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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
2章 二人の恋路
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2章 15話 作戦開始!

「比岐島か高尾。どっちかが死ぬかもしれない」

「...は?」

「...え?」


梨沙と健一は同時に反応した。何を言ったのか理解できない。いや、理解したくないのだろう。


「健一君か比岐島君が死ぬって...どういうこと!?里美!」

「待って待って!まだ可能性の話だよ!詳しくは今言うから。その前に姉ちゃん呼んでくる」


前のめりに聞いてくる梨沙をなだめ、里美は姉を呼んできた後、事情をすべて説明する。


「里美、そんなことに巻き込まれてたの!?」

「加藤一樹って...健一君!」

「...あぁ...まぎれもなくあいつだな」

「やっぱり二人は知ってるんだ。あの男のこと」

「あぁ、入学してからすぐに、事件に巻き込まれてただろ?あの時の犯人だ」

「...私、思い出すだけで...」

「ごめんね梨沙。でも、ちゃんと話さないと比岐島と高尾が危ないからさ」


梨沙は体を震わせ口に手を抑えている。そんな梨沙の背中を健一が支える。


「里美。その、比岐島君っていう子は大丈夫なの?」

「加藤とかいう男の言葉を信じるならだけど、大丈夫。とりあえず明日の深夜0時までは」

「じゃあどうするの?里美の足で約2時間ってことは40㎞近くはあるよね?」

「それはお願いした通りだよ」

「それはいいけど...学校はどうするの?」

「休みを取る。梨沙と健一もいいよね?」

「俺は構わんが...梨沙はどうだ?」


梨沙は声には出さず、頷いた。


「とりあえずこれで一つは解決。それでなんだけど...」


里美はノートを取り出した。そしてノートを開くと四人の真ん中あたりに広げた。


「これ、覚えてる限りの廃工場の図。比岐島の場所も正確じゃないけど大まかにはここ。それで、あたしは比岐島を助けたい。そして...」


里美は健一を見つめる。そして


「高尾も、死なせたくない」

「じゃあどうするんだ?」


健一は自分が死ぬかもしれないっていうのに、冷静にそう聞いた。


「あたしが考えた作戦はこう」


里美は作戦をすべて話した。


「どうかな?」

「なるほどな...うまくいけば解決できるな」

「でも、これほどの事件なら警察に相談した方が...」

「確かにそうするのが得策かもしれないけど、それだと比岐島に被害が出るかもしれない。だからあたしたちだけでどうにかしたいの」


それが一番安全という考えなのだろう。


「この作戦。重要なのは梨沙と高尾なの。二人が嫌なら他のやり方を考えるけど...」

「俺はかまわん。自分のことも関係してんだ。それくらいはするさ」

「私は...健一君がいいならいいよ...」

「じゃあ決まり。今日はもうご飯にして、明日に備えて寝ようか」

「じゃあご飯作ってくるわね」


姉はそのまま部屋を出ていった。そしてご飯ができるまで三人で仲良くお話し...というわけにもならず、重い空気がたたずんでいた。

ご飯を食べると少しは緩和されたようで、楽しく話もできるのだが、いつも通りとはならなかった。明日は勝負の日だ。緊張しているのだろう。そのまま三人は明日に備え眠った。






翌朝。健一は早々に起きていた。里美も梨沙もまだ寝ている。ちなみに、空き部屋がないということで健一も里美の部屋で寝ることになった。梨沙もいるし健一のことだから、変なことはしないだろうとのことで里美が許したのだ。時計を見るが、まだ時刻は5時ごろ。緊張して長く眠れなかったようだ。


「はぁ、今日か」


健一はそんな風にぼやく。そして、二人を起こさないように部屋を出ていく。部屋を出ると、里美の姉が寝間着姿で廊下を歩いていた。


「あら?高尾君、朝早いのね」

「いえ、よく寝れなくて」

「まぁ、同い年の女の子二人と同じ部屋じゃねぇ」

「それもそうですが...あの作戦、今日決行ですから。緊張してしまって」


里美が考えた作戦。やはり健一は重要な役回りになっている。緊張しないわけがない。失敗すれば自分の命がなくなるのかもしれないのだから。


「怖い?」


里美の姉がそう聞いてきた。


「怖い...かどうかわからないです」

「そっか...でも大丈夫。きっとうまくいくよ。シスコンだって思うかもしれないけど、自慢の妹の作戦なんだから失敗しないって思ってるの」

「そうですか...」


確かにシスコンだと、健一は感じただろう。そこに


「健一君?」

「ん?梨沙か。おはよ」

「ん、おはよう」


まだ眠たいのか、目をこすりながら健一の側に寄ってくる梨沙。


「前川は?」

「まだ寝てる。私は、起きたら健一君がいなかったから部屋を出てきたの。里美を起こしたくなかったし」

「そうか」


健一は梨沙の頭に手を置き、優しく撫でた。


「二人は付き合ってるの?」

「はい、そうです」

「ふふっ、お似合いね」


そう言われ、二人で顔を真っ赤にした。茶化されることはあったが、こうやって面と向かってお似合いと言われるのは初めてなのだ。健一は、梨沙の頭に置いていた手を避けた。恥ずかしくなったのだろう。


