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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
4章 心の支え
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4章 2話 嘘か真か

「なるほどねー」


彩香は健一の話を聞いて頷いていた。


「先に言っとくが嘘は言ってねぇぞ。ましてや梨沙も知ってる話だ」

「じゃあなんでさっき梨沙に聞かれたとき無言だったの?」

「...別にいいだろ」

「別にいい、か。まぁ、本当に付き合ってないんだったらちゃんというものねー」


彩香はあえて挑発すかのような口調でそう言った。だが健一は無言だった。


「あや!いい加減に──」

「いいよ」


香恵が怒りに任せて彩香の胸倉をつかもうとしたときに、香恵の後ろに梨沙がいた。


「梨沙...」


香恵は心配そうな顔で梨沙を見る。梨沙は涙を我慢しているようにも見える。


「健一君、放課後でいいから2人で話そう?」

「あぁ、そうだな。放課後に公園で話すか」


二人はそういうと自席に座った。健一の席は彩香が座っていたが、無理やりどかした。






それから午後の授業では、いつもなら合間を縫って楽し気に会話をしている梨沙と健一だが、離さないどころが、お互い見向きもしていなかった。


「なぁ兄貴?」

「なんだよ、まだ授業中だろ」

「スズとケンイチ、なんかいつもと違くね?」

「...やっぱ気が付いたか?」


セリアもアクトも最後列だったため、梨沙と健一がよく見える。


「いつもならすげぇ楽しそうに話してるのに、今は目すら合わせてないみたいだ」

「流石に変だよな...後で聞きに──」

「それはやめてあげて」


セリアとアクトの会話に香恵が入ってくる。香恵も最後列の一人なので、話はしっかり聞こえていた。


「えっと...天津廻だっけ?」

「苗字で呼ばれるのは嫌いなの。香恵でいい」

「そっか。じゃあ香恵。やめろって言ったけど何かあったのか?」

「授業が終わってからちゃんと説明するから、直接は聞かないであげて」


香恵の言葉に疑問しか出ないのは言うまでもない。だが、何かしらの事情があるのであれば仕方ないと考えたセリアとアクトは真面目に授業を受けることにした。




午後の授業の一コマが終り、休憩時間。いつもなら盛り上がっている梨沙と健一の周りも、今は不自然に静かだった。


「んで香恵。二人に何があったんだ?」

「詳しい話もはっきりしたことも教えられない...というか知らないけど、高尾君が向こうで何かあったみたい」

「向こうでのケンイチの話は結構聞いてたけど全部乗り越えたよな?」

「あぁ、今更気になることなんてないと思うが...」


セリアもアクトもやはり疑問は消えなかった。香恵の一言を聞くまでは。


「なんか、向こうで付き合ってたとかなんとか」

「「そこんとこ詳しく!」」

「ちょ、え!?」


唐突に顔を近づけるセリアとアクト。香恵は驚き後ろに下がる。


「あ、悪い。向こうでは日常だったから癖が抜けなくてな」

「あぁ、そっか。君たちは日本人じゃないんだもんね」


香恵も納得したようで、いったん落ち着いてからさっき昼にしていた会話の内容を教えた。


「なるほどなー。そりゃ本人には聞けねぇ内容だ」

「理解してくれて何より」


香恵はそう言って次の授業の準備をしていた。セリアとアクトも準備をするが、梨沙が気になって仕方のない様子だった。そこに比岐島が来た。


「今の話って本当か?」

「え?ほ、本当だけど...」

「なるほど、だからあいつら元気なかったのか」

「えっと、あなたは?」

「ん?俺?俺は比岐島 賀井(がい)。健一の友人だ」

「あ、そうだったの」


香恵は少し安心した様子だった。条件反射で頷いたが、健一と梨沙の関係を悪く思っている人だったからこれが漬け込むチャンスになる。そんな人でなくてよかったと。


