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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
2章 二人の恋路
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2章 11話 健一の葛藤と本心

「俺、梨沙と付き合うことになったから」


アクトは健一に向かってそう言い放った。


「......そうか。梨沙を頼んだぞ」

「え?あ、あぁ。言われなくても」


アクトは健一の反応が予想外だったのか、返事が少しおかしくなっていた。


「じゃあ俺は行くぞ」

「え、ま、待って健一君!」


梨沙は健一を呼び止める。すると、健一は足を止めた。そして、振り返ることなく言う。


「...梨沙」

「健一君...?」

「...幸せになれよな」


健一はそう言い残し、三人を置いて学校の方へ歩いて行った。梨沙は、気の抜けたように、膝から崩れ落ちた。


「り、梨沙?」

「...なんで、健一君はあんなに冷静なの......」


梨沙は、地面に膝をつけながら、そう言った。そして、


「なんで...どうして...!」


梨沙は泣いていた。里美もアクトも、かける言葉を探しているようだが、今の梨沙にどんな言葉をかけようと、意味などないだろう。梨沙は膝をつき、二人は立ち尽くしていた。






公園を出た健一は、足早に学校へ向かっていた。理由は簡単。梨沙たちに追いつかれないようにするためだ。そこに、


「ん?高尾君...だったっけ?」

「ん?学年長か、なんか用か?」


ばったり会ったのは、彩香だった。


「用ってわけじゃないんだけど、ここで会ったのも何かの縁だし、いろいろ聞かせてよ」

「いろいろって...何が聞きてぇ」


健一は足を止め、彩香のほうを向いた。彩香はニヤニヤしながら言った。


「梨沙との熱い関係はどこまで進展したのかなって」

「......別れた」

「そっかそっか別れたかー...って別れた!?」

「なんでみんなそんな反応すんだ...」


健一は話した。どういう経緯で別れたのか。何があったのか。


「うーん、いとこかー。確かにそれは大変だ」

「大変で済んでたら別れてねぇっつうの...」

「んで、高尾君はどうしたいわけ?」

「は?」


健一は言われている意味を理解できなかった。今まで健一は、事実ばかりを目の前に置き、自分の気持ちを押し殺していたからだ。


「高尾君は、梨沙を嫌いになったから別れたわけじゃないでしょ?だったら、これから自分はどうしたいかを考えるべきだと思うけど?」

「それは...」

「どうなの?」

「...わからねぇ」


健一はそう答えた。


「わからない?」

「確かに俺は、梨沙と一緒にいたいと思っていた。だが、さっきアクトから梨沙と付き合ってるって聞いて、わからなくなった」

「うーん、私には気づいてないだけじゃないかと思うけど」

「仮にそうだとしても、今の俺には結局わからん」

「まぁ、いつかきっとわかる時が来るよ。とりあえず、今は学校に行こうか」

「ちょ、押すんじゃねぇ!」


彩香はそういって、健一の背中を押す。






一方、梨沙は達は、まだ公園にいた。


「ごめんね、里美、アクト君」

「謝らないで良いよ...辛いのはわかってるから」

「あぁ、でも、まさかケンイチがあんな反応するとはな」

「うん、さすがのあたしも予想外だったよ」

「さすがにああいう風にくると悲しいな...」

「...とりあえず学校行くか。あまりゆっくりしてる時間もなさそうだ」


時計をみると、公園から歩いてギリギリ教室に着けるかどうかくらいだった。


「そうだね、行こうか」


そうして三人は歩き出した。






学校に着くなり、三人は席に着く。梨沙の隣にはもちろん健一がいる。とても気まずいだろう。授業も、まともには受けていられないような状況だった。先生からの質問も、まともに受け答えができていなかった。


「鈴城も高尾も大丈夫か?具合が悪いなら保健室行ってもいいぞ?」


先生はそういうが、二人とも具合が悪いわけじゃないので断った。

この日二人は、ほぼすべての教科担任にそう言われていた。そう思われるほど、様子がおかしかったのだ。それから放課後。二人は担任に呼ばれ、職員室に来ていた。


「鈴城さんに高尾君。今日は授業に集中できてないって、いろんな先生から言われたんだけど...何かあったの?二人がそうなるなんて珍しいし...困りごとなら相談に乗るけど」

