1章 9話 みんな仲良く
「...行っちゃったね」
里美はそう呟いた。
「なんで焦ったんだ?家くらい教えてもいいだろ」
梨沙が颯爽と帰ったことに少し苛立っている様子の健一。
なぜ帰ったか、なぜ焦っているのかわからない。少なくとも健一は。
「前川、なんで鈴城は帰ったかわかるか?」
「はっきりはわかんないけど予想はできる」
「その予想ってなんだよ」
「それは言えないよ。乙女の秘密だからね」
「は?んだよそれ」
健一は明らかに不機嫌になった。
「なに機嫌悪くしてんのさ。もしかして...梨沙が居なくて寂しいのかな?」
里美はいつものように、煽るようにそう言った。だが、健一の反応はいつもと違った。
「あ?んだよ、寂しいって言ったら鈴城を連れ戻しにでも行くのか?んなわけないよな。
乙女の秘密だが知らんが言いたくないことがあるなら連れ戻すわけないよな!」
健一はかなりきつい表情で、かなり強い口調でそう言った。
「え、ちょ、高尾?」
「いいぜ、お前の気持ちはよくわかった。もう必要以上に口出してくんじゃねぇ。」
「な?!ちょっと高尾!それはひどくない?!確かに煽りすぎたけどそれはいつものノリでしょ?!
わたしなりに心配してそういったのにさすがにそれはないよ!」
「いつものノリだ?俺が機嫌悪くなってるのわかってて煽るとか馬鹿じゃねぇの。
俺とお前は長かった付き合いだ、どうなるかくらいわかってただろ」
「機嫌が悪いから冷かして元気にしてあげようとしたんじゃん!」
そのまま言い合いは続いた。
一方、梨沙は。
「はぁ、はぁ...どうしよう...」
途中から頭が真っ白になって、気づいたら走っていた。
「戻らないと、まずいかな...でも、いまさら戻るのもなー」
そう考えてると、なんだか少し騒がしいことに気が付いた。
声の方角は走ってきた道...要するに、健一、里美がいる方向だった。
「なにかあったのかな?もしかして絡まれてるとか?!健一君、かっこいいし優しいけど喧嘩が強いわけじゃないし...でも、私が行っても足手まといかもしれない...どうしよう」
そうは言っていたが、梨沙の足は無意識に動いていた。
健一たちがいる方向に。
「いい加減にしろよ前川!」
「高尾こそいい加減にして!」
言い合いは続いていた。幸い、まだ手は出していないが、出るのも時間の問題だろう。
「チッ、いい加減うぜぇ。」
「うぜぇってなにさ!こっちだって我慢はしてんの!」
「じゃあ我慢せずに行こうぜ」
そういって健一は、散々言い合いながらも支えてくれていた里美を弾き飛ばし、拳を振り上げた。
その時、
「待って!!!」
ひときわ響いたその声に健一は拳を止めた。声で誰が叫んだのかわかったようで、健一は顔を上げなかった。
里美は健一に弾き飛ばされしりもちをついた状態だった。里美は声に反応し、声のするほうに顔を向けた。
「梨...沙?」
「やめて健一君!」
「うるせぇ、止めんな」
健一は梨沙の声を聴かず、拳を振りかぶった。里美は逃げられないと悟ったのか、顔の前に腕をだし、防御の姿勢に入った。
だが、その拳は里美に届くことはなかった。
里美はいつ来るかわからない拳におびえながら、ゆっくり防御の姿勢を解き、目を開けた。
そこには、
「健一君、お願いだから、やめて...」
梨沙が健一に後ろから抱きつき、そう言っていた。
「鈴城、邪魔すんじゃ──」
「するよ!」
梨沙の叫びに、2人とも身を強張らせた。
「だって、健一君に...好きな人にそんなこと...友達を!傷つけてほしくないもん!」
「?!...鈴城...」
梨沙は涙を流しながら言っているのに気づいた健一は、そっと拳をおろし、梨沙の頭に手を置いた。
「悪い、頭に血が上ってた。でも謝らない。元を言えば鈴城、お前が原因だからな」
「うん、わかってた。私が逃げたから、こうなったんでしょ。いくら私でも想像つくよ」
梨沙は涙ながらにそういうと健一から離れた。
「り、梨沙!」
すると今度は里美が梨沙に泣きながら抱きついてきた。
その後梨沙は、どういう経緯で喧嘩になったのかを聞いた。
「そっか...ごめんね、急に走って...逃げちゃって」
「いいよいいよ、言いたくない乙女の秘密の1つや2つくらい、誰にでもあるって」
里美も話して落ち着いたのか、いつも通りの笑顔に戻ってそういった。
ただ、健一はいつも通りではなかった。ただ、怒ってるってわけではない様子。
「で、逃げた理由はなんだ?」
「私自身はっきりわかんない。気が付いたら走ってて...」
「じゃあ、質問を変えよう。俺に抱き着いた時なんて言った?」
「え?」
「俺を抱いた時、なんていった?」
「えっと...それは...」
梨沙は言いにくそうにもじもじしてると里美が入ってきた。
「友達を傷つけてほしくない。そういったよね」
「え、う、うん。そうだけど...」
と、梨沙が自身なさげに答えると、里美が耳元でこういった。
「そういうことにしておきな。ここで健一に告白していい答えがもらえるとも思えないし、
クラスに知れ渡ったらと思うと後が大変だから」
梨沙は小さくうなずき健一にこういった。
「健一君に、友達を傷つけてほしくないって言ったんだよ。それがなにかあった?」
「いや、ならいい」
健一は少し不機嫌そうにしながらも、追及はしなかった。
「じゃ、じゃあ!そろそろ帰ろうか!早くしないと日が暮れちゃうしね!」
「そ、そうだね、じゃあ行こうか!高尾は一人で歩ける?」
「最初から歩けるって言ってたろ。今さら聞くな」
その後は3人で笑いながら帰った。
里美はどうしてもと聞かなかったので、小一時間ほど梨沙の家に上がってから帰った。
おはこんばんちは!ピチュをです。
つい最近投稿したばかりですが、暇が出来たので今日も投稿させていただきました。
「恋の色は濁り色」も9話まで来ました。
少なくとも完結するまではしっかり書こうと思っています。
まだ至らぬ点がいろいろありますが、そういうところは感想などを読んで改善できたらと思います。
なにかありましたら感想を気軽にお書きください。
気づき次第返信もさせていただきます。
それではここまで読んでくださりありがとうございました!
今後とも、応援のほうをよろしくお願いします!




