第23話 凶悪種
トボトボとガックリと肩を落としたアダムを先頭に
安久津が後ろからアイスキャンディーを口に咥えながら歩いていた
気温は30℃を軽く超えるほどの暑さだ
ウォールを離れ、空港まで向かっている途中だ
水陰は一足先に自家用ヘリを使い次の任務のため足早と去った
「まぁ、気にすんなや!神授会にはあんな奴等おらんし!」
「はい・・わかってたことですし。」
慰めるつもりで言ったのだがアダムは落ち込んだまま
実は、ウォール街を出る際に一斉に街人達がアダムと安久津へ向けて
大ブーイングを言い放ったのだ
「帰れ化け物」「宗教集団」等と数え切れない誹謗中傷だ
神授会が未だに表で大きく取り上げられてないため国のためにやってるとは言っても
信用はしてもらえず、ただ神を祭っている宗教集団にしか見えないのだ
安久津は神授会の批判は慣れており、聞く耳を持たなかったが
アダムは元々メンタルが弱くその中傷を真に受けてしまい落ち込んでいたのだ
空港へ向かう途中、アダムのためにアイスを買ってあげ慰めた
さすがの暑さにアダムも大量の汗をかいていた
初めて食べるアイスに感銘を受け喜んで食べていた
「美味しいですね!ボキボキ君のアイス!」
と、感動の言葉を言い放ちながら両手に持っていた大量のアイスを貪った
それを横目で見ていた安久津がしれっとした表情で言い放った
「…ボキボキくんって食べすぎたらな…」
「へ?」
大量のボキボキくんのアイスを口に頬張ったまま
「体内の骨が何本かボキボキ折れるんやでー」
ボキボキッ!!!
「ごはぁぁああっ!!!」
口から吐血をしながら腹部を押さえその場で倒れこんだアダム
その様子を大笑いしながら安久津が見ていた
「はっはっは!!アホやなぁ~~だから言うたやんけ!単純でおもろいわぁ!!」
ひ、ひどいアイスだ…
笑ってるし…
でも
痛いけど人生で初めて笑い合えた
腹部の痛みと共に目からは嬉し涙を流していた……
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ズキンッ…
日が経つ度に
俺の感覚が徐々に無くなっていくのが分かる…
日本に着いた宗司だが
空港前のタクシー乗り場のベンチで座り込んだままであった
美影が迎えに来るのに30分ほど時間がある
あのウォールでの出来事を少しだけ覚えていた
俺には無い力が溢れていた
なぜだが分からないが、とても気持ちが楽であった
その所為か、感覚の痺れがひどくなってきている
今回の任務でも結局俺は何も出来ず仕舞いであった
俺は本当に神授会にとって必要なのか…?
答えが出ぬままひたすら俺は漠然とした中を彷徨っていた
同時刻に…
「もちろん、其方が我々に人間を提供してくれるならの話だ」
繁華街の狭い裏路地に2人の人影がなにやら話を交えていた
1人の男は小柄のスーツを着た男だ、日本の政府の使いの者である
そしてもう1人…身長は2m程で頭は我々人間より少し長く
皮膚は銀白色をし、平らなの鼻、切れ長の目を持つ
何とも奇妙な容姿をしていた
その大きな身体はベージュのマントで羽織っている
政府の人間は、あっさりとその人物の要求を呑んだ
「それでいい、人間はただの我々凶悪種の食料に過ぎん…」
凶悪種…この凶悪種と呼ばれる種は、ヒト型爬虫類だ
これは突然変異種ではなくゼウスにより生まれた生態ではない
「あまりベラベラとは喋れんが勘違いをされないためにだ…
地球だけに生物がいると思うな…レリアンこそ貴様ら人間を操っているのだ」
このレタリアンが言うことは全て真実である
大気汚染により増殖したサーバスでもなく
破壊神から生まれた闇人とは別のヒト型爬虫類レリアン
彼等は地球外に生息しており何千年も前から地球に潜伏し
少しずつ人間の誘拐を進めていた
そう、古代人はレリアンの命令により人間の誘拐をしていたのだ
言わばレタリアンの部下が古代人達なのだ
あの発達した科学技術も全てレタリアンの知識である
生前アビトが膨大な古代人に関する資料の最後のページに
レリアンの事が僅かに記されていた
当然のことながらアビト自身も確認したことがないため
正確に欠けてはいたが
この地球上の動きに異変を誰よりも感じ取っていたのはアビトだった
アビトの時代にも各地での内乱が絶えなかった
何のメリットも無い戦争がなぜこれほどまでに起こるのか・・・・
原因はレリアンにあったのだ
「いずれは大戦争を起こすつもりだ…そして人類は初めて新人類へと生まれ変わる…!」
切れ長の目を光らせ言い放った
政府の人間もその衝撃的言葉に硬直しきっていた
レリアンは元はゼウスとの面識はなかったが
ゼウスと同じく神に近い種であったのだ
しかし、ヒトを作るという力自体は持っていなかった
彼等の生命維持となるのが人間であった
そのため大量の人間が必要となり今の現状となった
ある意味ゼウスに近い存在でもある種だ
そのため戦争を起こし大量の死体を集め、生命維持に使っている
目的は…全ての人間を
レリアンに服従させ人類をレリアン達の住み着く新人類にへと変えるつもりなのだ
人間達は奴隷か、食料として扱い悪魔のような計画を企んでいた
「もうすぐだ……もうすぐでその世界にへと生まれ変わる…」
動き出した影はもう1つあった…
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神授会の本部から数百キロ離れた絶海の孤島の海辺に
オールバックにした黒髪の顎下にもじゃもじゃの髭を生やした老人が座っていた
右手には酒のビン、左手には寂れた刀を手にしていた
柔和な目つきでビン底メガネをしている
老人は手に持っていた酒のビンに口を付け
「アビトがこの世から去ってもう何千年経つだろう…」
アルベルト・クロプス…推定年齢不能
アビトの師であり、ゼウスと同じく影で地球の創造に携わった神である
闇の影が進行する中…一本の光が差し込んだ
ちょっとキャラが増えて内容が複雑になってきたんで
分かりやすいキャラ紹介も書いてみます
・闇破会…闇人、サーバス、ガイアン
・凶悪種…古代人、レリアン
といった感じですね
闇破会とレリアンは敵対しています