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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
2章 二人の恋路
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2章 12話 二人の関係

「俺と梨沙の...正確には親の関係のこと。俺の意思のこと。それと、()()()()()()のことだ」


健一はそう言ったと同時に、ベンチから立ち上がる。梨沙とアクトは何も言わず、ただ立ち尽くしていた。


「まず、親の関係だが、昨日母さんに確認した。もちろんのこと事実だった。今更それは変えられない」

「だよね、お父さんもそう言ってたし...」

「でもよ、俺は昨日考えたんだ、アクトに言われたことを」

「俺に?」

「あぁ。お前言ったよな?まとまってなきゃ、何も言っちゃいけねぇわけじゃねぇってことを。だからよ、俺の気持ちを言おうと思ってな」

「じゃあ言えよ、お前はどうしたい?」

「だがその前に、お前らの関係について聞かせろ。それ次第で俺の言いたいことも多少なりとも変わってくる」


健一はそう言いだした。アクトと梨沙は目配せしてから言った。


「俺たちの関係と聞かれてもな、恋人の二文字でおさまるのだが」

「それは、偽りのない恋人なのか?」


健一のそれを聞いて、梨沙もアクトも少しびくっと体が反応した。健一はそれを見逃すわけもなく、


「そこで反応するってことは何か事情があるのは間違いねぇな。何がある」

「はぁ...梨沙。これは言い逃れできそうにないぞ」

「そうだね...健一君、ごめんね。実は...」


梨沙は健一にアクトとの関係を話した。


「やっぱりか」

「ちなみに聞かせてくれ。どのあたりで疑いはじめたんだ?」

「昨日、公園を出てから梨沙の泣き声が聞こえた。それを聞いてそう思っただけだ」

「なんつう...」


梨沙もアクトも、健一のその言い分に流石としか言えなかった。


「とりあえず、これではっきりした。俺が何を考えていたか」

「じゃあ何を考えていたんだ?何を言いたかったんだ?」


健一は深呼吸してから言った。


「俺は、俺の意思を貫きたい。親の関係なんて俺たちには関係ねぇ」

「ほう、それで、どうしたいと?」

「俺は、梨沙と過ごしたい」

「健一君?」

「梨沙のことが...好きだから」


健一は必死だっただろう。だから、自分が何を言ったのかあまり気にしていなかった。


「ケンイチ、お前言い切ったな...」


そこで健一はハッとする。ここは公園。もちろん、他校の生徒も通るし、同校の人も通るわけだ。今のも誰かに聞かれていただろう。


「健一君...」

「も、もちろん、こればっかりは梨沙の意思次第だ。俺はよくても、梨沙が嫌なら仕方ない。それに、辛い思いをするのはきっと梨沙だろう。無理は──!?」


健一が言い終わる前に、梨沙は健一に抱き付いていた。その梨沙の目には涙が浮かんでいた。


「梨...沙?」

「健一君、ありがとう。私は大丈夫だよ。健一君を嫌に思うわけないし、どれだけ辛くても、私は平気。たったそれだけのことで健一君を嫌になるくらいならここまでしないよ。私も、健一君が好きだから!」


