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恋の色は濁り色  作者: ピチュを
1章 恋の行方
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1章 12話 意外なコンビ?

「落ち着いた?」

「うん、ありがとうさっちゃん」


公園のベンチに腰を下ろし、梨沙が落ち着くまで一緒にいた彩香は梨沙に改めて問う。


「何があったのか、聞かせてくれる?」

「うん...実は──」


梨沙は里美の電話での言葉や昨日の告白、さっきの健一の拒否など、全部を話した。


「なるほどねぇ、あの人、かなりモテそうだったもんね」

「うん、用事があるって言ったのも、きっと里美に呼ばれたから。そして、里美告白する気なんだよ...」

「それで、その健一君が取られちゃうと思って泣いてなのかー」


梨沙は頷く。


「でもさ、私は思うんだ」

「え?さっちゃん?」

「梨沙は告白した、返事は貰ってない。その健一君って、いつだったか廊下で会ったあの人だもんね?だったら大丈夫。あの人はあやふやなまま終わらないと思うよ」

「どうかな、結構めんどくさがりなんだけど」

「じゃあ返事もらいたくないの?」

「そういうわけじゃないけど...」


梨沙はあまり乗り気じゃなかった。振られるかもしれない。その思いが、彩香に相談するたびに強くなっていく。そう感じるからだ。


「ねぇ、梨沙。梨沙は気づかなかったの?」

「気づかなかったって...なにが?」

「...いや、気が付かなかったならいいの」

「?」


梨沙は困惑した。もちろん彩香が聞いたのは、健一は梨沙にその気がある。そのことに気付いているのかということだ。彩香は健一との接点はほぼない、言ってしまえば、以前廊下で会ってから数回すれ違うことがあったくらいだ。

だが彩香は気づいていた。健一が、梨沙を想っていることに。


「私が言えるのは一つ。返事は絶対もらえるよ。結果はどうあれね」

「...結果はどうなっても健一君のせいじゃない。私が、しっかりしなかったから」


彩香は困っていた。いや、正確には困りながら驚いていた。ここまで滅入ってる梨沙を見るのは初めてなのだ。


「はぁ、しょうがないなー」

「さっちゃん?何を?」


しょうがない。そういいながら彩香は携帯を取り出した。


「私の知り合いに恋愛とか詳しい人がいるの。その人を紹介するね...あ、もしもし?うん、そうだよー!久しぶり!それで早速本題なんだけど、恋愛相談に乗ってほしいんだよね。いやいや私なわけがないでしょ!私じゃなくて幼馴染の子。うん。今私の家の近くの公園にいるからよろしくね。はーい」


彩香は電話を切ると梨沙に親指を立てた。






それから数分後、


「あや、お待たせ」

「お、きたきた」


先ほど彩香が呼んだのであろう人が来た。


「あや、そっちの人が幼馴染の?」

「あ、鈴城梨沙です!」

「ちょっと...って感じじゃないけど、恋愛で悩んでてね。知恵貸してあげて」

「あやにはいろいろ世話になったからね。あやの頼みとあっちゃ断るわけにはいかない」


そういった彩香の知人は梨沙のほうを向き直し軽く自己紹介した。


「あたしは天津廻(あまつかい) 香恵(かえ)。中学の時、あやにいじめっ子から助けられた。恋愛ごとならお任せを」

「うん、よろしくね。かえちゃんって呼んでもいいかな?」

「苗字で呼ばなきゃなんでもいいよ」

「かーは苗字嫌ってるもんね」


そのことに関しては梨沙は察した。天津廻なんて長いし、言いにくい。ましてや天津あまつ かいと苗字だけで苗字と名前が入ってると思われても仕方がない。


「さっちゃん、ありがとう」

「いきなりどうしたの梨沙?」

「ううん、なんとなく」


梨沙はそう笑うと、香恵は不思議そうな顔をした。


「あやのことをさっちゃん?なんで?」

「あー、まぁそういう反応になるよね」


あやかはポリポリと頬をかきながら説明した。


「梨沙はさっきも言ったけど幼馴染なの。昔私の名前を見て彩香(あやか)じゃなくて彩香(さやか)って読んでて、それからさっちゃんになったの。今から戻すのもおかしな話だからもう気にしてないんだけどね」

「そうなのか、じゃああたしもさっちゃ──」

「それはやめて」


彩香に止められた香恵は少し肩を落とした。だがすぐに治り、もう一度梨沙のほうをに向きなおして言った。


「それじゃ、本題に入ろうか」

「うん、お願いね、かえちゃん」


梨沙は彩香に話したことと同じことを包み隠さず全部話した。


「なるほど、そういうことか」

「うん、どうしたらいいかな?」

「簡単だよ。というか相談するまでもなかったんじゃないか?」


どういうこと?と言わんばかりの顔をする梨沙。すると香恵は言った。


「だってさ、その健一君だっけ?その人、多分だけど──」

「鈴城か?」

「え?」


香恵が言い終わる前に、聞き覚えのある声がした。そこには──











その頃里美は...


