを乗り越えた時に待っている本物の愛!!法律が何ですか!!私たちの愛に不可能はないのです!!」
「違う。勝手に仲間に入れるな」
変態が増えてしまったな。フランジェシカだけだぞ、頷いてるのは。
「なんかすみません。うちの子が」
「卍さんが謝ることはないですよ。変態思考のアホ二人が暴走してるだけなので」
「まだまだ私たちは暴走してませんよ!?爆走してませんよ!?疾走していませんよ!!まだまだ爽やかに歩いている段階です!!」
「私なんてまだまだ準備運動中ね」
「それで助走なのかよ・・・。恐ろしい二人だな」
「「えへへ~~」」
「褒めてない。オーソドックスなボケをするな」
別に同性愛は否定しないが押し付けないでほしい、同姓に告白されたあの忌々しい記憶が蘇ってしまう。
「そう言えば「さすらい」が、あんな真面目な事を考えているなんて思いませんでした」
卍さんが先ほどの会話を思い出す。僕は確かに似合わなかったなと苦笑する。
「確かにそうですね。「生きる」答えを探してるなんて・」
「ほんまやなぁ。なんか意外やったわぁ」
フクチョーと座長さんも顔を見合わせつぶやく。
「ん。人は自分のやりたいことをやらず、恐れを生きている人間は沢山いる。彼はそんな中戦って生きてる人間なんだと思う。そして今その道の途中なんだと」
エリーゼにしては珍しく、知らない相手のことを認めているみたいだった。確かに彼は戦って、戦って、そして気づこうとしているのかもしれない。
それが何か、彼にとって大切なものが何かは、僕にはわからないし、彼自身にしかわからないことだろう。
だけど彼は確かに何かを掴んでいたのだろう。
「あら。エリーゼにしては珍しく知らない相手の事を認めているのね」
「ん。ウィルが認めた相手は私も認めることにしている」
「あはは!エリーゼらしいね!」
「全くね」
「あらあら。ほんま仲ええんやなぁ。うらやましいなぁ」
「ほんとですね。私もそんな風に思える相手が欲しいです」
「んんん!!そう言う人って以外に近くにいるかもしれませんねー!!隣とかにいるかもしれませんねー!!同姓かもしれませんねー!!年下かもしれませんねー!!」
フクチョーはそのあからさまなアピールやめなさい。
卍さん反応に困ってるだろ。
「でも確かに相手の事なんて話してみないと分からないものだよね」
「そうね。人は理論的に見えて意外と感情的な生き物。そして偏見持ちで、自尊心と虚栄心によって行動する生き物。だから本当の事なんて見た目では中々わからない物なのよね」
僕の言葉にエリザベスが答えてくれる。
それには僕も覚えがあるなと感じた。
結局人間は一人一人の心は結構もろいものだ。だから強がって、見栄を張って、背伸びして生きているんだと思う。それ自体は悪くないのかもしれない。
いや、むしろそれは普通の事なのかも知っれない。
だが行き過ぎたプライドは気づかないうちに他人を傷つけるナイフになってしまうこともある。
彼はそんな世の中に疲れてしまったのかもしれない。そして、ここAOLの中で一人で、一人の人間として何かを掴もうと戦っていた。そして彼は、彼らしいやり方で答えを見つけているのだろう。
それが何かは僕にはわからない。でも確かに彼は何かを掴みかけていたんだと思う。
彼と剣を交えていて感じたことだ。
彼は何かを求めて剣を振っているんだと僕は感じた。漫画みたいなことを言うかもしれないけど、確かに感じたんだ。剣を交えて、全力でぶつかり合ったからこそ彼の気持ちが剣を伝って僕に伝わってきた。
彼は何か答えが欲しくて戦ってるんだ、と。
そんな気がする。
「自尊心と虚栄心ですか。確かにそうかもしれませんね。私にも覚えがあります」
「お姉さまもですか?私もです!同じですね!一緒ですね!!同じ思考ですね!私たち気が合いますね!」
「フクチョーちゃんだんだん露骨になってきてるで。でも人間誰にでもあるんじゃないでしょうか?特に若いころは。でもなぁ、年を重ねるにつれて、それって案外なくなっていくものなんやで?0にはならへんけど。なんていうか、見栄を張るのがめんどくさくなっていくねん。そして、次第にそう言ったものが減って、行動範囲も狭まって、色々なしがらみから自分を解放してあげて、地に足ついて、残ったものが本当に大切なものだと気づかされるんや」
年の功。そう言ったら怒られるだろうが、さすが年長者。言葉の一言一言に重みがある。
皆も真剣に話を聞いている。
「うちも若い時は色々な人と遊んでいたけど、いつしか疲れてなぁ。それで色々人付き合いや遊びなんかやめてな。初めは色んな人に「つまんなくなったね。」だの「付き合い悪くなった。」だの言われて傷ついたけど、気づいたら隣に旦那がおってん。気づいたら周りにはうちの本当に大切なものだけが残ってん。そこでうち本当の幸せってこういったものなんだなぁって気づかされたなぁ」
「いい話ね」
「ほんと。素敵な話」
「ん。よくぞ大切なものに気づいた。褒めて遣わす」
「アイリスも大事なものに気づいてるよ!!」
皆、座長さんの話を真剣に聞いていた。なんでエリーゼは上から目線なんだ?
座長さんは「少し話過ぎたなぁ。」と照れながら、照れ隠しのように隣で元気いっぱいに万歳しているアイリスの頭を撫でてあげる。
アイリスの尻尾はぶんぶん振られとてもうれしそうだ。皆はその様子を微笑んで眺めていた。
「ウィルの大切なものは、オリバー?キル?どっち?どっちと交わるの?」
「フランジェシカ。なんでお前はそういつも最後にいい雰囲気を台無しにするんだ」