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肉じゃが

 新婚って響きには程遠く、残業が続く毎日。毎回ゴメンのメールを打つのもしんどくなってきた。佳織さんはもっとだろうと思う。


 しばらくご飯は作らなくていいよ、と朝のうちからメールを打っておいた。寂しいな、と思う。このプロジェクトが終わったら、佳織さんと一緒に──。


 静かに鍵をあけて、台所へ。何か簡単なもので。


 台所のテーブルで伏せて待つ佳織さん。メモ紙に「お帰りなさい、暖めて食べてね。お仕事お疲れ様です」と書いてある。ラップしてあるのは、肉じゃが──。


 無言で食べる。起こさないように冷たいまま。冷たいのに温かい。甘くて口の中で溶けて。


「うまい」


 明日は早く帰ろう、それだけを思って。

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