第3話 ご挨拶
「さて、それじゃ行こっか!宗司!」
俺が神授者として活動してからおよそ10日が経ち
今日も、美影に俺は連れられるのであった
「今日は、どこに行くんだよ?」
「ロンドン♪」
「はああああああああああああ!!!?」
こうして俺は今日も学校を休み2泊3日でイギリスのロンドンへと向かうのであった
飛行機の何ともいえない乗り心地感に揺られ
イギリスへと到着した
途中飛行機の揺れに耐えられず吐きかけたことは誰にもいえない
「おぇぇ…」
空港の外で吐き気を我慢しながらうずくまる宗司
それを心配そうに見つめながら美影が
「大丈夫…?もしかして飛行機初めてだったとか?」
「お…おう、あんな鉄の塊に乗りたくなんかなくてよ…」
「鉄の塊って…ただの飛行機だよ!」
そうは言っても、墜落の可能性もあるし…とマイナス思考なことを考えてしまう
「つーか…これから、どこに行くつもりなんだよ?」
美影は不思議そうな顔で俺を見つめ
「あれ?本部に挨拶にしにいくんだよ?」
「え…?」
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政府の命ににより神授本部を設立した
対闇破會のための機密軍事機関でもある
その本部の室長…虎川笠年齢不明に
どうやら報告がてらに挨拶をしにいくことに
本部の場所はというと…
「なんで、船に乗ってるんだ…俺をまた吐かせたいのか…?」
美影に連れられて着いた場所は海辺で
小型の船が、既に用意されていた
美影は俺の体調を気づかないながらも、この船に乗せた
より吐き気が増してきた…
「ごめんね?実は本部は…」
船の小さな窓から外を指差す美影
指先の先には、何と海の上に巨大なビルが建てられていた
「ななななな!!?」
「神授本部は海の上に浮かぶ…別名アクアパークス!」
「あくあぱーくす…」
ビルの下に特殊な膜を張り、沈むことなく浮かんでいる
嵐や津波に巻き込まれても一切揺らぐことのない強度を誇っている
ビルの周りには土が敷かれており、人が歩ける場所は確保されていた
このビルへ近づき、船をとめ唯一の足踏み場に降り立ち
いよいよビルの中へと入っていくのであった
中に入ると…至って普通の会社と変わらない内装だ
俺と、美影は52階の室長の部屋にへとエレベーターで向かった
チンッ
52階ではあったが技術が発達している所為か
一瞬で1階から52階へと到達したのだ
エレベーターのドアがゆっくりと開くと同時に
ドアの前で白髪の若い華奢な男が立っていた
ゆるくパーマのかかった髪形だ
口にはタバコを咥えており、スーツのネクタイは緩んでいて
どこかだらしのない感じであった
「あ…」
美影がすぐに口を開くと
がしっ!
「へ?」
何とその白髪の男は美影に抱きついたのだ
「よーーー!!美影~~!!お前は会う度に可愛くなってんなぁああ!」
「ちょ…テメェ!!美影から…!」
俺は必死にその男から美影を引き離そうとしたが
男はひるむことなく、自分の顎を美影の顔に擦り付けていた
今にも泣き出しそうな美影は
「もう…!!黒鎖!!」
黒鎖…美影の神授力の名称であった
その鎖を発動し、男の全身を鎖で縛り付けた
「ふぅ…久しぶりだね弐堂くん」
「弐堂…?」
どうやら、この男の名前は弐堂と呼ぶらしい
「ああ、宗司。この人は弐堂百記
私達の5つ上の先輩だね」
(こ…こんなヤローが先輩なのかよ…)
男は鎖で縛られながらも、芋虫のように全身をくねくねさせた
「み…美影ぇぇ!前より締め付け強くなってねぇか!?」
「このぐらい強くし締め付けないと弐堂くん抜け出しちゃうから!
相変わらず、変質ぶりは変わってないね?」
「ハッハッハッ!また痴漢の疑いで捕まりそうだった!
ジジイがいなかったら今頃犯罪者だったぜ」
「…ホント変わんないね…」
2人が会話を進めていく中、俺は1人取り残された様子であった
黒鎖を解除し、弐堂は起き上がるや否や宗司の顔をまじまじと覗き込んだ
「ほう~~~?お前が噂の宗司くんか??」
わざと俺に向かってタバコの煙を口から吹き出した
煙を吸った俺は思わずむせこんだ
「ごほっ…げほっ…!」
「お前が美影のパンツ盗ったの俺知ってんだぞ~~?」
「…は…?」
ジャリッ!!