「あの、比岐島君は、二人をどう思う?」

「ん?二人って健一と梨沙か?」

「いや、高尾君と、写真に居た女の人」

「それは写真を見なきゃわからんな。多々見静香って人なら一回あってるから見ればわかるはずだ」

「なら...」


香恵は鞄から携帯を取り出した。だがそれは香恵の携帯ではない。


「この写真なんだけど」

「...これは...」






放課後、梨沙と健一は何も言わずに一緒に下校した。それを後ろからついて行く3人。


「わざわざありがとう、比岐島君」

「礼には及ばないさ。俺だって健一の受け答えが気になる」


香恵と比岐島。そして、


「なんで私まで尾行しなきゃいけないのさ...」


里美だった。


「里美ちゃんもごめんね。でも気になるでしょ?」

「まぁ、気にはなるけどさー」


3人は健一と梨沙が公園のベンチに座ったのを確認してから、話し声が聞こえるかどうかまで近づいて潜伏していた。






「昼の話だけどな」


健一はそう切り出した。

放課後、梨沙と一緒に無言で下校し、公園のベンチに腰掛けている。梨沙とは、人2人分開けて座っている。


「あれはただの誤解だ。俺は多々見と付き合ったりしてねぇ」

「だったらなんであの時何も言わなかったの?」


梨沙はいつもよりきつめの、今にも涙があふれそうな声でそう聞いた。


「答えようがなかったんだ」

「なんで!私はあの写真が健一君なのか確認しただけじゃない!なんでうんとも違うとも言えなかったの!?」

「あれは俺だ。だが、あの場で肯定しようと、今の現状と変わりはなかった。違うか?」

「そ、それは...」

「学校でこんな騒ぎにしてられねぇからあえて何も言わなかった。こうなるのも予想済みだ。俺は演じてたんだよ」

「...演じてた?」

「あぁ」


演じてた。健一はそう言った。だが、梨沙には理解できなかった。


「丸谷のやつもわかってて言ってる。だから俺は挑発されねぇように演じてたんだ。まぁ、結局挑発されたがな」

「なんでそんなこと...」

「そんな知らねぇ。でも...」

「でも?」

「俺の想いは簡単には消えねぇよ」

「健一君...」


健一の言葉に涙する梨沙。


「梨沙ならわかると思うが、俺は挑発されんのが好きじゃねぇ。ましてやいじられるのもな」

「うん...」

「だから丸谷の前では言わなかった。あんときの俺は相当焦ったからな」

「焦ってた?健一君が?」

「あぁ」


そんな風には見えなかった。梨沙はそう思った。それもそうだ。あの時の健一は平常心そのもの。そう感じたからだ。


「...また、梨沙には心配かけちまったな。すまん」


健一は梨沙に頭を下げた。その光景は梨沙にとって衝撃的だった。


「そ、そんな!健一君だって驚いてたんでしょ!だったら仕方ないよ!」

「まぁ、それはそうだが...俺の態度で心配かけたのは事実だ」

「それは仕方ないよ!健一君の性格だし、さっちゃんだってあの性格だから...」

「それにしてもだ」

「だから!」


健一も梨沙も譲らぬ、無意味な口論が始まった。






「ねぇ、やっぱりやめない?」


茂みに隠れて梨沙と健一の話を聞いていると、里美がそういいだした。


「何言ってんだ。気になるんだったら聞いていこうぜ」

「そうはいってもさー。これって軽く犯罪じゃない?」

「何言うの里美ちゃん。あなたは高尾君に盗聴器を仕掛けたらしいじゃない」

「な、なんで知ってるの!?」

「情報通のあたしをなめちゃだめだよ」

「怖っ!?香恵ちゃん怖っ!?」

「お前ら静かにしろ」

「「はい...すみません」」


里美と香恵を注意する比岐島。もちろん3人は梨沙と健一の話を盗み聞ぎしてるわけだから見つかるわけにはいかない。


「答えようがなかったんだ」

「なんで!私はあの写真が健一君なのか確認しただけじゃない!なんでうんとも違うとも言えなかったの!?」

