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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
3章 梨沙の章 / 健一の章
44/47

3章 10話 出会い / 決着

梨沙の章






『健一が...負けたかもしれん』

「...は?」


比岐島は電話越しにそう言った。里美は驚きを隠せないように目を見開いた。


「里美?どうしたの?」

「え、いや、なんでもない...」


梨沙は里美の反応に対し疑問を持った。里美は、梨沙には言ってはいけないと比岐島が言っていたことを理解し、何でもないと答えた。


『そういうわけだ、詳しい話は会った方がいいだろ?』

「そうだね...じゃあ30分後にあんたの家に行くから待ってて」

『分かったが...そっちはどうすんだ?鈴城さんの家からじゃどんなに急いだって20分近くかかるだろ』

「そこをどうにかするのがあたしでしょ。ちょうど体動かしたかったし」

『...わかった。まってるぞ』


そこで電話は切れた。そして里美は携帯をしまうと梨沙に向かって手を合わせて謝った。


「ごめん梨沙!急用が出来ちゃって...もう少ししたら行かなきゃなの!また明日お願いできるかな?」

「う、うん。いいけど...比岐島君どうかしたの?」

「あー、ちょっと寝込んじゃったみたいで、親も家にいないから来てくれないかって。まったくまいっちゃうよねー」


あははと笑いながら里美はそういった。梨沙は当たり前のようにその言葉を信じて居た。だから勉強を止めて、玄関まで見送った。


「本当にごめんね?」

「大丈夫大丈夫!私のことはいいから比岐島君を看病してあげて」

「うん!じゃあまた明日!」


里美は元気に手を振り、梨沙の家を離れた。


「...比岐島君大丈夫かな?」


梨沙はボソッと呟いた。






「比岐島ー?来たよー」

「来たか。上がってくれ」


里美は比岐島の家に着いた。比岐島は玄関を開け、里美を入れると部屋まで案内したのちに『少し待っててくれ』と良い、部屋を出て行った。


「男の人の部屋って初めてかも...」


里美は座布団に座りながら、物珍しそうにあたりを見回す。特に何か特徴的なものがあるわけでもなく、ただ本棚や勉強机がある普通の部屋だった。


「あんまりじろじろ見んなよ...はずいだろ」

「あ、ごめん」


比岐島がお盆にお茶菓子と飲み物をのせて部屋に戻ってきた。


「そんなに珍しいものも置いてないと思うんだが...」

「いやー、男の人の部屋って初めてだから妙に緊張しちゃって」

「そうなのか?高尾の家も知ってるような感じだったし、上がったことあんのかと思ってた」

「いやいや、高尾の家は何回か行ったことあるけど、部屋までは上がってないから」

「そうなのか」


比岐島が話しながら飲み物をコップに注ぎ、里美に渡した。


「それはそうと比岐島。高尾が負けそうって何事なの!」


里美は貰った飲み物を飲む間もなくそう聞いた。比岐島は今までにないほど真剣な顔で言った。


「俺は今日、学校を休んで高尾と会ってきた」

「いや、でも今日は先に行くって言って──」

「それは嘘だ。嘘を言って悪かった。本当のことを言えば鈴城さんを呼んで一緒に行くとか言いかねないと思ったんだ」


里美はその言葉に息を詰まらせた。図星だからだ。理由も聞かずに、比岐島が高尾と会うと聞けば、梨沙と一緒に行くと言っていただろうと、里美自身も思ったからだ。