梨沙は言い切った。


「これで一件落着か?」

「あぁ。迷惑かけたな、アクト」

「それは言っちゃいけねぇぜ。これは梨沙の頼まれたことではあったが、俺が勝手にやったことでもある」

「それでもだ、サンキュ」

「私からも。ありがとう、アクト君」

「...じゃあさ、俺も俺の気持ち。言っていいか?」

「「???」」


梨沙と健一は疑問を抱いた。梨沙は健一から離れ、アクトの方を見る。


「俺は、きっと昔からそうだったんだ。気づかないふりをしていたと思う。だが、今回の件で...梨沙に頼まれて気が付いた。俺は...」


アクトは大きく深呼吸した。きっと、次の言葉を言うのに緊張しているのだろう。でも、もう食い下がれない。そんな気持ち中、アクトは言い切った。


「俺は、スズのことが好きだ!」






時は遡り、梨沙がアクトに恋人の振りを頼んだ時。

{補足:これは23話『ごめんね』の冒頭シーンである}


「ちなみに聞くが、付き合ってほしい理由ってのはあるんだろうな?特段、俺を好きになったわけじゃないだろうし」


アクトはそう聞く。


「うん、アクト君には悪いんだけど、そういうことじゃない。理由は──」


梨沙は、理由を淡々と話す。簡単だった。


「アクト君なら、健一君のこともある程度分かっていると思うし、それに...私に恋人出来たら、健一君の本心が見られるかなって」

「なるほどな...」

「だから、私と付き合ってる振りをしてほしいの」






「俺は、スズのことが好きだ!」

「あ、アクト君!?」


アクトのその言葉に驚きを隠せない梨沙。一方の健一は唖然としている。


「梨沙の答えは分かってる。でも、言いたくてよ...」

「アクト君...」

「...梨沙、返事をする前に、俺の話を聞いてくれ」

「健一君?」

「梨沙はこの話を聞いたうえで、どうするかを決めろ。どう転んでも、俺はそれを受け入れるからよ」

「健一君?それはどういう──」


健一は大きく深呼吸する。そう、これは、まだ比岐島にしか話していない、健一が梨沙と別れたもう一つの理由。それを、梨沙の言葉を遮って言った。


「俺、6月中に引っ越すかもしれん」

「え...」


梨沙の顔は驚き以外の何物もないような感じだった。それはアクトも同様だ。唐突に宣言される引っ越しに、二人は唖然とした。


「おいおい待てよケンイチ!なんだよそれ!冗談になんねぇぞ!」

「そ、そうだよ健一君!冗談なんてやめてよ」


二人とも事実を受け入れたくないのか、それを冗談と捉え健一に言う。だが、


「冗談ならこんなマジな時に言わねぇよ」

「そ、そんな...」

「っと」


梨沙が膝から崩れ落ちそうになるのを、健一が支える。


「いつから...決まってたんだ?」

「まだ決まってはいねぇが、梨沙に別れ話をした前日に母さんから言われた。父さんの仕事の関係で引っ越すことになるかもしれんってな」

「そんなの...そんなの嫌だよ!せっかく、また...」

「だから梨沙、お前が決めろ。これを踏まえて、どっちを選ぶか」


梨沙にとってそれは、重い選択肢だろう。今は5月の半ばだ。すぐに引っ越してしまうかもしれない健一か、想いをずっと寄せてくれていた、恋人の振りだったアクト。どちらも梨沙を想っている。そんな中梨沙は選ばなければならなかった。だが、梨沙は決心したように、言った。


「でも...それでも!私は健一君と居たい!例え、残りが短かったとしても、その短い時間を、一番好きな人と過ごしたい」

「そうか...」


健一は梨沙を引き寄せ、抱いた。そしてアクトの方を向き、こう言った。


「そういうわけだアクト。お前の想いも、俺の事情も聞いた上での梨沙の決断だ。文句はなしだぜ?」

「あぁ、もともと振られるのは覚悟の上だったさ」

「ごめんね、アクト君。アクト君のこと嫌いじゃないんだよ?でも、やっぱり健一君と居たい」

「分かってる。幸せにな。じゃあ、お邪魔虫は消えるとするよ」


そう言って公園から出ていくアクト。その背中は、やはり悲しそうだった。




それから少しして、梨沙と健一は帰路に着いていた。それに昨日までの気まずさはない。別れる前とまではいかないが、明るく話をしながら帰宅していた。そして、家に着いた。


「じゃあ、また明日」

「うん!また明日ね!」


そう言って、お互いに家に入る。




「ただいま」

「おかえり兄ちゃん。母ちゃんが呼んでるよ?なんか難しい顔して」

「わかった。着替えたら行くって言っといてくれ」

「人使いが荒いなー、自分で言えばいいのに」


そういいながら、大樹だいきはリビングに行った。健一は自室へ行き、私服に着替える。それから、母のいるリビングに向かった。


「母さん、話ってなんだ?」

「あんたさ、昨日、母さんの兄のことを聞いたじゃない?」

「あぁ、鈴城さんだろ?」

「そう。向かいにいるっていう鈴城。今日、話してきたの」

「は!?仲が悪いんじゃなかったのかよ!」

「今でもあいつのことは大っ嫌いだよ。でも、あいつは変わってたの。それに...」

「それに?」

「...あいつに、娘を頼むなんて言われちゃった」

「それは...」


娘。つまり梨沙のことを任せると言っていたらしい。それも、健一に言うのならまだしも、健一の母にだ。


「要するに、あんたでしょ?あいつの娘の相手って」

「...あぁ、そうだ」

「確かに母さんはあいつのこと嫌いだし、あいつの娘となっちゃ堪ったもんじゃない。でも...」

「...でも、なんだよ」

「あいつが、頭を下げて頼むって言ってくるくらいだからね。賛成ってわけじゃないけど、あんたに任せることにするよ」

「...?つまり、交際は認めると?」

「そうだよ。もちろんだけど、母さんに危害がないならね」

「あるわけねぇだろ。それに、俺と梨沙はもう、母さんに反対されようと気にしねぇようにしてたからな。話はそんだけだろ?飯まで部屋に居るわ」


そう言って健一は、リビングを出て行った。

自室に入った健一は、梨沙へメールを飛ばした。






「ただいまー」

「おかえり梨沙。もうすぐご飯の準備できるから、着替えたらこっちおいで」

「はーい!」


梨沙は帰るなり、母とそうやり取りし、自室へ入る。そして着替えてる最中に、ノックが鳴る。


「梨沙?今大丈夫かい?」

「お父さん?ちょっと待って、今着替え終わるから」


ドア越しにそう会話し、着替え終わるなりドアを開けて、父を部屋に入れる梨沙。


「どうしたの?」

「いや、今日ね。お父さんの妹、高尾君のお母さんが家に来て、お父さんと話をしたんだ」

「え!?仲悪かったんじゃないの!?」

「向こうは今でもお父さんを嫌ってるみたいだったけどね」


ははっと笑う梨沙の父。梨沙はそれどころではなかった。


「なにがあったの!?」

「いや、なんでも昨日、高尾君からいろいろ聞いたみたいでね、それで確かめに来たらしい」

「そうなの?それで、なにかあったの?」

「今、あの子がどう思っているかは分からない。だけど、梨沙のことをよろしく頼むと、伝えてくれとは頼んでおいたよ。別れたって聞いたからね」

「あ、うん。でも、もう大丈夫だよ。健一君と全部話して、何を言われても私たちの意思を貫くって決めたから!」

「あれ?そうなの?まぁ、それならそれでよかったよ」


梨沙の父は安心したように、胸をなで下ろす。


「話はそれだけ。もうご飯もできてるみたいだし、食べようか」

「うん!あ、メールが来た見たい。返信したら行くから先に行ってて!」

「うん、わかった」


梨沙の父はリビングへ向かった。

梨沙は携帯を開きメールを確認する。メールは健一からだった。


『梨沙。今日俺の母さんが梨沙のお父さんと話したらしい。それで、いろいろとあったんだが、結論だけ言うぞ。俺の母さんも、危害さえなければ交際を認めるそうだ。これからまたよろしくな』


そう書かれていた。


「健一君...」


梨沙は泣きそうになりながら返信した。




この日、二人は再び結ばれたのだ。

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