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Another Of Life Game~僕のもう一つの物語~  作者: 神城弥生
イベント前のあれこれ
118/218

静かな森、前編



『・騎士団様へ


以前から何度も手紙を書いているのですがまだ来てくださらないのでしょうか。


この村はもう限界です。


早く助けに来てください。


あの魔物は何か変です。


次々と村の住人が消えていきます。


早く、早く助けてください。


       ・静か森の中心  嘆きの村 チシャシタより』



 金曜日。


「カンパニー」ホーム。


 僕らはフランジェシカから、変な手紙を読み聞かされていた。


「呼び出していきなりなんだ?その手紙は?」

「これはね。王都の図書館の落とし物ボックスに入っている物なの」

「何かのイベント用か?」

「おそらくね。それで持ってきたのだけれど」

「まずは騎士団にその手紙を持っていけばいいんじゃない?」

「そう思って私も持って行ったんだけれど、騎士団の人に渡すと皆笑って「静かな森に街なんてないよ」って言うの。それで何度か手紙を捨てたんだけど、必ず図書館のボックスにまたあるのよ」

「なんか不気味だねー」

「私もそう思って持ってきたの。たぶん戦闘クエストだと思うし。それに手紙に入っていたこの緑の石」


 フランジェシカは不安そうに手紙と石を見つめている。しかし、そんな森の場所は僕は知らないしな。


「ん。図書館で何してたの?」

「図書館は戦闘系の人はあまり関係ないかもしれないけど、生産系の人にとっては結構大事な場所なのよ?あそこには沢山の生産レシピがあるの。他にも歴史本やおとぎ話なんかも。結構面白いわよ」


 さすが委員長。


 ゲームでも図書館で勉強とは恐れ入る。しかしおとぎ話か。何かのクエストの気もするし今度行ってみようかな。


「私たちは聞いたことのない場所だから詳しい人たちに聞いてみましょ?」

「詳しい人?」

「悪魔結社よ」


 待つこと10分。


「兄貴!!やっと俺たちを呼んでくれましたね!!」

「悪魔結社参上!!」

「ここいい匂いがする。女子の匂い」

「おい!!いきなりやめ、とけ。いい匂いやぁ」

「甘い香りがするでやんす」

「お前らは全く。すぅぅぅぅぅはぁぁぁぁぁ」

「思いっきり吸ってんじゃねぇよ!クンクンくらいにしとけ!!」


 匂いを嗅ぐな。クンクンもアウトだ。変態たちが騒がしく登場した。


「なぁエリザベス。なんで「ダブルナイツ」呼ばなかったんだ?」

「この人たちが姉妹クランの中で今一番MAPを広げているからよ」


 なるほど。


 しかし、こいつら変態度が増してないか?どんだけ飢えてるんだ。


 とりあえず僕が手紙を渡し、状況を説明する。フランジェシカが渡そうと10m近づいたら、リーダーが倒れたためだ。


「なるほど。おかしいな。静かな森には街なんてなかったぞ?」

「それは本当?」

「あぁ。検証組も言っていたから間違いないよ?」

「検証組?」


 僕の知らない名前だ。新しいクランかな?


