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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
2章 二人の恋路
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2章 4話 一難去ってまた一難...?

「せ、セリア君...」

「す、スズ...」


セリア、梨沙、そして健一の三人の中に沈黙と気まずさが生まれた。気まずさは、正確にはセリと梨沙の2人だけだが。


「なぁセリア、お前がこの状況で黙るってことは、やっぱり梨沙に何かしたな?」

「「!?」」


セリアだけじゃない、梨沙も驚いた。なぜなら、梨沙は何も話していない、この感じからセリアも話していないのに、大方の予想が当たっている。


「梨沙も驚くってことはやっぱりそうなんだな。俺はこういうじめっとした関係性は嫌なんだ。なんかあんならはっきりしようぜ」


普通の人なら空気だけで何も言えなくなるようなこの気まずさの中、自分の気持ちをはっきり言い切った。


「健一君実は...」

「スズ!待ってくれ!」


梨沙が何かを言おうとしたときに、セリアが梨沙を止めた。


「...あれは俺が勝手にやったことだ、この落とし前は俺がつける。だから俺に言わせてくれ」

「セリア君...」


セリアは健一の前まで歩いてきて、傘を捨て、言い張った。


「ケンイチ、言う前に確認だけさせてくれ」

「なんだ?」

「お前、スズの彼氏なのか?」

「...」


健一は梨沙に目配せをする。梨沙は小さくうなずいた。だから健一は、


「あぁ、俺は梨沙の彼氏で、梨沙は俺の彼女だ」


言い張った。ここまで来たら隠せない、その判断で梨沙も了承したのだと思ったからだ。

それを聞いたセリアは、深々と頭を下げ言った。


「申し訳ない!」


前進全霊の謝罪に多少の驚きを見せた健一だが、すぐにたちなおした。


「お前がスズの彼氏とは知らず、そして、スズがお前の彼女とは知らずに、してはいけないことをしてしまった!到底、許される行為ではない!罰はなんでも受けよう!」

「は?いや、まてまて。いきなりそう言われても何がなんだかわからんぞ」

「健一君、訳は私が話すね...」


泣きそうな顔をしながら梨沙は健一に話した。

告白された。そして、キスされたということを。


「......なるほどな」


健一の声のトーンが今までにないくらい下がっていた。


「謝って許されるとは思ってない!殴るなら殴れ!」


セリアはそう言って頭を下げたままでいる。


「許す許さないの問題じゃねぇ。確かに梨沙の初めてのキスはお前に取られたかもしれねぇ。でもな、梨沙にとっての彼氏は俺で、俺にとっての彼女は梨沙。その事実だけはなにがあろうと変わらねぇ。これからよく見てろ。お前が好きになり、キスまで奪った女が、他の男によって磨かれる姿を。そしてそれを見て後悔しろ。好きな女のキスを奪ったことで、その輝きがくすんでしまうことを!」


そういうと健一はセリアを少し強めに突き飛ばした。当然尻もちを付くセリアは、何があったのか確認のために前を見る。するとそこでは...


「ん!?」


梨沙の口に、健一の口が重なっていた。

梨沙も唐突の出来事にびっくりしただろう。傘を落とし、雨に当たる。だが、逃げようとはしなかった。


数十秒とかからなかったその口づけは、短くもしっかりお互いを確かめられたものだと思う。

それを見たセリアは、


「...だよな。スズ、ごめんな。勝手なことした。お前にはケンイチがいるんだな。」

「うん、私には健一君がいる。でもそれは、セリア君が邪魔ってわけじゃないよ?」

「え?」

「セリア君は確かに、私の...その、こ、恋人にはなれないけど、大切な友達だもん!」

「梨沙がそういうんだ。俺はお前のことが許せないし、今まで通り接することができるか分かんねぇ。だが、梨沙のお願いもあるからな、極力お前とはいつも通りでいるさ」

「スズ、ケンイチ...」


セリアの目には、雨か涙かわからない水滴があった。

これでこの件は一件落着。だが...


