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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
2章 二人の恋路
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2章 7話 カミングアウト

学校では特に何が起きることもなく時が過ぎていった。健一も梨沙も、時々お互いを見るが、目が合ったとたんにお互いが目をそらしてしまう。


そしてお昼。


「梨沙ーご飯食べよー!」

「うん!健一君は...?」

「あー、ゴメン梨沙。今日は2人で食べない?高尾も、梨沙借りるけどいいよね?」

「ん。あぁ、俺は構わんぞ。女子同士で話すことがあんだろ」

「察しが良くて助かるよ!さ、梨沙行こ!」

「う、うん」


里美は梨沙の手を引き、教室を出た。






「うーん!やっぱりこのパン美味しい!」

「うん、そうだね」


里美と梨沙は屋上に来ていた。この学校は、屋上を常時開放している。屋上にはいくつかのベンチと、背の高い柵がはられている。だが、あまり人気が出ない。なぜなら、


「でもやっぱり屋上だと寒くない?」


そう。寒いのだ。元々この校舎自体、標高がやや高い位置に建てられている。そのためその屋上ともなると風邪がやや強く、冷たい風が吹くのだ。


「そうだけど、やっぱり話すならここがいいかなって」

「それで、なんの話なの?」

「直球で聞くけど...梨沙さ、健一と何かあった?」

「...え?」


予想もしていなかった話だったのだろう。梨沙は驚いていた。


「いや、朝見た時からなんか二人ともおかしい感じしてたから何かあったのかなーって」

「そ、そっか...」


里美は鋭い。梨沙のことや、健一のことをよく見ていて、そして何かが起きたと思うたびに突っ込んでくる。


「それで、何があったの?」

「別に、健一君と何かがあったってわけじゃないの」

「そうなの?」

「何もないってわけじゃないけど、それはあまり大きく関係してないっていうか...」

「うーん、まぁ、なんとなくわかった」


里美は指を立てて言う。


「ズバリ!高尾が何か隠してるんでしょ!」

「...うん、たぶんそう...」

「やっぱりかー。でもそれはあたしが言うより梨沙のほうがいいもんね。そこだけは力になれないなー」

「あのね?里美」

「うん?どうしたの?」

「健一君ね、昨日の夜から──」




「なるほどねぇ」


梨沙は昨日の出来事を事細かく説明した。そして今日の朝のことも。


「健一君が何か隠してて、それを話したくないのは分かってるの。でも、私、知りたい。何を隠しているのか、なんで話してくれないのか...」

「そればっかりはあたしも知りたいなー...じゃあさ──」


里美は何かを計画しだした。健一が隠していること。つまり、梨沙の父との話を知りたいと願う二人。だが、それを知ればきっと困惑し、どうしていいかわからなくなるだろう。






一方、梨沙と里美が教室を出て行った頃の健一は、


「...はぁ」


溜息をついていた。


「どうした高尾、溜息なんてついて。」

「ん?あぁ、比岐島か。なんでもねぇよ」

「なんでもなきゃお前が溜息はつかんだろ?」

「...」

「無視かよ!」


比岐島は健一が一人の時はこうやってくっついてくる。


「なぁ、なんかあったんだろ?話せないようなことなのかよ」

「あぁ。少なくとも今は梨沙にすら話せねぇな」

「は!?彼女にも話せない悩みってなんだよ!?気になっちまうだろ!」

「だから言わねぇよ」


そう、これは自分の問題であり、家族の問題。そう健一は確信していた。






「...い...ん」

「...」

「け...いち...ん」

「...」

「健一君!」

「ん、なんだ?」

「次移動だよ?」

「あ、あぁ、サンキュ」


昼を食べ終わって梨沙が戻ってきていたのだろう。移動の準備をしながらぼーっとしていた健一のことを何回も呼び待っていた。健一の準備が終わり移動を開始するが、移動中も特に話すことはなかった。