「やっぱりかー。わかってても辛いものは辛いなー」


里美は帰路を辿りながらそう呟いていた。もちろんあえて遠回りし、健一や梨沙と会わないようにしている。


「想いは伝えたし、後悔はないけど...」


里美は泣いていた。


「グスッ...やっぱり、梨沙にはかなわないなー。あたしの分まで幸せになりなよ」

「ん?前川...さん?泣いてる?!大丈夫?!」

「え?」


呼ばれて振り返るとそこには...


「えっと...比岐島...だっけ?」

「あ、覚えてた?ってそうじゃなくて、何で泣いてるの?」

「あ、えっと、これは...」

「言えないなら無理には聞かないけどさ、心配だから教えてほしい」


そんな事言われたら...里美の心の中の何かが崩れ落ちた。それと同時に気付いたら比岐島胸で泣いていた。


「ちょ!前川さん!?」

「ご...めん...今だけ...今だけは甘え...させて...」

「......」


比岐島は何も言わずに里美の頭をなでながら胸を貸していた。里美も安心しているのか、比岐島の胸で思う存分泣いた。



それから数分後。ちょうど近くにベンチがあったのでそこに移動し話をすることにした。


「比岐島...ごめんな」

「謝る必要なんてないって。それより、話せる限りでいいから、前川さんの涙の理由聞いてもいいか?」

「胸貸してもらったし、こんだけ心配させて話さないなんて罰当たりしないよ。全部話す」


里美は淡々と話した。昨日の出来事から今日の出来事。その涙の理由もしっかりと。


「なるほどな...」

「馬鹿みたいだよね、元々あいつがあたしをそんな目で見ることはないってわかってたのにさ」

「確かに、馬鹿だな。あいつを好きになったことじゃない。鈴城さんに高尾を譲ったことが」

「...え?」


里美は不思議に思った。健一を好きになったことではなく、梨沙に健一を渡したことを言われたのだ。なぜそこなのだろうと。


「前川さん、本当に高尾が好きなんだろ?あいつの気持ちを聞いても諦められずに泣いているのが何よりの証拠だ」

「それはそうだけど...」

「高尾もさ、鈴城さんが本当に好きだから言ったんだと思う。でもそこまで好きならそれを聞いても普通は下がらないでアタックするもんじゃないか?」


確かにそうかもしれない。里美はそう思っただが、里美の中では違う思いがあった。


「それはそうかもしれない...でもあたし、好きな人には幸せでいてほしい。あたしが幸せに出来たら、それはとても嬉しいって思う。けど、高尾が幸せになってくれるなら、例え選ばれるのが私じゃなくてもいい。それこそ、あたしは梨沙も好きだしさ、あの二人がくっつけばあたしの好きな二人はどっちも幸せになる。だったらあたしが下がったほうが高尾も梨沙も、あたしも幸せなんじゃないかなって。そう...思うんだ」


里美の思いを何も言わず聞いていた比岐島はこんなことを言う。


「確かにそれも一理ある。でも、その涙は幸せからじゃない。後悔や悲しみから出た涙のはずだ。そうじゃなきゃ死んでも俺の胸なんかで泣かないだろ?」

「ふっ、それもそうだね」

「やっぱり悔しいんだろ?鈴城さんに負けたのが」

「確かに悔しい。でも高尾が選んだ。それは事実なんだよ。抗おうにも抗えない。それに、こんなことになったのは元をたどればあたしだしね」

「昨日の高尾と鈴城を二人にしたってやつか?」

「うん。梨沙にあそこでチャンスを与えたあたしの甘さがこの事態を招いたんだと思う」

「...仮にそうだとして、それをしなくて結果は変わったか?」

「...え?」


比岐島の質問も良く聞けば簡単なものだ。でも、里美は遅れて聞こえたかのような反応だった。


「高尾の口調からすると昨日のことで好きになったとは思えない。だったら昨日のことがなくても、前川さんが高尾とくっつく確立はほぼないようにも思えるけど」

「...確かにそうだね」


里美もそれは感じていた。ただ、あえて考えないようにしていただけだ。


「って、こんな説教じみた相談いやだよな」

「いや、本当に助かるよ。それにさ、なんか、話してると落ち着くんだ」


それから、帰路をたどりながらいくらか会話はあったが、比岐島なりの気遣いなのか、もう告白の件には触れなかった。


「ありがとう比岐島。おかげですっきりしたよ」

「クラスメイト...しかも可愛いいたいけな女の子が泣いてるんだ、放っておけないだろ?」

「あんたが言うとちょっとくさいね」

「ひっでぇな!?」


笑いながらそんな会話をしていた。いつの間にか里美の家まで来ていた。


「比岐島ってあたしの家知ってたっけ?」

「いや、どうせ家に帰るだろうと思ってついてきただけだ。まだ多少明るいけど女の子を一人にするには危ない時間だからな」

「意外に紳士的なのね」

「意外は余計だろ!」

「ま、とにかくありがと」

「礼なんていいっての...頑張れよ。いろいろと」

「言われなくてもわかってるって。じゃ、学校で」

「おうよ!」


里美は思った。『ただの自惚れかもしれないが、比岐島はあたしのこと...。』

比岐島は思った。『前川さんって、乙女なんだな。』

互いに互いの、自分の気持ちがわからない。でも確かなのは、はっきり言わなきゃ伝わらない感情なんだということ。

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