第4話 ボクサーとレインコート①
神授本部から日本へ帰ってきた俺達は休むまもなく
重たい身体に鞭を打ち学校にへと向かった
気候は、季節外れの雨続きであった
遅刻間近だったために傘を差しながらダッシュで学校にへと向かう
美影は原付で行くため遅刻の心配はなかった
ずるい…
「うぇぇ…ズボンびしょびしょだな…」
走ったためズボンの裾部分がびしょ濡れになっていた
何とか間に合い教室にへと入ると
「マジだって!!!俺見たんだよ!!!」
教卓の上で金髪で短髪のクラスメイトが声を張り上げていた
確か…不綱亮二
唇にはピアスを開けており腰元にはチェーンをつけている
どこからどう見ても不良の容姿であった
しかも、ボクシング部という喧嘩では負け無しとの噂までたっていた
ボクシングの実力も全国で名が知られているほどである
そんな男が朝から声を張り上げていた
「さっき学校の近くでよ青色のレインコートきた奴が血のついた刃物チラつかせてたんだよ!
レインコートのせいで顔はよく見えなかったけど…」
「ありえねぇーって亮二!」
「うるせぇ俺は見たんだよ!」
不綱の発言が否定され頭にきた不綱は否定した男子生徒の胸倉を掴んだ
朝から喧嘩沙汰となり、何とか担任の先生が制止してくれた
険悪な雰囲気のまま朝のHRを迎えた
俺は1時間目の授業中ノートを取りつつ、常に前の席の不綱の背中を見つめていた
(もしかしたら…サーバスかもしれねぇな…)
一応不綱の話は半分だけ信じておき
あとで美影に相談しに行こうと決めた
どうも不綱の発言は無視しておくことができなかった…
俺は1時間目が終わると、美影を呼び出し
屋上でそのことを話した
美影はうーんと首を傾け
「まぁ調べてみる価値はあるかもね…一応朱野さんには連絡しておくよ」
「おう、今回もサーバスとかだろ?」
「それは分からないね、ガイアンの可能性もあるし下手すれば幹部だって」
いやなことを突きつけられてしまった…
「とりあえず、放課後また呼びに行くわ」
俺達は次の授業が始まるため教室へ戻ろうとしたその時
屋上のドアの前に不綱亮二が立っていた
「ふ、不綱…?」
俺は思わず眼を丸くして不綱をみた
「信じてくれて俺は嬉しいぜ…」
不綱は嬉し涙を流しながら俺達2人を見つめた
「宗司、この人が目撃者…?」
「ああ…そうなんだ」
「ぜひ、俺の話を一から聞いてくれ…!」
授業の始まりのチャイムが鳴ったが不綱は教室へ戻そうとはしなかった
自分の証言を最後まで聞いてくれるまでは…
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不綱の証言はこうだ…
今朝、雨の中ロードワークをしていたところ
学校の近くの電柱に青色のレインコートを着た人物がもたれかかっていたのだ
不審に思った不綱、わざとその人物の横を通り覗き込むと
血が付着した包丁を自分の舌で丁寧に舐めていたのだ
すぐに不綱はその場から逃げ去り、学校にへと行き着いたのだ
当然このことを誰に話しても信用してもらえず
信じてくれる同胞を探していたところだ
「というわけだ…どうか信じてくれ…」
その不良の風貌で不綱は何度も自分の頭を地面に打ち付けた
「わ、分かったから!俺はお前の話信じるよ…」
「私もちょっと調べてみる価値はあると思うんだ~」
こう言わないと不綱の頭からいずれ血が流れることに…
「すまねぇ…!恩に着るぜ!」
再び頭をコンクリートの地面へ打ち付ける不綱
意味がない…
「俺は神野宗司で」
「私は神崎美影!」
2人は一通り自己紹介を済ませた
「宗司に美影か!俺は不綱亮二だ…亮二でかまわねーぜ!」
俺は思わず自分達のしていることを話してしまいそうだった
しかし、美影はお構い無しに
「あのねー実は神授者って言ってね…」
(オィィィィィィ!!ホントお構い無しだなっ!!)
美影は亮二に隠すことなく神授者のことや破壊神のことを話した
後に、この事件が極めて大きな事件になるとは
まだ俺達は予想だにしていなかった…