放課後、今日健一は、荷物を取りに梨沙の家に一時訪問となる。そのため、梨沙と一緒に帰るために校門で梨沙を待っていた。


「お待たせ健一君!行こっか」

「おう」


梨沙は健一の手を取ろうとする。だが健一は、少し速足で歩きだしてしまったため、手を繋ぐことができなかった。




それから、家まで結局何も話せず、梨沙は何度か手を繋ごうと試みるも、手が当たることもなく終わってしまう。

梨沙は鍵を回しドアを開ける。


「ただいまー」

「お邪魔します」

「おかえり梨沙。今日も高尾君と一緒か」

「ただいま、お父さん。健一君は昨日泊まったでしょ?その道具とかを取りに来ただけだよ!」

「そうなのかい?別に泊まっていっても構わないのだが」

「いえ、そういうわけには」

「あ、健一君!私取ってくるから待ってて」


梨沙はそう言うと、健一の返事も待たずに部屋に行ってしまった。


「...それで高尾君」

「はい」

「梨沙にあのことは話したのかい?」

「まだ話せませんよ」

「"まだ"ってことはいつか話すんだね?」

「そりゃ...俺だけの問題ではないですから」

「なるほど...」

「それでですね。やっぱりあの話って本当なんですか?嘘だとまでは言いませんがやはり信じられません」

「そういうと思って、これを用意したよ」


見せられたのは家族写真だった。梨沙の父と、見知った顔3人が並んでいる家族写真だ。


「そこに私がいるだろう?それは私が子供のころの家族写真だよ」

「...こんなもの見せられちゃ信じるしかないじゃないっすか...」

「悪いね。でも、事実を知るのも大事なことだろう?」

「否定はしません」


健一のその言葉を最後にこの会話は終了した。梨沙が来たからだ。


「二人で何の話をしてたの?」

「家族の話かな」

「...ですね」

「家族の話?」

「そうそう、家の家計。私とマリエと梨沙の話をね」

「私の話も!?」

「まぁ、そうだな」


あながち間違いではない。確かに話していたのは梨沙のこともあり、家族のこともあった。健一はそんなことを思いながら、今だに迷っていた。


「はい、健一君」

「おう、サンキュ」

「うん!じゃあまた明日学校で!」

「あぁ」

「高尾君、またね」

「...はい」


健一は梨沙から受け取った自分の荷物を持ち、向かいにある自宅へと向かった。






次の日、健一は梨沙に一本の連絡を入れ、先に学校へ向かっていた。

理由は一つ。梨沙との登校が、何やら苦しく感じるのだ。それは健一自身でも、詳しい理由はわからない。だが、予想は一つだけあった。


「やっぱりあのことだよな...けじめ、つけねぇとな」






『俺、今日は早く出るわ。学校でな』


そんな連絡が健一から梨沙に飛んでいた。


「健一君、やっぱり変だよね」

『うーん、それはさすがに変だね。よし、今日あれやるよ!』

「やっぱりやるの?」

『やるよ!あたしもそうだけど、一番気になってるのは梨沙でしょ?』

「そうだけど...やっぱりいけないような気がして...」

『普通じゃダメなことするんだからあたり前でしょ?腹くくりなさい!』

「う~...わかったよ...それじゃあ学校でね」

『はーい』


梨沙は電話を切った。電話の相手は里美。昨日の昼に思いついた作戦を今日実行するらしい。


「腹くくりなさい...か」


梨沙は手に力をいれた。まるで逃げるなと、自分に言い聞かせるように。






この日、体育があったため、着替える必要があった。この学校では、更衣室がないため、クラスの教室での着替えになるのだが、もちろんここは共学。男女がほぼ半々の中、全員で着替えるのは問題になりかねない。なので、教科担任の先生の監視のもと、男子から着替え体育館に移動。男子の大半の移動が確認されたら女子の着替えになる。もちろん、体育終わりは逆の順番だ。




男子が着替え終わり女子の着替えが始まる。


「梨沙」

「里美」


二人は同時にうなずき、健一の制服の胸ポケットに何かを入れた。その後は二人ともちゃんと着替え、体育館へ移動した。






それから何もなく、平和に学校が終わった。健一は今日梨沙と一緒に帰り途中で話そうと思っていた。だが、


『ごめんね健一君!ちょっと先生に手伝いで呼ばれちゃって、時間もかかりそうだから先に帰ってて!』


と梨沙から言われたのだ。


「待とうかとも思ったが、どれくらいかかるか聞かなかったしな。帰るか」


そうして健一は帰路についた。




「ねぇ、里美、本当にやるの?」

「やるのも何も、もうはじまってるんだから後戻りしないの!腹くくりなさいって言ったでしょ?」


里美と梨沙は、物陰に隠れながら健一の後を、機械を持ちながら追っていた。


「盗聴なんて、本当に大丈夫かな...」


そう。梨沙と里美がしているのは盗聴。体育の着替えの時に、制服の胸ポケットに盗聴器を仕掛けたのだ。そして、梨沙たちが手に持っているのは盗聴した音を受信する機械だ。


「にしても里美、よくこんなの持ってたよね」

「いざって時使えるかと思って買ってたの。まさか本当に使う日が来るとは...」

「健一君、ごめんね。でも、どうしても気になるの!」


そうして長い間尾行するも、健一は何も言葉を発さなかった。そしてとうとう家についてしまった。


「やっぱり高尾は独りごとタイプじゃないよね」

「そのための盗聴じゃないでしょ...」


でもこのままだとわからず終い。それだけは避けたいと思っていた。


「梨沙!最終手段行くよ!」

「え!?本当に!?」

「もうそれしかないでしょ!ずべこべ言わずにゴー!」


そうして里美は梨沙の背中を押して、電柱の陰から追い出した。


「もう...」


そして梨沙は健一のもとへ走る。


「健一くーん!」

「ん?あ、梨沙か。先生の手伝いってのは終わったのか?」

「うん!思ったより早く終わったから、走ったら健一君に追いつくかなって思って」

「...で、結局家の前か」

「そうなっちゃったね」


たはは、と梨沙が笑っていると、健一は梨沙のほうを向きなおし口を開いた。


「梨沙、聞いてほしいことがある」

「健一君?どうしたの改まって」

「俺、最近ずっと悩んでいたんだ。このことをお前に言うべきなのか、そうしないべきなのか」

「健一君?」

「でも、これは俺だけの問題じゃない。そう思った。だから今、ここで言わせてくれ」

「う、うん」

「俺も、梨沙の父さんから聞いた話だ、すべてを信じているわけじゃないが、決定的なものを見たからな。多分事実だと思う」

「何が...事実なの?」

「梨沙、実はな...」


梨沙は何を言われるのかドキドキしながら待っていて、盗聴中の里美は興奮の高まった状態。健一は大きく深呼吸してから言った。


「実は俺たち、"いとこ"どうしなんだ」

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