「へっくちっ」

「...そういえば」


梨沙の可愛らしいくしゃみが聞こえたところで、三人とも思い出す。


「あぁ、今は雨だな。俺たち全員傘さしていないが」

「さすがに体冷えちゃうね。健一君、帰ろう?」

「あぁそうだな」


梨沙と健一は家へ引き返す。それを見ていたセリアには、二人の背中が大きく見えただろう。






「あぁ、そういうことだからさすがに今からはいけねぇわ」

『そっか~、了解!でもよかったよ、解決して!じゃ、また明日学校で!』


健一は里美との電話を切ると梨沙の部屋へ入った。

ここは鈴城家。盛大に雨に濡れた健一と梨沙は梨沙の家に、セリアも来ようとしていたが健一が追い出した。


「あ、健一君おかえり」

「おう、先にシャワー浴びてきたらどうだ?濡れたままじゃ風邪ひくだろ」

「うん、そうするね!」


そういうと梨沙は着替えを持って部屋を出て行った。

そうすると必然的に梨沙の部屋には健一一人の状態になる。

何をして時間をつぶそうか考えてる時、部屋のドアが開いた。


「健一君、タンスの中...特に上から2つ目は見ちゃだめだからね?」

「見ねぇよ。てか戻ってくんなら服着たまま来いよ」


梨沙は下着姿で部屋に来た。ただ忠告しに来ただけの様だったので健一もそういったのだが。


「濡れたままだと風邪ひくから脱いできちゃった」

「...」


馬鹿なのかと健一は思ったが、濡れたままが良くないといったのは自分自身。言い返そうにも言葉が見つからなかった。


「とにかく、タンスの中は見ないでね?それ以外は大体大丈夫だから」

「分かったから早く温まって来い」

「はーい」


梨沙は部屋を出ていく。そしてまた健一一人の空間となった。ここは彼女の部屋。健一だって男だ。やましい考えがないわけではないが、手を出すほど落ちこぼれてもいない。結局部屋を見回すだけで何もしなかった。




梨沙が戻ってきて、健一がシャワーを浴びに行く。

その時になって気が付く。


「そういや、俺の着替えはどうすればいい?」

「あ、考えてなかった」

「...家真ん前だし帰った方が早いが...」


ここまで来たならもう少し一緒にいたい。人間、恋をするとそういう発想がすぐに出てくるものだ。梨沙も健一も同じ考えだっただろう。二人は悩んでいたが、すぐに梨沙が、


「いいこと思いついた!ちょっと待ってて!」


と、言いながら手を叩くと、すぐに部屋を出て行った。

それから2、3分後といったところか、梨沙が戻ってくると、手には男物の衣服があった。


「これお父さんのだけど、今出張でいないから使っていいよ!」

「...本当に大丈夫か?いろんな意味で」

「大丈夫!ちゃんと洗ってあるから!」

「いや、それもそうだがそうじゃなくてだな...」


健一が言っているのはサイズの話だ。見た目はちょうどよさそうなサイズだが、畳まれている状態なので正確には分からない。


「まぁ、いいか。じゃあ使わせてもらうぞ」

「うん!あ、シャワーの使い方大丈夫?」

「多分。わからなかったら呼ぶ」

「はーい」


そうして健一が部屋を出ていき、シャワーの音が聞こえるのを確認すると、梨沙は自分の携帯を取り出した。






「はぁ」


シャワーを浴び終わった健一は、梨沙からもらった梨沙の父の衣服を着た。サイズはぴったりだった。


「謎に緊張するなこりゃ」


そういいながらも、しっかり着ているあたりが健一なのだが。

健一は梨沙の部屋につくと、少しためらいながらドアを開けた。だが、部屋に梨沙の姿がなかった。


「...は?」


梨沙の姿がなく、梨沙の携帯も財布も置いたまま。どこかに行ったのかと玄関に行き靴を確認するが梨沙のいつも履いている靴は置いてあった。


「何があったんだ?」


健一はただただ困惑していた。シャワーに入っていた十数分の間に梨沙は消え、だけど靴や貴重品はそのまま。

健一は謎の恐怖感に包まれた。


「なんだよ...何だってんだ!」


健一は家の中を探し回った。リビング、キッチン、寝室、洗面所など。他人の家ということも忘れて無我夢中で探した。でも梨沙の姿はなかった。


「何処に...いったい何処に行ったんだよ...」


健一は考えた。今ある情報を元に、梨沙がどこに行ったのかを可能性のある限り考えた。その中で1つ、この状況であり得る最悪のパターンが頭をよぎった。


「まさか...!?」


健一はもう一度玄関を確認する。今度は靴ではなくドア。ドアについている鍵だ。


「空いている...まさか、本当にそうなのか?」


その可能性を考えただけで健一は鳥肌を立たせた。そして、今にも涙があふれそうなほどの恐怖を体に走らせた。

そう、健一の頭をよぎった最悪なパターン。それは、『誘拐』だった。

仮に誘拐だとして、家を探し回った健一は手がかりらしきものを見つけていない。外はいまだに雨が降っているため、手がかりがあるとは思えない。つまりは誘拐なら詰みだ。梨沙の居場所を知ることなど不可能。

頭ではそう思っていても、体は動いていた。健一は靴を履き、外に出ようとドアを開ける。そこに...!

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