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Kamelie  作者: ariya
::7 別れと出会い::

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序 吸血鬼のいる城

 ヴィルヘルムたちは森を抜けたところで途中小さな村へたどり着いた。アデル村という名の小さな村、そこで近くにある城について確認した。

 昔は領主の避暑地として利用されていたようであるが、30年前から利用されることはなかったという。だがここ最近は利用している者が現れている。異国の貴族が領主から買い取ったとか。今は幼い少年が使用人と一緒に住んでいた。

「身体の弱いお坊ちゃんが療養に使用しているとか」

 珍しい東海人の使用人がいるので顔なじみのようである。

 城に出入りした者はいないのか聞いてみたが、特にいないとのこと。食料については使用人が町から購入しているようで、身の回りのことは連れてきた使用人たちでことたりるという。

「女房が下働きの仕事が来るかもとそわそわしていたがそんな話は来なかった」

 東海人の使用人の特徴を聞くとヴィルヘルムがみた者と特徴が一致していた。東海の人間となると特徴がどうしても被るので間違いがあるかもしれない。だが、ヴィルヘルムが追った匂いの先は確かにあの城の方に繋がっている。

 間違いなくあそこに椿がいる。

 早くあそこに行かなければと体を動かすが、クラウディオが腕を掴み呼び止めた。

「もう少し城の様子を確認しておこう。中には吸血鬼やその眷属がいる。人手も必要だろうし」

 銀十字の本部に手紙を書き、使い魔に送ってもらう。銀十字にとって吸血鬼、特にアルブシルヴィウスの吸血鬼は厄介なものであった。彼らの手で葬られた同胞は少なくない。彼らの拠点に向かおうにもたどり着くこともなく返り討ちにあってしまう。凄腕の戦士を編成した討伐隊でも一人の吸血鬼によって殲滅させられた過去もある。

「だが、悠長に待っていられない」

 あの城で椿はどんな目に遭わされているか。

 あの誘拐事件の時にいろいろと調べてみると、椿を奴隷として購入する予定だったのはアルブシルヴィウスの吸血鬼だったという。

 椿の特殊な血はどれだけ追い求めていたものだろうか。

 彼女の能力で何度も吸われても死ぬことはなく、彼らは思うがまま椿の身体を貪っているのではないか。


 だめだ。それは……椿は俺の。


 そう考えてヴィルヘルムはぱんと頬を叩いた。一瞬椿の首筋に牙を立て、彼女の血肉を楽しむことを考えてしまっていた。

 これでは奴らと同じではないか。

 自分は違う。椿を助けたい。

 そう何度も言葉を繰り返しヴィルヘルムは城への道に足を進めていった。クラウディオはあきれ果て、仕方ないと少し離れた位置から彼の後を追った。


 城は森に囲まれており、夜遅くに入るのはおすすめしないと言われた。昔は定期的に狩りが行われていて、人を襲う獣は排除されていたが30年も放置されていたため狼が棲みつくようになっていた。狼を狩るには人手がいるので駆除がなかなか進まないという。新しい住人は特に狼について気にする様子はないようだ。狼のおかげで村の住人が近づかないでくれるのでかえって都合がいいと考えているのかもしれない。

 余程令息は醜く歪んだ顔をしているのではないかと噂されていた。

 森の中に入ると鋭い視線の中に晒されているのを感じた。ヴィルヘルムはあたりに気を配りながら城の方へと足を進めた。この程度で足を止める気にはならない。

「ヴィル、気を付けて」

 もはや止める気はないが、クラウディオはヴィルヘルムに注意した。椿助けたさで周りの危険への配慮を怠るなと。

 鬱蒼と生い茂る森の中、それでも一応道としての形を成している道を通っていく。ここを進めていけば目的地にたどり着けるだろう。果たして城にはどの程度の異形が住んでいるのか。

 ヴィルヘルムは足を止めた。茂みの奥から感じる視線から、こちらへ向かってくると察したのだ。ヴィルヘルムの足が止まるのをみて茂みから黒い影が躍り出た。日の光にあてられて現れたのは狼であった。

 ヴィルヘルムは獣が近づくぎりぎりまで動かず、目と鼻の先まで来た時にようやく体を動かした。獲物を取り損ない狼は身を崩す。すぐに身を翻しヴィルヘルムの方へ向けた。

 先日であった大狼とは異なるが、少しは血の繋がりがあるかもしれない。涎を垂らし飢えた目でヴィルヘルムを睨んだ。


「そこをどけ」


 そう一喝すると狼はびくりと震えた。ヴィルヘルムの強い視線は狼より鋭く、その強さで瞬時にヴィルヘルムの力を理解したのだ。

 ヴィルヘルムの言葉通り狼はしげしげと道を明け渡す。通りがかりにヴィルヘルムは干し肉を狼に投げ渡した。

 その様子を眺めクラウディオは懐にしまい込んでいた薬を確認した。

 時間が経てばたつほどヴィルヘルムは人から離れていっているのを感じた。果たして椿の元へたどり着くまでに自我を保てているだろうか。もう椿の居場所がわかっているのであれば薬を使用してもよいのではないかと考える。

 しばらくして首を横に振った。今のヴィルヘルムの戦力は必要である。城の中にいるアルブシルヴィウスの吸血鬼と対峙するには並みの人間では危険すぎる。せめて他の戦力が整ってくれればいいのだが、早くても他の銀十字の人たちがここまで来るのに1日はかかるだろう。最寄りの銀十字の施設からでも半日はかかる。それまでは今のヴィルヘルムの力はこのままにしておいた方がいい。

 もし暴走して椿を傷つけることがあればどうするか。

 その時は薬を使用しよう。間に合わなければ、殺すことも考えよう。

 そうならないことを願うけど。


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