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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
2章 二人の恋路
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番外編 日曜日デート

※これは第15話「唐突に唐突が重なった」に書いてある、日曜日のデートのお話です。本編の進行とはほぼ関係ありませんので、息抜き程度にお楽しみください(^▽^)/




「晴れてよかったー!」


梨沙は窓を開けてそんなことを呟く。

そう、今日は健一とのデートだ。

付き合って間もない二人はデートなどしたことがないので、これが初デートになる。

今は午前7時30分。待ち合わせは午前9時にお互いの家の間あたりだった。時間は十分あると思われていたが...女の子にはいろいろあるものなのだ。


朝食を済ませ、シャワーを浴び、髪を整え、衣服を整える。基本それだけなのに、それが終わるころには午前9時手前。

ギリギリだった。玄関にある鏡で身だしなみの最終確認をして、ドアを開ける。


「いってきまーす!」






「とりあえず晴れたか」


健一はカーテンを開けてそう呟く。時計を見ると時刻は午前6時。いくら何でも早すぎた。


「...はやいな。俺、そんなに寝ないほうだったか?」


普段なら、家の手伝いがあるにしても8時程度だろう。ここまで早起きするのは初めてかもしれない。理由は簡単だ。


「そんなに緊張してんのかよ俺」


そう。ただの緊張。今日は梨沙との初デート。男としては、しっかりエスコートしたいところだ。デートのプランは何も伝えておらず、健一が自分で入手した情報をもとに組んだプランで行くつもりである。


「...とりあえず支度するか」


時間が有り余るほどあるとはいえ、少しでも遅刻の可能性をなくしておきたい。そう思い、支度を進めた。

朝食、シャワー、身だしなみなど、大体の支度を終えたのは7時10分頃、待ち合わせまでまだ2時間近くもあった。

いくら待ち合わせが家の前とはいえ、2時間は待っていられない。

そう思った健一は、デートプランの見直しをしていた。

そこまで長いプランではないが、多少の変更や、梨沙のことも考えなくてはならないため、臨機応変に対応できるプランでなくてはならない。そのことを考え見直しをしていると、時間が過ぎるのは早いものだ。

気づくと時刻は8時30分を過ぎていた。


「少し早いが待ってるか」


待たせるよりは待っていた方がいい。そう思った健一は玄関へ向かう。靴を履いている途中に、


「ん?兄ちゃんどこ行くの?」

「あ?あぁ、大樹だいきか。ちょっと友達と買い物だ」


声をかけてきたのは、健一の弟である高尾たかお 大樹だいき


「買い物?そんなにおしゃれして?」

「悪いか?」


健一は、普段、おしゃれには気を使わないほうだ。そのため、今日のために服も新しいものを買っていたのだ。


「そんなんじゃないけど...兄ちゃんがおしゃれして買い物なんて初めてじゃないかなって」

「...だな」

「なになに?彼女でもできたの?」

「...そんなんじゃねぇよ」

「まぁそうだよな。兄ちゃんに彼女なんてできるわけないか。無愛想だし」

「うるせぇな。用がないならもう行くぞ」

「あ、ちょっと待って!」


そういうと大樹は一度リビングに向かい、1分と立たずにで戻ってきた。


「兄ちゃん。念のため鍵持ってって」

「あぁ、持ってなかったか。わりぃ」


そういって鍵を受け取る。と同時に、手に何かを入れられた。それは...


