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投資家オンライン紀行(仮称)  作者: プロジェクト夜屋
ログインとすべてのはじまり
2/15

導入とログイン(2)

投稿しつつ各種機能チェック。箇条書きの機能が欲しい。

 翌日、学校に着くと真っ先に隣のクラスを訪ねる。入学して4カ月ほど、そろそろ夏休みの声も聞こえようというところになると、いい加減クラスにも馴染み、グループ分けもはっきりしてきたりと、クラスとしての秩序やパターンが出てくることになる。中学と違う高校の雰囲気や学食購買を利用する生活にも新鮮味を感じることが無くなり、自分のクラスはともかく、隣のクラスくらいであれば顔ぶれも概ね分かってきて、という頃合いである。


 教室に入ろうとしたところで、お下げに眼鏡という、いまどき珍しい特別天然記念物クラスの女子に声をかけられる。ちなみに、前髪ぱっつんではないので、まだ属性を足す余地は残っている。人間、成長余地があるのは大変に素晴らしいことで。


「高宮くん、大塚くん目当てだったらまだ来てないよ。いつもだったらそろそろ来る時間なんだけど。」


 彼女は、用があって度々クラスを訪れる度に、8割くらいの確率で顔を合わせ、こうして用のある人に繋いでくれていることから、なんとなく仲良くなってしまった。というか、人が来たら応対してくれるって受付かよ。ここはどこかの会社なのか。事務採用なのか。というか俺は営業か何かか。アポ無しで通していいのか。来る時間を把握してるって秘書か何かなのか。


 などと益体の無いことを考えていると、彼女の予言通り目的の人物が現れた。長身で短髪、厚い胸板と運動部、特に格闘系やら格闘系に近いところのあるラグビーあたりが入部を熱望していると聞くが、中身は何を隠すこともなく俺の投資家仲間である。チャットやソーシャルでちょこちょこと持ち株について議論をする知り合いネットワークの一人であるが、投資対象にサイラスが入っており且つゲーマーとなると大人世代を合わせてもさすがに数えるほどしかいない。その貴重な一人が彼となる。


「高宮か。わざわざ来るとなるとアルトゥールのことか?」


「ご名答」


 そしてこの通り勘もいい。話も早い。


「テストアカウントを分けて欲しい、というのだったら悪いが今回余裕が無い。先約があって譲渡することで話がついてる。」


 どっかと重そうなカバンを机に置いた大塚が話し始める。相変わらず、何かの装備でも入ってそうなカバンである。


「アカウントは足りてるので良いけれども、って誰に?先約?」


「高宮も知ってると思うが涼音さんだ。投資するかどうか考えたいので中を見たい、と。」


「む、ついに春が来たのかとからかってやろうかと思ったけれどもそれじゃ普通の話じゃないか。そんなビジネスマンみたいな話は足りている。つまらん。もっと俺に面白いネタを寄越せ。」


 視界の端の方で、話を聞くとはなしに聞いてた風なさっきの仮名受付嬢がそわそわし始めた気配がする。なるほど。春は違う方から来ているのかもしれないが、当の本人はまったくもって気づいてる気配も何もないので、これは持ちネタとしてキープしておこう。株でいえばホールドである。株価も上がらないうちに焦って売ってしまうなんてもったいない。


「お前のネタのために生きるつもりはさらさらないが、何か用があって来たんじゃないのか」


 そうそう。これでこのクラスに来て人間観察するための用が確かに増えたのでこれから楽しみで、、、とそうじゃない。本題である。


「いや、他でもなくて調査プレイをするのに、パーティメンバーがいた方がお互い便利な場面があるだろうから誘いに来たのだよ。となると、もしかして涼音さんも行けそうな感じか?」


「おそらく大丈夫だろうが聞いてみる。初心者だろうしガイドがいた方が良いと思うが、あまり一方的に振り回すことになってしまうのも申し訳ない。」


 視界の端でそわそわ感が高まる。これはタイミングからして涼音さんの名前が出たというよりもプレイという単語に反応したような気がしてならない。受付嬢、おそらく絶対、思ってることと違うからな。あとで大塚にフォローさせるとしよう。しかしその前に。大塚よ、なかなか面白いコンテンツを引っかけた様子なので存分に楽しんでくれたまえ。遠くないところから眺めて楽しませてもらおう。


