第5話 ボクサーとレインコート②
亮二は部活があると行ってそそくさと立ち去り
残された俺達は、事務所に戻り朱野さんからレインコートについての情報を教えてくれた
「その亮二という男の話…信用してもいいかもしれんな」
「本当ですか!?」
俺は思わず驚いてしまった
あんな風貌をしたやつの発言などぎりぎりまで信じれなかったが
朱野さんの話を聞いて、それは確信にへと変わった
「その青色のレインコートの目撃は多数ある…」
朱野さんがここ数年で起きた近辺の事件を洗い出したところ
2年前に1度、光影高校の近くの電柱で
今日と同じような天候の日、1人の男性がそのレインコートを着た人物に刃物で刺殺されたのだ
どうやらレインコートを着た人物は男のようだ
長い前髪が顔にかかっており、実際男の顔をちゃんと目撃したものはいない
分かることは青色のレインコートを着ていることだけだ
「そのレインコートの男に刺殺されて亡くなった男なんだが…」
「どうかしたんですか?」
少し苦い表情をした朱野さんを不思議そうに見つめる宗司と美影
「刺殺された男の名前は…不綱英二だ…」
!?
宗司と美影は互いに顔を見合わせて
すぐさま頭の中に亮二の顔を思い浮かべた
「不綱英二って…もしかして亮二のお父さん…?」
「どうやらそのようだな…当時の不綱英二には14歳の息子がいたそうだ
しかも、不綱英二はプロボクサーとして一時期活躍していた選手でもあるな…」
プロボクサー…これで合点がいったかもしれない
亮二がボクシングをしているのもそのためなのか…
だからこそ、あれだけ声を張り上げて皆に協力をしてもらいたかったのだろう
今思うと宗司は自分の胸が締め付けられた
「だったら…尚更そのレインコートの犯人をみつけねーと…!」
「待って宗司!まだ何も敵のことが分かってないんだから」
「うっせーよ!!こうしてる間に、また被害者が出るかもしれねぇだろ!
俺はもうそんなのごめんだぜ…!!」
宗司は美影の制止を振り切り大雨の中、事務所を飛び出た
「ちょ…宗司…!」
美影もすぐに後を追おうとしたが
「放っておけ、気持ちが混乱して整理がつかないんだろう…」
「でも!もしガイアンとか中級レベルの敵だったら…今の宗司じゃ…」
「まぁ、もう少し様子を見よう」
宗司が荒く開けたドアをゆっくりと閉め暗雲の空を見つめる美影
今の美影には不吉な予感がしてならなかった…
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バシャッ!
地面に溜まった雨水も気にせず踏みしめ
俺は、ただひたすらレインコートの男を捜し始めた
何の情報も無いのに、ただひたすら走り続けた
「ハーッ…ハッ…」
とうとうスタミナが切れた宗司は
両膝に手を置き、肩で息をし始めた
(くそっ…一瞬でも亮二のことを信じてやれなかった自分が憎い…
ぜってー見つけてやる…)
宗司は歩きながらも近くの堤防の土手まで歩いていた
大雨により川の水位は高くなっていた
「青色のレインコートなんてすぐ見つかりそうなんだが…」
堤防の土手から川の方に視線を走らせていると
草むらをかき分けて進んでいる、青色のレインコートの男がいた
「あいつか!」
すぐさまは宗司は急斜面の草むらを駆け出し
そのレインコートの男へと近づいた
男は宗司の足音に気づき、こちらの方に身体を向けた
「テメェが2年前に…亮二の父さんを…」
しかし、レインコートの男は宗司の発言を無視し
そのまま川の中にへと歩き始めた
水位は高かったが丁度の腰の高さまで川の水が溜まっていた
宗司はお構いなく、川にへと身体を突っ込んだ
川の流れに流されないようにするのが精一杯であったが
何とか下半身に力を入れ、踏みとどまった
「何とか言えよコラァ…!!」
宗司はポケットに入れていた神滅刀を取り出し
長刀にへと変形させ、レインコートの男に斬りかかった
グサッ
大きく振りかぶり、男のレインコートのフードの部分を斬った
「…っ!」
男の顔は真っ黒で顔全体が土砂のように崩れていた
左目は無く、口は大きく腫れていた
前髪が顔全体を隠していたため、詳しくは分からない
「貴様…シンジュシャ…か」
「そうだ…お前はサーバスか…?」
「俺は……ガイアンだ……名はヒドラ…貴様を殺す名だ」
「ヒドラ…ってことは神授力を扱えるってことか…?」
「もちろん…元は神授者だった俺をあの方が人体改造を施してくれたのだ…」
あの方…?破壊神のことなのか…?
だがヒドラは、俺に考える間を与えることなく
右手に30cm以上はある刃物を取り出した
「これが俺の神授武器だ…この刃物で貴様も殺してやる…!」
「おせぇよ…」
流れる川の中、宗司はいつの間にかヒドラの背後を取っていた
ヒドラが振り向いた頃には、胴体を縦に斬り付けていた
「ぐっ…!!」
崩れ落ちた顔で苦い表情をするヒドラ
「まだこんなもんじゃ終わらせねーぞ…」
すぐさま、次の攻撃に移ろうとした時
ヒドラの斬ったはずの胴体の傷が綺麗に塞がり始めていた
無闇に突っ込んだ宗司は慌てて刀をかざしガードの体制を取るが
ヒドラの刃物は、既に宗司の右肩を斬り裂いていた
「ぐっぁ…!!」
思わず右肩を押さえ、体制を崩しかけた宗司
「おいおい…なんで傷が塞がってんだよ…」
「ガイアン達には特殊な細胞が埋められているため、貴様程度の攻撃なら
すぐさま傷は回復する」
「嘘だろ…めんどくせーなオイ…」
右肩の傷口を押さえながら、宗司の心に、急に恐怖心が芽生えた…
今更逃げる訳にもいかない、亮二のためにも
そして何より…この戦いに参加すると誓ったのだから