フランジェシカ編、後編
「良し!こんなもんでいいわ!」
結局セージを二人合わせて200は集めた。その間襲ってきたモンスターはすべて僕が倒した。なのにLVは上がらない。LV差があるとはいえこの数を倒しておいて上がらないのは悲しいな。
「じゃあ帰るか?」
「待って!!あと一カ所だけ付き合って!!」
そう言って僕らは森を彷徨うことになった。
「いたわ。この子達にしましょう」
「この子達レア固体なんじゃないか?色が他とは違うし」
森の南西部。海に近いところに白いクマと、その背に乗る白い猫がいた。
・ミニホワイトベアー LV10
・ホワイトフォレストキャット LV10
「この子たちの目撃情報は何度かあったのよ。ただ逃げ足が早いし、あんまりLVも高くないから大して注目されなかったのよね」
「この子達を倒してもLVが上がらないからあって事?」
「そういうこと。さ、ウィル。やっておしまい」
「え?僕がやるの?」
「そうよ。私じゃ逃げられてしまうわ。はい。これ。倒す前にこれを使って?」
「この赤い球は?」
「惚れ薬」
「本当に?」
「ごめん。嘘。それはまだできてない」
「作るなよ?」
「それは餌よ。それでこの子たちをテイムするのよ」
「ちょっと待て。ほれ薬を何に使うか詳しく話し合おう」
「ほら、逃げるわよ!!急いで」
「……」
僕は、僕らから逃げようとする2匹に向かって走り出す。二匹は急いで僕らから逃げようと木に登る。
が、僕は以前のサルとの戦闘のおかげで、木の上の戦闘はお手の物だ。
ジャンプで木を駆け上がり、俊足で2匹の前まで走る。
「シャーーー!!」
「クマーー!!」
なんかめっちゃ怒られた。しかもお前「クマー」って言うのか。
「まぁ待て、戦う気はないんだ。二人(?)にこれを渡したくて」
僕は赤い謎の玉を見せる。二匹は一瞬それを見るが、すぐ僕の方に襲い掛かってくる。
猫は引っかき攻撃に、クマは頭突き攻撃だ。僕は二匹を正面から受け止める。さすがにこのLV差と剛力を使えば余裕だ。
「クマ!?」
「ニャニャ!?」
二匹が驚いてるうちに二匹の口の中に玉を投げ込む。
「ニャ!?にゃ~。ごろごろごろ」
「クマ!?クマ。クマ~~~」
クマたちは初めは吐き出そうとしたが、すぐに球を咀嚼し、何故か僕の足元になついてきた。
・ミニホワイトベアー LV10 をテイムしました。
・ホワイトフォレストキャット LV10 をテイムしました。
目の前にインフォメーションが流れる。
おい。ちょろすぎじゃないか?
というかこの玉やばい奴じゃないですか?
とりあえずほっておくのも可愛そうなので、二匹を撫でておく。
「ゴロゴロゴロ」
「クマクマクマ」
可愛いな、ほれほれほれ。ここがええのか?ここか?ほれほれほれほれ。
「おーーい。テイム成功したなら降りてきて?私一人じゃこの森でも死んじゃうわよ?それだと私の信者たちが悲しむわ!まだまだ教えなきゃいけないことが山ほどあるのに」
彼女はこの森に置いて行った方が世の中のためかもしれない。
「ねぇ、無視しないで?エリーゼ達に私がウィルに襲われて犯されたって「降りるから待ってなさい!」もう。初めからそうしてよね」
この女は危険だ。余の為にも僕の為にも。逆らってはいけない気がする。僕は二匹を抱えて飛び降りる。
「しかし、何だったんだ?さっきの玉は。」
「あぁ。あれは「古代の島」でウィル達がとってきた赤い果実をべーズにした、とってもとっても甘くておいしい奴よ?ちょっとだけ王都で手に入れた「惚れ薬もどき」が入っているけど」
「……」
やはりこいつは危険な奴かもしれない。そんなの売っているのか王都。
「もどきって?完成はしていないのか?」
「していないみたい。なんか、お酒や、興奮剤が入っているみたい。でもそれだと一瞬なつくけどうまく惚れられないらしいのよ」
「試したの?」
「他の人がね。「わんにゃん倶楽部」ってウランがすでに何匹かフォレストキャットとかをテイムしてて。ただ、戦闘しないで懐かせる報告は聞いていないわ。さすがウィル」
試したらしい、誰に?とは怖くて聞けなかった。
「普通はどうやってテイムするんだ?」
「今のところ、戦って力を示してそのあとに好みの食べ物を与えるっていうのが一般的ね。後は運がすごくいいと懐くみたい」
「そうなんだ。でもあんまりテイマーってみないな」
「そりゃそうよ。この辺のモンスターテイムして、強くしたってたかが知れてるもの。だったら自分たちで戦った方が数倍強いわ。それにテイムするには数倍LVが下じゃないと成功しないみたい」
なるほど。テイムの確立が低いのと、まだまだ強いモンスターがいないからテイマーは少ないのか。
「じゃあこの子たちは何のためにテイムしたんだ?」
僕は、僕の足に頭をこすりつけている二匹の頭を撫でながら聞く。
「目的は3つ。まずは調合の手伝いをしてもらうため。そして、店を持った時の看板娘。それと私の愛玩動物」
完全に私物化するつもりだね?一応僕がテイムしているんだよ?