「...ねぇ二人とも」

「はい?」

「お姉さん?どうしたんですか?」

「その...比岐島って子...里美の彼か何かなの?」

「それは...」


二人は迷った。言うべきか否か。なので、健一は姉に聞いた。


「どうしてそう思ったんですか?」

「いやね?里美があんな風に本気なところって見たことがないの。もちろん、自分も怖い目にあったからっていうのもあったと思うけど、そう思うのは必然かなって」

「そうですか...」


健一は梨沙をちらっと見る。梨沙は首を横に振る。この合図で、健一の返答は決まっただろう。


「でも、俺たちからは何も言えませんね。詳しいことは知らないので」

「そう...まぁいいわ。それじゃ、そろそろ準備してきて。まだ早いけどできるなら学校にも行かせてあげたいから」

「「はい、わかりました」」


梨沙と健一はそう返事すると、洗面所で顔を洗い。部屋に戻り里美を起こして準備する。


時刻は午前6時半。準備を済ませ出発しようとする。


「さぁ、乗って!」

「「え?」」


目の前には里美の姉が運転席に乗った状態の車があった。


「お姉ちゃん!お願いね!」

「「いやいや!ちょっと待って里美!(ちょっと待て前川!)」」


里美は勢いよく助手席に乗ろうとする。その里美を、健一と梨沙は慌てた様子で止める。


「どうしたの二人とも?」

「「どうしたもこうしたも、車なんて聞いてないよ(聞いてないぞ)!?」」

「あー、とりあえず中で説明するから後ろに乗って!」


そう言って里美は助手席に乗り込む。健一と梨沙は、疑問しかなかったのだが、後部座席に乗り込んだ。そうすると、車は安全な速度で走り出す。


「高尾にも梨沙にも言ってなかったね。実はあらかじめ頼んでおいたの。車を出してもらえないかなって」

「なるほど。確かにお前の足じゃ歩くのすら億劫おっくうだろうしな。っていうより前川さん、免許持ってたんですね」

「いいえ、仮免よ」

「「「...え?......え!?」」」


それを聞いて健一と梨沙、それになぜか里美までもが驚いていた。


「お姉ちゃん!仮免なの!?」

「言ってなかったかしら?まだ仮免よ?大丈夫よ。路上教習だってもう最終段階まで来てるんだから」

「それ、ばれたらどうなるんすか...」

「ばれなきゃ大丈夫よ!可愛い妹の頼みですもの、多少のリスクは覚悟のうえよ!」

「「「いやいやいや!」」」


三人の恐怖心は有頂天だった。いくら路上教習が最終段階とはいえまだ仮免。さすがに怖い。


「里美、道案内よろしくね」

「わ、わかったけど絶対事故らないでね!」


当然の如く、里美も姉の運転など見たことも乗ったこともないのでそう忠告する。速度もカーブもかなり安全に行っているので事故はないだろうが、それでも怖いというもの。


そんな安全運転の中、作戦を確認し、その最終準備をする。速度は遅いにしろ車は車。特に事故ることもなく、約1時間で廃工場までたどり着く。






一方、廃工場内。里美が出て行ってから翌日の朝。比岐島が目を覚ますと前日とは体制が変わっていた。


「...これは?」

「起きたかい?えっと...比岐島、だったかな?」

「俺に...何かしたのか?」


前日では地べたに寝かされているような状態だった。だが今は、手足のロープを外され椅子に座らせられている。ただし、両手足は椅子とテープで固定されている。


「何かしたってわけじゃない。この方が君も楽だろう?人質なんだから簡単にくたばってもらっちゃ困るしな」

「俺は簡単にはくたばらねぇよ。それより、時間を教えてくれ。それくらいはいいだろ?」

「仕方ねぇ...午前7時半手前だな」

「...こりゃ、学校はまた無断欠席だな」

「安心しろって。どっちに転んでも、今日で最後だからよ」


今日、健一が来れば健一が、来なければ自分が死ぬ。そう比岐島は確信していた。そのとき、外から何やら物音がする。


「...車の音?」

「なぜ車だ?まぁいいか。きっと来たんだろう」


一樹のその予想は的中する。廃工場の入り口が開き、人影が3つ浮かぶ。


「加藤一樹、待たせたわね。お望み通り高尾を連れてきたわよ」

「意外と早かったじゃないか。それに...」


一樹は里美と健一を確認した後、もう一つの人影を確認してにっこり笑って言った。


「久しぶりだね。梨沙ちゃん」

「...本当に、あなたなんですね。どうして、ここにいるんですか?警察に捕まったはずじゃ...」


梨沙は怯えながらそう聞いた。


「そんなの脱獄したに決まってるじゃん。梨沙ちゃんに会うために」


それを聞いた瞬間。危機感を感じ、梨沙は里美の後ろに隠れる。


「それじゃ、高尾健一」

「んだよ犯罪者」

「こっちにこい」


健一はおとなしく歩いて行く。その健一は両手を縛られている。体の後ろで。そして、一樹の前で健一は止まる。


「じゃあ高尾健一」


一樹はナイフを取り出した。そして健一に突き立てる。


「お前は邪魔だから死んでもらう」

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