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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
2章 二人の恋路
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2章 13話 平和に戻った日の災難

翌日。健一と梨沙は待ち合わせをしてから、二人で登校していた。二人は、以前のように、明るく会話していた。そこへ


「高尾ー!」

「ん?前川か、それと...比岐島か」

「よぉ高尾。鈴城さんと登校中ってことは、仲直りできた感じ?」

「あぁ、おかげさまでな」

「えっと...里美と比岐島君って付き合ってるんだっけ?」

「あれ?梨沙知ってるの?」


里美は不思議そうに聞いた。二人とも他言しないようにしていたので、梨沙が知っていることが不思議だったのだろう。


「健一君に聞いたんだけど...」

「た~か~お~?」


里美が健一を睨み付ける。


「悪い悪い、話の流れでつい」

「まぁ、梨沙にならいいけどさ。できるだけ他言無用で頼むよ?」

「わかってる」

「でも、なんで言わないの?」

「イヤーだって、比岐島とだよ?絶対茶化されるでしょ?」

「それってどういうことだよ里美!」


そんなコントみたいな会話に、みんなで笑っていた。それからは、そのまま明るく会話しながら登校していた。




学校に着き、教室に入ると皆が驚いた顔で梨沙たちを見ている。


「...みんなどうしたの?」

「え、いや。鈴城さんも高尾君も昨日まで数日暗かったのに、いきなり明るくなってるんだもん。驚くよ」

「それは...詳しいことは言えねぇ。だから察しろ」


健一はそう言い、梨沙の手を引き自席へ向かって歩いた。


その後、授業もしっかり受けられていて、以前のようなぼーっとした感じはなかった。先生方も、不思議には思っただろうが、授業を聞いているならいいかと、何も聞かなかった。


そのまま放課後になった。


「健一君、帰ろ?」

「あぁ」

「あー、お二人さん。というよりは主に高尾なんだが、ちょっといいか?」

「ん?どうかしたか比岐島」


帰ろうとしている健一と梨沙を比岐島が引き留める。


「多分クラスのみんなが気になってることなんだけどよ...あ、俺は一部知ってるけど」

「なんだよ、早く言えよ」

「きつい言い方だな...まぁいいや。お前らさ、最近暗かっただろ?と思ったら急に明るくなったし、みんな気になってるんだよ。朝は断ってたが、やっぱり言ってくれないか?」


比岐島のその言葉に、まだ教室に残っていたほぼ全員が、二人に目を集めた。


「...言わなきゃダメなのか?」

「ダメってことではないが...みんな気になってると思うんだ。この状況がその証拠だ。恥ずかしい話でもなければ、話してくれてもいいんじゃないか?話すだけなら減るものだってないし」

「...梨沙、どうする?」

「健一君、私に任せてくれない?」

「...わかった。ただあの事は──」

「分かってるって!」


そう言って梨沙は一歩前に出た。


「実はね──」


梨沙はクラス全員に言った。一度別れたこと、今はまた付き合っていること。もちろん別れた理由は価値観の違いだと、嘘をついた。別に恥ずかしいというわけでもないのだが、いとこという関係は隠しておきたかった。