「じゃあ、涼音さんのことはひとまず任せた。プレイ中のサポートはこちらでも出来るし返事貰えたら教えてくれ。あるいは、こちらに直接連絡が来るかもしれないが。」


「律儀な涼音さんのことだから一足飛びには話進めないと思うが、ま、分かった。何かあったら知らせる。」


本題は済んだのであとは自分のクラスに行って授業の準備をするだけであるが、去り際に軽く爆弾を放って帰ることにする。一番大事な質問は最後にする古代芸能コロンボメソッドある。


「それはそうと大塚よ。何やらそこの受付嬢が妙な勘違いをしているようなので適当にフォローをしておいてくれ。そして授業の準備に呼ばれているのであとは任せた。」


「えっ、あっ、私?う、受付嬢??」


大塚と俺との顔をきょろきょろと見比べるようにしながら何やら複雑な狼狽の仕方をする受付嬢。うむ、いい反応である。次来るまでに受付嬢じゃない何かよい呼び名を考えておくこととしよう。まったくもって状況の分かってない大塚の具合も悪くない。


投げ込んだ爆弾がいい感じに炸裂延焼しているのを背中に実感しながら、クラスに戻ることとした。それにしても、涼音さんか。テストのお仲間として悪くないかもしれない。


 涼音さんこと岩下涼音さんは投資仲間のひとりで、現在大学2年生、関西風に言うと大学の2回生になる。わざわざ関西風にしたのは彼女が一時期関西に住んでいたためであるが、そう長くいた訳ではないので、微妙にちゃらんぽらんな関西弁使いとなってしまい、生粋のネイティブ関西人に隙あらばいじられる立ち位置を順当に確立するに至っている。


なお、確か高校からか関東に住むようになり、以降標準語使いの道を歩むことになるがそれはまた別の話。いまでもとっさに何かあると半々くらいの率でちゃらんぽらん関西弁を口にしてしまうので、ここぞとばかりに突っ込みが飛んでくることとなる。曰く、関西人が二人以上いるところで、そのような隙を見せるなど鴨葱以外の何物でもないそうである。恐るべし、笑いの王国関西。本人の明るい性格もあり、ムードメーカー的ないじられキャラの立ち位置の不動さについてはもはや敬意を評するしかない。いじられキャラのポジションに割って入るつもりはさらさら無いが、割って入ろうにも壁は高そうで、何度か仮定の上でシュミレーションしてみたが結局勝ち筋は見つかっていない。


季節や各自の仕事状況で若干の入れ替わりがあるものの、社会人を含めた(というより株式投資となると社会人が普通なのでむしろ高校生大学生の方が珍種である)そこそこ頻繁にやり取りする投資家仲間数十人に、常設展示のごとく関西人が数人混じっているのが彼女の運のありようを示している。願わくば、トラブルにならない範囲内で、ゲームの中にもこの楽しい状況を引き継いで頂きたいものである。


 そんなこんなと過ごすうち、涼音さんのβテスト参戦も正式に決まり、株主様の御威光を感じて頂くテストアカウント譲渡の儀と称したお約束の寸劇も滞りなく幕を閉じることができた。妹ギルドへの調査依頼事項を何にするか頭を整理するうちに、刻々とβテスト開始の日は迫ってきていたのである。


 βテストは言うまでも無くテストであり、正式発売でもなんでもない。なんでもないのだが、各種の事前情報を取りまとめ、パーティやギルドの情報をまとめたサイトが立ち上がりするなどと、ユーザー側も今か今かと待ち切れぬ気持ちを溢れさせていた。騒いでる母集団がβテスター寄りになってしまうため、全体としては数は少ないものの人数を考えると密度と情報量は大したものだろう。中には攻略情報ならぬ攻略情報予想なるものも混じっており、さすがのファン層の深さ濃さである。というか、お前ら自重しろ。本発売になったらこれ以上どう盛り上がるつもりだ。行き過ぎて一般ユーザーが引いたらセールスに差し障るではないか。株価と配当の邪魔をするでない。