「...リボン?」

「母さんがそれ渡せってさ」

「誰に?」

「さぁ?ただ渡せって言われてただけ」

「...なるほど、そういうことか」


健一は思い出した。これはそういうことなのだと。


「兄ちゃんわかったの?何に使うの?」

「いや、わからん」

「なんだよ」


健一は嘘をついた。弟に本当のことを言えば絶対茶化されるからだ。


「もう終わりか?そろそろ行きたいんだが」


時計を見ると8時40分過ぎだった。


「あ、もう何もないから行っていいよ」

「おう、じゃ、行ってくるわ」

「はーい。楽しんで」


にやにやしている弟に見送られ、玄関を出る。


「行ってきます」






午前9時手前、場所は鈴城家と高尾家の間。健一が立っていた。


「健一くーん!」

「ん」


梨沙が家から出てきた。手を振りながら、玄関先から健一までのかなり短い道を小走りで来た。


「お待たせ!待っちゃった?」

「いや、俺もさっき出たばっかりだから」

「そっか、よかった。待たせちゃったら嫌だったから」

「まず待ち合わせ時間過ぎてないから大丈夫だ」

「あ、そっか」


梨沙はテヘッと笑った。


「それじゃ行くか」

「あっ」


健一は梨沙の手を取った。指を絡めながら。


「どうした?行かないのか?」

「う、ううん!行くよ!」




まず来たのは駅だ。ここは特に説明するようなものは特にない。お土産店だってパッとしたものは置いていないし、基本電車の利用以外で来る人はいないだろう。


「少し待っててくれ。券を買ってくる」

「私も──」

「俺が買ってくるから大丈夫だぞ」

「え、う、うん」


そう言って健一は券売機へと向かう。


「...無理しなくてもいいのに」


きっと健一は、デートだからできる限り自分が出そうと思っているのだろう。そう梨沙は思っていた。





「お待たせ」

「うん!どこにいくの?」

「それは着いてからのお楽しみで。じゃあ行くぞ」

「あ、うん!」


健一に手を引かれながら梨沙は行く。券は健一が2枚とも出したので梨沙は行き先を知らないまま電車に乗ることになる。多少の不安と大きな期待が混ざり合っていた。


電車での移動中、なんでもない会話をしていた。


「そういえば健一君って兄弟っているの?」

「あぁ、弟が一人と母さんの腹にまだどっちかわからんが、一人」

「そうなの!?一人っ子だと思ってたけど兄弟いたんだ!」

「逆になんで一人っ子だと?」

「うーん、無愛想だから?」

「なんで疑問形なんだよ」


二人は笑っていた。

そうしている間に目的地へ着いたようだ。


「ここに来るのは初めてか?」

「昔来てるかもしれないけどもう覚えてないなー」

「そっか、じゃあよかった」


健一が連れてきたのはこの市で唯一の水族館。ここは約500種類の魚を展示している。


「梨沙、魚は好きか?」

「うん!好きだよ!」

「特に好きな魚とかは?」

「うーん、イルカかなー」

「そうか、ならちょうどよかった、イルカのショーの時間に合わせてきてるからすぐに見られる」

「え!?本当!?」

「こんな状況で嘘は言わねぇ」

「やったー!」


すごくはしゃいでる梨沙を見て笑みをこぼしながら健一は少し恥ずかしそうにしていた。それもそのはず。今日は日曜日。入場者は少ないわけもないので人目につく。そんな中ではしゃがれるのは、隣にいる方が恥ずかしいものだろう。