「高尾と会ってきた理由だが、高尾に呼び出されたんだ」

「呼び出された?こっちに来たんじゃなくて?」

「こっちに来たんならついでに鈴城さんとも会わせるさ。無理やりにでもな」

「それもそうか。でもなんで?」

「実はな...」


比岐島は健一と会って話したことすべてを里美に話した。


「それ...本当なの?本当に高尾がそう言ってたの?」

「あぁ、間違いない。あの顔はガチだった。なにより、この目で現場を見たからな」

「そんな...」


里美は話を聞き、脱力しきってその場に寝ころんだ。


「里美?」

「こんな話聞いた後であたし......梨沙になんて声を掛ければいいのさ...」


里美は涙を流していた。






梨沙は里美を見送った後、部屋で一人で勉強をしていた。


「比岐島君大丈夫かなー?里美が居れば安心だとは思うけど...」


そんなことをぼやきながらも、しっかり勉強は進めている。梨沙も、健一に頑張るといった以上何もしないわけにはいかない。

心ここにあらずといった状況の中勉強していると、部屋のドアがノックされる。


「入っていいよー」

「じゃあ入るよ」


ドアを開けて入ってきたのは梨沙父だった。


「お帰り。お父さん。どこ行ってたの?」

「ただいま。梨沙。ちょっと買い物に行ってただけだよ。どうだい勉強の方は」

「やっぱり一人だと楽しくないかなー。でも頑張らないと」

「頑張り屋だなー。でも、根を詰めすぎてもだめだよ?気分転換に一緒に外でも歩かないかい?」

「うん、いいよ。区切り着いたら準備するからその時呼ぶね」

「わかった。リビングで待ってるから」


梨沙父はそういうと部屋を出て行った。梨沙は区切りがつくまで勉強した後に、外に出る準備をした。




「やっぱりこの時間だと肌寒いね」

「それはお父さんが半袖だからでしょ」


外に出た二人。梨沙は上着を羽織っているが、梨沙父は半袖で何も羽織っておらず、寒そうにしていた。


「高尾君とは連絡取れているのかい?」

「うーん、時々かな。向こうもいろいろ忙しそうだし、今結構大変なことになってるから」

「そうなのかい?」

「うん。ライバルが増えたって言えばいいのかな?そんな感じ」

「そっか...」


二人は近くの十字路に向かって夜道を歩きながら、そんな会話をしていた。梨沙父は少し暗い顔をする。


「梨沙は、そのライバルに負けると思うかい?」

「どうだろう。私は私に自身がない。けど、健一君なら大丈夫って思える。だから負けるかどうかはわかんない」

「そっか。梨沙は高尾君を信じて居るんだね」

「うん。だって、私の大好きな人だもん」


梨沙は元気よくそう言い切った。さすがの梨沙父もびっくりしていた。


「そっか...大好きな人か。だそうだよ高尾君」

「...え?」






健一の章






「俺...負けるかもしれねぇ...」

「......は?」


健一の発した言葉に、比岐島は唖然とする。


「おまえ、それどういう...」

「詳しく話すとだな...」


健一は、言葉の意味を話し始めた。


「俺は、あいつと決着をつけるために、あいつと一対一で話し合った。カフェでな。そこで俺は聞いたんだ、あいつの想いが本気なのかをな。もちろん本気だった。俺は、あいつが大嫌いだ。だけど、あいつが本気なように俺も本気だった。あいつの気持ちをねじ伏せることは出来ねぇ。だから俺は、あいつとのけりをつけるために、あいつとキスをした」

