舞台裏〜②
「……軽くトラウマだ」
「ああ、まさか本当にマウンテンゴリラにスーツ着せるとは思いませんでしたね。……つか、アフレコの人、声が渋いなぁ」
「いや、それもそうなんだが、幼女が口からなんかグロテスクなもんを……」
「ああ、最近の特殊メイクやべぇですね。あれはダメでしょ。なんか全年齢対象とかなってますけどR-15くらいのリアルさはありましたね」
「あんな役ロリータにやらせていいわけないだろうがよ。何考えてんだあのスタッフ共」
「お疲れ様でーす」
「お、おう。お疲れ」
「お疲れ様、西野ちゃん」
「いやあ。メイク取るの大変でした。色んなとこにこびりついちゃって」
「ああ、衣装なんか取り替えるしかないとからしいね」
「そうですよ。これからはリサイクルとかして、地球の資源とかを守っていかなきゃいけないのに」
「……先輩よりしっかりしてるじゃないですか」
「うるせぇ」
「ほえ? 北川さんの方が年上なんですか?」
「私が15で、この人は17。どっちも実は高校生なんですよ」
「ほえー」
「先輩、目つき悪いけど、身長も平均ちょっと下回るくらいで、声変わりもできてないし、喉仏もないからこんな役が回ってきたんですよね」
「おい。そろそろ黙らないと本気で潰すぞ?」
「け、喧嘩はダメですよ!」
「……あ、ああ。そうだな。俺が悪かったよ(やりずれぇえええええ)」
「じゃあ、仲直りの握手です」
「わ、わかったよ。ほら南さん握手だ」
「(うわぁ。手の血管ピクピクしてる)まあ、いいですよ」
「はい。これで仲直りですね」
「ああ、次から私も結構な長セリフなんですよね。……てか、最後の演出どうやるんだろ? CG?」
「なんか透明な水風船使うみたいですよ?」
「原始的だな!?」
「本番五分前でーす(スタッフA)」
「わっかりましたー! 今行きまーす」
「さて。では私もお色気シーンの準備始めますか」
「わ、私も口に胃袋を詰めて──」
「スタッフ、ちょっと来いやぁあああああああああああ!」