「いえ、何もありません。ただの寝不足ですので」

「わ、私も、寝るのが遅くなっちゃって寝不足で...」

「うーん、そういうことならいいんだけど。困ったら先生を頼っていいからね?」

「わかってます、それでは失礼します」

「し、失礼しました」


健一と梨沙は職員室を出て、学校を出る。そして帰路に付くのだが、その間に二人に会話は全くなかった。並んで歩いているのすら気まずい状況であっただろう。そこに、


「ん、梨沙、終わったのか?」

「あ、アクト君」

「タクトか」

「アクトだ!何度言えばわかるのか...」

「待っててくれたの?」

「あぁ、一応恋人だしな」


その単語を耳にした健一の肩に少し力が入った。アクトはそれを見逃さなかった。


「ケンイチ、どうした?なにか言いたいことがあるなら言えよ」

「健一君?」

「...」


健一は黙った。彩香に言われたことが、まだわからないのだ。何か言いたい、何か聞きたいと思ってはいるのだが、それが何なのか分かっていない状態なのだ。


「黙っていたって分かんねぇぞ」

「...俺だって分かんねぇんだよ」

「健一...君?」

「わっかんねぇんだよ!」

「「!?」」


健一は怒鳴った。きっと自分の感情を抑えきれなかったのだろう。


「何をどうするべきなのか、俺自身がどうしたいのか、考えてもまとまらねんだよ!」

「...まとまってなきゃいけねぇのか?」

「あぁ!?」

「まとまってなきゃ、何も言っちゃいけねぇのかって聞いてんだ。考えてはいるなら、それを話すだけでも、自分の気持ちに気づけるんじゃねぇのか?」

「自分の気持ちに気が付いたとして、それが正しくなければただの迷惑だろ!?」

「あたりめぇだ。でもよ、友人に迷惑かどうかとか考えるだけ無駄だと俺は思うがな。...お前が言う気がないならもう行くぞ」


そういってアクトは梨沙の手を取り、健一に背を向け歩き出した。


「ちょ、ちょっとアクト君!」

「いいって、あんな意気地なし、ほっとけ」

「でも...でも!」


淡々と梨沙の手を引きながら歩くアクト。健一は、何も言うことができず、ただアクトと梨沙の背中を見ることしかできなかった。






「アクト君!」


しばらく歩いて、家の前に着いた頃。梨沙はアクトの手を払った。


「ねぇ、なんであんなにきつい言い方したの!」

「ああでもしねぇとわからねぇよ。ああいう男は」

「だからって──」

「じゃあ逆に、俺が何も言わなければ、またケンイチが想い直すとでも思っているのか?」

「それは...」


根本的な問題を解決できない限り、そうはならない。梨沙はそう確信していた。だが、梨沙としては、あんなきつい言い方をしていたアクトを少なからず嫌に思っただろう。


「分かっただろ、あそこまで言ってもあいつは何も言ってこなかった。もう無理なんじゃないか?」

「でも...私は健一君が好きなの...好きな人をそう簡単には諦められないよ!」

「じゃあなんだ?親の仲をよくさせて問題解決させて、またケンイチと付き合いたいってか?そんなの簡単にできることじゃねぇ。それこそ、俺らみたいな子供が手を出せる領域じゃねぇだろ」

「そうだけど...」

「分かってんなら半分は俺に任せろ。ああいうやつの扱い方は、身近な誰よりも慣れてる。それに...」

「...?アクト君?」


アクトは口詰まってしまう。何を言おうとしているのか見当もつかないように、梨沙は首を傾げた。


「...いや、なんでもねぇ。じゃあそういうことだから」

「あ、アクト君!」


そう言って、アクトは自宅に入っていった。






翌日。この日は健一が学校に来なかった。ただそれだけなのだが、梨沙は何やらそわそわしている。


「どうした梨沙」

「あ、アクト君...実は...」

「...いや、待て。言わんでいい。なんとなくわかった」

「え?あ、そ、そう?」

「昨日のは悪かった。少し言い過ぎた」

「あ、いや、そうじゃなくて...あ、それもそうだけど...」


やはり梨沙の様子がおかしい。それは、梨沙を知るものなら誰でもそう思えるくらいに。みんな、気づいてはいるが、触れてはいけないことなのを察しているのか、聞きに来ないでいる。


「あのね、アクト君...健一君からメールが来たの」

「なんて来たんだ?」

「それがね...」






「梨沙、来んのかな...」


健一は公園のベンチに座っていた。時間的に、そろそろ放課後になるころだった。ちらほらと、別の高校の生徒が見え始めた。


「...とりあえず、待つっきゃねぇよな」


健一はベンチに腰かけたまま、俯く。やはり心配なのだろう。梨沙が来るのかどうかもそうだが、自分の考えた決断が本当にいいものなのか。


「健一君...来たよ」

「......梨沙...」

「ちゃんと俺もいるぞ」

「アクトも来たか」

「呼ばれたらそりゃ行くだろ」


そう、呼んでいたのは梨沙だけではない。アクトもだった。




「あのね、アクト君...健一君からメールが来たの」

「なんて来たんだ?」

「それがね...」


梨沙はメールの内容を読み上げる。


『よう。まず、今日学校に行ってないのは風邪とかじゃねぇから安心しろ。本題だが、放課後、家の近くの公園に来てくれ。話がある。アクトにも同じメールが行っているはずだ。ただ、アクトの方には来たけりゃ来いと送っといた。無理に二人で来る必要はねぇ。ただ梨沙、お前は来てくれ。お前には話さなきゃならねぇんだ』

「だって。アクト君も健一君に呼ばれてるの?」

「あぁ、ついさっきメールが来た」

「それでさ、アクト君は行くの?」

「呼ばれたからには行くしかないだろ?」

「じゃあ、一緒にいこ?」

「そのつもりだ」




そういう流れで、梨沙とアクトは健一のいる公園に足を運んだわけだった。


「とりあえず、来てくれてサンキュ」

「さっきも言ったろ?呼ばれたら行くって」

「そうだよ健一君!それで、話って何かな?」

「俺と梨沙の...正確には親の関係のこと。俺の意思のこと。それと、()()()()()()のことだ」

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