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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
3章 梨沙の章 / 健一の章
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3章 8話 秘め事から祝い事へ / 暗黙の階段での一言

梨沙の章





「た、ただいまー...」


返事は帰ってこない。リビングの電気はついているが、声が全く聞こえで来ない。梨沙はゆっくりリビングに向かい、梨沙は恐る恐るドアを開けた。


「あ、梨沙。おかえり」

「......え!?」


梨沙がリビングに入るとそこには見知ったご年配が、ソファに座りながら母親と話していた。


「お!梨沙ちゃん、久しぶりだね!」

「お、お爺ちゃん!?なんで──」

「いやー、近くに来たもんでね。マリエさんとも長いこと会ってなかったしね」


わははっと梨沙の父型の爺、鈴城 宮鷹(すずき みやたか)笑いながらそう言った。


「梨沙、着替えて降りてきたら?久しぶりだしゆっくり話でもしたら?」

「うん!着替えてくるね!」


梨沙はリビングを出て、部屋に入った。久しぶりに爺にあえてうれしいのだろうか、鼻歌を歌いながらいつもの部屋着に着替え、すぐにリビングに戻る。戻った時も、爺は梨沙母と話していた。


「マリエさん、今日健人は遅いのかい?」

「そうねー、仕事もひと段落着いたから早く帰ってくるとは思うんだけど、やっぱり夕食時かな~」

「お父さん今日早いの?」

「梨沙、もう降りてきたの?早いわね?」

「うん!だってお爺ちゃんと早くお話ししたかったし!それに、言わなきゃいけないこともあるから」

「...そうね」


話し始めは明るかった梨沙も、最後の言葉を言うときは少し暗い表情をしていた。何を話すのかを察したのか、梨沙母も少し暗くなる。


「言わなきゃいけないこと?梨沙ちゃん、それって何かな?」

「それはね...」

「?」


爺は梨沙が何を言うのか興味津々な表情をしている。その中梨沙が放った言葉は。


「私ね、お爺ちゃんのお孫さんとお付き合いしているの」

「ほほ、わしの孫と......え?!」


当然というべきか、爺は目を見開いて驚いた。


「え、だって孫ってことは美沙の息子の──」

「高尾健一君だよ」

「でも健人もわしの息子だから梨沙ちゃんも孫で......」

「うん、だからいとこ同士でお付き合いしているの」

「だって健人と美沙は──」

「仲が良くないんだよね?でも健一君は大丈夫だって言ってたから」

「そ、そうなのかい...信じられない」


爺は力が抜けるようにソファにもたれかかった。


「マリエさんは知っていたのかい?」

「向かいに住んでた健一君と付き合ってるっていうのは本人から聞いたけど、まさかいとこだとは思わなかったわ。健人さんに教えてもらったの」

「そうだったのかい...」


爺の表情は暗くなっていった。そこで梨沙が最後に確認しなければならないことを聞く。


「お爺ちゃん。それでね、健一君とも話したんだ。やっぱりお爺ちゃんにも了承がいるかなって。どうかな?」

「んんー...」


爺は腕を組んで唸った。いとこ同士ではいろいろ問題があるのではと思っているのだろう。だが、きっと二人の幸せを願ったのだろう。爺は頷きながら言った。


「二人が本気なら止める理由はわしにはないよ」

「─!ありがとうお爺ちゃん!」


梨沙の表情は明るくなり。うれしいのか爺に抱き着いた。爺は受け止め、頭を優しく撫でた。

そこで「ただいま」という男性の声と同時に玄関のドアが開いた音がした。そしてリビングに入ってくる。


「お、やっぱり父さんの車だったのか」

「おぉ!健人、久しぶり。ちょうど近くに寄ったもんでな。お邪魔してたよ」

「全然かまわないんだけど...これどういう状況?」


ソファに爺と梨沙母が座っており、爺に梨沙が抱き着いている。


「あぁ、それは──」


爺は梨沙父に状況を説明した。


「なるほどな。まぁ、梨沙も安心したような顔してるしなんとなく察してたけども」

「それじゃあ私は夕飯の準備してくるわね!」


そう言って梨沙母は立ち上がり、キッチンに向かった。


「せっかくだしお爺ちゃんも食べて行こうよ!お母さんの料理久しぶりでしょ!」


梨沙は爺を誘うと爺はうれしそうに頷いた。

その後はみんなで食卓を囲んだ。






健一の章






教室に着いた健一と瑞風。教室に入ると、健一の席に座っている美由紀が声をかけてきた。


「健一君おかえりー...って瑞風も一緒?」

「よう古河!早速だがお前に頼みがあるからちょっと来てくれねぇか?てか来い」


瑞風はそういうと美由紀の元に行き、腕を引っ張り教室の外に出た。


「ちょ、瑞風?!引っ張んないでって!歩けるから!」


教室には健一と静香、そして数名のクラスメイトが残っている。健一は静香の元に行き、言った。


「多々見、お前に言わなきゃならなぇことがある。今か放課後、どっちがいい。お前の時間がある方に合わせるぜ」