「ほら、名前つけてあげなきゃ。何がいかしら・・・。攻めと、受け?サンドにリバ?下剋上に」
やめろ。この子たちが可愛そうだ。
「白いから「ノエル」に「スノウ」でいいんじゃないか?安直だけど。」
僕が「ノエル」と「スノウ」というと二匹は「それがいい!!」と言わんばかりに頭を激しく僕の手のひらに押し付けてきた。
「あら、残念。気に入ってしまったみたいね」
「危なかった・・・。猫が「ノエル」でクマが「スノウ」ね。よろしくね。二人とも」
「ニャ~~」
「クマ~~」
こうして僕らは一度「カンパニー」のホームに戻った。
「しかし、この子たち本当に戦闘が嫌いね」
「みたいだな」
二匹は草原を歩いているときに襲ってきたラットすら、戦うのを拒んだ。というか僕の後ろに下がって知らん顔していた。この子達は戦闘向きじゃないみたいだ。
「じゃあ錬金術を始めますか」
「この子たちはどうすんの?」
「じゃあスノウにはこの魔石を削ってもらおうかな?」
「クマ!!」
「ノエルは?」
「ニャ~?」
「ノエルは。見といてもらおうかな?」
「ニャ~~!!」
ノエルとスノウはラジャーと敬礼する。
素直な子たちや。可愛い。
「じゃ二人はフランジェシカの手伝いをしていてね」
「クマ!!」
「ニャ!!」
二匹は足元にしがみついてきた。
駄目だ、可愛い。とりあえず撫でておく。うりうりうりうり。
「にゃ~」
「クマ~」
二匹は喜んでいるみたいだ。可愛すぎる。
ごーりごーりごーり。
スノウは魔石を石うすで細かくする。
「ところでこれ何に使うの?」
「魔石はさっきの爆弾やクモ糸の網に使うのよ。と、「乾燥」「ウォーターボール」」
「あれ?フランジェシカ水魔法使えたんだ?」
「魔力のこもった水の方がポーションの効果が高いのよ」
「へぇ~。色々考えてるんだな」
ポーションは薬草×水でできる。
それに対してミドルポーションは、セージの花、乾燥したセージの葉、薬草を沸騰していないお湯でに出し、その水にはウォーターボールを使うそうだ。
「因みに今は何を造っているんだ?なんかやばそうな色だが」
「腐腐腐。これを飲んで見ればわかるわ」
フランジェシカは謎の紫色の玉を取り出す。僕はどうせ断れなさそうなので素直に飲んでみる。
「体が熱い。なんだこ、れ?あれ?」
全身熱くなったかと思うと、頭に違和感を感じる。恐る恐る触ってみるとなんと、僕の頭に猫耳が生えていた。
「なんだこれ?」
「腐腐腐。やっとここまで来たわ。それは一部だけだけど、特定の相手の毛を混ぜることでその種族に一時的になれる薬なの!!腐腐腐。これで世界が男に埋まるのも時間の問題ね」
なんかすごいのができていた。
「ただいまーー。お兄ちゃん……?」
「ん。ただい、ま。ウィル、それ」
あ、まずい。このタイミングで皆が帰ってきたとなると・・・。
「あーー!!お兄ちゃんが猫さんになってる!!」
「ん。ニャニャニャ!!」
「やーちゃん可愛いわ!!」
「あら、私たちへのご褒美?」
来るな来るな、エリーゼにいたっては、もはや言葉になってなかった。
僕は皆の気が済むまで滅茶苦茶にされるのだった。