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護衛兼居候生活初日

第二話



「…『龍』?」


「そうだ、『龍』だ。」


信じられない、と言った風に駿が言うと案内した兵士が答えた。


「しかし、彼女は…。」


「彼女?こいつは龍と人間の混血だぞ?ただの化け物(・・・)だよ。」


「!」


駿は激しい憤りを覚えたが、相手は上官なので駿は何も言えなかった。


すると、


「はん、化け物とはよく言うじゃねぇか。」


目の前の龍との混血である少女が喋った。


声は凛としていて、とても聞いてとても気持ちの良い声だった。


「おめぇも…」


「ふん。」


彼女が何か言いかけると兵士が自身のベルトのポーチに入れていたリモコンを取り出すと、そこにあったボタンを押した。


すると、彼女の首に巻かれている黒い首輪から重低音が聞こえた。


「?」


普通の人が聞けばかすかな物音程の音にしかならなかったであろうが、龍と呼ばれた彼女は自身の耳を両手で塞ぎ、その場にうずくまった。


「や、やめ…」


「何を…」


「ふん。」


駿が問おうとした時には兵士はボタンを押し、音は聞こえなくなっていた。


「今日からお前はこの男と二週間、共に暮らせ。」


そう言いながら兵士は、駿に国王の印のついた指令書を渡された。


「この指令書は受諾してからすぐに燃やすように言われている、お前がやる予定だった護衛任務とはこいつの護衛のことだ。」


「…。」


指令書にはごく簡単な説明と暫くはそのために休むことと彼女と常に行動するよう指示されており、最後にエルツァの直筆で『彼女を頼む。』と書いてあった。


「了解しました。」


「それからこいつも渡しておく。」


そう言って兵士が渡したのは、先ほどのリモコンだった。


「そいつを壊そうとか思うなよ?そいつはこいつの首輪を外す鍵の役目もあるんだからな、二度とこいつが自由にならなくなるのを望んでいるなら話は別だがな。」


「…。」


「…おい、出ろ。」


「チッ。」


兵士に言われるがまま、彼女は牢屋から出てきた。


「ここをまっすぐ行ったところにある第二扉から外に出ろ。そっちの方が出口に近いしな。」


「わかりました、行きましょう。」


「…。」


駿は彼女を促したが、彼女は無言のままだった。


地上に出ると、駿は自分の着ていた外套を彼女に羽織らせた。


「!」


「どうしたんですか?そんなに驚いて…。」


「お、驚いてなんかいない!」


「?まぁともあれ、これから一緒に二週間よろしくお願いします。私の名前は玉名 駿、気軽に駿と呼んでください。貴女の名前は?」


「あ、あたしの名前は紅波くれは朝河あさかわ 紅波くれは…。」


「よろしく。」


駿は握手を求める為に右手を差し出したが、紅波は不快な顔をしてスルーした。


駿は残念そうな顔をしたが、ここに立ち止まっていても無意味だと思い歩き出した。


「ついてきてください。」


駿と紅波が彼の家についたころには、もう夕方になっていた。


駿の家は城から離れたところに建っている安めの小さなアパートで、ロワ・ミュールに支給される城の近くに建っている上流階級の人しか住めない高級マンションには部屋を持っていない。


ロワ・ミュールになってから与えられるものはバスや電車等の公共施設の無償利用権限|(タクシーも含まれる)、専用の軍用機、王のロワ・チュルと呼ばれる豪華な装飾を施した短剣、特殊な拳銃サイズのレーザーガン、軍用施設の利用等がある。


この世界はかなり高度な科学技術を持っており、再生医療は勿論のこと個人が携帯できるほどサイズのレーザー兵器、地面を滑るように走る無音で排気ガスを出さない自動車ホバー・カー、ホログラム技術など現代では実現できてないものが多数ある。


駿の家の中はかなり整頓されていた。


「どう…」


家主である駿に断りもなく土足で部屋の中にヅカヅカ入っていく紅波を見て、駿は苦笑いをした。


「紅波さん。」


「あ?」


「せめて履物だけでも脱いでもらえませんか?」


「ああ…。」


靴を脱ぎながら答える紅波の言葉に違和感を覚えた駿は彼女にそのことを聞こうとした。


「…あの…」


「しっかし久しぶりの外か?10年くらいあそこに居たっけな…飯は不味いわ臭いわでひどい有様だったな…。」


独り言を言う紅波の言葉を駿は聞き漏らさなかった。


「10年も!?」


「あ?ああ、そういやここひとんち(他人の家)だったな…そうだ10年だ、10年間ずっとあんな暗い所で監禁さ。」


「…。」


「驚いたか?あんたが忠誠を誓った国は結構(ひど)い事してるんだぜ。」


「…そうですね、ごめんなさい。」


「…、~~~!だぁもう調子狂うな!あたしはあんたに怒っているじゃねえんだよ、ただバカらしくならないのかって聞きてぇの!」


「いや、全然。」


「…全く?」


「はい。」


「これっぽっちも?」


「バカらしくありません。」


「…そうかよ。」


かなり呆れたような声を出したが、駿はそれに気付かなかった。


「たしかにこの国ではまだそのようなことが日常的に行われているけれども、私はこの国が好きです。」


「…けっ、馬鹿につける薬はねえや。」


「…さて、ご飯にしましょう。そこにある洗面所で手とうがいをしてください。」


「…はいよ。」


彼女は少し毒気が抜かれたようだった。


夕食後、駿はこれからの予定を聞いた。


「紅波さん、明日からどうします?」


「あ?明日?そんなもん明日になってから考えようぜ…もうぬぇむくて…ふほゎ~ふ~…。」


紅波はその場で横になり眠った。


「あ~あ~あ~、ちゃんと…布団用意してなかったな…はぁ…けっこう大変な任務を引き受けてしまったな…。」




次回 第三話 首都オルディウス

間をあけてしまって申し訳ありません。

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