「兄貴。掲示板をあんまり見ない人ですね?検証組というのはその名の通り、様々な事を検証するクランですよ」

「基本的にはMAPを誰よりも先に、細かく把握。それを掲示板に乗せるんです」


「それだと他の人にクエストなんか先を越されるんじゃないか?」


「それでいいんです。検証組の目的は攻略じゃなく検証なんです」

「つまり職業で言うと、どんな職業があるのか、徹底的に調べるんです。戦闘以外でも農業をしてみたり、海を泳いでみたり」

「本を読んでみたり、政治にかかわってみたりとかもです」

「MAPも普通他の人が行かない場所に行ってみたりして、何かあればみんなに教える。そうやってお礼を言われて喜んでいる変態たちです」

「実際検証組より多くクエストを発見したクランはありませんよ?」


 それはすごいな。しかも無報酬とか。確かにある意味変態なんだろう。


「でも「カンパニー」でも検証組には支援してるわよ?」

「えっ!?そうなの?」

「ウィルには言ってなかったかしら?検証組はとにかく色々な情報を集めてくれるいいクランなの。だから生産組はできるだけ安く、商品を売っているのよ」

「他のトップクラン達もそうだよ!!」

「ん。ダブルナイツとかは生産組がいないから、素材なんかを安く取引している」


 知らなかったのは僕だけですか。


 なんか悲しい。


「そうなんだ。でもそんなクランが「ない」って言ったなら、この手紙はいたずらって事?」


「町はないけど廃墟はあるんですよ。僕らも検証組もそこに何かあるんじゃないかと思って、結構探し回ったんですが、何にも見つけられなくて」

「そんなときに兄貴たちからの連絡があったんです。これはもはや運命です」

「そうです。運命です。だから一緒に行きましょう!!」

「僕たちはもはや一蓮托生です。一緒に行きましょう!!」

「まぁ正直寂しかったんです。一緒に行きましょう!!」

「綺麗な女の子たちと旅がしたいんです。一緒に行きましょう!!」


 本当にこいつらは、いつ報われんだろうな、初めは面白かったけどだんだん悲しくなってきた。


「ねぇねぇ!!皆はいつも一緒だけど彼女とか作らないの??」


 アイリスが爆弾を落とす。この子絶対楽しんでいるな。


「お、おい。やめてあげなさい。こいつらは。あれ?」


 落ち込むかと思っていた悪魔結社は皆へ依然としていた。


「カノジョ?カノジョって何だっけ?」

「あぁ!!あれじゃない?昨日食べたやつ!!」

「あ~!!あれか!!結構うまかったな!!」

「違う違う!!子供のころ遊んだあれだよ!」

「違うよ?昨日お巡りさんが持ってたあれだよ」

「お巡りさんが持つわけないだろ。お父さんが毎日買ってるあれだよ」

「カノジョ?カノジョトハ?アレ?ココハドコ?ワタシハダレ?」


 悪魔結社は壊れた。


 最後のやつは記憶までも失ってしまった。あとお父さんが彼女買うって、色々まずいんじじゃ?


「カノジョ。コンビニで売ってたあれか!!」

「980円のあれか?確かにあれの気がする」

「いやいや。コンビニにはないぞ?昨日TVでやってたあれだろ?」

「悪い奴らが現れた時に出てくるあれだろ?」

「カノジョかぁ~。いゃぁあいつらは強かったなぁ」

「確かにな!!口から火を噴いてたもんな!!」

「アレ?ヒカリガミエル。メガミサマ?アナタハ、メガミサマナノ?」


 最後のやつ。


 現実逃避はいいが、幻を見るのはやばいだろ。


 アイリスはからかって満足そうにしていた。いつからそんな子になってしまったのか。


 とりあえず彼らを正気に戻すのに時間がかかり、この日はお開きとなってしまった。


 土曜日。


 僕らは正気を取り戻した「悪魔結社」に転移ポータルでお金を払い、静かな森のそばの街まで連れていてもらっていた。


 僕らは人口100人くらいの小さな村の井戸に出た。


「ここは特に何もない村です。小さいから簡単なお使いクエストしかないですし。では、森の方まで行ってみましょうか」


 僕ら、5人と、フランジェシカ、悪魔結社は街から出ようとする。


「待たれよ。そこの冒険者の方々よ」


 街の冊を越えたところで老人から話しかけられる。


「どちらに行かれるので?」

「こんにちは。僕たちは静かな森に行くんですよ」

「何と。やめときなさい。あそこには恐ろしいモンスターがいるらしいんじゃ。近寄ってはならぬ」


 僕らは顔を合わせる。


 悪魔結社は「こんなことなかったです。」と。小声で教えてくれた。


「えっと。おじいさん。何か知っているんですか?」


「あぁ。大して詳しくは知らんがの。それでもいいなら」

「はい。是非教えてください」

「そうか。実はここの中にある街にとある魔物が出たらしいんじゃ。だがおかしなことに誰もその姿がどんなものかわからなかった。不思議に思っておると、森から一人の少女が出てきての。「町の人たちは皆殺されてしまった。私は王都に助けを呼びに行く。」と言って行ってしまったんじゃ。だがその子も王都に着き、そのまま力尽きたらしい」


 なんとも悲しい話だ。


「因みにその話はいつ頃の話ですか?」

「いつじゃたかのぉ。1年前か。10年前か。50年前か。最近物忘れがひどくてのぉ」


 確かに重症のようだ。1年前と50年前がわからないとは。


「わかりました。わざわざありがとうございます」

「それでも行くと言うか。まぁ止めはせん。気をつけての」


 それだけ言うとおじいさんは家に村の中に消えていった。


「こんな事今までありませんでしたよ」

「ということは、やっぱりこの手紙と一緒に入っていたこの石がキーアイテムって事かしら?」

「恐らくそういうことだと思います」

「じゃあとりあえず森まで行ってみようか」


 僕らは15分ほど歩き、森にたどり着く。そして、森に入った途端風景が歪んだ。


「戦闘準備だ!!」


 悪魔結社リーダー、プライドの掛け声で皆武器を構える。


 が、モンスターは襲ってこない。すると目の前に文字が浮かぶ。


ーーーーーーーーーーーーー


シークレットクエスト【囚われた住人】


1/3クリア


ーーーーーーーーーーーーー


 どうやらクエストが始まったみたいだ。



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