「は!?てめぇそれがどういうことかわかって──」

「わかってる。好きでもねぇ相手に、梨沙が居ながらもキスをしたんだ。わかっててやった。これが俺のけじめだ」

「...わかってんなら取りあえずはいい。それで?そのけじめの結果が負けたってことか?」

「あー、いや。そういうことじゃねぇ」

「んだよ、今の流れからしてそういうことじゃねぇのかよ」

「逆なんだよ。確かにあいつに負けたって表現は間違ってねぇが、負けたわけじゃねぇ」

「それ矛盾してねぇか?」


比岐島は理解に苦しんだ。健一の発言が矛盾だらけで何一つまとまっていないからだ。


「要するにだな。多々見との対決には勝った。だけど、多々見本人に負けたってことだ」


その発言とともに、家のインターホンが鳴った。


「来たか。比岐島、手伝え」

「は?ちょ、高尾!?」


健一は手伝えというと、少し大きめの段ボールを比岐島に渡した。そして、玄関まで運べと言い出す。何かと思って運ぶと、そこには引っ越しの軽トラックと静香が立っていた。


「あ、どうも。健一君の荷物ってそれですか?」

「あ、えっと...そうですが...」

「あ、申し遅れました。私、多々見静香と言います。お話は聞いてますか?」

「いや、何にも聞いてないんだが」


玄関にいた静香と比岐島はそんな会話をする。比岐島に取って初の対面なので誰かと思って目を丸くしていたが、名前を聞いてはっとした。


「比岐島、お前ならこの状況で察すると思ったんだが」


そうしていると、後ろから段ボールを持った健一がそういった。


「多々見。お前には負けたよ」

「それはお互い様でしょ健一君」

「それもそうだな」


比岐島は唖然としている。健一が大嫌いだと言っていた相手と、親しげに話しているから。そして、状況をなんとなく察したから。


「お、おい高尾!まさかお前...」

「あぁ。そのまさかだ」


健一は笑った。そして荷物を持ち、比岐島とともに車に乗った。




車の中で健一は比岐島に向かっていった。


「お前、このこと梨沙には言うなよ」

「なんでだよ。めでてぇことだからいいじゃねぇか」

「俺はあいつを驚かしまくってんだ。今更普通にしても面白くねぇだろ?」

「おまえなぁ...じゃあ里美はどうすんだ?」

「それなんだが、お前のことだろうからどうせ電話で呼びだすんだろ?」

「よくご存じで」

「電話でよ、あたかも俺が多々見に負けたみたいに言ってくんねぇか?」

「は?なんでだよ」

「前川経由で俺のことを梨沙が知る可能性がある。それを阻止するためっだ」

「あーなるほど。負けたように言うと鈴城さんには伝わる可能性は低いもんな」

「そういうことだ。頼んだぞ」


健一はそういうと、比岐島にこぶしを出した。比岐島はそれに答えるようにこぶしをぶつけた。






「着いたよ。今は多分授業中だから梨沙ちゃんもいないはず。今のうちに終わらせちゃおうか」

「あぁ。比岐島。お前も手伝え」

「ここまで来たら言われなくても手伝うっての」


車で移動した3人は、引っ越しのトラックから荷物を降ろし家に入れていく。


「にしても親もよく許したな。てかまだ売ってはなかったんだな」

「あぁ。俺も驚いたがな」


荷物を入れているのは、前まで高尾家が住んでいた家。つまり鈴城家の目の前だ。




話は少し過去にさかのぼる。

カフェにて、健一が静香を振った後、静香は健一の家を訪ねてきた。健一は玄関先で応じていた。


「多々見か。何の用だ?」

「健一君!...ちょっと話したいからいいかな?」

「俺はお前と話したくない」


そう言って健一はドアを閉めようとした。すると、


「まって!これは、健一君にとってもいい話だと思うから!」


静香のその言葉に、健一は止まる。そして再びドアを開け聞いた。


「俺にとっていい話?」

「うん。でもここだと言えないから公園か、健一君の部屋で話したいんだけど」

「なら公園だな。すぐ支度すっからまってろ」


そういって健一はドアを閉めて、支度をしに行った。

その後二人は公園まで歩く。公園についた二人はベンチに座る。人一人分離れて。


「私ね、カフェで健一君に振られて悲しかった。でも、健一君も本気で言ってくれたんだって感じたの。だから、私もそれに答えたいと思った」

「答える?これ以上何をするつもりだよ」

「いい話って言ったよね?それは、梨沙ちゃんと同じ学校にまた通えるかもってこと」

「!?」


静香の言葉に健一は立ち上がった。


「それはどういうことだ!」

「私の両親は引っ越し屋をやっているの。私が提案してやってみたら大もうけしたから今も続けてるんだけど、たぶん私が言えば無償でやってくれるんだよね」

