舞台裏〜③
「………………」
「うおっ!? どうしたんですか先輩捕らえられてあがいた挙句、疲れ切って絶望したネズミみたいな顔をして」
「うっせえよ。ビーチクシール野郎。俺は今アンニュイなんだよ」
「ビーチクシールいいじゃないですか。何見たかったの? 見たかったから、そんな顔なの? 見せませんよ?」
「てめェのビーチクに興味なんざねえんだよぉおおおおおおおお!」
「うわぁ。なんかそれはそれでムカつく」
「それに、お前は眼鏡曇らせてわからなかったかもしらんが、……なんかあれ、湯気で透明になってたぞ?」
「……え?」
「シースルーってやつなのかね。よくわからんけど」
「ちょっと待って」
「お前無駄にピンク色なのな」
「きゃぁあああああああああああああああ!?」
「うっせえよバカ。静かにしろや」
「うぅ。もうお嫁にいけない」
「いや、お前はお嫁じゃなくて……あれ? なんなんだろ? とにかくお前のビーチクには興味ないから」
「ぐすん。じゃあ、一体どうしたっていうんですか? 虹がベニヤ板のハリボテだったことにでも不満なんですか? それともゴリラにホーディングされて、逆に何かの快感に目覚めたとか」
「違うわ! そうじゃなくてな。台詞とは言え、あんな幼女相手にクソクソクソクソと、ボキャブラリのカケラもないことを言わないといけなくて、その度に俺のHPが1ずつ減って行くんだよ。言うなればリアル毒沼状態なんだよ!」
「ああ、あれは酷いですね。先輩鬼畜」
「うっせえよ。あと、どうでもいいけど、その本番とのギャップどうにかしろよ」
「しょうがないじゃないですか。私のキャラ、色々あって結局現在進行形で迷走してるんですから」
「お疲れ様でーす」
「…………おうお疲れ」
「お疲れ。ナイスドロップキック西野ちゃん」
「ありがとうございます南さん。私達のオーディションって、歌の審査とドロップキックの審査があったんですよ」
「なんちゅーもん審査してんだよ、うちのスタッフは!」
「なので、これからもどんどん蹴っていくのでよろしくお願いします」
( (この子、天然ドSだ!?) )
「う、うん。頑張ってね?」
「お、おう。どんと来いや」
「はい! 頑張ります」
「本番五分前でーす(スタッフA)」
「なあ? 俺、とっととこの話潰してしまった方があの子の為になると思うんだ」
「奇遇ですね私もそう思っていたところです」
「ほえ? 二人でヒソヒソ話ですか?」
「あ……ああ、ちょっと、今晩どっかで飯くわね? みたいな」
「も、もちろん先輩の奢りで」
「おい待てこのフタナリやろ──」
「わあ! いいですね!」
( (うわぁ。かわいいな畜生) )
「ああ、その代わりファミレスとかだけどな。西野も来るか?」
「ご、ご一緒していいんですか? その……デートとかそんなんじゃ」
「俺は女以外とデートする趣味はない」
「私もこんな目つきが凄まじい人とはゴメンです」
「じ、じゃあ、お言葉に甘えてもいいですか? ……その、パフェとか頼んでも」
「ああ、好きなだけ頼め」
「じゃあ、私は鰻重」
「ハハ。死ねよ」
「あの、早く来てください! (スタッフA)」
「ああ、悪い! 今行く!」
「じゃあ、ラスト二幕頑張りましょう」
「おう」