「──というわけなの」

『なるほど』


梨沙が話し終わると、それを聞いていた人はみんな口をそろえてそう言った。


「そんな簡単なことだったの?てかやっぱり別れてたんだ!」

「やっぱりって...噂にでもなってたの?」

「結構広まってたよ?」

「「そ、そうなんだ(なのか)...」」


健一と梨沙は肩を落とす。そこに、とある人物が入ってきた。


「あれ?そんな感じだったの?」

「え?さっちゃん!?」


そう、入ってきたのは彩香だった。


「私が聞いたのは確か──」

「「まてまて(待って待って)!」」

「ふがっ!」


梨沙と健一は慌てて彩香の口を押える。そして彩香の耳元で、


「さっちゃん!私たちがいとこだって話は言わないで!」

「あぁ!それを言ったら何を言われるか分かったもんじゃない!頼む!」


そう囁いた。それを聞き彩香は頷く。それを合図に、彩香の口に当てられていた手が退けられる。


「学年長さん。あなたが聞いたのって?」

「あ、えーっと...。そう!私が聞いたのは、喧嘩して別れただったからさ!」

「そうだったんだー。まぁ価値観の違いって言うのも、喧嘩みたいなものだしね」


梨沙と健一、そして彩香までもが肩を落とす。


「とりあえずこんなところでいいか?そろそろ帰りたいんだが」

「あ、あぁ。悪いな高尾。鈴城さん。それじゃあまた明日」


梨沙と健一は手を繋ぎ、学校を出て行った。帰っている途中も、楽しく会話していたことだろう。そして、公園を横切ったところで、梨沙が足を止めた。


「ん?梨沙?どうし──」


健一が声を掛けようとしたとき、梨沙は健一に抱き着いた。その目には、うっすらと涙が見える。


「健一君、私ね?本当に怖かったの...この公園を見ると思い出しちゃうの。健一君に、別れようって言われた時のこと」

「......」


健一は黙って聞いていた。今は何も言うべきではないと考えたのだろう。


「でも、よかった。ちゃんとまた、こういう風にできて...本当に...」

「...ごめんな」


健一もそっと梨沙を抱き、髪を撫でる。そんな二人を、影から微笑ましく眺める人影が二つあった。


「いやー、よかったねぇ。あたし、泣けてきそう」

「おいおい、確かに良かったけどさ、里美が泣くことじゃないだろ?」

「そうだけどさ...って、比岐島も泣いてんじゃん」

「べ、別に泣いてるわけじゃねぇよ」


人影の正体は里美と比岐島だった。きっと二人を心配して、後をつけてきたのだろう。


「ささ、いつまでもここで見ているわけにはいかな──!?」


そう里美が言いかけた時、首筋に強い衝撃が走った。その衝撃で里美は気絶してしまった。その後ろに、誰かが立っていた。


「!?さ、里美!?おい!てめぇなにしや──!?」


比岐島もまた、里美の後ろに立っていた人物に殴られ、気絶した。何者かが二人を担いで、ニヤッと笑った。


「ふふっ。やっと見つけたよ。()()()()ちゃん」






健一と梨沙はその後、しっかりと手を握りあいながら帰路を辿っていた。その間、何かが起きていることも知らないままに。そして家に着くと、「また明日」とお互いに声をかけ、そこで別れた。




翌日、学校に着くと、いつもならいるはずの里美と比岐島はまだ来ていなかった。


「珍しいね?あの二人がまだ来てないなんて」

「そうだな。いつもならすぐに俺たちを茶化しに来るのにな」


そう梨沙と健一は言っていた。ホームルームが始まっても、里美と比岐島は来なかった。先生も、連絡が入ってないとホームルームで言っていた。


「里美と比岐島君、どうしたんだろうね」

「さぁな、たまにはさぼりたくなんだろ」

「まだ入学してから一か月くらいしかたってないんだから流石にズル休みはしないと思うよ...」


梨沙と健一はそんな会話をしていたが、クラスのみんなは

「あの二人ってたしか付き合ってるんだよな?じゃあもしかして...」

「学校サボってデート?」


などと、変な噂が飛び交っていた。みんな、事実を知るわけもなく。





その日、里美と比岐島は結局学校に来なかった。放課後になり、梨沙と健一は帰路を辿っていた。


「結局、里美も比岐島君も来なかったね」

「あぁ、本当にサボってデートでもしてんのかもな」

「それは言い過ぎだよ...」

「かもな。あいつらはそんなことするやつじゃねぇな」

「何かあったのかな?」


二人はそんな風に、二人のことを心配していた。連絡することのできないくらい酷い風邪なのか。はたまた、何かに巻き込まれたのか。そう思っていると梨沙の携帯が鳴りだした。


「健一君、ちょっとごめんね」


見てみると、里美からの電話だった


「もしもし里美?...うん...え?今から?うーん、お母さんに聞いてみないとわかんないなー。それに健一君も一緒ならなおさらだよ。うん、わかったーまた後で電話するね」


梨沙は電話を切って健一の元に戻る。


「誰からだったんだ?」

「里美から、元気そうだったよ」

「...そうか」


健一は梨沙の顔を見て何かを察したのか、それ以上は何も聞かなかった。






同日朝。気絶していた里美は、日の光を感じ目を覚ます。


「ん...ん?...!?」


一瞬、理解に遅れた。それもそうだ、里美がいるのは廃工場。見たこともあるはずなく、自分の身に起こったこともはっきり覚えていない。何より...


(喋れない...口がふさがれてる!?)


そう、里美は口をテープでふさがれていた。もちろん、手足はロープで縛られ動けない。目は隠されていないだけましなのかもしれない。そう思ったのも束の間だった。


(あそこにいるのって...ひ、比岐島!?)


目の前...といってもある程度距離はあるが、比岐島が同様に口をふさがれ、手足を縛られ倒れていた。


「おや?もう目が覚めたのか」

「!?」


男の声がした。里美はその声のした方を見る。そこに立っていたのは。


「やぁやぁ初めまして。鈴城梨沙ちゃんのお友達だよね?俺もお友達みたいなものさ。俺は()()()()。しばらくよろしくね」

「ん!んんん!」(ねぇ!ここはどこ!)

「あぁ、そのままじゃしゃべりにくいよね、今外してあげるよ」

「ん!んんんん!」(いや!近寄らないで!)


一樹は里美に近寄る。もちろん里美は一樹のことを知らないので、恐怖を感じ、近寄らないでと心で叫ぶ。だがその心の叫びは、一樹には聞こえない。やがて一樹は、里美の口に付けていたテープをはがす。


「これで喋れるようになったね」

「な、なにがしたいの...」

「教えてもいいけど、先にいくつか聞いてもいい?それに答えたら教えてあげる」

「内容によるけど、ちゃんと答えるから教えなさいよね」


里美は一樹を睨み付ける。その目は鋭かったが、体は震えていた。


「そんなに睨まないでくれよ。もちろん、今の段階では君に危害を加えるつもりはない」

「じゃあとっとと質問ってのをしなよ」

「そうだね。向こうの彼が起きても厄介だ」


そう言って一樹は里美の前に、地べたに座った。


「じゃあ一つ目。君の名前は?」

「...前川、里美」

「里美ちゃんね。梨沙ちゃんとの関係は?本当にただの友達かい?」

「そうだよ」

「なるほど...じゃあ次、里美ちゃんは、梨沙ちゃんを大切だと思う?」

「あたり前でしょ」

「うん、なるほど。わかった」


三つだけ質問すると一樹は満足したような顔をして立ち上がった。


「さ、さぁ。あたしは質問に答えたよ。何が目的なのか言ってよ!」

「いいよ。俺の目的は...」

「目的は?」

「梨沙ちゃんの横のあの男。高尾健一を()()することさ」

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