「健一君!早く行こ!」

「あ、おい。あんまり急ぐなって、まだ時間はあるから」


嬉しさを隠しきれないんだろう。健一を引っ張りながら、イルカショーの会場へと駆け足で行く。




「たのしかったねー!」

「あぁ、思ったよりすごかったな」


イルカショーを堪能した二人。水がかかるか、かからないかのギリギリなラインで見ていたため、より迫力を感じただろう。


「ねぇ健一君!次あっち見てみようよ!」

「わかったから引っ張んなって!」


側から見れば仲のいい恋人同士。全くをもってその通りだ。二人は周りが見えていないだろうが、周りはよく見えている。同じクラスの人も中にはいただろう。




二人は長い間水族館を堪能しただろう。


「梨沙、そろそろ飯にしないか?」

「あ、もうそんな時間かー」


時計を見ればもうすぐ午後0時30分頃。ちょうどお昼時になっていた。


「でもこの時間だとどこも混んでるんじゃないの?」

「だとは思うが、まぁ何とかなるだろう」


そう思い、水族館を出た後に近くにあった店に入った。

思っていたほど混んではなく、すんなり注文で来た。


「混んでなくてよかったねー!」

「あぁ、流石に待ち時間は短いほうがいいしな」


水族館では、梨沙が思った以上に楽しんでいて、休憩をほとんどしていなかった。そのため、短い時間で席に着き、注文できるのはありがたい限りだっただろう。


「にしても、水族館は結構人いたが、こっちは少ないなんてな」

「水族館の中にあったレストラン?で食べてるのかな?」

「あぁ、そんなのあったな」


水族館のレストラン。海鮮系や魚類の物をメインに置いている店だった。


「あっちで食べてもよかったかもな」

「絶対こっちより混んでるよ?」

「こっちより料理のバリエーションあるだろ?」

「そうだけど、私はこういうのも好きだからいいかな」


そう料理を待ちながら言う梨沙を見て、健一はきっと『いろいろ考えてきてよかった』と思っていることだろう。


やがて料理が来て食べた二人。食べ終わってからどうしようか考えていたところ、


「ごめんね健一君。ちょっとお花摘みに」

「おう」


そうして梨沙は席を立つ。そして健一も席を立った。




「お待たせ!」

「おう、じゃあ行くか」

「お会計は?」

「もう済ませておいた」

「え!?」


梨沙は驚いた。財布を用意してお会計に行こうとしていたらもう済ませたと言われたのだから当然だ。


「いくらだったの?半分出すから!」

「いや、こういうところくらいは出させてくれ。せっかくのデートなんだから格好つけさせてくれよ」

「でもご飯くらいは...」

「水族館の入館料とかまではさすがに俺だけじゃ払えないから無理だが、こういうとこくらいは甘えとけ」

「う、うん。じゃあお言葉に甘えて...」


少し申し訳なく思ったのか、声が小さくはあったが了承たようだ。


「次はどこにいくの?」

「正直どうしようかと思ってな。どっか行きたいところとかないのか?」


プランを考えてはいたが、こっちのプランだけで動くのはデートっぽくないと思い、梨沙に何かないか聞いたところ、


「うーん...あ、そうだ!遊園地に行きたい!」

「遊園地か...そうなるとまた電車だな。じゃあ遅くならないうちに行くか」

「うん!」


健一は梨沙の手を引き、駅へ向かう。

電車代はまた健一が払った。




そして午後2時手前、遊園地に到着。


「で、どうするんだ?」

「じゃあまずあれに乗ろ!」


梨沙が指さしたのは空中ブランコだった。


「あれに乗るのか?」

「うん!」

「そうか、じゃあいくか」


そうして、手をつないだまま列に並ぶ。




「楽しかったね!」

「あ、あぁ。思ったより激しいんだな...」

「結構声出してたよね」

「言うな」


二人は楽し気に話しながら下りてきた。そして健一は何やら笑みを浮かべながら指をさす。


「次あれ行かないか?」

「あれ?」


健一が指さす先には...。




「健一君、怖いよ...」

「そうだろうが、いくら何でもくっつきすぎだろ...」


健一が指さしていたのはお化け屋敷。健一のイメージ的に、梨沙は怖いのが苦手だろうと踏んでのこと。多少の意地悪はしたいのだろう。


「なんでここを選んだの?」

「梨沙がビビりそうだから」

「もう!健一君のバカ!」

「まぁまぁ」


そう会話している最中も、お化け達はお構いなし。


「キャァ!」

「ちょ、くっつきすぎだって、歩きにくいだろ」

「だ、だって!」


梨沙は涙目になりながら健一の腕にしがみついている。

男としてはうれしいシチュエーションだが、歩き辛いのも相まってうれしい状況とは言えない。


「頼むからもう少し離れないか...」

「無理無理!」


梨沙は大きく首を振る。まいったなとばかりに健一は溜息をつく。




「もう!」

「悪かったって」


屋敷を出てから、梨沙は頬を膨らませていた。


「本当に怖かったんだから!」

「それは俺の腕にしがみついてたからわかる。というか、そうなると思ってたからな」

「もう!」


屋敷を出ても尚、健一にしがみつく梨沙。


「とりあえず休憩するか。そこで落ち着いた方がいいだろう」

「誰のせいでこうなってると思ってるのさー!」


そういいながら休憩エリアへ移動する。




ある程度休憩して、何個かアトラクションを乗り、時間も過ぎていった。気づけば午後5時30分頃。日が沈みかけ、きれいな夕暮れ時だった。


「もう、こんな時間か、次を最後にしないと暗くなるな」

「そっかー...じゃあ最後はあれにしよ!」

「あれか。最後にはいい乗り物だな」


梨沙は指をさす。




「わぁ!きれーい!」

「だな」


最後に選んだ乗り物は観覧車だ。ちょうど夕暮れ時で、景色がとてもいいものだった。


「健一君、今日はありがとう!楽しかったよ!」

「まだ今日は終わってないけどな」

「え?」


健一は鞄からとあるものを取り出す。ラッピングされた袋だった。


「これ、やるよ」

「え?開けてみていい?」

「あぁ」


梨沙は丁寧に紐を解いていく。中には...。


「わぁ!可愛いリボン!これどうしたの?」

「俺、そういうの何がいいか分かんねぇから、母さんに頼んでおいたんだ。それをラッピングしておいた」

「ありがとう!これ、つけてもらってもいい?」

「俺分かんねぇぞ?」

「いいの!健一君に着けてもらいたいの」

「...ならやってやるけどさ」


健一は慣れない手付きでリボンをつける。多少雑で、髪がぼさっとしてしまったが、つけ方としては問題はなかった。


「どう?似合ってる...かな?」

「あぁ。なんだ、その...か、可愛い...よ」

「ありがとう!」

「...梨沙、ちょっといいか?」

「うん?」


健一が手招きで、梨沙を近くに寄せる。そして、


「ん」

「んん!?」


健一は梨沙の口に口を重ねた。

たった数秒。けれど、濃い数秒だったと思う。

口を離した健一は小声で、梨沙の耳元で、


「今日はサンキュ。これからもよろしくな」


そう言った。

一方の梨沙は顔を真っ赤にして、


「は、はひ...!」


恥ずかしさが上回ったのか、噛んでしまった。

そして、そのタイミングで観覧車の扉が開いた。






家の前に着いたのは7時手前頃。


「それじゃ健一君!今日はありがとう!また明日ね!」

「あぁ、また」


梨沙が手を振るのに対し、健一も軽く手を振って返す。

そして梨沙が家に入るまで、健一は梨沙のことを見守っていた。


二人にとっての初デートは、こうして幕を閉じた。

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