「え?」


静香は一瞬なにを言われたのか理解できなかった。だが、すぐに答えを出す。


「じゃあ...放課後で...」

「じゃあ放課後校門で待ってっから」


そう言って自席に着く健一。と言っても結局静香の隣だが...。




その後何もなく授業が始まり、何もなく授業が終わった。そして昼休みになる。


「健一ー、飯食いに行こうぜ」

「あぁ」


健一は弁当をもって、瑞風は財布をもって教室を出る。

向かった先は屋上...の手前の階段。普段誰も来ないことから、瑞風は、内緒話などするときは良く来るらしい。


「ここで待っててくれ。俺は購買でパンかなんか買ってくる」

「あぁ、わかったが、他に誰か来たらどうすんだ?」

「安心しろ。ここを知ってるやつたちの暗黙のルールがある。誰かが来ればわかるさ。じゃ、よろしく!」


瑞風はさっそうと購買に向かった。ちなみに、今いるのは屋上の手前の階段。この校舎は4階建てで購買は2階にある。さほど時間はかからないだろう。


「俺は先に食ってるか」


健一はそう呟き弁当を開ける。すると、下の方からこっちに向かってくる音が聞こえる。

やがて、その音の正体がはっきりする。


「「あ」」


上がって来たのは男女のペアだった。その内女子の方は見覚えしかない。健一の女子は目が合うと、ついつい声を漏らしてしまった。それは女子の方も同じようだった。なぜなら...


「「なんで古河(健一君)がここに?」」


そう、上がってきたのはさっきまで同じ教室で授業を受けていた美由紀だった。隣にいる男子は美由紀と健一の顔を交互に見ていた。そして口を開く。


「え、美由紀、こいつだれだよ!」

「あー、ごめん、ただの知り合い...てかクラスメイトだね」

「本当?!実は陰で付き合ってたり──」

「「それはない(ねぇ)」」


男子の一言に、美由紀と健一はマジ顔になってそう答える。


「そ、そう...そうならいいんだけど」

「んで、古河。そいつはだれだ?そしてなんでここにいる?」


健一は美由紀に聞いた。美由紀もまさか健一がいるとは思っていなかったのだから、溜息を吐きながら答える。


「こいつは美海 凜(みみ りん)。隣のクラスの人で、私の幼馴染。気軽にミミリンとか呼んでいいよ。それで、ここにいる理由は秘密の話があるから」

「なるほど。んで、俺は知らねぇんだが、ここには暗黙のルールがあるんだろ?」

「まぁね、知らないなら特別に教えてからやってもいいよ?」

「とりあえずそのルールを教えろ」

「健一君はせっかちだなー。仕方ないから教えてあげる」


そういうと美由紀は右手を突き出し、握りこぶしを作った。


「ここはね?通称『秘密の修羅(シークレットファイト)』って言われているの。誰が最初に着けた名前かは知らないけどね。ここは昔に何度も修羅場になったんだって。だからそういう名前が付いたの。そしてその存在を知る人は、よっぽどのことがないとここには来ない。暗黙のルールが普通の人には嫌なものなの」

「嫌なもの?」

「そう、私もあんまり言いたくないんだけどね。せっかくだから教えてあげる。それはね...」


健一は黙って美由紀の答えを待つ。美由紀は突き出した拳を広げ、パーの形にした。


「両者譲らない場合は脱衣野球拳で勝負を決めるの!」

「......は?」


美由紀のとんでもない発言に耳を疑う健一。


「そういう反応すると思った」

「脱衣野球拳って、あの野球拳か?」

「そうだよ。私もあまりやりたくないから退いてくれると嬉しいんだけどね」


美由紀がそういうと階段の下から声が聞こえた。


「そういうわけには行かんのだよ古河!」

「え?」


来たのは瑞風だ。片手に財布、もう片手にはパンを二つ持っていた。瑞風は美由紀と凛の間を通って健一の前に来た。


「健一君しかいないと思ったら瑞風と一緒だったの」

「そういうことだ古河!お前はここのルール知ってんだろ?だったら俺とやれよ」

「瑞風と...?さすがにそれは遠慮したいかなー」


美由紀は苦笑いしながらそう言った。


「ならここは俺たちが使うけどいいな?」

「ミミリンどうする?」


美由紀は凜に聞いた。だが凜は、


「ミミリン言うな!...美由紀が嫌なら無理にする必要はないさ。どこか別のところを探そう」


美由紀に向かってそう言った。


「じゃあそうしようか。時間取ってごめんね健一君、瑞風」

「いいのか?古河」

「いいよ。でも他の人が来たらルールには乗っ取るんだよ?健一君。じゃあね。また教室で」


そう言って美由紀と凛は階段を下りて行った。


「これでゆっくり話が出来そうだな」


そう言って瑞風は健一の隣に腰を降ろし、パンを食べ始めた。


「んで、こんなところまできて俺に話ってなんだ?」

「んだよ。わかってんだろ?聞くなよ」

「......」


健一は黙っている。感づいたからだろう。


「黙ってるってことは図星だな。まぁいいや。じゃあ単刀直入に聞く。てか言う」


瑞風は立ち上がり、健一を見下ろすようにして言った。


「お前、多々見と付き合え」

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