「引っ越し?」

「うん。さっきお母さんから、健一君のお母さんに連絡入れてもらったの。そしたら、前の家、まだ売ってないんだって」

「あのひとまだうってなかったn...ん?まて、それって...」

「そう、健一君が親から了承をもらえば、そっちに住めるってこと」

「よし、多々見行くぞ」

「え?行くってどこに?」

「決まってんだろ?かあさんのとこだよ」


健一は静香の手首をつかみ、家まで走った。


その後は、健一母に事情を説明、健一の熱意が伝わりOKをもらえた。




そうして今に至る。


「これで最後か」


健一が最後の荷物を運び入れる。もともと数が少ないのもあって健一が2往復、2人が1回運ぶだけで終わった。そこに、


「...高尾君?」

「あ、梨沙のお父さん」


梨沙父が通った。


「トラック...元高尾家...もしかして引っ越しかい?」

「はい。この家で俺の一人暮らしっす」

「そうなのかい?」

「はい。なので明日から梨沙と同じ学校に通えます。転校の手続きも母さんがやってます」

「そうかそうか!じゃあ梨沙に報告を──」

「それは待ってください」


携帯を取り出そうとした梨沙父を健一が止めた。


「驚かせたいんで、協力お願いできますか?」

「いいけど、何をすればいいんだい?」

「今日の夜、横の十字路に俺いるんで、そのあたりまで梨沙と歩いてきて欲しいんです。梨沙と何気ない会話をしながら」

「そんなことでいいならお安い御用だよ」

「ではお願いします」


健一は頭をさげ、梨沙父は手を振りながら家に入っていった。


「高尾、俺はそろそろ家に帰るぜ。家でいろいろ準備しておきたい」

「わかった。手伝いサンキューな」

「おう!」


比岐島は手を振りながら十字路を曲がった。


「さて、多々見はどうする?」

「今から学校に戻るよ。健一君はこのまま整理かな?」

「そうなるな」

「うん。じゃあ頑張ってね」


そういって静香は車に乗り込もうとする。


「待ってくれ」


その静香を健一は止めた。


「健一君?」

「多々見。確かにお前は負けた。お前との怠慢は俺の勝ちだ。けど、俺もお前に負けた。お前の助けがなかった俺はこっちに帰ってこられなかったかもしれねぇ。サンキューな」

「健一君...うん!また困ったら呼んでね!」


静香は健一の言葉に涙を見せた。きっとその涙はいい涙だっただろう。




そしてその日の夜。健一は十字路に立っていた。梨沙の家からは見えない位置に。

そして、うっすらと声が聞こえてくる。梨沙と梨沙父の会話だった。


「高尾君とは連絡取れているのかい?」

「うーん、時々かな。向こうもいろいろ忙しそうだし、今結構大変なことになってるから」

「そうなのかい?」

「うん。ライバルが増えたって言えばいいのかな?そんな感じ」

「そっか...梨沙は、そのライバルに負けると思うかい?」

「どうだろう。私は私に自身がない。けど、健一君なら大丈夫って思える。だから負けるかどうかはわかんない」

「そっか。梨沙は高尾君を信じて居るんだね」


その言葉を発した時には十字路の入り口にいた。そして、梨沙はこう言う。


「うん。だって、私の大好きな人だもん」

「そっか...大好きな人か。だそうだよ高尾君」

「...え?」


梨沙父はそういうと健一の方見た。それにつられて梨沙も健一の方を見る。

皆さん、おはこんばんちは!ピチュをです!

最近暑くなってきましたねー、体調管理はしっかりできていますか?この時期は崩しやすいので注意ですよ!

さて、『恋の色は濁り色』3章10話(42話)を読んでいただき、ありがとうございます。読んでいただいたのでお分かりかと思いますが、今回は長かったですよね?詰め込みすぎました(笑)

そして、終わり方がいつぞやと似ていますよね?そうです。次話は梨沙の章と健一の章がくっついた、総合章になります!

ついに帰ってきた健一、梨沙との再会。おそらく皆さんが望んでいたことではないでしょうか?裏話をしますと、静香が登場した時は、このまま別れて健一と静香がくっついてもいいかなとか考えてました(笑)

ですが、それでは主人公である梨沙がかわいそうと思いこういうストーリーにしました。いかがだったでしょうか?

ちなみにですが、おそらく第3章は次話でラストになります。

ここまで読んでくれた方は、今後もお願いします。この3章10話しか読んでいない方は、1から読んでみてください!きっと好きになるはずです!

これからもご愛読お願いします!

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