すぐさま美影の黒鎖で再び捕縛された弐堂
何なんだこの男は…
「宗司はそんなことしないって!それしたの弐堂くんでしょ!?」
「ぐへぇ…パンツ盗もうとしたのは未遂に終わっちまったよ…」
「やっぱりお前か!!」
鎖で縛られた弐堂の腹部を革靴で何度も踏みつける美影
この男が美影にどのようなことをしてきたのか安易に想像出来た
「この人はね、元神授探偵事務所の所長だったの…で、私が助手で
今は本部の室長が療養中だから弟子の弐堂くんが副室長として採用されたから
神授者探偵を一時離れてるんだ」
神授者探偵の元所長というのを聞き
改めて、この男に対するイメージがガラリと変わった
「つーわけだ、これからよろしく頼むぜ宗司」
パチッと右目でウィンクをされ
軽く作り笑顔で会釈するしかなかった
「ところで室長に会いにきたんだけど…」
「おー、ここから真っ直ぐ行って右を曲がってすぐの部屋に室長いるからよ」
弐堂は捕縛されながらも咥えていたタバコで室長の部屋を指してくれた
「ありがとう!行こう宗司!」
俺と美影は急いで室長の部屋へと駆け出した
「えっ!ちょ、美影!!これ解除しないのおおおおお!!!?」
弐堂は黒鎖で捕縛されたまま、その場で放置をされた…
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コン…コン…
2回ほど軽く美影が室長の部屋のドアをノックした
返事はなく、数秒してから
「失礼します、室長」
美影が室長の返事を返す前にドアを開け部屋に踏み入った
後に俺は続きドアを閉めた
部屋はそこまで広くもなく両端には大きな本棚が並んでいた
そして前方には机と大きなイスに座った室長がいた
「オォ…よう来た!」
色黒の肌にピンクのサングラスをかけたしわ1つ無い老人だ
服はアロハシャツを着ており、室長の風貌が一切なかった
頭に視線を走らせると髪の毛は1本も残ってはいない
「ご報告と、お電話でお話しました神野宗司を連れて参りました」
「うむ、ご苦労」
いつもの陽気な美影とは違い、今日は何だか大人びていた
「ワシはこの本部の室長をしておる虎川笠じゃ…君が噂の神野宗司か…」
「は、はい!噂のって…?」
そういうと、室長はにっこりと口元を緩め
「その君の刀…ようやく扱える神授者が現れてワシは大変嬉しく思う」
俺の刀…美影のカバンの中に入っていた小刀のことだ…
あれ以来俺が力をこめると同時に小刀から長刀へと変形するようになっていた
「美影よ…この子が扱えるというのは確かか?」
「はい、宗司!それ使ってみて!」
ポケットの中に入れていた小刀を右手で取り出し
力をこめた
すると小刀は変形し僅かに光を纏っている
以前と変わらぬ
「お…ぉ…まさか本当にこれを扱えるとは…」
「この刀ってそんなにすごいんですか…?」
「なんだ…美影は何も説明をしておらんのか…?」
視線は俺から美影へと変わった
美影は俯きながら
「室長から話された方が信用性があると思いまして…」
「なるほどのう…」
室長は鼻の下の生えている白い髭を手でゆっくり撫でながら
「その刀は、アビトと呼ばれる人物の神授武器なのだ」
「アビト…?」
神授力は主に2つに分かれており
俺や美影の武器は神授武器といい
対闇破會達を消滅させることのできる武器なのだ
そして水や火や物質を操ることのできる力のことを自然力という
大概は神授武器の方が多いが
極稀に自然力を開花させるものもいるというのだ
「そのアビトは存在したかさえ疑わしい人物なのだ」
およそ1000年前に現代と同じく
世界は終焉にへと陥っていた
破壊神と呼ばれる人物により
「破壊神!?1000年も前から!?」
「まぁ落ち着け…」
俺は慌ててその場で取り乱した
室長はそんな俺をなだめていた
実は破壊神というのはおよそ1000年前から存在しており
この世界を創造した神、ゼウスと敵対していた神だ
ゼウスは我々1人1人に神授力を与えたのであった神授者達の生みの親だ
1000年前に破壊神はゼウスと死闘を繰り広げ
