終.小さなお茶会
椿と接するようになりヴィルはようやく気付いた。
椿の精神面についてであった。
初めのうちに明かされたことであったが、彼女は自分よりも何十倍も長く生きている。しかし、仕草から老人っぽさを全く感じなかった。それどころか年相応の幼さがみえる。
そして、自分に対して卑屈な考えを持ちかなりの引っ込み思案な性格であった。
クラウディオが以前話していたが、成長が止まってから周囲から敬遠され人と接触することがなくなったという。父親も幼いうちに死んでしまい、椿は何百年もの間村から外れた庵で過ごすことになっていた。
最低限の必要品は村から与えられるが、それは椿を化け物としてみなしており欲しいものをあげる代わりに祟らないでくれという表れであった。
それを感じていた椿は人を怖がらせないようになるべくひっそりと生きていこうとした。
ある程度のことは一人で何とかしただろう。
しかし、人とほとんど接することがなく外見も変わることがなくなってしまい、精神面が成熟することはなかった。そのまま精神は十五のまま止まってしまっていたのだ。それが何百年も続いたため固定化してしまった。
それを考えると、椿は年齢に反してまだ幼い少女とみなした方がいいだろう。
ヴィルはなるべく椿に接するようにしようと思った。どれだけの時間がかかるかわからないが、彼女の精神面を少しでも女性に近付けてみようと。
◇ ◇ ◇
オーブンから取り出した菓子の出来栄えを確認して、椿はほっとした。一応形になっていた。
「うまくできたかな」
心配そうに呟く椿にヨーゼフはにこにことほほ笑んだ。一枚取り出してヨーゼフはそれを口にした。
「どうでしょうか?」
椿はどきどきしながらヨーゼフの反応を待った。
「美味しいですよ。これなら旦那様も喜んでくださるでしょう」
椿はそれを言われ嬉しそうに笑った。急いでお茶の準備をしなければとポットとティーカップを用意する。
「で、では………」
椿はそれを持ってキッチンを飛び出した。ヨーゼフはそれをほほえましく思い、慌てては落としてしまいますよと後ろから声をかけた。
ダイニングに入り椿は急いでお茶の準備を整えた。
「わー、美味しそうなクッキー」
クラウディオはくんくんと薫るバニラの匂いうっとりとした。
「早く食べようよ」
「ヴィル様が来るまで少々お待ちを」
それを聞きクラウディイオは少年のように唇を尖らせた。
「ヴィルなんて仕事の方が好きみたいだから放っておこう」
「別に仕事好きなわけではない」
そう言いながらヴィルがダイニングにやってきた。
そして自分の椅子に腰をかける。クラウディオは覗き込んで意地悪気に言った。
「お仕事はもう終わったのですかぁ?」
「終わるわけないだろう」
ヴィルはそう言いながら焼きあがった菓子に手を伸ばした。ひとつ口に含ませる。
「息抜きしなければ気が滅入るからな」
そう言い椿に笑いかけた。椿は嬉しそうにほほ笑んだ。