 とはいえ、公式発表以外でのメディアリークや雑誌情報といった事前情報を網羅的に見て回るのを面倒なのと、これはこれで一種の調査になるので、各地のまとめサイトを順当に見て回ることとする。


事前調査もさることながら、個人的な懸念なのは、ソロプレイのしやすさである。ざっと分かったことをまとめると、


・基本的なゲームの仕組みは先に触れた通り、オープンワールドのクエスト制。ただ、ランダムなクエストが積み上がってるというだけではなく、ある程度全体のストーリー感はあるらしい。このあたりの詳細はまだ不明。


・キャラクターはクラス(職業)選択性。メインとサブの二つを選べ、サブの方は定番のセットを中心としつつ、ランダム確率で珍しいものが出てきたりもする基本はお楽しみ要素の扱いになっている。転職制度はあるとのことであるが詳細は不明。普通のプレイというか攻略にはメイン職業の方を使う。が、このルールを必ずしも守らない気がするのがサイラスのユーザーの怖いところである。というか、そういう余地をちゃんと作っているサイラス側の作り込みがおかしいとも言えるか。


・いわゆるモンスターと戦いゲームを進めていく攻略プレイ以外に、生産サポートを軸とした楽しみ方も出来るようで、生産システムを充実させているのに加え、プレイヤーが独自でクエストを発行できるプライベートクエストの仕組みが備えられている。例えば、生産職が自分の生産活動に必要な素材採取をクエストの形で依頼するといった風な使われ方を想定しているそうな。思わぬ発展を生みそうなので注視したい要素である。生産については、基本はスキル制の範疇に入るが、サブクラスにより成長支援を行うことが可能。つまり、攻略のメインクラス、生産のサブクラスとの選び方がスタンダードなキャラメイクとなる。


・キャラクター成長はレベル+ステータス割り振りの中間的な作りになっており、選んだメインクラスの成長モデルを軸としつつ、ある程度自分でも色づけして独自性を出しやすい方式になっている。これは変な成長パターンに嵌ってあとでどうしようもなくなるリスクを緩和するのと、自分でキャラメイクする楽しさとのバランスを狙ってであろう。おそらくは、どれくらいキワモノのキャラクターが作れるものか、勝ったところで何の益も無い戦いを開発元に挑むチャレンジャー達がまた現れるに違いない。


・キャラクターにはスキルと総称される特技群がクラスごとに設定されている。スキルはスクロール(古典的な巻物である)に登録設定することで利用出来る。スキル及びスクロールは専用のショップでの購入が可能。上級やレアものになると、クエスト報酬など特殊な入手条件が必要になると想定される(というか、それっぽいほのめかし文章が事前情報として公式に出されている)。


・クエストは一部のパーティ向け専用のを除くと、個人でも出来るようになっている。個人で挑む分、若干難易度が上がってしまうこともある様子だが、開発元コメント曰く、極端にハードルが上がるような調整はしていないとのこと。最後はやってみないと分からないとはいえ、最大の懸念材料はクリアされたことになる。めぐまれないぼっちにも愛の手を。


・クエスト中心のゲームになっているが、クエストに縛られることなく好きに遊ぶことも可能になっている。ただし、要所要所のクエストは解かないとゲームが進行しないので、全無視はできないとのこと。


・特定タイミングで発生する全体共通イベントは、システム上は出来るようになっているが、β期間中は現在想定していないとのこと。ユーザーの様子を見つつ、現状予定している2か月から3カ月のテスト期間中に、一個二個試しでやってみるかもしれないが現状は決まった話ではないと公式発表あり。さて、これを文字通りの公式発表と捉えるか、ユーザーを油断させるための伏線と考えるか。


 といった感じとなる。あとは、職種ごとの特性やフィールドの概要紹介や武器モンスターの紹介、生産アイテムの触りがまとめて紹介されていたりと分かっている範囲での基礎情報データベースの整備が始まっていた。早く大きなWikiになぁれ。

131224:全体構成の見直しにより改稿

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