闇の強大な力を使いゼウスを殺害し、この世界にへと降り立ち
ゼウスの創造仕上げた世界を滅ぼそうとした
大洪水、雷、嵐、隕石
この世界の災害力を操り世界を破滅にへと落としいれ様としていた
そんな中、今の我々と同じく神授者達がいたのだ
だが神授者達が束になろうと破壊神の手によって多くの神授者が命を落とした
絶対絶命の中、1人の男が破壊神に立ち向かった
その男こそがアビトだ
アビトはゼウスが死ぬ間際にこの地上に授けた
神授武器「神滅刀」を手にし
今まさに宗司が手にしている刀こそ神滅刀なのだ
アビトはその刀を使い、苦戦をしながらも
破壊神を消滅させたのだ
消滅後、世界には平和が訪れ
滅亡することはなくなった…最後に神滅刀をゼウスのいた世界にへと戻し
アビトは静かに息を引き取った
「俺のこの神授武器が…」
「にわか信じ難い話かもしれんが…その刀が何よりもの証拠だ」
「この神滅刀は室長が…?」
虎川がまだこの本部の室長に就任して間もないときに
この神授本部の海底の奥深くで見つけたのだ
「自然力が眠っている場合は武器は不要だが…神授武器が眠っている場合
その人物に持たせなければ開花しないのだ…」
「だから、私達は時々神授武器を探したりもしたりしてるんだ」
「そうだったのか…」
正直、今の俺の脳には色々なことが渦巻いていた
アビトのことや破壊神のこと…
そして、俺の神授武器「神滅刀」をまさか俺が適合者だったとは
「ワシは運命だと信じておる…君こそがこの戦いを終わらせる救世主となることを」
「俺が…救世主…」
「唐突なことで申し訳ないと思うが、君の力が必要なのだ」
室長と呼ばれる人物に深々と頭を下げられた俺はどうしていいか分からなかった
とりあえず、俺は戦う意思はあることを伝えた
「そうか…この戦いに参加してくれるか…」
「ああ…けどその破壊神ってのは今どこに?」
俺が1番気になっていたのはその破壊神のことだ
「美影にはまだ話しておらんかったな…」
「何か新しい情報でも?」
すると、室長は険しい表情になり
「闇破會の幹部達が、破壊神の復活の核となる闇の心臓を探しておる…」
破壊神を1から作り直すのことが闇破會達の目的であると
つい最近分かったのだ
その破壊神をもう1度この世界に復活させるには核となる破壊神の心臓が必要なのであった
その名称が「闇の心臓」
この心臓を手に取り、破壊すれば破壊神は再びこの世界に降臨するのだ
復活すればまた世界の終焉が始まることになるだろう
神授本部は、今それを食い止めるべく各地の支部に指令を出していた
「そんな…じゃあ急いで俺達が先に見つけださねぇと…!」
「慌てるな…」
室長が険しい表情を緩め
「闇の心臓はそう簡単には見つからん…それは敵も同じだ
だからこそ今ワシ等は神授者を増やし戦力を整えているのだ」
室長の言う通り今の戦力では幹部すら倒すこともできない
「宗司、室長もサポートしてくれるから今は慌てないでおこう…」
「わーったよ…」
俺は落ち着きを取り戻し、再び視線を室長へ走らせた
「さて、話はここまでだ…遠いとこからご苦労だった」
「ジイさん!」
俺は思わず室長を失礼な呼び方で呼んだ
だが、室長は怒ることなく
「俺達が、必ず食い止めてみせる…!」
そういうと室長はサングラスを外し
「健闘を祈る…」
低いトーンで呟いた
その時の室長の読み取れない表情が今でも鮮明に脳に残っていた
こうして室長への挨拶と報告を終えた俺達は日本へ帰ることに
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俺達が部屋を出たあと、室長室には弐堂と室長がいた
「へっ…ジジイもえらく強がってたじゃねーか」
「黙っておれ弐堂…」
室長のシャツから僅かに腹部の傷跡が夥しく見えていた
弐堂はタバコをふかしながら室長に確かめるように質問をした
「何をそんなにあいつ等に期待してんだよ…?」
室長は俯き、静かに目を瞑りポツリと呟いた
「年寄りはな…若い世代に懸けてみたくなるものだ…」
ここから室長の最後の戦いが始まった…