「あれは俺だ。だが、あの場で肯定しようと、今の現状と変わりはなかった。違うか?」


健一と梨沙の会話が聞こえる。


「確かに肯定してても、梨沙との一対一のお話は避けられないだろうね」

「そうだな。まぁ、写真の女も多々見で間違えねぇから尚更だ」

「あの写真の子が、梨沙の恋敵...」

「里美、それは違うぞ。梨沙の恋敵でもライバルでもない。梨沙にとっての野良猫だ」


野良猫。その表現は正しいのかもしれない。


「野良猫か...」


里美はそうつぶやく。


「...演じてた?」

「あぁ」


だが、梨沙と健一の声にかき消されて2人には聞こえなかった。


「演じてたってどういうことだ?」

「わからない。でも、あの時の高尾君はとてもそんな風には見えなかった」

「でも、演じる理由はあったってことでしょ?きっと今から訳を言ってくれるよ」


「丸谷のやつもわかってて言ってる。だから俺は挑発されねぇように演じてたんだ。まぁ、結局挑発されたがな」


『...なるほど』


3人は健一の言葉に納得した。健一が煽られることや挑発されるのが嫌いなことは全員察していた。


「でも高尾、結局挑発されたなら意味ないじゃん」

「確かにな」

「まぁ、挑発を避けた結果挑発されたって感じじゃない?」

「香恵ちゃん……それはわかってるから」



「...また、梨沙には心配かけちまったな。すまん」


健一は梨沙に頭を下げた。その光景を見ていた3人には衝撃的な光景だっただろう。あの健一が頭を下げている。それだけでもクラス内のビッグニュースになりかねない。


「あ、あの健一が頭を下げた?」

「信じられない...あの高尾が人に頭を下げるなんて...」

「雰囲気的にそんなことする人じゃないとは思ってたけどやっぱりそうなのね...」

「梨沙への告白の時も頭は下げなかったよ?」

「里美、それ言っていいのか?」


変なやり取りをしている間に梨沙と健一は小競り合いを始めた。


「...なにあれ?」

「高尾を梨沙がまたつまらない口論を...」

「そういうなって里美。いつものことだろ」

「え、いつものことなの?」

「あぁ、あのバカップルはいつも何かしらで言い合ってるよ」

「全く...これは止めに入ったほうがよさそうね」


そう言って里美は隠れていた茂みから顔を出した。






「だから、健一君は悪くないって」

「悪く無くても迷惑はかけたんだ」

「別にいいの!さっちゃんがあの性格なんだから仕方ないよ!」

「仕方ないことはねぇ。もっといい解決法はあったはずだ」


梨沙と健一のどちらも譲らない無駄な小競り合い。放っておけばずっと続けるだろう。


「たくもう...どっちだっていいじゃんそんなの。いつまで言い合ってんのさ」

「え、さ、里美!?」

「前川!?いつからそこにいた?」


突如出てきた里美に対して、珍しく健一が本気で驚いていた。


「あたしだけじゃないっての」


その声を合図に、茂みから比岐島と香恵が出てくる。


「比岐島君、香恵ちゃんまで……いったいどうしたの?」

「どうしたのじゃねぇよ。俺たちは2人が心配だったから尾行してたんだ。会話の内容も全部聞いてる」

「盗み聞きとはいい趣味してんな比岐島」

「違う、あたしから呼びかけたの」

「香恵ちゃんが?」


香恵はうなずいた。


「お昼の言い合いで二人のことが心配になったから尾行しようと思ったんだけど、一人だと不安だから比岐島君に」

「そして、俺が里美を誘ったわけだ」

「そしたらこの様よ。心配して損したわー」


里美は呆れたように言う。


「ま、仲直りできたならいいんじゃねぇか?万々歳だろ」

「とりあえず俺は丸谷に一発入れていいか?」

「ぼ、暴力はダメだよ健一君!」


健一の真顔で放ったとんでもない一言で、その場が笑いに包まれた。


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